JPH0622459B2 - 低食塩醤油の製造法 - Google Patents

低食塩醤油の製造法

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JPH0622459B2
JPH0622459B2 JP63272617A JP27261788A JPH0622459B2 JP H0622459 B2 JPH0622459 B2 JP H0622459B2 JP 63272617 A JP63272617 A JP 63272617A JP 27261788 A JP27261788 A JP 27261788A JP H0622459 B2 JPH0622459 B2 JP H0622459B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は食品への健康嗜好の高まりの中で、低食塩醤油
への市場での要求に答える為、効率的かつ低価格で低食
塩の醤油を製造する方法に関するものである。
〔従来の技術〕
低食塩醤油の製造法に関しては、いろいろな方法が確立
されているが、その主たるものは通常の生揚醤油を使っ
てその物理化学的操作法によるものであり、例えば、再
仕込醤油等の濃厚醤油の希釈法、イオン交換膜による脱
塩法、イオン排斥樹脂による脱塩法、選択透過性膜によ
る脱塩法、醤油を減圧濃縮後脱塩する方法等があり、こ
の他に低食塩仕込法としてはエタノールを腐造防止剤と
して仕込時に添加する方法等がある。しかし、これらの
方法は、味・香りの品質面、歩留り、設備費、操作、生
産性等の製造コスト面でいずれも充分ではなく、更に実
用性のある低食塩醤油の製造法が望まれる。
〔発明が解決しようとする問題点〕
現在の技術レベルに於ける低食塩下での醤油の分解及び
発酵技術は依然として、かなり困難な状況下にあると言
える。即ち、異常発酵を防止する微生物制御方法として
いろいろ試みつつも、現実的には、通常の諸味の液汁食
塩分が12〜13%を下廻る時点で腐造を防止し得ない。こ
れに対処する方法の一つとして、従来よりエタノール、
あるいは防腐剤等を仕込時点の諸味に添加して分解、発
酵させる方法が報告され、又は公知の技術となってい
る。しかしながら、この方法では防腐剤としてのエタノ
ール等は、むしろ発酵面に於ける妨げになる可能性が大
きく、品質あるいはコスト面で解決すべき問題点が残さ
れている。
元来、正常な醤油発酵に寄与する主要な微生物群は高等
度の耐塩性を有する乳酸菌ペディオコッカス・ハロフィ
ラス、及び酵母チゴサッカロミセス・ルキシーで、いず
れも高濃度塩分下で、旺盛な発酵能を有し、乳酸、エタ
ノールを主体とする発酵生産物を蓄積する。従って、通
常の醤油醸造においては、この両発酵生産物の一定幅の
バランスの上に風味が醸成される。低食塩発酵において
は、このバランスコントロールが難しくなるばかりでな
く、主に麹に由来する雑菌群により各種の有機酸類が生
成され、発酵諸味中には官能上腐造と認められる種々の
代謝産物が蓄積される。中でも耐酸性の強いヘテロ発酵
型乳酸桿菌群による著量の乳酸及び酢酸の生成が認めら
れ、特に後者の揮発性有機酸である酢酸の生成は発酵諸
味の風味を著しく害にするに至るが、これらの生酸菌群
の諸味液汁食塩分6〜12%下における生育下限PHは4.
0前後である。
ところで、通常醤油の麹菌として利用される黄麹菌群
アスペルギルス・オリゼー、アスペルギルス・ソーヤ
は、元来他の麹菌に比べ、好気的にして生育力旺盛で、
その生成蓄積する種々の酵素群は力価的にも優れてお
り、特に蛋白質分解酵素であるプロテアーゼ系、澱粉質
分解酵素であるアミラーゼ系統の力価は強力である。こ
の場合、蛋白質源の占める割合の大い醤油製麹原料上で
は特に、中性及びアルカリプロテアーゼが強く、基質と
しての製麹原料の炭素と窒素の比(以後C/N比と略記
する)によって、酸性、中性、アルカリプロテアーゼの
各々の酵素力価バランスが異なってくる。即ち、窒素源
の割合を多くすることにより、中性ないしアルカリプロ
テアーゼ系が、逆に炭素源を多くすることにより酸性プ
ロテアーゼ系が、各々増強される。通常、醤油醸造にお
いては、窒素源が比較的多く、仕込諸味のPHはおよそ
6前後であり、蛋白質の分解には中性域近くで作用する
プロテアーゼが特に寄与している。
従って、このような麹菌の生理的及び酵素化学的特徴を
考えると、仕込諸味のPHを3.5〜4.5とし、腐造を防止
しつつ分解、発酵を進める上において黄麹菌を使うこと
は、諸味の窒素溶解利用率の低下につながり、低食塩醸
造における麹菌の選定において必ずしも適切ではない。
〔発明の構成〕 この様な実情に鑑み、本発明においては、醤油麹菌とし
て有機酸生成能にすぐれ、かつ、酸性下での活性に富む
酵素群を著量に生成する焼酎麹菌群を利用して醤油麹を
作り、仕込みを行なうと共に、仕込時の諸味のPHを3.
5〜4.5とし、仕込みに際しては諸味の液汁の食塩濃度が
6〜12%(W/V)となる様に仕込塩水濃度を調整し
て、諸味の腐造を防止しつつ分解及び発酵熟成させるこ
とで低食塩ないし減塩醸造醤油を製造する。
〔問題点を解決する為の手段〕
本発明において使用する焼酎麹菌群 アスペルギルス・
カワチ、アスペルギルス・サイトイ、アスペルギルス・
ウサミ等は、黒麹菌ないしその白色変異菌を言い、通
常、焼酎醸造に使われている菌群を意味し、一般的に黄
麹菌に比べ生育力がやや弱いが、クエン酸を主体とした
高度の有機酸生成能を有し、同時に生成する酵素群には
黄麹菌と著しく異なる特徴を持っている。本菌群は、製
麹基質のC/N比如何にかかわらず、元来その生理的特
徴として高い生酸能を有する為、酸性域で作用するプロ
テアーゼ系が著しく強く、中性及びアルカリプロテアー
ゼ系は微弱〜皆無である。又、アミラーゼ系に関して
は、液化型アミラーゼが弱いものの、糖化型アミラーゼ
は力価が強く、耐酸性であり、醤油諸味の分解の為の必
要単位を満たしている。従って、この焼酎麹菌群で以っ
て通常の醤油麹原料で製麹した場合、高度の生酸が認め
られると共に、強力な酸性プロテアーゼと糖化型アミラ
ーゼが生成蓄積される。特に至適PH3付近の酸性プロ
テアーゼは、黄麹菌の中性プロテアーゼと同等の力価を
発揮する。
従って、本発明においては、低食塩分下で腐造を防止
し、正常なる発酵を行なわせつつ、かつ酸性域における
満足すべき諸味の窒素溶解利用率を得る為に、焼酎麹菌
群を使用する。ここに使用する代表的麹菌は、焼酎醸造
用の種麹菌であるので普遍的に利用され、また市販され
ているので容易に入手できるものであるが、これらの種
麹菌製造元として愛知県豊橋市の糀屋三左衛門や鹿児島
県鹿児島市の河内源一郎商店のもの等は本発明に適し、
また身近に入手利用可能である。
〔作 用〕
種麹菌として焼酎麹菌群アスペルギルス・カワチ、アス
ペルギルス・サイトイ、アスペルギルス・ウサミ、等を
使い、常法に従って製麹し、仕込みを行なう。この場
合、仕込諸味のPHは麹菌種、製麹時間、温度,原料配
合比によって異なるが通常4前後となり、諸味液汁塩分
12%以下で起こる腐造に関与する微生物群の生育代謝は
抑えられる。この場合、仕込みのPHは必要に応じて有
機酸、特に乳酸により補酸あるいは補正してもよい。一
方、醤油発酵に利用される酵母はPH3.5前後迄旺盛に
働き得る。よって、仕込みと同時にあるいは仕込後数日
以内に酵母チゴサッカロミセス・ルキシーを添加し、通
気かくはんをかなり頻繁に行ないつつ、仕込当初から常
温にて分解及び発酵を進めさせる。仕込後数週間ないし
1ケ月でほぼ酵母によるアルコール発酵が終了し、窒素
溶解利用率も80%以上に達する。以後は緩慢な分解及び
発酵により熟成を促し、約4ケ月を以って発酵過程を終
了する。
従って、本発明では、低食塩下でも生酸菌を始め、一般
細菌の増殖による酸敗や腐造を防止しつつ、適度の酵母
発酵を行なわせる条件として、有機酸生成能の優れる焼
酎麹菌群を使い醤油麹を作り、低塩下で発酵させること
ができる。なお、焼酎麹菌群を使って作用させる場合、
仕込諸味は酸性プロテアーゼ系が最も作用し易いPH領
域に近い為、諸味の窒素溶解利用率は上がり、加えて、
低食塩分下で蛋白分解作用を行なわせるので、プロテア
ーゼの食塩による酵素反応阻害が著しく解除される為、
分解作用はきわめて良好となる。
〔実施例〕
以下、本発明の実施例について示す。
実施例 1 製麹に際しては、蒸煮変性処理した脱脂大豆と炊ごう割
砕小麦を、原料重量比にして約52:48とした混合物に、
種麹製造業社である糀屋三左衛門より市販されている焼
酎麹菌アスペルギルス・カワチを種麹として通常の添加
量で接種し、製麹温度30℃にて約45時間の連続通風
製麹を行なった。麹の簡単な分析結果を第1表に示し
た。
この醤油麹を汲水11〜12、仕込塩水濃度13.6%前後と
し、諸味液汁の食塩分が約10%となる様に調整して仕込
みを行なった。仕込温度は、通常は15℃前後の低温仕込
法が採用されているが、本発明では、25〜30℃の仕込み
とし、発酵期間中この温度を保持した。仕込後、毎日荒
がいを実施しながら、3日目には醤油発酵酵母 チゴサ
ッカロミセス・ルキシーを対諸味0.5%(V/V)添加
し、仕込当初より旺盛な分解と発酵を行なわせた。酵母
添加後は毎日通気かくはんすることによって酵母発酵の
促進と、諸味表面の産膜酵母の発生の防止をはかった。
仕込後約2週間でアルコール発酵が進み、諸味の状態も
かなり均一化されてきたので、以後は週に1〜2度かく
はんしながら4ケ月で発酵熟成を完了し、通常の如く圧
搾し、低食塩の生揚醤油を得た。第2,3表に生揚醤油
の分析例を示した。
対照として、全過程常法により醸造した麹及び、生揚醤
油の分析例を第1,2,3表に揚げた。ここに、本発明
により得られた生揚醤油をT・N1.5%、Nacl9.5%に
調整したもの(以下:とする)、本発明による生揚醤
油と常法により醸造した生揚とを4:1の割合で混合
し、T・N1.5%、Nacl9.5%に調整したもの(以下:
とする)及び、通常の再仕込生揚醤油を使いT・N1.
5%、Nacl9.5%に調整したもの(以下:とする)の
3種の低食塩醤油を作り、各々同一条件で若干の味の調
整を行なった後、80℃、1時間火入れ行ない、セライト
過後、各々について官能検査を行なった。
その結果、は酸度高く、クエン酸を主体とする壮快な
酸味が強く、味にしまりがあり、原料臭なく、又、風味
においてはアルコール発酵による醤油らしい風味が醸成
されており、原料臭なく、又、麹菌種の違いによるくせ
がなく、香味共にバランスのとれた低食塩の醤油として
利用範囲が広いことがうかがわれた。は従来の醤油を
混合している為、酸味、味、香りの面で最もバランスが
とれている。は、希釈法による減塩醤油として市場に
出廻っているものに相当するが、味にしまりがなく、物
足りない味である上、特有の苦味が強く感じられ、後味
が優れないのが欠点であった。
実施例 2 種麹菌として種麹菌製造業社である糀屋三左衛門より市
販されている焼酎麹菌アスペルギルス・サイトイ白色変
異菌を用い、実施例1にならって製麹、仕込、発酵を行
ない、熟成4ヶ月で圧搾後、低食塩の生揚醤油を得た。
第4表に麹の簡易な分析例を、第5,6表に生揚醤油の
分析例を各々示した。
ここに得られた生揚醤油について官能検査を行なったと
ころ、実施例1で得られたのと同様、酸味がかなり強く
感じられるものの、すっきりした壮快な酸味質で、か
つ、味に濃厚味としまりがあった。香りについては、旺
盛なアルコール発酵により原料臭が消え、又、麹菌に由
来する香りにクセがなく、芳醇な発酵風味が得られた。
実施例 3 本実施例では焼酎麹菌と通常の醤油用黄麹菌を使った場
合、酸性下における諸味の分解・発酵状態及び醸造醤油
の差異をみるために行なったものである。
種麹菌としてアスペルギルス・カワチを、対照として通
常の醤油醸造に使用する黄麹菌を各々用いて、実施例1
にならって製麹した。各々の麹の簡易な分析例を第7表
に示した。
以後は、アスペルギルス・カワチによる麹を使って、実
施例1にならって仕込み発酵させ、4ケ月熟成の後圧搾
して低食塩の生揚醤油を得た。
一方、対照区では同様に諸味液汁食塩分10%となるよう
に調整して仕込んだが、仕込諸味のPHを補正する必要
から、有機酸としてクエン酸を仕込みと同時に対諸味容
量の1%添加した。以後、発酵・熟成はアスペルギルス
・カワチによる場合と同様とし、4ケ月熟成の後圧搾し
て、低食塩の生揚醤油を得た。
本実施例3による生揚醤油の分析例を第8,9表に示し
た。
ここに得られた両区の生揚の官能検査を行なった所、対
照区は旨味強く、酸味はほどよく強く、香りは通常の醸
造醤油に近く、香・味共によくバランスがとれていた。
一方、試験区では旨味は強いが、酸味もやや強く、香り
においては、麹菌に由来する香気に対照区と若干の違い
が感じられたもののクセのない、醸造醤油らしいすっき
りした風味であった。
〔発明の効果〕
従来の腐造防止の技術としての単なる仕込PH制御のみ
では、低食塩下での醤油発酵においては、腐造防止が完
全でなく、不安定であるばかりでなく、満足すべき窒素
溶解利用率が得られない欠点があった。本発明によれ
ば、以上述べた説明から明らかな様に、低食塩分かつ酸
性下で、安定な発酵と、充分な分解収率を得ることがで
きる。又、本発明による醤油を使い、あるいは従来の醤
油と混合することにより、バラエティに富む醤油を作る
ことが可能である。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】低食塩醤油の製造法に関し、醤油麹菌とし
    て有機酸生成能のすぐれているアスペルギルス・カワ
    チ,アスペルギルス・サイトイ,アスペルギルス・ウサ
    ミ,アスペルギルス・アワモリから選ばれる焼酎麹菌を
    利用して醤油麹を作り、仕込みを行なうと共に、仕込時
    の諸味のPHを 3.5〜4.5とし、仕込みに際しては諸味
    の液汁の食塩濃度が6〜12%(w/v)となる様に仕
    込塩水濃度を調整して、諸味の腐造を防止しつつ発酵熟
    成させることを特徴とする低食塩ないし減塩醸造醤油の
    製造法。
JP63272617A 1988-10-27 1988-10-27 低食塩醤油の製造法 Expired - Lifetime JPH0622459B2 (ja)

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