JP6842151B2 - ポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)の三次元架橋体となる前駆体を製造する方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)の三次元架橋体となる前駆体を製造する方法に関する。
ポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)(以下、PBOという。)は、
のように、ベンゼン環とヘテロ環がパラ位に繋がった構造となっていることから、分子鎖が全く折れ曲がることができない典型的な剛直高分子であり、高強度、高弾性率、高い耐熱性を有していることが知られている。
このPBOはポリリン酸等の酸を溶媒として溶液とすることができ、この溶液を紡糸溶液として糸金口から連続的に押し出して凝固させることで繊維状となったPBO繊維とすることができる。このPBO繊維は力学特性が優れていることから、緊張材や補強材として用いられたり、あるいは熱的特性が優れていることから、耐熱産業資材として用いられたりしている。
また、PBOの合成工程において、三官能基性モノマーを加えておくことで架橋点を導入することができ、
のように、分岐点間がPBO成分で繋がったPBO三次元架橋体を合成できることが知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
しかしながら、このPBO三次元架橋体は成形性が悪く、フィルム等の薄膜とすることが極めて困難であった。
そこで、成形性の改善策として、アミド結合を持つPBOの前駆体を経由して合成することが提案されており、具体的には、4,6-ジ(トリメチルシリルアミノ)-1,3-ジ(トリメチルシロソキ)ベンゼン(以下、TMS−DARという。)を用いた合成方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2014−111700号公報
T. Uchida, K. Shimamura, K. Kimura, Sen-I Gakkaishi, 59(6), 207-212 (2003)
しかしながら、TMS−DARを用いた合成方法では、TMS−DAR自体の反応性が高いため、重合の際の反応速度の制御が困難であった。一方で、TMS−DARは空気中の水分等の求核剤と容易に反応して不活性となりやすく、これにより重合反応が進まないこともあった。さらには、合成後の精製工程において、TMS−DARのみを安定して単離することも困難であった。
本発明者らは、このような現状に鑑み、より簡便で確実にPBO三次元架橋体を形成すべく研究開発を行って、本発明を成すに至ったものである。
本発明では、熱処理による環化反応工程によってポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)の三次元架橋体となる前駆体を製造する方法にであって、以下の工程を有するものである。
(1)溶媒に4,6-ジアミノレソルシノール二塩酸塩を溶解させるととともに、tert-ブチルジメチルクロロシランを加えて4,6-ジ(tert-ブチルジメチルシリルアミノ)-1,3-ジ(tert-ブチルジメチルシロソキ)ベンゼンを合成し、合成された前記4,6-ジ(tert-ブチルジメチルシリルアミノ)-1,3-ジ(tert-ブチルジメチルシロソキ)ベンゼンを粉末としてクロロホルムに溶かして第1液を作成する工程。
(2)クロロホルムにテレフタロイルクロリドとトリメソイルクロリドとを溶かして第2液を作成する工程。
(3)第1液と第2液とを混合して下式の化学反応を生じさせる工程。
本発明によれば、より簡便で確実にフィルム等の薄膜状のポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)の三次元架橋体を製造できる。
ゲル化した前駆体の写真である。 前駆体シートの写真である。 PBO三次元架橋体フィルムの写真である。 PBO三次元架橋体フィルムの赤外吸収(IR)スペクトルの測定結果を示すグラフであり、(a)は従来のTMS−DARを用いた場合のPBO三次元架橋体、(b)は本発明のTBS−DARを用いた場合のPBO三次元架橋体フィルム、(c)は(b)のPBO三次元架橋体フィルムで追加熱処理を行ったBO三次元架橋体フィルムである。 TBS−DARを用いた場合の前駆体シートと、従来のTMS−DARを用いた場合の前駆体シートの熱重量分析の結果のグラフである。 TBS−DARを用いて作成したPBO三次元架橋体フィルムの動的粘弾性測の結果定のグラフである。
本発明は、熱処理による環化反応工程によってポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)の三次元架橋体となる前駆体を製造する方法である。
特に、前駆体は、芳香族ジアミノジヒドロキシ化合物をシリル化した化合物と、芳香族ジカルボン酸ジハライドと、芳香族多官能基性カルボン酸ハライドとから合成しており、さらには、芳香族ジアミノジヒドロキシ化合物をシリル化した化合物は、シリル置換基(SiR1R2R3)が、SiMe3よりもかさ高であることが望ましい。
また、芳香族ジカルボン酸ジハライドは、
一般式2:
[Arは置換または無置換の芳香族残基、Xはカルボニル基またはハロゲン。]として表されるモノマーであり、芳香族多官能基性カルボン酸ハライドは、
一般式3:
[Arは置換または無置換の芳香族残基、Xはカルボニル基またはハロゲン。]
として表されるモノマーであることが望ましく、特に、芳香族多官能基性カルボン酸ハライドは、必ずしもCOXの結合が3つのものに限定するものではなく、3つ以上であってもよい。ここで、芳香族ジカルボン酸ジハライド及び芳香族多官能基性カルボン酸ハライドの芳香族Arは、ベンゼン環に限らず、ナフタレン環、アンスラセン環でもよく、ビフェニルのように2つ以上のベンゼン環が結合したものでもよい。さらに、芳香族残基Arにはハロゲン、アルキル基、フェニル基などの置換基を付加していてもよい。
以下において、本発明の実施例を具体的に説明する。ここで、以下に説明する実施例では、芳香族ジアミノジヒドロキシ化合物をシリル化した化合物として、4,6-ジ(tert-ブチルジメチルシリルアミノ)-1,3-ジ(tert-ブチルジメチルシロソキ)ベンゼン(以下、TBS−DARという。)を用い、芳香族ジカルボン酸ジハライドとしてテレフタロイルクロリド(以下、TPCという。)を用い、芳香族多官能基性カルボン酸ハライドとしてトリメソイルクロリド(以下、TMCという。)を用いたが、これらに限定するものではない。
<TBS−DARの合成と精製>
TBS−DARは、4,6-ジアミノレソルシノール二塩酸塩(DAR)から合成した。すなわち、まず、窒素雰囲気下において4,6-ジアミノレソルシノール二塩酸塩5.000g(23.47mmol)を溶媒であるN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)234.7mLに溶解させ、中和剤であるトリエチルアミン(TEA)88.3mLを加える。次いで、シリル化剤であるtert-ブチルジメチルクロロシラン35.370g(234.6mmol)を加えて、室温で24時間撹拌してTBS−DARを合成した。下記の反応式は、TBS−DARの合成反応を示している。
合成されたTBS−DARは沈殿物となり、沈殿物をろ過により回収し、沈殿物中の塩酸塩や未反応物を除くため、ろ液が中性になるまで蒸留水で洗浄した。そして、水分や付着している溶媒を完全に除去するため、80℃、12時間の熱真空乾燥を行うことで、TBS−DARを得た。回収したものがTBS−DARであることは、1HNMR測定によりを確認した。
<ポリベンゾオキサゾール架橋体の前駆体の合成>
まず、窒素雰囲気下でクロロホルムにTBS−DAR1.624g(2.720mmol)溶かして第1液を作成し、さらに窒素雰囲気下でクロロホルムにTPC0.336g(1.656mmol)と、TMC0.188 g(0.710 mmol)溶かして第2液を作成した。ここで、第2液では、TPCとTMCの配合比をTPC/TMC=7/3とした。
次いで、第1液と第2液とを室温で混合することで0.200MのTBS−DAR溶液とし、重合反応を開始させた。重合の進行に伴い、ゲル化が生じ、目的の前駆体を合成した。図1は、ゲル化した前駆体の写真である。また、下記の反応式は、前駆体の合成反応を示している。
<脱溶媒工程>
合成したゲル状の前駆体は、窒素流下に静置してゲル内部のクロロホルムを揮発させ、薄膜状の前駆体シートとした。その後、得られた前駆体シートを140℃で6時間の熱真空乾燥を行った。図2は、前駆体シートの写真である。
<プレス成形工程>
前駆体シートを、300℃、5MPaの条件で20分間プレス成形して、前駆体フィルムとした。本発明において、プレス成形前の状態を「シート」と呼ぶこととし、プレス成形後の状態を「フィルム」と呼ぶこととしている。
<環化反応工程>
前駆体フィルムに対して電気炉(FULL-TECH社製 FT-101VAC)を用いて環化反応させた。すなわち、窒素流下で、350℃まで1時間で昇温し、350℃で3時間の熱処理を行った。環化反応させることで、前駆体フィルムをPBOの三次元架橋体であるPBO三次元架橋体フィルムとした。図3は、PBO三次元架橋体フィルムの写真である。
従来のTMS−DARを用いた合成方法では、上記したプレス成形工程を行っても表面の凹凸が解消されず、滑らかな表面とすることが不可能であったが、TBS−DARを用いた本発明の製造方法とすることで、滑らかな表面を有するPBO三次元架橋体フィルムを作成することができた。
<PBO三次元架橋体フィルムの表面の観察>
PBO三次元架橋体フィルムの表面および破断面を走査型電子顕微鏡(JSM-6320F)で観察した。観察の結果、PBO三次元架橋体フィルムの表面は均一であり、ミクロンオーダー、サブミクロンオーダーの空隙は見られなかった。
<PBO三次元架橋体フィルムの赤外線吸収(IR)スペクトル分析の結果>
SHIMADZU社製のIRAffinity-1を用いて、KBr法によりPBO三次元架橋体フィルムの赤外吸収(IR)スペクトルを測定した。図4は、測定結果を示すグラフである。
図4において、(a)は従来のTMS−DARを用いて合成したPBO三次元架橋体であって、既に報告されている分析結果であり、(b)は本発明のTBS−DARを用いた製造方法で作成したPBO三次元架橋体フィルムの分析結果である。
図4の(a)と(b)のIRスペクトルの比較から、1620cm-1の付近にC=Nの吸収帯が見られ、920cm-1と860cm-1の付近にオキサゾール環に由来する吸収帯が見られた。また、それぞれのピークを比較しても同様の吸収帯が見られた。
一方で、図4(b)のIRスペクトルにおいては、1700cm-1付近に未反応のCOOH由来のピークが見られなかった。これは、TMS−DARを使用する従来の方法では、TMS−DARの不安定性から必要な化学等モルを加えられなかったのに対し、本発明のTBS−DARを用いた製造方法では安定して必要量を加えることができるため、末端に導入されるカルボキシル基の量が減少したことが原因であると考えられる。
また、図4(b)のIRスペクトルにおいて3000cm-1付近にみられるピークは、保護基として用いているTBS(tert-ブチルジメチルシリル)由来のピークであり、未環化部分が残存していることが考えられる。そこで、PBO三次元架橋体フィルムにさらに高温で熱処理を施したところ、図4(c)に示すように、熱処理後にピークが消失した。すなわち、PBO三次元架橋体フィルムをさらに高温で熱処理することで、環化反応を進行させることができることが分かった。
なお、熱処理の条件は、電気炉(FULL-TECH社製 FT-101VAC)を用いて、窒素流下でPBO三次元架橋体フィルムを450℃まで1.5時間で昇温し、450℃を8時間保持することとした。以下において「熱処理」は、全てこの条件で行っている。
<PBO三次元架橋体フィルムの物性測定の結果>
本発明の製造方法で作成した熱処理していないPBO三次元架橋体フィルムの体積、重量から求めた見かけ密度は、0.829g/cm3であった。繊維状となっているPBOの密度が1.54g/cm3であることから、PBO三次元架橋体フィルムの空隙率は46%であった。この結果から、本発明の製造方法で作成した熱処理していないPBO三次元架橋体フィルム内には、多くの空隙が存在することが分かった。
また、熱処理したPBO三次元架橋体フィルムの見かけ密度は0.760g/cm3であり、空隙率は51%であった。
<PBO三次元架橋体フィルムの熱重量分析の結果>
PBO三次元架橋体フィルムの熱重量分析の結果を下表に示す。なお、熱重量分析には熱重量分析装置(RIGAKU社製 Thermo Plus TG8 120/SD)を用い、窒素流量100mL/min、昇温速度10℃/minで800℃まで加熱して熱重量分析を行った。
比較として、従来のTMS−DARを用いて作成したPBO三次元架橋体の熱重量分析の結果を下表に示す。
熱処理なしの場合では、本発明の製造方法で作成したPBO三次元架橋体フィルムよりも、従来のTMS−DARを用いた場合の方が高い耐熱性を示している。これは、従来のTMS−DARを用いた場合では、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)を溶媒として作製したゲルを良溶媒であるNMPで精製し、未反応物、副生成物の除去をしていたのに対し、本発明の製造方法では、クロロホルムを溶媒として用いてゲルを作成し、精製を行わずに溶媒を揮発させて作成しているため、未反応物、副生成物が残存しているためであると考えられる。
一方、熱処理後の場合では、高温下で未反応物、副生成物等の不純物を分解させることができるため、本発明の製造方法で作成したPBO三次元架橋体フィルムも、従来のTMS−DARを用いた場合と同等の耐熱性を示していると考えられる。
このことを確認するため、上述した本発明の製造方法で作成した前駆体シートの熱重量分析を行った結果を図5に示す。比較として、既知のTMS−DARを用いた製造方法で作成した前駆体シートの熱重量分析の結果を示している。
図5に示すように、本発明のBS−DARを用いた製造方法での前駆体シートでは、290〜300℃付近で急激な重量減少が見られ、それ以降はTMS−DARを用いた製造方法での前駆体シートと同様の重量減少を示している。
この290〜300℃付近で急激な重量減少は、前駆体シートに残留している沸点が180℃のTMCや、沸点が266℃のTPCが重量ゼロとなることを示していると考えられる。特に、上述したように、既知のTMS−DARを用いた製造方法で作成した前駆体シートでは、NMPを溶媒として作製したゲルを良溶媒であるNMPで精製することで、未反応物、副生成物を除去した前駆体シートとなっていることから、同様の急激な重量減少が生じることなく重量減少を示していることから明らかである。
<PBO三次元架橋体フィルムの引張試験の結果>
PBO三次元架橋体フィルムを長さ20 mm、幅5 mmの試料片として、引張速度を4mm/minとして引張試験を行った。引張試験の結果、PBO三次元架橋体フィルムの引張弾性率は816±298MPa、降伏強さ22.5±13.6MPa、破断伸度は22.6±13.6%、破断伸度4.7±1.4MPaであった。
<PBO三次元架橋体フィルムの動的粘弾性測の結果定>
動的粘弾性測定装置を用いて、空気下、室温から350℃までPBO三次元架橋体フィルムの粘弾性の測定を行った。図6に示すように、PBO三次元架橋体フィルムは350℃まで昇温しても大きく弾性率が低下しないことが分かった。
<TPCとTMCの配合比について>
上述した実施例では、TPCとTMCの配合比をTPC/TMC=7/3としているが、他の割合とすることも可能である。
特に、TPCとTMCの配合比を調整することで、架橋点間の長さの制御や、成形性を調整することができる。TMCの比率を高めることで架橋点を多く導入した場合には、脱溶媒工程で前駆体シートに大きな収縮が生じやすい傾向があった。一方、TPCの比率を高めることで架橋点の導入量を少なくした場合には、架橋点間の長さが長くなり、比較的柔らかい前駆体フィルムとなって成形性を高めることができる。

Claims (1)

  1. 熱処理による環化反応工程によってポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)の三次元架橋体となる前駆体を製造する方法において、
    溶媒に4,6-ジアミノレソルシノール二塩酸塩を溶解させるととともに、tert-ブチルジメチルクロロシランを加えて4,6-ジ(tert-ブチルジメチルシリルアミノ)-1,3-ジ(tert-ブチルジメチルシロソキ)ベンゼンを合成し、合成された前記4,6-ジ(tert-ブチルジメチルシリルアミノ)-1,3-ジ(tert-ブチルジメチルシロソキ)ベンゼンを粉末としてクロロホルムに溶かして第1液を作成する工程と、
    クロロホルムにテレフタロイルクロリドとトリメソイルクロリドとを溶かして第2液を作成する工程と、
    前記第1液と前記第2液とを混合して下式の化学反応を生じさせる工程と
    を有する前記前駆体を製造する方法。
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