JP6157720B2 - 逆入力遮断クラッチ - Google Patents

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Description

本発明は、入力軸からの入力は出力軸に伝達され、出力軸からの逆入力は入力軸に伝達されない逆入力遮断クラッチに関する。
逆入力遮断クラッチは、入力軸からの双方向の駆動力は出力軸に伝達するが、出力軸からの回転力は入力軸への伝達を阻止するものである。出力軸からの回転力(出力軸の逆入力)を阻止する機能は、逆入力遮断クラッチの伝達機構に設けられたローラが、出力軸の出力係合片と逆入力遮断クラッチの外輪部材との間に食い込んでロック状態となることで達成される。
このような逆入力遮断クラッチを組み込んだ製品、例えば、パチンコのような遊戯機にあっては、出力軸に「役物」と呼ばれる棒状の負荷を結合し、入力軸からこの負荷を駆動して、出力軸を中心にして搖動させたり、あるいは上下に移動させたりする場合がある。このような作動を行う逆入力遮断クラッチでは、出力軸に逆入力が加えられ、その出力軸からの逆入力が入力軸に伝達されないように阻止した状態で、出力軸に働く逆入力の方向と同一の入力が入力軸に加えられた場合、本来なら入力軸の入力を連続的に出力軸に伝達しなければならないのに、入力軸の入力の出力軸への伝達が断続することがある。
例えば、出力軸に上下に移動する負荷が結合されている場合、出力軸には常時負荷の重量による下方向の荷重がかかるので、出力軸に加えられる逆入力の方向は下方向である。この状態で、入力軸により負荷を下方向に移動するよう駆動するとき、つまり、入力軸に加えられる入力の方向が出力軸に働く逆入力の方向と同一の場合には、入力軸及び出力軸のそれぞれに働く力は下向きであり同方向である。
入力軸に下向きの駆動力が加えられると、その入力によりローラのロック状態が解除され、出力軸が入力軸とともに回転する。しかし、出力軸に作用する下方向の負荷荷重が大きいときは、出力軸が入力軸よりも速く回転する結果、ローラが出力係合片と外輪部材との間に再び食い込んでロック状態となり、出力軸が停止することがある。その後、入力軸が停止中の出力軸に追い付いてローラを押すと、ロックが解除されて出力軸と負荷とが移動するが、この動作の繰り返しにより、逆入力遮断クラッチを介在させて負荷を駆動するときは、負荷が連続的に駆動されずに負荷の下方向への動きが断続してしまう。
そこで、外輪部材を固定のハウジング内に回転可能に設置するとともに、外輪部材の外面に摩擦力を及ぼすコイルバネを設置して、この断続動作を防止するようにした逆入力遮断クラッチが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1のものでは、出力軸に下向きの負荷荷重によるトルク(逆入力)が作用しても、そのトルクのみでは、ローラが出力係合片と外輪部材との間に食い込むロック状態が解除しないように構成される。出力軸の逆入力と同方向の入力トルクが入力軸に与えられたときには、合算されたトルクによりコイルバネの摩擦力に打ち勝って外輪部材を回転させ、出力軸を外輪部材と一体的に回転させる。一方、出力軸の逆入力と逆方向の入力トルクが入力軸に与えられたときは、その入力トルクを直接的に出力軸に伝達し、これを回転するようにしている。
特開2013−142443
特許文献1の逆入力遮断クラッチでは、出力軸からの逆入力の伝達を阻止している状態において、出力軸の逆入力と同方向の入力が入力軸に与えられたとき、つまり、負荷荷重により出力軸が回転しようとする方向と同方向に入力軸が回転したときであっても、断続動作することなく、連続的に入力軸の入力(回転)を出力軸に伝達できる。しかし、このとき外輪部材はコイルバネに対して摩擦摺動を行うため、振動が発生し異常音が発生することがある。
これは、コイルバネと接触する外輪部材が焼結部品であり、外輪部材の表面粗さは、ポーラス(多孔質)な焼結部品に存在する無数の細孔の影響により比較的粗い状態であるためである。つまり、表面粗さの粗い外輪部材の外周面がコイルバネと摩擦摺動することにより、振動が発生し、異常音の発生に繋がっている。
本発明の目的は、表面粗さの粗い外輪部材とコイルバネの摩擦摺動に伴う振動の発生を抑制でき、異常音の発生を抑制できる逆入力遮断クラッチを提供することである。
本発明に係る逆入力遮断クラッチは、
「回転力が入力される入力軸と、
回転力を出力する出力軸と、
前記入力軸に入力が与えられると前記出力軸にその入力の伝達を許可し、前記出力軸から逆入力が与えられると前記入力軸にその逆入力の伝達を阻止する伝達機構部と、
前記伝達機構部を収容する固定されたハウジング部材と、を備える逆入力遮断クラッチであって、
前記伝達機構部には、焼結部材で円筒状に成形され、前記ハウジングに回転可能に支持される外輪部材が設けられるとともに、前記外輪部材を取り巻いてその外周面に接触し、前記ハウジング部材に端部が係止されるコイルバネが設けられ、かつ、前記外輪部材の外周面には、その表面粗さを算術平均粗さ(Ra)において0.8μm以下とする表面加工が施され、
前記外輪部材の内部には、前記入力軸に結合された入力係合部と、前記出力軸に結合されて前記外輪部材の内周面と対向する2個の斜面が形成された出力係合部と、前記出力係合部と前記外輪部材の内周面の間に配置された転動部材とが収容され、かつ、前記入力係合部の周方向の両側面にはそれぞれ段部が設けられ、一方の側面は径方向内側が凸部をなしていて前記出力係合部のみに当接可能であり、他方の側面は径方向外側が凸部をなしていて前記出力係合部及び前記転動部材に当接可能であるように形成されており、
前記伝達機構部は、前記出力軸からの逆入力の伝達を阻止している状態で、前記出力軸の逆入力と同方向の入力が前記入力軸に与えられたときは、前記入力係合部の一方の側面が前記出力係合部に当接し、その入力により、前記転動部材と前記外輪部材とがロック状態のまま、前記外輪部材を前記コイルバネの摩擦力に打ち勝って回転させて、前記出力軸を前記外輪部材と一体的に回転させる一方、
前記出力軸の逆入力と逆方向の入力が前記入力軸に与えられたときは、前記入力係合部の他方の側面が前記出力係合部及び前記転動部材に当接し、前記転動部材と前記外輪部材とのロック状態が解除されて、その入力により、前記出力軸を前記入力軸から直接的に回転させる」
ことを特徴とする。
本発明によれば、焼結部材で円筒状に成形された外輪部材の外周面は、表面粗さを小さくする表面加工を施して形成されるので、外輪部材の表面状態を平滑化できる。従って、外輪部材とコイルバネの摩擦摺動による振動の発生を抑制でき、異常音の発生を抑制できる。また、外輪部材の外面と前記コイルバネとの接触面に直鎖系フッ素グリスを塗布した場合には、外輪部材とコイルバネとの耐摩耗性を改善でき、外輪部材の耐久性を向上できるようになる。
本発明の実施形態に係る逆入植遮断クラッチの一例を示す説明図。 本発明の実施形態に係る逆入力遮断クラッチ11の動作説明図。 外輪部材の表面粗さのグラフ。 潤滑油を変更したときの外輪部材14の耐久性と潤滑油の基油動粘度との関係を示すグラフ。
以下、本発明の実施形態を説明する。図1は本発明の実施形態に係る逆入力遮断クラッチの一例を示す説明図であり、図1(a)は構成図、図1(b)は、入力軸12に結合される入力部材12Aの斜視図、図1(c)は出力軸13の斜視図である。図1(a)では上半分を断面図で示している。
逆入力遮断クラッチ11は、入力軸12(図1の実施形態では、入力部材12Aの中央孔に相対回転不能に嵌め込まれる)に入力される正転方向及び逆転方向の双方向の回転力を出力軸13に伝達するものであり、入力軸12からの双方向の回転力は出力軸13に伝達するが、出力軸13からの回転力は入力軸12に伝達しない。固定のハウジング部材20には、この機能を達成するための伝達機構部が収納され、伝達機構部は、ハウジング部材20内に回転可能に支持された円筒状の外輪部材14を備えている。ハウジング部材20の入力軸12側には入力側シールド部材15が設けられ、出力軸13側には出力側シールド部材16が形成されている。
また、伝達機構部は、入力軸12に結合する入力部材12Aと、出力軸13に設けられた出力部材13Aと、外輪部材14の内面と当接する転動部材17と、転動部材17を軸方向に押圧し転動部材17の動きを制動する制動部材18とを有し、これらは、外輪部材14の内部に収容される。制動部材18はウェーブワッシャと平ワッシャとを組み合わせたものであり、転動部材17を軸方向に押圧して転動部材17の動きに対して軽い制動力を付与し、逆入力を遮断する際の出力係合部13Bのロックやロック解除の動作を確実に行わせるようにしている。
外輪部材14の外周面にはコイルバネ19が巻回され、コイルバネ19の端部はハウジング部材20に係止される。コイルバネ19は、外輪部材14の外面と接触してこれに摩擦力を及ぼし、外輪部材14に作用するトルクが所定値に達するまでは、外輪部材14が回転しないように保持する。そのトルクの所定値は、この実施形態の逆入力遮断クラッチでは、下向きの負荷荷重により出力軸13に与えられた逆入力のトルクよりも大きい値に設定されている。
これにより、出力軸13からの逆入力を阻止している状態で、出力軸13の逆入力と同方向の入力(トルク)が入力軸12に与えられたときは、外輪部材14に働くトルクが上記の所定値を超え、外輪部材14はコイルバネ19の摩擦力に抗して回転する。外輪部材14の内部に設置された出力軸13は、転動部材17がロック状態であるので、外輪部材14と一体に回転する。一方、出力軸13からの逆入力を阻止している状態で、出力軸13の逆入力と逆方向の入力が入力軸12に与えられたときは、その入力を直接的に出力軸13に伝達する(後述の図2の説明参照)。
このように、この実施形態の逆入力遮断クラッチでは、出力軸13に下向きの負荷荷重による逆入力が作用しても、それのみではロック状態が解除しないため、負荷の断続的な下向き移動を防止できる。
本発明においては、外輪部材14は、焼結部材で円筒状に成形され、浸炭処理等の熱処理を行った後に、外輪部材14の外周面に表面粗さを小さくする表面加工が施される。これにより、外輪部材14の表面状態を平滑化し、外輪部材14とコイルバネ19の摩擦摺動による振動の発生を抑制して異常音の発生を抑制するようにしている。表面粗さを小さくする表面加工としては、外輪部材14の外周面を砥粒の散布されたラップ盤に擦り合せるラップ加工、又は、研磨用砥粒の混合された液体を収容したバレル内に複数の外輪部材14を入れ、バレルに回転や振動を与えて研磨を行うバレル加工などを採用することができる。バレル加工を採用すると、多数の外輪部材14の表面加工を同時に短時間で行うことが可能となる。
また、外輪部材14の外面とコイルバネとの接触面に潤滑油として動粘度が所定値以下の直鎖系フッ素グリスを塗布することが好ましい。これらにより、外輪部材14とコイルバネ19との耐摩耗性を改善し、外輪部材14の耐久性を向上させるとともに、振動の発生を抑制して異常音の発生を抑制できるようになる。外輪部材14の表面加工やグリスの塗布の詳細については後述する。
入力軸12に結合される入力部材12Aには、図1(b)に示すように、複数の入力係合部12Bが設けられている。出力軸13は、図1(c)に示すように、出力部材13Aを有し、この出力部材13Aには複数の出力係合部13Bが設けられている。入力部材12Aと出力軸13とは、複数の入力係合部12Bと複数の出力係合部13Bとが互い違いに嵌合し(これらの詳細な断面形状については図2を参照)、入力部材12Aの平面部と出力部材13Aの平面部とがフラット面接触状態で当接する。
ここで、本発明の実施形態に係る逆入力遮断クラッチ11の動作について、図2により詳細に説明する。図2(a)は、入力軸12にも出力軸13にも回転力が加わっていない静止状態のときの転動部材17、入力係合部12B、出力係合部13Bの位置関係の説明図である。また、図2(b)は、出力軸13に時計方向の回転力が加わった状態のときの位置関係の説明図、図2(c)は、出力軸13に時計方向の回転力が加わり出力軸13からの逆入力を阻止している状態で、出力軸13の逆入力と同方向(時計方向)の入力が入力軸12に与えられたときの位置関係の説明図、図2(d)及び図2(e)は、出力軸13に時計方向の回転力が加わり出力軸13からの逆入力を阻止している状態で、出力軸13の逆入力と逆方向(反時計方向)の入力が入力軸12に与えられたときの位置関係の説明図である。
図2(a)に示すように、入力軸12にも出力軸13にも回転力が加わっていない静止状態のときは、転動部材17は、2個の斜面が左右に形成された出力係合部13Bの、窪みとなったほぼ中央に位置する。また、出力係合部13Bの中央には転動部材17が僅かな距離を保って対面し、転動部材17は外輪部材14の内壁面21に僅かな間隔を保って対面している。
入力係合部12Bの、転動部材17及び出力係合部13Bと接する側面は左右非対称に形成されている。すなわち、入力係合部12Bの周方向の両側面にはそれぞれ段部(図2(d)の符号S)が設けられていて、一方の側面は径方向内側が凸部をなしているのに対し、他方の側面は径方向外側が凸部をなしている。これにより、入力係合部12Bが時計方向に回転したときには、転動部材17及び出力係合部13Bと接する側面は、図2(a)の左側の入力係合部12Bに示すように、転動部材17より先に出力係合部13Bに接する。一方、入力係合部12Bが反時計方向に回転したときには、転動部材17及び出力係合部13Bと接する側面は、図2(a)の右側の入力係合部12Bに示すように、出力係合部13Bより先に転動部材17に接する。
いま、図2(a)の静止状態から出力軸13に時計方向の回転力が加わったとすると、図2(b)に示すように、出力係合部13Bには右矢印方向に回転力がかかり、出力係合部13Bは右矢印方向に動く。出力係合部13Bは一定回転範囲(隣り合う入力係合部12Bの間隔)では自由かつ円滑に独立動作するので、入力係合部12Bは動作しない。従って、出力係合部13Bが右矢印方向に動くのに伴い、転動部材17は出力係合部13Bの左側斜面により上方に押し上げられるようになる(このとき、図1の制動部材18は、転動部材17が出力係合部13Bと一体的に移動するのを防止して、押し上げを確実に行わせる)。そして、出力係合部13Bと外輪部材14の内壁面21との間隙が狭くなり、転動部材17は出力係合部13Bと外輪部材14の内壁面21との間に食い込みロック状態となる。このようにして、出力軸13に加えられた回転力は阻止され、入力軸12に伝達されない(外輪部材14にはコイルバネ19の摩擦力が作用していて、外輪部材14を拘束するトルクが、下向きの負荷荷重により出力軸13に与えられた逆入力のトルクよりも大きい値に設定してあるため、外輪部材14が回転することはない)。
図2(b)のロック状態から入力軸12に時計方向の回転力が加わったとすると、図2(c)に示すように、入力係合部12Bが右矢印方向に回動して、入力係合部12Bの側面は、径方向内側の凸部が出力係合部13Bの側面に先に当接する。径方向外側は、転動部材17とは当接しないため、転動部材17が入力係合部12Bに押されてロックが外れることはなく、従って、転動部材17による出力係合部13Bと外輪部材14の内壁面21とのロック状態を維持した状態で出力係合部13Bを駆動する。このとき、外輪部材14には、出力軸13の逆入力のトルクと入力軸12のトルクが合算されて作用し、外輪部材14は出力係合部13Bとともにコイルバネ19の摩擦力に打ち勝って回転する。これにより、入力軸12の入力を出力軸13に伝達する。
つまり、図2(b)のロック状態から入力軸12が時計方向に回転すれば、出力軸13は入力軸12と一緒に回転し、入力軸12に加わる回転力は出力軸13に伝達される。この場合、外輪部材14に加わる回転力はコイルバネ19の摩擦力に打ち勝たなければならないが、出力軸13には負荷の荷重が入力軸12に加わる回転力と同じ方向の時計方向に加わっているので、入力軸12から出力軸13に伝達する回転力には余分な大きな回転力を必要としない。
図2(c)では、図2(b)のロック状態から入力軸12に時計方向の回転力が加わった場合について説明したが、図2(a)の静止状態(出力軸13に逆入力のトルクが作用していない状態)から入力軸12に時計方向の回転力が加わった場合も、図2(c)の場合と同様に、出力軸13は入力軸12と一緒に回転し、入力軸12に加わる回転力は出力軸13に伝達される。
すなわち、図2(a)の静止状態から入力軸12に時計方向の回転力が加わると、図2(a)の左側の入力係合部12Bが転動部材17より先に出力係合部13Bに接するので、出力係合部13Bは転動部材17を上方に押し上げ、転動部材17は出力係合部13Bと外輪部材14の内壁面21との間に食い込みロック状態となる。この状態は、図2(c)の状態と基本的に同じである。つまり、図2(a)の静止状態から入力軸12に時計方向の回転力が加わった場合は、入力軸12の回転力により図2(c)の状態となって、その後に、図2(c)の場合と同様に、出力軸13は、入力軸12及び外輪部材14と一緒に回転し、入力軸12に加わる回転力は出力軸13に伝達される。
一方、図2(b)のロック状態から入力軸12に反時計方向の回転力が加わったとすると、図2(d)に示すように、入力係合部12Bが左矢印方向に回動して、まず、入力係合部12Bの径方向内側の側面(段部Sの下方)が出力係合部13Bの側面に当接することにより、出力係合部13Bを反時計方向に移動して転動部材17を両斜面の中央部に位置させ、外輪部材14の内壁面21とのロック状態を解除する。次いで、入力係合部12Bの側面は、その径方向外側の凸部が転動部材17の側面とも当接し、転動部材17を両斜面の中央部の位置に保持して、ロック状態となるのを防止する。これにより、入力係合部12Bは、出力係合部13Bを押しながら、出力係合部13Bを直接反時計方向に回転させる。この場合、出力係合部13Bには負荷の荷重によるトルクが時計方向に作用しており、入力軸12の反時計方向の回転力が負荷の荷重に打ち勝って入力軸12の入力を出力軸13に伝達する。
次に、本発明の実施形態における外輪部材14の表面状態の平滑化について詳細に説明する。図3は外輪部材の表面粗さのグラフであり、図3(a)は、焼結部材で円筒状に成形され、浸炭処理後に、表面粗さを小さくする加工を施して形成した本発明の外輪部材の表面粗さのグラフ、図3(b)は、焼結部材で円筒状に成形された後に、浸炭処理をしただけの従来の外輪部材の表面粗さのグラフである。
図3(a)、図3(b)において、縦軸は外輪部材14の表面の縦方向の距離をμmで表示したもの、横軸は外輪部材14の軸方向の距離をmmで表示したものである。この実施形態では、表面粗さを小さくする加工としてバレル加工が用いられており、焼結部材の外輪部材14にバレル加工を施していない図3(b)の算術平均粗さ(Ra)が1.02μmであるのに対し、バレル加工を施した図3(a)の算術平均粗さは0.64μmであって、バレル加工を行うことにより明らかに表面粗さが改善されている。そして、バレル加工を施していない外輪部材14は、逆入力遮断クラッチの作動中にコイルバネ19との摩擦摺動による異常音が発生したのに対し、バレル加工を施した外輪部材14では、異常音の発生がなかった。
外輪部材14の外周面の状態を平滑化して表面粗さを小さくするには、バレル加工に代えてラップ加工等を採用することができる。また、コイルバネ19との摩擦摺動に伴う振動や異音の発生を防止するには、加工後の算術平均粗さ(Ra)が0.8μm以下であることが必要であり、好ましくは、0.65μm以下に小さくするのがよい。
次に、潤滑油の変更による外輪部材14の耐久性の向上について説明する。図4は、潤滑油を変更した場合の外輪部材14の耐久性と潤滑油の基油動粘度との関係を示すグラフであり、縦軸は外輪部材14の耐久性(回転回数)、横軸は温度が40℃のときの潤滑油の基油動粘度である。縦軸の外輪部材14の耐久性(回転回数)は、外輪部材14として使用可能な状態を維持できる外輪部材14の回転回数を示している。
図4の黒菱形は、潤滑油の基油として直鎖系フッ素グリスを採用した場合のデータであり、点A1は直鎖系フッ素グリスの基油動粘度が25cst(40℃)のときの回転回数、点A2は直鎖系フッ素グリスの基油動粘度が90cst(40℃)のときの回転回数、点A3は直鎖系フッ素グリスの基油動粘度が100cst(40℃)のときの回転回数、また、点A4は直鎖系フッ素グリスの基油動粘度が140cst(40℃)のときの回転回数である。一方、図4の黒丸は、潤滑油の基油として直鎖系フッ素グリスと側鎖系フッ素グリスとの混合フッ素グリスを採用した場合のデータであり、点B1は混合フッ素グリスの基油動粘度が45cst(40℃)のときの回転回数、点B2は混合フッ素グリスの基油動粘度が200cst(40℃)のときの回転回数である。
直鎖系フッ素グリスの基油動粘度が25cst(40℃)のときの外輪部材14の回転回数は1550万回(A1点)、直鎖系フッ素グリスの基油動粘度が90cst(40℃)のときの外輪部材14の回転回数は1128万回(A2点)、直鎖系フッ素グリスの基油動粘度が100cst(40℃)のときの外輪部材14の回転回数は500万回(A3点)、直鎖系フッ素グリスの基油動粘度が140cst(40℃)のときの外輪部材14の回転回数は300万回(A4点)である。また、混合フッ素グリスの基油動粘度が45cst(40℃)のときの外輪部材14の回転回数は800万回(B1点)、混合フッ素グリスの基油動粘度が200cst(40℃)のときの外輪部材14の回転回数は240万回(B2点)である。
直鎖系フッ素グリス及び混合フッ素グリスのいずれの場合も、基油動粘度が小さいほど外輪部材14の耐久性(回転回数)は向上する。また、直鎖系フッ素グリスと混合フッ素グリスと比較すると、直鎖系フッ素グリスの方が耐久性(回転回数)は向上する。そこで、本発明の逆入力遮断クラッチの潤滑油には、基油動粘度が所定値以下の直鎖系フッ素グリスを用いるのが好適である。具体的には基油動粘度が90cst以下の直鎖系フッ素グリスを用いるのが適当であり、より好ましくは、基油動粘度が25cst(40℃)直鎖系フッ素グリスを用いるのが良い。
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
11 逆入力遮断クラッチ、12 入力軸、13 出力軸、14 外輪部材、15 入力側シールド部材、16 出力側シールド部材、17 転動部材、18 制動部材、19 コイルバネ、20 ハウジング部材、21 内壁面

Claims (4)

  1. 回転力が入力される入力軸と、
    回転力を出力する出力軸と、
    前記入力軸に入力が与えられると前記出力軸にその入力の伝達を許可し、前記出力軸から逆入力が与えられると前記入力軸にその逆入力の伝達を阻止する伝達機構部と、
    前記伝達機構部を収容する固定されたハウジング部材と、を備える逆入力遮断クラッチであって、
    前記伝達機構部には、焼結部材で円筒状に成形され、前記ハウジングに回転可能に支持される外輪部材が設けられるとともに、前記外輪部材を取り巻いてその外周面に接触し、前記ハウジング部材に端部が係止されるコイルバネが設けられ、かつ、前記外輪部材の外周面には、その表面粗さを算術平均粗さ(Ra)において0.8μm以下とする表面加工が施され、
    前記外輪部材の内部には、前記入力軸に結合された入力係合部と、前記出力軸に結合されて前記外輪部材の内周面と対向する2個の斜面が形成された出力係合部と、前記出力係合部と前記外輪部材の内周面の間に配置された転動部材とが収容され、かつ、前記入力係合部の周方向の両側面にはそれぞれ段部が設けられ、一方の側面は径方向内側が凸部をなしていて前記出力係合部のみに当接可能であり、他方の側面は径方向外側が凸部をなしていて前記出力係合部及び前記転動部材に当接可能であるように形成されており、
    前記伝達機構部は、前記出力軸からの逆入力の伝達を阻止している状態で、前記出力軸の逆入力と同方向の入力が前記入力軸に与えられたときは、前記入力係合部の一方の側面が前記出力係合部に当接し、その入力により、前記転動部材と前記外輪部材とがロック状態のまま、前記外輪部材を前記コイルバネの摩擦力に打ち勝って回転させて、前記出力軸を前記外輪部材と一体的に回転させる一方、
    前記出力軸の逆入力と逆方向の入力が前記入力軸に与えられたときは、前記入力係合部の他方の側面が前記出力係合部及び前記転動部材に当接し、前記転動部材と前記外輪部材とのロック状態が解除されて、その入力により、前記出力軸を前記入力軸から直接的に回転させることを特徴とする逆入力遮断クラッチ。
  2. 表面粗さを算術平均粗さ(Ra)において0.8μm以下とする前記表面加工は、ラップ加工である請求項1に記載の逆入力遮断クラッチ。
  3. 表面粗さを算術平均粗さ(Ra)において0.8μm以下とする前記表面加工は、バレル加工である請求項1に記載の逆入力遮断クラッチ。
  4. 前記外輪部材の外周面と前記コイルバネとの接触面に、40℃における動粘度が90cst以下の直鎖系フッ素グリスが塗布されている請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の逆入力遮断クラッチ。
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