JPH0564387B2 - - Google Patents
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Description
【発明の詳細な説明】
[発明の分野]
本発明は、コンピユータを利用する化学反応情
報の記録・検索方法に関するものであり、さらに
詳しくは、化学反応に関与する物質の構造変化に
関する情報をコンピユータを用いて、検索、およ
び類似化合物や類似反応への考察、類似の化学構
造を有する新規化合物の合成方法の研究が容易と
なるように記録し、検索する方法に関するもので
ある。 [発明の技術的背景] 近年において、コンピユータの発達に伴ない、
化学物質、特に有機化合物の構造情報の記録方法
について各種の方法が提案され、利用されつつあ
る。今日までに研究され、解明された有機化合物
および有機化学反応は膨大な量にのぼるが、これ
らの既知の情報を有効に利用して公知の化学物質
または化学反応を短時間のうちに検索したり、さ
らには所望の特性を有する新規物質の合成方法を
見い出すことが望まれている。そのためには、化
学物質および化学反応の表現形態として、技術者
にとつてその構造的特徴を把握することが容易な
従来の化学構造式の代りに、コンピユータが処理
できる(すなわち、コンピユータが論理判断しう
る)表現形態を開発し、利用することが要求され
ている。 化学物質の記録方法としては、WLN
(Wiswesser Linear Notation)などの線型表記
法および結合表による方法が代表的なものであ
り、その詳細はたとえば、W.T.Wipke,S.R.
Heller,R.J.Feldmann、E.Hyde(Eds):
“Computer Representation and Manipulation
of Chemical Information”(John Wiley and
Sons、New York、1974)に記載されている。
結合表(connection table)は、たとえば化学物
質の構造式における各原子の種類、それに結合す
る相手の原子および結合の種類などを一覧表にま
とめたものであり、上記の線型表記法に比べて化
学物質を原子単位で検索することができるとの利
点がある。 また、化学物質の構造変化(化学反応)に関す
る情報を記録する方法についても提案されている
が、今までのところ満足できる表現方法は知られ
ていない。たとえば、化学反応に関する情報を記
録する方法として反応コードによる方法があり、
具体的にはJ.Valls、O.Scheiner:“Chemical
Information Systems”、E.Ash、E.Hyde(Eds)、
(Ellis Horwood Limited、1975)p.241−258に
記載された方法、M.A.Lobeck、Angew.Chem.
Intern.Ed.Engl.、9、578(1970)に記載された方
法、およびH.J.Ziegler、J.Chem.Inf.Comput.
Sci.、19、141(1979)に記載された方法などがあ
る。この方法では化学反応表現の観点が固定され
ているために、新しい化学反応が見い出された場
合に記録できないとの欠点がある。また、化学物
質の構造情報とその変化の情報とが別個の形態で
記録されているので有効な情報検索を行なうこと
ができないとの欠点がある。 別に、化学物質の合成経路を設計する立場から
案出された記録方法も知られている。たとえば、
E.J.Corey、R.D.Cramer、W.J.Howe、J.Am.
Chem.Soc.、94、440(1972)、I.Ugi、J.Bauer.J.
Braodt、J.Friedrich、J.Gasteiger、L.Jochum、
W.Schubert、Angew.Chem.Intern.Ed.Engl.、
18、111(1979)に記載された方法がある。しかし
ながら、この方法は個々の化学反応を記録するの
には適していない。 [発明の要旨] 本発明は、化学物質の構造変化に関する情報を
コンピユータを利用して記録し、検索するための
新規な処理方法を提案することをその目的とする
ものである。 さらに本発明は、出発物質、生成物質およびこれ
らの間の構造変化に関する情報を統合した化学情
報を、コンピユータ処理が可能な表現形態で記録
保存するための処理方法を提供することその目的
とするものである。 本発明は、少なくとも一つの出発物質から少な
くとも一つの生成物質を生じる化学反応の出発物
質および生成物質それぞれの構造に関する情報を
得る工程; 上記の各物質の構造情報をコンピユータ処理に
よりトポロジカルに重ね合せて、(1)出発物質およ
び生成物質に共通して存在するノード間の結合、
(2)出発物質のみに存在するノード間の結合、およ
び(3)生成物質のみに存在するノード間の結合をそ
れぞれ区別した表わす工程; 区別して表わされた結合を用いて化学反応にお
ける物質の構造変化を表現する構造図を作成する
か、あるいは各ノード、該ノードに結合する結合
相手のノードおよび該ノード間の結合に関する情
報を含む結合表を作成する工程; 上記構造図あるいは結合表をコンピユータに付
設された記録媒体に記録保存する工程; そして 記録保存された構造図あるいは結合表をコンピ
ユータ処理することにより、前記化学反応、出発
物質、および生成物質の内の少なくとも一種を検
索する工程; を含む化学反応情報の記録・検索方法にある。 上記の化合反応情報の記録・検索方法の実施に
際しては、出発物質および生成物質それぞれの構
造に関する情報を、出発物質および生成物質にお
ける各ノードの種類、該ノードの二次元もしくは
三次元の座標および該ノード間の結合多重度を含
む情報として得ることが有利である。 また、上記化学反応情報の記録・検索方法の実
施に際しては、結合表のノード間の結合を一対の
数字(a,b)[ただし、aは出発物質における
結合多重度を表わす整数であり、bは化学反応に
おける結合多重度の変化を表わす整数である]に
よつて区別して表わす方法を利用することも有利
である。 本発明の方法によれば、化学反応に関与する出
発物質および生成物質それぞれについての入力情
報に基づいて、コンピユータによる演算処理によ
り化学反応情報を二次元もしくは三次元の構造図
および/または結合表として自動的に得ることが
できる。 本発明において構造図とは、化学反応に関与す
る物質の構造変化を、(1)出発物質のみに存在する
結合、(2)生成物質のみに存在する結合および(3)両
者に共通に存在する結合からなる三種類に区別し
て表わした図形(これを『虚遷移構造』と呼ぶ)
をいう。この構造図により、化合物についての従
来の構造式および三次元的構造図に準じて技術者
が視覚的になじみやすく、また容易に理解できる
形態で化学反応を表わすことができる。また結合
表は、ノードの種類、該ノードに結合する相手ノ
ードおよび上記三種類に区別して表わしたこれら
ノード間の結合などの組合せからなる簡単かつ明
瞭な一覧表であり、この結合表によれば、たいし
て大きな容量を必要とせずに化学反応情報をコン
ピユータに付設された記録媒体に蓄積保存するこ
とができる。 本発明においては、出発物質および生成物質な
どの化学物質に関する情報のみに基づいて、これ
ら物質が関与する化学反応についてコンピユータ
による演算処理により体系的な情報を導き出すこ
とができる。そして、得られた構造図もしくは結
合表は化学反応を簡潔に表わすものであり、膨大
な量にのぼる化学反応情報を記録保存(登録)す
るのに最適な形態であるといえる。 すなわち、これら構造図および結合表におい
て、化学反応は基本的に原子、原子団等からなる
ノード(節、node)とノードとの間の結合につ
いての簡易な表現で表わされ、かつ反応系におけ
るノード間の結合は上記三種類に区別して表わさ
れる。換言すれば、各ノードを結ぶ結合は出発物
質および生成物質に関連して表わされるから、構
造図および結合表は化学反応それ自体の他に反応
に関与する物質についての情報をも総合的に含蓄
している。従つて、これらの登録形態は従来の
種々の登録形態と比較して、化学物質情報および
化学反応情報の両方を同時に記録保存することが
できる点で非常に優れたものであり、登録された
構造図および/または結合表を利用して化学物質
および化学反応を原子単位で検索、照合すること
ができる。 また、本発明によつて得られる登録形態を利用
することにより、後のコンピユータによる情報の
処理が容易となり、かつそれほど大きな記憶容量
をとることもない。そして、記録媒体への化学反
応の登録を簡便に行なうことができるため、これ
らの情報の蓄積、管理が容易となる。また、コン
ピユータに接続されている記録媒体に登録(保
存)された化学反応情報等に基づいて、化学反応
および反応に関与する化学物質等に関する情報検
索を短時間のうちに効率良く行なうことができる
ため、技術者の個々の研究において情報の収集、
調査等に要する時間を短縮化し、かつ得られる情
報の密度を高めることが可能であり、研究を効率
的に進めることができる。さらには、薬品製造等
にたずさわる技術者にとつて要望が大である化学
物質の構造解析、分子設計(molecular
modeling)、有機合成経路設計(heuristic
analysis of organic synthesis)などの応用分野
に有効に利用することが可能である。 さらに、本発明においては、結合表が各ノード
の空間座標についての情報をも包含する場合に
は、上記構造図と結合表との間で相互に任意に変
換することが可能であり、いずれの形態でも化学
反応を表示記録することができる。 上述の利点に加えて、たとえば各ノード間の結
合を一対の数字(a,b)[ただし、aは出発物
質における結合多重度を表わす整数であり、bは
化学反応における結合多重度の変化を表わす整数
である]で表わす場合には、個々の反応のみなら
ず複数の連続する反応(多段階反応)をも一つの
結合表にまとめて表わすことが可能であり、任意
の中間反応および一連の合成反応を簡単に表示す
ることができる。従つて、本発明の方法によつて
コンピユータによる演算処理により得られる構造
図および/または結合表を利用することにより、
化学物質および化学反応の部分構造検索、構造−
活性相関、未知化合物の構造自動決定、および複
雑な化合物をある条件下で反応させた場合の反応
機構および反応生成物の予測(mechanistic
evaluation of organic reaction)などを短時間
のうちに十分実用可能な範囲内で行なうことが可
能である。 [発明の具体的説明] 本発明の化学反応情報の記録・検索方法におい
ては、出発物質の構造および生成物質の構造それ
ぞれに関する入力された情報に基づいて、まずこ
れらの構造をコンピユータ上でトポロジカルに重
ね合わせ、次いでノード間の結合を出発物質のみ
に存在する結合、生成物質のみに存在する結合お
よび両者に共通に存在する結合からなる三種類は
区別し、そして化学反応における化学物質の構造
変化を構造図(虚遷移構造)および/または結合
表の形態で表わす操作が行なわれる。 本発明の方法を、具体的に酢酸エチルを塩酸に
よつて加水分解する反応を例に挙げて説明する。 化学反応例 1 酢酸エチルを塩酸によつて加水分解する反応 この化学反応は、 CH3COOCH2CH3+H2O+HCl →CH3COOH+CH3CH2OH+HCl (反応式1) で表わされる。反応に関与する全ての出発物質
(原系)および全ての生成物質(生成系)を通常
の構造式で表わし、ノードを以下のようにとつて
順に番号を付ける。ただし、ノード番号は原系と
生成系で相互に対応するように付けられている 原 系 生成系 本発明の情報処理を行なうに際して、出発物質
および生成物質の構造に関する物質情報を上記の
ような構造式(二次元構造)の形、あるいは三次
元構造の形など技術者が理解判断しやすい図形的
形態でコンピユータに入力することができる。ま
たあるいは、たとえば、「ノード(1)とノード(2)と
の間に多重度1の結合がある」など、各物質のノ
ードおよびノード間の結合に関する情報を個別に
文字情報として対話形式で入力してもよい。文
字、数字等の形態で入力する際に、各ノードの二
次元もしくは三次元の座標など位置情報を含ませ
ることもできる。 これらの入力情報に基づいて、原系(出発物質
群)と生成系(生成物質群)とをコンピユータに
おける演算処理を利用してトポロジカルに、すな
わち位相を同じくして重ね合わせる。ここで、
『トポロジカルに重ね合わせる』とは具体的に、
出発物質の構造に現れるノードと生成物質の構造
に現れるノードとを一致させてこれらの構造を一
つに組み合わせることをいう。この結果、 で表わされる構造が得られる。 次に、構造1′を各ノード間の結合について、 (i) 出発物質および生成物質に共通して存在する
結合を記号−で表わし、 (ii) 出発物質にのみ存在する結合を記号+で表わ
し、そして (iii) 生成物質にのみ存在する結合を記号…で表わ
すと、 で表わされる構造が得られる。 得られた構造1が化学反応に関与する物質の構
造変化を表現する二次元の構造図であり、本発明
においては虚遷移構造(imaginary transition
structures、以下においてITSと略称する)と呼
ぶ。すなわち、虚遷移構造(ITS)とは、出発物
質の構造と生成物質の構造とをトポロジカルに重
ね合わせて、各ノード間の結合を上記(i)〜(iii)の三
種類で区別した二次元もしくは三次元の構造をい
う。 上記のような二次元の虚遷移構造のみならず、
化学物質の三次元的構造情報に基づいて三次元の
虚遷移構造を作成することも勿論可能である。従
つて、虚遷移構造を作成する場合には、コンピユ
ータへの入力情報として各ノードの相対的な空間
配置に関する情報(二次元もしくは三次元座標)
が含まれている必要がある。 本発明に係る虚遷移構造(ITS)において、化
学反応に関与する物質のノードとして、原系およ
び生成系に含まれる全ての原子をとつてもよい
し、あるいはメチル基[上記ノード(1)、(5)]、メ
チレン基[上記ノード(4)]のような官能基などの
原子団をとつてもよい。また、化学反応を表現す
るに際して、原系および生成系に現れるノードを
一部省略して表わすことも可能であり、これも本
発明に含まれる。 また、三種類の結合の区別は上記(i)〜(iii)のよう
な記号による表示に限定されるものではなく、た
とえば数字(1、2、3)等の簡単な文字による
表示、あるいは色彩(黒色、赤色、緑色)による
色分け表示など利用者が五感により判断でき、か
つコンピユータ処理が可能であればよいかなる手
段を用いて行なつてもよい。 以下本発明において、 (i) 出発物質および生成物質に共通の結合(記号
−)を『無色の結合』と呼び、 (ii) 出発物質にのみ存在する結合(記号+)を
『出結合』と呼び、 (iii) 生成物質にのみ存在する記号(記号…)を
『入結合』と呼び、 そして、出結合と入結合とを総称して『有色の
結合』と呼ぶことにする。 具体的に、本発明における虚遷移構造に現れる
結合の種類を第1表にまとめて示す。なお、第1
表において横の数値は結合の出入の指標を意味す
る。 【表】 第1表において、たとえば記号『…』で表わさ
れた結合は単入結合(single in−bond)であつ
て、一対の数字(0+1)で表わすことができ
る。ここで、0は反応前の原系において結合が存
在しないことを意味し、+1は反応後の生成系に
おいて単結合が生じていることを意味する。同様
にして、『+』で表わされた結合は単出結合
(single out−bond)であつて(1−1)で表わ
し、反応前の原系において単結合が存在するが反
応後の生成系において単結合が消滅していること
を意味する。また、(2−1)で表わされる結合
は単出の二重結合(double bond singly
cleaved)であり、『±』で表記される。 このように結合の種類はまた、一対の数字:
(a,b)[ただし、aは出発物質における結合多
重度を表わす整数であり、bは化学反応における
結合多重度の変化を表わす整数である] で表わすことができ、この場合には結合多重度が
二以上であつても簡潔に表記することができる。
なお(a,b)の表記のうちコンマ(,)は省略
してもよい。また、この表記によれば、記憶容量
をそれほど必要としなく、かつ直接にコンピユー
タ処理が可能である点で化学反応の記録保存に特
に好ましいものであり、後述する結合表の作成に
際して好適に用いられる表現方法である。 個々の化学反応は、得られた二次元もしくは三
次元の虚遷移構造(図形)の形態でコンピユータ
に付設された記録媒体に記録保存(登録)するこ
とができる。この登録形態は、化学反応情報を利
用しようとする者が視覚的に直ちに理解し判断で
きる構造式または三次元の構造図の形をとつてい
る点で非常に優れている。 たとえば、この登録された虚遷移構造から、入
結合のみを削除する(無結合とする)ことにより
出発物質の構造が得られ、また出結合のみを削除
すれば生成物質の構造が得られる。すなわち、本
発明に係る虚遷移構造は化学反応情報のみならず
化学物質情報をも含んでおり、この登録形態を利
用して反応検索だけではなく化学物の構造検索を
も実施することが可能である。 また、上記ITS1において無色結合のみを削除
すれば出結合と入結合とが交互に連結した構造
[(2)−(3)+(10)−(11)+(8)−(7)+(2)]を得ること
がで
き、これを反応緒(reaction string)と呼ぶ。
なお、ここで−および+はそれぞれ出結合および
入結合を意味している。反応緒は個々の反応型に
特有な形として取り出すことができ、この場合に
はエステルの加水分解反応に固有の表現となつて
いる。すなわち、登録された虚遷移構造を利用し
て個々の反応型に固有の構造表現である反応緒の
みを抽出することが可能であり、反応検索を一層
容易にすることができる。このほかに、反応に関
与する環構造(開環もしくは閉環の環)のみを抽
出することなども可能である。 あるいは、出発物質および生成物質に関する上
記の入力情報に基づいて、各ノード、該ノードに
結合する結合相手のノードおよび該ノード間の結
合に関する情報を含む結合表(connectiontable)
を作成し、化学反応情報を結合表として表わすこ
ともできる。 まず、原系と生成系とをトポロジカルに重ね合
わせたのち、各ノード間の結合を無色または有色
の結合および出または入結合の区別をつけて表現
し、虚遷移構造(構造1)を作成する。得られた
虚遷移構造から、各ノードの種類、各ノードに結
合する相手ノードの種類およびこれらノード間の
結合の種類、更には所望により各ノードの位置座
標についての情報を数字、文字等の形で表現し、
これをノード番号順に記載してなる一覧表を作成
する。 上記エステルの加水分解反応について得られた
結合表を第2表に示す。なお、結合表は各ノード
の二次元座標(xy座標)に関する情報をも包含
している。 【表】 【表】 第2表に示すように、結合表は加水分解反応に
関与する原系(酢酸エチル、水、塩酸)および生
成系(酢酸、エタノール、塩酸)について、全て
のノード、その二次元座標(ノード(1)を原点にと
つてある)、各ノードに結合する全てのノードお
よびこれらノード間の結合の種類がノード番号順
に記載された一覧表である。 結合表はまた、虚遷移構造を作成することなく
直接に上記コンピユータへの入力情報から作成す
ることもできる。この場合において『トポロジカ
ル重ね合わせる』とは、出発物質の構造と生成物
質の構造とをノードを一致させて図形的に重ね合
わせることのみならず、両者の構造について対応
するノード間の結合を比較照合することをも意味
する。 個々の化学反応は、次いで結合表の形態でコン
ピユータに付設された記録媒体に登録することが
できる。この登録形態は、多大な記録容量を要せ
ず、直接にコンピユータ処理ができる形態とされ
ている点で優れている。なお、結合表と虚遷移構
造とを組み合わせて登録することも勿論可能であ
り、本発明において好ましいものである。 結合表には、上記のように各ノードの位置座標
等に関する入力情報が併記されていてもよい。更
に、虚遷移構造および/または結合表には所望に
より、各ノードの電荷および立体化学等に関する
情報;反応に関与する化学物質の各種の物性値、
スペクトル情報;および反応のエンタルピー、温
度、時間、使用する触媒、雰囲気、反応相、反応
の収率、副生成物の有無等に関する情報を記載し
てもよい。コンピユータに登録された虚遷移構造
または結合表がこれらの付加情報を含蓄している
場合には、虚遷移構造または結合表をデータベー
スとして化学物質の構造検索システム、化学反応
の検索システム、または有機合成設計システムな
どに広く利用することが可能である。 上記の虚遷移構造および/または結合表をコン
ピユータに付設された記録する媒体に登録に際し
て、化学反応情報の蓄積、管理および検索を容易
にするために、虚遷移構造および/または結合表
ごとに反応番号を付してもよいし、また、虚遷移
構造および/または結合表ごとに反応名を一緒に
登録してもよい。 登録された結合表に基づいて、出発物質、生成
物質および反応式などを表示することが可能であ
り、また虚遷移構造の場合と同様に反応緒および
反応に関与する環を抽出することも可能である。
さらに、たとえば数字(a,b)の組合せで表わ
された結合について適当な演算処理を施すことに
より、多段階に渡る反応を統合して一の結合表と
して表示することが可能である。すなわち、個々
の反応のみならず、有機化合物の合成におけるよ
うな複雑な反応全体を簡易に表示したり、あるい
はそのうちの一部の反応のみを抽出して表示する
ことが可能である。 従つて、物質の特定の性質に注目した分子設
計、有機化合物の合成経路の決定、未知化合物の
構造自動決定など化学におけるコンピユータ利用
分野において広範囲に渡つて、この登録された結
合表を最適の登録形態として利用することができ
る。 また逆に、登録された結合表に基づいて虚遷移
構造を作成することも可能であり、上記の種々の
検索システムにおいて化学反応について結合表と
虚遷移構造とを相互に任意に変換することができ
る。このことにより、各種の検索を一層容易にす
ることが可能であり、検索システムの汎用性およ
び利用度を高めることが可能である。 虚遷移構造および/または結合表のコンピユー
タへの登録は、コンピユータ内の主記憶装置に記
録保存することにより行なつてもよいし、あるい
はコンピユータに結線により接続された記録媒体
(磁気デイスク、光デイスク、磁気テープなど)
を介して記録保存してもよい。 登録された虚遷移構造および/または結合表
は、適当な記録装置によりプレインペーパーなど
各種の記録材料上に記録したり、あるいはコンピ
ユータや電子機器に接続したカラーブラウン管な
どに表示することができる。 以下に、本発明の化学反応情報の記録・検索方
法を別の化学反応の例を用いて更な説明する。 化学反応例 2 アセトンにn−ブチルリチウムを付加する反応 この化学反応は、 で表わされる。 出発物質および生成物質それぞれの構造式に基
づいて、反応の虚遷移構造を作成した。 また、この虚遷移構造に対応する結合表を作成
した。得られた結合表を第3表に示す。なお、結
合表は各ノードの二次元座標(xy座標)に関す
る情報をも包含している。 【表】 化学反応例 3 フリーデル・クラフツ反応によるアシル化反応 この化学反応は、 で表わされる。 出発物質および生成物質それぞれの構造式に基
づいて、反応の虚遷移構造を作成した。 また、この虚遷移構造に対応する結合表を作成
した。得られた結合表を第4表に示す。なお、結
合表は各ノードの二次元座標(xy座標)に関す
る情報をも包含している。 【表】 化学反応例 4 ベツクマン転位 この化学反応は、 で表わされる。 出発物質および生成物質それぞれの構造式に基
づいて、反応の虚遷移構造を作成した。 また、この虚遷移構造に対応する結合表を作成
した。得られた結合表を第5表に示す。なお、結
合表は各ノードの二次元座標(xy座標)に関す
る情報をも包含している。 【表】 化学反応例 5 シクロヘプタノンのメチル化反応 この化学反応はA〜Cの一連の反応: で表わされる。 (1) A段階の反応について、出発物質および生成
物質それぞれの構造式に基づいて反応の虚遷移
構造を作成した。 また、この虚遷移構造に対応する結合表を作
成した。得られた結合表を第6表に示す。な
お、結合表は各ノードの二次元座標(xy座標)
に関する情報も含んでいる。 【表】 (2) B段階の反応について、出発物質および生成
物質それぞれの構造式に基づいて反応の虚遷移
構造を作成した。 また、この虚遷移構造に対応する結合表を作
成した。得られた結合表を第7表に示す。な
お、結合表は各ノードの二次元座標(xy座標)
に関する情報をも含んでいる。 【表】 【表】 (3) C段階の反応について、出発物質および生成
物質それぞれの構造式に基づいて反応の虚遷移
構造を作成した。 また、この虚遷移構造に対応する結合表を作
成した。得られた結合表を第8表に示す。な
お、結合表は各ノードの二次元座標(xy座標)
に関する情報をも含んでいる。 【表】 【表】 (4) AおよびB段階の反応、すなわち からなる反応をまとめて、その出発物質および
生成物質それぞれの構造式に基づいて反応の虚
遷移構造を作成した。 また、この虚遷移構造に対応する結合表を作
成した。得られた結合表を第9表に示す。な
お、結合表は各ノードの二次元座標(xy座標)
に関する情報をも含んでいる。 【表】 (5) A、BおよびC段階の反応、すなわち からなる反応をまとめて、その出発物質およ
び生成物質それぞれの構造式に基づいて反応の
虚遷移構造を作成した。 また、この虚遷移構造に対応する結合表を作
成した。得られた結合表を第10表に示す。な
お、結合表は各ノードの二次元座標(xy座標)
に関する情報をも含んでいる。 【表】
報の記録・検索方法に関するものであり、さらに
詳しくは、化学反応に関与する物質の構造変化に
関する情報をコンピユータを用いて、検索、およ
び類似化合物や類似反応への考察、類似の化学構
造を有する新規化合物の合成方法の研究が容易と
なるように記録し、検索する方法に関するもので
ある。 [発明の技術的背景] 近年において、コンピユータの発達に伴ない、
化学物質、特に有機化合物の構造情報の記録方法
について各種の方法が提案され、利用されつつあ
る。今日までに研究され、解明された有機化合物
および有機化学反応は膨大な量にのぼるが、これ
らの既知の情報を有効に利用して公知の化学物質
または化学反応を短時間のうちに検索したり、さ
らには所望の特性を有する新規物質の合成方法を
見い出すことが望まれている。そのためには、化
学物質および化学反応の表現形態として、技術者
にとつてその構造的特徴を把握することが容易な
従来の化学構造式の代りに、コンピユータが処理
できる(すなわち、コンピユータが論理判断しう
る)表現形態を開発し、利用することが要求され
ている。 化学物質の記録方法としては、WLN
(Wiswesser Linear Notation)などの線型表記
法および結合表による方法が代表的なものであ
り、その詳細はたとえば、W.T.Wipke,S.R.
Heller,R.J.Feldmann、E.Hyde(Eds):
“Computer Representation and Manipulation
of Chemical Information”(John Wiley and
Sons、New York、1974)に記載されている。
結合表(connection table)は、たとえば化学物
質の構造式における各原子の種類、それに結合す
る相手の原子および結合の種類などを一覧表にま
とめたものであり、上記の線型表記法に比べて化
学物質を原子単位で検索することができるとの利
点がある。 また、化学物質の構造変化(化学反応)に関す
る情報を記録する方法についても提案されている
が、今までのところ満足できる表現方法は知られ
ていない。たとえば、化学反応に関する情報を記
録する方法として反応コードによる方法があり、
具体的にはJ.Valls、O.Scheiner:“Chemical
Information Systems”、E.Ash、E.Hyde(Eds)、
(Ellis Horwood Limited、1975)p.241−258に
記載された方法、M.A.Lobeck、Angew.Chem.
Intern.Ed.Engl.、9、578(1970)に記載された方
法、およびH.J.Ziegler、J.Chem.Inf.Comput.
Sci.、19、141(1979)に記載された方法などがあ
る。この方法では化学反応表現の観点が固定され
ているために、新しい化学反応が見い出された場
合に記録できないとの欠点がある。また、化学物
質の構造情報とその変化の情報とが別個の形態で
記録されているので有効な情報検索を行なうこと
ができないとの欠点がある。 別に、化学物質の合成経路を設計する立場から
案出された記録方法も知られている。たとえば、
E.J.Corey、R.D.Cramer、W.J.Howe、J.Am.
Chem.Soc.、94、440(1972)、I.Ugi、J.Bauer.J.
Braodt、J.Friedrich、J.Gasteiger、L.Jochum、
W.Schubert、Angew.Chem.Intern.Ed.Engl.、
18、111(1979)に記載された方法がある。しかし
ながら、この方法は個々の化学反応を記録するの
には適していない。 [発明の要旨] 本発明は、化学物質の構造変化に関する情報を
コンピユータを利用して記録し、検索するための
新規な処理方法を提案することをその目的とする
ものである。 さらに本発明は、出発物質、生成物質およびこれ
らの間の構造変化に関する情報を統合した化学情
報を、コンピユータ処理が可能な表現形態で記録
保存するための処理方法を提供することその目的
とするものである。 本発明は、少なくとも一つの出発物質から少な
くとも一つの生成物質を生じる化学反応の出発物
質および生成物質それぞれの構造に関する情報を
得る工程; 上記の各物質の構造情報をコンピユータ処理に
よりトポロジカルに重ね合せて、(1)出発物質およ
び生成物質に共通して存在するノード間の結合、
(2)出発物質のみに存在するノード間の結合、およ
び(3)生成物質のみに存在するノード間の結合をそ
れぞれ区別した表わす工程; 区別して表わされた結合を用いて化学反応にお
ける物質の構造変化を表現する構造図を作成する
か、あるいは各ノード、該ノードに結合する結合
相手のノードおよび該ノード間の結合に関する情
報を含む結合表を作成する工程; 上記構造図あるいは結合表をコンピユータに付
設された記録媒体に記録保存する工程; そして 記録保存された構造図あるいは結合表をコンピ
ユータ処理することにより、前記化学反応、出発
物質、および生成物質の内の少なくとも一種を検
索する工程; を含む化学反応情報の記録・検索方法にある。 上記の化合反応情報の記録・検索方法の実施に
際しては、出発物質および生成物質それぞれの構
造に関する情報を、出発物質および生成物質にお
ける各ノードの種類、該ノードの二次元もしくは
三次元の座標および該ノード間の結合多重度を含
む情報として得ることが有利である。 また、上記化学反応情報の記録・検索方法の実
施に際しては、結合表のノード間の結合を一対の
数字(a,b)[ただし、aは出発物質における
結合多重度を表わす整数であり、bは化学反応に
おける結合多重度の変化を表わす整数である]に
よつて区別して表わす方法を利用することも有利
である。 本発明の方法によれば、化学反応に関与する出
発物質および生成物質それぞれについての入力情
報に基づいて、コンピユータによる演算処理によ
り化学反応情報を二次元もしくは三次元の構造図
および/または結合表として自動的に得ることが
できる。 本発明において構造図とは、化学反応に関与す
る物質の構造変化を、(1)出発物質のみに存在する
結合、(2)生成物質のみに存在する結合および(3)両
者に共通に存在する結合からなる三種類に区別し
て表わした図形(これを『虚遷移構造』と呼ぶ)
をいう。この構造図により、化合物についての従
来の構造式および三次元的構造図に準じて技術者
が視覚的になじみやすく、また容易に理解できる
形態で化学反応を表わすことができる。また結合
表は、ノードの種類、該ノードに結合する相手ノ
ードおよび上記三種類に区別して表わしたこれら
ノード間の結合などの組合せからなる簡単かつ明
瞭な一覧表であり、この結合表によれば、たいし
て大きな容量を必要とせずに化学反応情報をコン
ピユータに付設された記録媒体に蓄積保存するこ
とができる。 本発明においては、出発物質および生成物質な
どの化学物質に関する情報のみに基づいて、これ
ら物質が関与する化学反応についてコンピユータ
による演算処理により体系的な情報を導き出すこ
とができる。そして、得られた構造図もしくは結
合表は化学反応を簡潔に表わすものであり、膨大
な量にのぼる化学反応情報を記録保存(登録)す
るのに最適な形態であるといえる。 すなわち、これら構造図および結合表におい
て、化学反応は基本的に原子、原子団等からなる
ノード(節、node)とノードとの間の結合につ
いての簡易な表現で表わされ、かつ反応系におけ
るノード間の結合は上記三種類に区別して表わさ
れる。換言すれば、各ノードを結ぶ結合は出発物
質および生成物質に関連して表わされるから、構
造図および結合表は化学反応それ自体の他に反応
に関与する物質についての情報をも総合的に含蓄
している。従つて、これらの登録形態は従来の
種々の登録形態と比較して、化学物質情報および
化学反応情報の両方を同時に記録保存することが
できる点で非常に優れたものであり、登録された
構造図および/または結合表を利用して化学物質
および化学反応を原子単位で検索、照合すること
ができる。 また、本発明によつて得られる登録形態を利用
することにより、後のコンピユータによる情報の
処理が容易となり、かつそれほど大きな記憶容量
をとることもない。そして、記録媒体への化学反
応の登録を簡便に行なうことができるため、これ
らの情報の蓄積、管理が容易となる。また、コン
ピユータに接続されている記録媒体に登録(保
存)された化学反応情報等に基づいて、化学反応
および反応に関与する化学物質等に関する情報検
索を短時間のうちに効率良く行なうことができる
ため、技術者の個々の研究において情報の収集、
調査等に要する時間を短縮化し、かつ得られる情
報の密度を高めることが可能であり、研究を効率
的に進めることができる。さらには、薬品製造等
にたずさわる技術者にとつて要望が大である化学
物質の構造解析、分子設計(molecular
modeling)、有機合成経路設計(heuristic
analysis of organic synthesis)などの応用分野
に有効に利用することが可能である。 さらに、本発明においては、結合表が各ノード
の空間座標についての情報をも包含する場合に
は、上記構造図と結合表との間で相互に任意に変
換することが可能であり、いずれの形態でも化学
反応を表示記録することができる。 上述の利点に加えて、たとえば各ノード間の結
合を一対の数字(a,b)[ただし、aは出発物
質における結合多重度を表わす整数であり、bは
化学反応における結合多重度の変化を表わす整数
である]で表わす場合には、個々の反応のみなら
ず複数の連続する反応(多段階反応)をも一つの
結合表にまとめて表わすことが可能であり、任意
の中間反応および一連の合成反応を簡単に表示す
ることができる。従つて、本発明の方法によつて
コンピユータによる演算処理により得られる構造
図および/または結合表を利用することにより、
化学物質および化学反応の部分構造検索、構造−
活性相関、未知化合物の構造自動決定、および複
雑な化合物をある条件下で反応させた場合の反応
機構および反応生成物の予測(mechanistic
evaluation of organic reaction)などを短時間
のうちに十分実用可能な範囲内で行なうことが可
能である。 [発明の具体的説明] 本発明の化学反応情報の記録・検索方法におい
ては、出発物質の構造および生成物質の構造それ
ぞれに関する入力された情報に基づいて、まずこ
れらの構造をコンピユータ上でトポロジカルに重
ね合わせ、次いでノード間の結合を出発物質のみ
に存在する結合、生成物質のみに存在する結合お
よび両者に共通に存在する結合からなる三種類は
区別し、そして化学反応における化学物質の構造
変化を構造図(虚遷移構造)および/または結合
表の形態で表わす操作が行なわれる。 本発明の方法を、具体的に酢酸エチルを塩酸に
よつて加水分解する反応を例に挙げて説明する。 化学反応例 1 酢酸エチルを塩酸によつて加水分解する反応 この化学反応は、 CH3COOCH2CH3+H2O+HCl →CH3COOH+CH3CH2OH+HCl (反応式1) で表わされる。反応に関与する全ての出発物質
(原系)および全ての生成物質(生成系)を通常
の構造式で表わし、ノードを以下のようにとつて
順に番号を付ける。ただし、ノード番号は原系と
生成系で相互に対応するように付けられている 原 系 生成系 本発明の情報処理を行なうに際して、出発物質
および生成物質の構造に関する物質情報を上記の
ような構造式(二次元構造)の形、あるいは三次
元構造の形など技術者が理解判断しやすい図形的
形態でコンピユータに入力することができる。ま
たあるいは、たとえば、「ノード(1)とノード(2)と
の間に多重度1の結合がある」など、各物質のノ
ードおよびノード間の結合に関する情報を個別に
文字情報として対話形式で入力してもよい。文
字、数字等の形態で入力する際に、各ノードの二
次元もしくは三次元の座標など位置情報を含ませ
ることもできる。 これらの入力情報に基づいて、原系(出発物質
群)と生成系(生成物質群)とをコンピユータに
おける演算処理を利用してトポロジカルに、すな
わち位相を同じくして重ね合わせる。ここで、
『トポロジカルに重ね合わせる』とは具体的に、
出発物質の構造に現れるノードと生成物質の構造
に現れるノードとを一致させてこれらの構造を一
つに組み合わせることをいう。この結果、 で表わされる構造が得られる。 次に、構造1′を各ノード間の結合について、 (i) 出発物質および生成物質に共通して存在する
結合を記号−で表わし、 (ii) 出発物質にのみ存在する結合を記号+で表わ
し、そして (iii) 生成物質にのみ存在する結合を記号…で表わ
すと、 で表わされる構造が得られる。 得られた構造1が化学反応に関与する物質の構
造変化を表現する二次元の構造図であり、本発明
においては虚遷移構造(imaginary transition
structures、以下においてITSと略称する)と呼
ぶ。すなわち、虚遷移構造(ITS)とは、出発物
質の構造と生成物質の構造とをトポロジカルに重
ね合わせて、各ノード間の結合を上記(i)〜(iii)の三
種類で区別した二次元もしくは三次元の構造をい
う。 上記のような二次元の虚遷移構造のみならず、
化学物質の三次元的構造情報に基づいて三次元の
虚遷移構造を作成することも勿論可能である。従
つて、虚遷移構造を作成する場合には、コンピユ
ータへの入力情報として各ノードの相対的な空間
配置に関する情報(二次元もしくは三次元座標)
が含まれている必要がある。 本発明に係る虚遷移構造(ITS)において、化
学反応に関与する物質のノードとして、原系およ
び生成系に含まれる全ての原子をとつてもよい
し、あるいはメチル基[上記ノード(1)、(5)]、メ
チレン基[上記ノード(4)]のような官能基などの
原子団をとつてもよい。また、化学反応を表現す
るに際して、原系および生成系に現れるノードを
一部省略して表わすことも可能であり、これも本
発明に含まれる。 また、三種類の結合の区別は上記(i)〜(iii)のよう
な記号による表示に限定されるものではなく、た
とえば数字(1、2、3)等の簡単な文字による
表示、あるいは色彩(黒色、赤色、緑色)による
色分け表示など利用者が五感により判断でき、か
つコンピユータ処理が可能であればよいかなる手
段を用いて行なつてもよい。 以下本発明において、 (i) 出発物質および生成物質に共通の結合(記号
−)を『無色の結合』と呼び、 (ii) 出発物質にのみ存在する結合(記号+)を
『出結合』と呼び、 (iii) 生成物質にのみ存在する記号(記号…)を
『入結合』と呼び、 そして、出結合と入結合とを総称して『有色の
結合』と呼ぶことにする。 具体的に、本発明における虚遷移構造に現れる
結合の種類を第1表にまとめて示す。なお、第1
表において横の数値は結合の出入の指標を意味す
る。 【表】 第1表において、たとえば記号『…』で表わさ
れた結合は単入結合(single in−bond)であつ
て、一対の数字(0+1)で表わすことができ
る。ここで、0は反応前の原系において結合が存
在しないことを意味し、+1は反応後の生成系に
おいて単結合が生じていることを意味する。同様
にして、『+』で表わされた結合は単出結合
(single out−bond)であつて(1−1)で表わ
し、反応前の原系において単結合が存在するが反
応後の生成系において単結合が消滅していること
を意味する。また、(2−1)で表わされる結合
は単出の二重結合(double bond singly
cleaved)であり、『±』で表記される。 このように結合の種類はまた、一対の数字:
(a,b)[ただし、aは出発物質における結合多
重度を表わす整数であり、bは化学反応における
結合多重度の変化を表わす整数である] で表わすことができ、この場合には結合多重度が
二以上であつても簡潔に表記することができる。
なお(a,b)の表記のうちコンマ(,)は省略
してもよい。また、この表記によれば、記憶容量
をそれほど必要としなく、かつ直接にコンピユー
タ処理が可能である点で化学反応の記録保存に特
に好ましいものであり、後述する結合表の作成に
際して好適に用いられる表現方法である。 個々の化学反応は、得られた二次元もしくは三
次元の虚遷移構造(図形)の形態でコンピユータ
に付設された記録媒体に記録保存(登録)するこ
とができる。この登録形態は、化学反応情報を利
用しようとする者が視覚的に直ちに理解し判断で
きる構造式または三次元の構造図の形をとつてい
る点で非常に優れている。 たとえば、この登録された虚遷移構造から、入
結合のみを削除する(無結合とする)ことにより
出発物質の構造が得られ、また出結合のみを削除
すれば生成物質の構造が得られる。すなわち、本
発明に係る虚遷移構造は化学反応情報のみならず
化学物質情報をも含んでおり、この登録形態を利
用して反応検索だけではなく化学物の構造検索を
も実施することが可能である。 また、上記ITS1において無色結合のみを削除
すれば出結合と入結合とが交互に連結した構造
[(2)−(3)+(10)−(11)+(8)−(7)+(2)]を得ること
がで
き、これを反応緒(reaction string)と呼ぶ。
なお、ここで−および+はそれぞれ出結合および
入結合を意味している。反応緒は個々の反応型に
特有な形として取り出すことができ、この場合に
はエステルの加水分解反応に固有の表現となつて
いる。すなわち、登録された虚遷移構造を利用し
て個々の反応型に固有の構造表現である反応緒の
みを抽出することが可能であり、反応検索を一層
容易にすることができる。このほかに、反応に関
与する環構造(開環もしくは閉環の環)のみを抽
出することなども可能である。 あるいは、出発物質および生成物質に関する上
記の入力情報に基づいて、各ノード、該ノードに
結合する結合相手のノードおよび該ノード間の結
合に関する情報を含む結合表(connectiontable)
を作成し、化学反応情報を結合表として表わすこ
ともできる。 まず、原系と生成系とをトポロジカルに重ね合
わせたのち、各ノード間の結合を無色または有色
の結合および出または入結合の区別をつけて表現
し、虚遷移構造(構造1)を作成する。得られた
虚遷移構造から、各ノードの種類、各ノードに結
合する相手ノードの種類およびこれらノード間の
結合の種類、更には所望により各ノードの位置座
標についての情報を数字、文字等の形で表現し、
これをノード番号順に記載してなる一覧表を作成
する。 上記エステルの加水分解反応について得られた
結合表を第2表に示す。なお、結合表は各ノード
の二次元座標(xy座標)に関する情報をも包含
している。 【表】 【表】 第2表に示すように、結合表は加水分解反応に
関与する原系(酢酸エチル、水、塩酸)および生
成系(酢酸、エタノール、塩酸)について、全て
のノード、その二次元座標(ノード(1)を原点にと
つてある)、各ノードに結合する全てのノードお
よびこれらノード間の結合の種類がノード番号順
に記載された一覧表である。 結合表はまた、虚遷移構造を作成することなく
直接に上記コンピユータへの入力情報から作成す
ることもできる。この場合において『トポロジカ
ル重ね合わせる』とは、出発物質の構造と生成物
質の構造とをノードを一致させて図形的に重ね合
わせることのみならず、両者の構造について対応
するノード間の結合を比較照合することをも意味
する。 個々の化学反応は、次いで結合表の形態でコン
ピユータに付設された記録媒体に登録することが
できる。この登録形態は、多大な記録容量を要せ
ず、直接にコンピユータ処理ができる形態とされ
ている点で優れている。なお、結合表と虚遷移構
造とを組み合わせて登録することも勿論可能であ
り、本発明において好ましいものである。 結合表には、上記のように各ノードの位置座標
等に関する入力情報が併記されていてもよい。更
に、虚遷移構造および/または結合表には所望に
より、各ノードの電荷および立体化学等に関する
情報;反応に関与する化学物質の各種の物性値、
スペクトル情報;および反応のエンタルピー、温
度、時間、使用する触媒、雰囲気、反応相、反応
の収率、副生成物の有無等に関する情報を記載し
てもよい。コンピユータに登録された虚遷移構造
または結合表がこれらの付加情報を含蓄している
場合には、虚遷移構造または結合表をデータベー
スとして化学物質の構造検索システム、化学反応
の検索システム、または有機合成設計システムな
どに広く利用することが可能である。 上記の虚遷移構造および/または結合表をコン
ピユータに付設された記録する媒体に登録に際し
て、化学反応情報の蓄積、管理および検索を容易
にするために、虚遷移構造および/または結合表
ごとに反応番号を付してもよいし、また、虚遷移
構造および/または結合表ごとに反応名を一緒に
登録してもよい。 登録された結合表に基づいて、出発物質、生成
物質および反応式などを表示することが可能であ
り、また虚遷移構造の場合と同様に反応緒および
反応に関与する環を抽出することも可能である。
さらに、たとえば数字(a,b)の組合せで表わ
された結合について適当な演算処理を施すことに
より、多段階に渡る反応を統合して一の結合表と
して表示することが可能である。すなわち、個々
の反応のみならず、有機化合物の合成におけるよ
うな複雑な反応全体を簡易に表示したり、あるい
はそのうちの一部の反応のみを抽出して表示する
ことが可能である。 従つて、物質の特定の性質に注目した分子設
計、有機化合物の合成経路の決定、未知化合物の
構造自動決定など化学におけるコンピユータ利用
分野において広範囲に渡つて、この登録された結
合表を最適の登録形態として利用することができ
る。 また逆に、登録された結合表に基づいて虚遷移
構造を作成することも可能であり、上記の種々の
検索システムにおいて化学反応について結合表と
虚遷移構造とを相互に任意に変換することができ
る。このことにより、各種の検索を一層容易にす
ることが可能であり、検索システムの汎用性およ
び利用度を高めることが可能である。 虚遷移構造および/または結合表のコンピユー
タへの登録は、コンピユータ内の主記憶装置に記
録保存することにより行なつてもよいし、あるい
はコンピユータに結線により接続された記録媒体
(磁気デイスク、光デイスク、磁気テープなど)
を介して記録保存してもよい。 登録された虚遷移構造および/または結合表
は、適当な記録装置によりプレインペーパーなど
各種の記録材料上に記録したり、あるいはコンピ
ユータや電子機器に接続したカラーブラウン管な
どに表示することができる。 以下に、本発明の化学反応情報の記録・検索方
法を別の化学反応の例を用いて更な説明する。 化学反応例 2 アセトンにn−ブチルリチウムを付加する反応 この化学反応は、 で表わされる。 出発物質および生成物質それぞれの構造式に基
づいて、反応の虚遷移構造を作成した。 また、この虚遷移構造に対応する結合表を作成
した。得られた結合表を第3表に示す。なお、結
合表は各ノードの二次元座標(xy座標)に関す
る情報をも包含している。 【表】 化学反応例 3 フリーデル・クラフツ反応によるアシル化反応 この化学反応は、 で表わされる。 出発物質および生成物質それぞれの構造式に基
づいて、反応の虚遷移構造を作成した。 また、この虚遷移構造に対応する結合表を作成
した。得られた結合表を第4表に示す。なお、結
合表は各ノードの二次元座標(xy座標)に関す
る情報をも包含している。 【表】 化学反応例 4 ベツクマン転位 この化学反応は、 で表わされる。 出発物質および生成物質それぞれの構造式に基
づいて、反応の虚遷移構造を作成した。 また、この虚遷移構造に対応する結合表を作成
した。得られた結合表を第5表に示す。なお、結
合表は各ノードの二次元座標(xy座標)に関す
る情報をも包含している。 【表】 化学反応例 5 シクロヘプタノンのメチル化反応 この化学反応はA〜Cの一連の反応: で表わされる。 (1) A段階の反応について、出発物質および生成
物質それぞれの構造式に基づいて反応の虚遷移
構造を作成した。 また、この虚遷移構造に対応する結合表を作
成した。得られた結合表を第6表に示す。な
お、結合表は各ノードの二次元座標(xy座標)
に関する情報も含んでいる。 【表】 (2) B段階の反応について、出発物質および生成
物質それぞれの構造式に基づいて反応の虚遷移
構造を作成した。 また、この虚遷移構造に対応する結合表を作
成した。得られた結合表を第7表に示す。な
お、結合表は各ノードの二次元座標(xy座標)
に関する情報をも含んでいる。 【表】 【表】 (3) C段階の反応について、出発物質および生成
物質それぞれの構造式に基づいて反応の虚遷移
構造を作成した。 また、この虚遷移構造に対応する結合表を作
成した。得られた結合表を第8表に示す。な
お、結合表は各ノードの二次元座標(xy座標)
に関する情報をも含んでいる。 【表】 【表】 (4) AおよびB段階の反応、すなわち からなる反応をまとめて、その出発物質および
生成物質それぞれの構造式に基づいて反応の虚
遷移構造を作成した。 また、この虚遷移構造に対応する結合表を作
成した。得られた結合表を第9表に示す。な
お、結合表は各ノードの二次元座標(xy座標)
に関する情報をも含んでいる。 【表】 (5) A、BおよびC段階の反応、すなわち からなる反応をまとめて、その出発物質およ
び生成物質それぞれの構造式に基づいて反応の
虚遷移構造を作成した。 また、この虚遷移構造に対応する結合表を作
成した。得られた結合表を第10表に示す。な
お、結合表は各ノードの二次元座標(xy座標)
に関する情報をも含んでいる。 【表】
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 1 少なくとも一つの出発物質から少なくとも一
つの生成物質を生じる化学反応の出発物質および
生成物質それぞれの構造に関する情報を得る工
程; 上記の各物質の構造情報をコンピユータ処理に
よりトポロジカルに重ね合せて、(1)出発物質およ
び生成物質に共通して存在するノード間の結合、
(2)出発物質のみに存在するノード間の結合、およ
び(3)生成物質のみに存在するノード間の結合をそ
れぞれ区別して表わす工程; 区別して表わされた結合を用いて化学反応にお
ける物質の構造変化を表現する構造図を作成する
か、あるいは各ノード、該ノードに結合する結合
相手のノードおよび該ノード間の結合に関する情
報を含む結合表を作成する工程; 上記構造図あるいは結合表をコンピユータに付
設された記録媒体に記録保存する工程; そして 記録保存された構造図あるいは結合表をコンピ
ユータ処理することにより、前記化学反応、出発
物質、および生成物質の内の少なくとも一種を検
索する工程; を含む化学反応情報の記録・検索方法。 2 出発物質および生成物質それぞれの構造に関
する情報を、出発物質および生成物質における各
ノードの種類、該ノードの二次元もしくは三次元
の座標および該ノード間の結合多重度を含む情報
として得る特許請求の範囲第1項記載の化学反応
情報の記録・検索方法。 3 結合表のノード間の結合を一対の数字(a,
b)[ただし、aは出発物質における結合多重度
を表わす整数であり、bは化学反応における結合
多重度の変化を表わす整数である]によつて区別
して表わす特許請求の範囲第1項記載の化学反応
情報の記録・検索方法。
Priority Applications (4)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP60180875A JPS6240527A (ja) | 1985-08-16 | 1985-08-16 | 化学反応情報の記録・検索方法 |
| DE3689965T DE3689965T2 (de) | 1985-08-12 | 1986-08-12 | Verfahren zum Verarbeiten von Informationen bezüglich chemischer Reaktionen. |
| EP86111173A EP0213483B1 (en) | 1985-08-12 | 1986-08-12 | Method for processing information on chemical reactions |
| US07/368,919 US4982338A (en) | 1985-08-12 | 1989-06-16 | Method for processing information on chemical reactions |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP60180875A JPS6240527A (ja) | 1985-08-16 | 1985-08-16 | 化学反応情報の記録・検索方法 |
Publications (2)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JPS6240527A JPS6240527A (ja) | 1987-02-21 |
| JPH0564387B2 true JPH0564387B2 (ja) | 1993-09-14 |
Family
ID=16090866
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP60180875A Granted JPS6240527A (ja) | 1985-08-12 | 1985-08-16 | 化学反応情報の記録・検索方法 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JPS6240527A (ja) |
-
1985
- 1985-08-16 JP JP60180875A patent/JPS6240527A/ja active Granted
Also Published As
| Publication number | Publication date |
|---|---|
| JPS6240527A (ja) | 1987-02-21 |
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Legal Events
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|---|---|---|---|
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