JPH06228737A - 高耐食性表面処理金属材及びその製法 - Google Patents

高耐食性表面処理金属材及びその製法

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JPH06228737A
JPH06228737A JP23974592A JP23974592A JPH06228737A JP H06228737 A JPH06228737 A JP H06228737A JP 23974592 A JP23974592 A JP 23974592A JP 23974592 A JP23974592 A JP 23974592A JP H06228737 A JPH06228737 A JP H06228737A
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plating layer
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JP23974592A
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Masatoshi Iwai
正敏 岩井
Jiyunji Kawafuku
純司 川福
Koji Irie
広司 入江
Haruta Ayabe
東太 綾部
Atsushi Kato
淳 加藤
Shoji Miyake
昭二 三宅
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Kobe Steel Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 たとえばハロゲン化物イオン等が存在する厳
しい腐食環境下に曝らした場合でも、優れた耐食性を示
す蒸着めっき合金材を得ること。 【構成】 金属基材上に、下層めっき材がCr含量1〜
30重量%のA1−Cr合金、上層めっき材が純A1よ
りなり、上層めっき材と下層めっき材の付着量の比率
(R)が、1/5≦R≦1.5/1の要件を満たす2層
構造の蒸着めっき層が形成されたものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は建築材料、家庭用電気製
品、各種容器、自動車用部品等として用いられる耐食性
に優れた表面処理金属材及びその製法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】Al及びAl合金材は、鋼材に比べて耐
食性が良く且つ軽量で意匠性にも優れたものであるとこ
ろから、上記の様な用途をはじめとして広く汎用されて
いる。またAl素材の有する上記特性をめっき層として
活用したAl系めっき鋼板も多様されている。一方、自
動車等の排気系部材、ストーブ等の熱反射板、焼却炉構
成部材等は、高温で且つ厳しい腐食環境に曝らされるた
め、高温下の耐食性、耐酸化性に優れたものでなければ
ならず、そのため従来はステンレス鋼が多様されてき
た。しかしステンレス鋼は高価であるため、性能的には
ステンレス鋼よりも劣るが、経済的な理由から鋼材表面
に高耐食性・耐酸化性の溶融Alめっきを施した表面処
理鋼材も使用されている。
【0003】ところがAlめっき鋼材はCl- イオンの
様なハロゲン化物イオンが存在する腐食環境下では、A
lめっき表面の不働態皮膜がハロゲン化物イオンによっ
て破壊されて孔食を起こし易く、この孔食発生部周辺に
はAlの腐食生成物であるAl(OH)3 等を主成分と
する白錆が発生する。しかも孔食がめっき厚み方向に更
に進行して素地鋼材にまで達すると、鋼材の腐食による
赤錆が発生する。こうした白錆や赤錆はめっき鋼材の物
性を低下させるばかりでなく外観を著しく悪化させ、商
品価値を損なう。
【0004】こうした溶融Alめっき鋼材の耐食性を改
善するため、Zn等の合金元素をAlめっき層に含有さ
せた溶融Al合金めっき鋼材も一部で使用されている。
しかし溶融めっき法では、Alめっき溶中に溶解可能な
金属の種類や添加量が著しく制限されるため、期待され
る様な耐食性改善効果は得られない。
【0005】またAlめっき層の表面にクロメート処理
等によって化成処理皮膜を形成したり、あるいは有機樹
脂からなる保護皮膜を形成することによって耐食性を改
善する方法も実施されている。これらの後処理は、溶融
Alめっき鋼材の製造ラインで連続的に実施することが
できるので、生産性の点でも大きなメリットがある。し
かしながらそれらの後処理皮膜は非常に薄いものである
から、取扱い時や加工時、或は使用時に損傷したり破壊
し易く、耐食性改善効果の確実性に欠ける。更にクロメ
ート等の化成処理では処理廃液による環境汚染、あるい
は使用時の溶出Crイオンの問題があり、また有機樹脂
皮膜で保護したものでは溶接性の低下等の問題が生じて
くる。
【0006】しかも現在汎用されている溶融Alめっき
法では、大気中で溶融状態のAl系めっき浴中に鋼材を
浸漬走行させる方法が採用されており、めっき後の鋼材
温度は700℃前後にまで昇温するため、鋼素材とAl
系めっき層の界面に脆弱なFe2 Al5 等のFe−Al
系金属間化合物が生成し、後加工工程でめっき剥離を起
こし易いという問題もある。
【0007】そこでAl系めっき浴中に少量のSiを添
加することによってめっき層中にSiを含有させ、それ
により上記Fe−Al系金属間化合物の生成を抑制する
方法も提案されているが、該金属間化合物の生成を皆無
にできる訳ではなく、しかもSiの添加によってAl系
めっき層自身の耐食性が低下するという障害が生じてく
る。
【0008】他方、上記の様な溶融Alめっきに代わる
手段として電気めっき法を利用したAlめっき鋼材の研
究も進められている。Al自身は、水素過電圧の問題が
あるため水溶液中から鋼材表面に電析させることはでき
ないので、電析手法としては各種Al塩を非水系有機溶
剤に溶解させた非水溶液中での電析法、あるいはAl系
溶融塩を用いた電析法が検討されている。
【0009】この様な電気めっき法では、前述の溶融め
っき法に比べて添加可能な金属の種類や含有量に対する
自由度が高く、純Alめっきのみならず例えばAl−M
n合金めっきの如く各種のAl系合金めっきが可能であ
る。しかしながら上記の電気めっき法では通常の水溶液
からの電析法に比べて電流効率が悪く、あるいは高電流
密度域での電析が困難であるため、生産性が非常に悪
い。しかも電解めっき浴(排水系有機溶液浴や溶融塩
浴)が電気的に不安定であるため、工業的規模での実用
化が難しい。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の様な事
情に着目してなされたものであって、その目的は、溶融
Al系めっき鋼材や電気Al系めっき鋼材に指摘される
前述の様な問題を解消し、高温の腐食環境あるいはハロ
ゲン化物イオンを含む腐食環境においても優れた耐食性
を示す表面処理鋼材、及びその様な表面処理鋼材を生産
性良く製造することのできる方法を提供しようとするも
のである。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決すること
のできた本発明に係る表面処理金属材の構成は、金属基
材上に、下層めっき材がCr含量1〜30重量%のAl
−Cr合金、上層めっき材が純Alよりなり、上層めっ
き材と下層めっき材の付着量の比率(R)が、1/5≦
R≦1.5/1の要件を満たす2層構造の蒸着めっき層
が形成されたものであるところに要旨を有するものであ
る。
【0012】尚上記蒸着めっき層における下層めっき材
は、Al−Cr金属間化合物相、殊にAl13Cr2
(θ相)を主体としAl相及び/又はCr相を含むもの
が好ましく、また蒸着めっき後の熱処理等によって下層
めっき材を上層めっき材の界面に両めっき材の拡散反応
層を形成したものはめっき層自体の層間密着性が良く、
成形加工性においても優れた性能を発揮する。
【0013】そしてこの様な表面処理金属材は、蒸着室
内を通して金属基材を連続走行させると共に、該蒸着室
内には金属基材の走行方向に対して上流側にAl−Cr
合金蒸発槽、下流側にAl蒸発槽を配置してAl−Cr
合金と純Alを加熱蒸発せしめ、めっき層の下層側がA
l−Cr合金、上層側が純Alよりなる蒸着めっき層を
形成することによって容易に得ることができる。
【0014】
【作用】上記の様に本発明の表面処理金属材は、金属基
材上に、Cr含量の特定されたAl−Cr合金を下層、
純Alを上層とする2層構造の蒸着めっき層を形成した
ものであり、金属基材としては普通鋼やステンレス鋼、
各種合金鋼のほかAl,Cu,Ti等の非鉄金属やそれ
らの各種合金が挙げられ、またその形状も板、棒、管な
ど様々の形状のものが使用されるが、以下の説明では最
も一般的な鋼板を基材として使用する場合を主体にして
説明する。
【0015】まず本発明では、めっき法として蒸着めっ
き法を採用する。即ち蒸着めっき法とは、金属を加熱蒸
発させて金属基材上に蒸着させる方法であり、Alめっ
き層中に添加可能な合金元素の種類や添加量に対する制
約が殆どなく、しかも2層めっきや3層以上の多層めっ
きも容易であり、また生産性にも優れた方法であるから
である。
【0016】ところで本発明者らはかねてより蒸着Al
合金めっき鋼板についての改良研究を進めており、蒸着
Al−Cr合金めっき鋼板が優れた耐食性を示すことを
確認している。そしてこうした耐食性改善効果は、Cr
の添加によって、塩化物アニオン等を含む腐食環境下に
おけるめっき層自身の溶解(溶出)による腐食電流密度
(交換電流密度)が低下すると共に、めっき層と基材と
の間に流れる犠牲防食電流密度が低下するためと思われ
る。
【0017】前者のAl−Crめっき層自身の溶解(溶
出)による腐食電流密度が低下するということは、当該
めっき層自身が塩化物アニオン等に対して基本的に腐食
され難くなって耐食性が向上することを意味し、また後
者のめっき層と基材間に流れる犠牲防食電流が低下する
ということは、めっき層と基材間の電気化学的電位差が
小さくなることを意味するものと考えられ、これらの効
果が複合的に好結果をもたらして耐食性の向上に寄与し
ているものと思われる。
【0018】ところで前者の効果によってAl−Crめ
っき層自身の耐孔食性が向上すると、孔食によるめっき
厚さ方向の腐食の進行が抑えられ、鋼板(基材)の腐食
による赤錆発生時期は大幅に遅延される。しかし後者の
効果によってめっき層と基材間の電位差が小さくなった
場合、それが耐食性の向上のみに有利に作用するとは限
らない。なぜならば、一般的にめっき層と基材間の電気
化学的電位差が大きくなる程(即ちめっき基材の電気化
学的電位に対してめっき層がより大きな卑の電位を有す
る程)両者間に流れる犠牲防食電流が大となるので、基
材に対する犠牲防食作用は向上する。従って両者間電位
差が小さくなればその分だけ犠牲防食電流は低減し、め
っき層の腐食速度(溶出速度)が小さくなってめっき層
自身の寿命が延長する反面、加工部や側縁部等での犠牲
防食性能は悪くなる恐れがある。
【0019】本発明はこうした腐食機構を加味して鋼板
の耐食性改善を図るものであって、鋼板表面を下層がA
l−Cr合金めっき層、上層が純Alめっき層からなる
2層構造の蒸着めっき層で被覆することによって、めっ
き層自身の溶解を抑えると共に犠牲防食作用も有効に発
揮させ、塩化物イオン等の存在する腐食環境下において
も優れた耐食性(殊に孔食性)を示す表面処理鋼板を得
るものである。
【0020】まずめっき層の下層を構成するAl−Cr
合金めっき層は、塩化物イオン等の存在する腐食環境下
における耐孔食性を担うものであって、1〜30%(以
下、特記しない限り重量%を意味する)のCrを含有す
るものであることが必須である。しかしCr含有量が1
%未満では、Cr添加による耐食性向上効果が十分に発
揮されないばかりでなく、後述する上層めっき(純A
l)層との間の電気化学的電位差が殆ど生じなくなり、
上層の純Alめっき層の下層めっきに対する犠牲防食作
用が有効に発揮されず、めっき層深さ方向の孔食の進行
を抑制できなくなる。
【0021】そして下層Al−Cr合金めっき層のCr
含有量を1%以上に増やしていくにつれて、当該下層め
っき自身の耐食性が向上すると共に、上層純Alめっき
層の犠牲防食作用も有効に発揮されて耐孔食性も向上し
てくるが、その効果はCr含有量が25%程度で飽和
し、30%以上に増やしても耐食性はそれ以上は向上せ
ず、いたずらにめっきコストが高くなるだけであるので
経済的に無駄である。
【0022】次に上層めっき材を純Alに定めた理由
は、該上層めっき材を下層のAl−Cr合金めっき層の
犠牲防食層として作用させ、該下層めっき層の腐食を防
止するためである。即ち純AlはAl−Cr合金に比べ
て電気化学的に卑な電位を有しており、従ってめっき鋼
板におけるめっき層の孔食が上層純めっき層と下層のA
l−Cr合金めっき層の界面にまで達成すると、両者の
電位差によってガルバニック腐食現象が生じ、その後は
上層の純Alめっき層が選択的に腐食される。即ち上層
純Alめっき層は下層のAl−Cr合金めっき層に対し
て犠牲防食作用を発揮し、下層のAl−Cr合金めっき
層の腐食を防止する。
【0023】即ち上層純Alめっき層は、初期孔食発生
時期及び孔食進行時期においてはめっき厚さ方向に腐食
されるが、孔食が上・下めっき層の界面に達した後は、
上記ガルバニック腐食現象により上層純Alめっき層の
全面腐食が優先的に起こり、下層のAl−Cr合金めっ
き層の孔食は全く起こらない。そして上層純Alめっき
層の全面腐食は当該上層純Alめっき層がほぼ完全に溶
出してしまうまで継続されることになり、その結果、下
層のAl−Cr合金めっき層の孔食開始時期は著しく遅
延される。
【0024】その後、上層純Alめっき層のほぼ全てが
溶出してしまうと(従ってめっき表面上下層Al−Cr
合金めっき層が露出した後は)、塩化物イオン等によっ
て下層Al−Cr合金めっき層の腐食が開始されるが、
前述の如くAl−Cr合金めっき層はCrの含有によっ
てそれ自身の耐食性が高められているので、めっき深さ
(厚み)方向への孔食の進行は非常に遅く、従って基材
鋼板との界面にまで孔食が進行して赤錆が発生するまで
には長時間を要することになり、優れた耐食性が発揮さ
れる。
【0025】この様に本発明では、上層純Alめっき層
は、それ自身耐孔食性に優れたものではないが、下層A
l−Crめっき層を保護するための犠牲防食能を有する
めっき層として重要な役割を担い、下層Al−Crめっ
き層は、上層めっきの消失後、被めっき材の腐食時期を
遅らせる高耐孔食性めっき層としての役割を担い、両め
っき層の相乗効果によって、被めっき材である鋼板の腐
食開始時期を大幅に遅らせるものである。そしてこうし
た防食効果は、めっき層の上層を純Alめっき層とし、
下層をAl−Cr合金めっき層とすることによって有効
に発揮される。しかして上層がAl−Crめっき層で、
下層が純Alめっき層である2層構造としたもの(本発
明のめっき層構造とは逆の構造)では、特に端縁部や加
工部、あるいは鋼板表面にまで達する様なめっき層の傷
発生部等を開始点として腐食が始まったとき、上層のA
l−Cr合金めっき層よりも下層の純Alめっき層が優
先的に腐食されることになり、その結果として上層めっ
き層の膨れや剥離現象が生じ、満足な耐食性が得られな
くなる。従って本発明における蒸着めっき表面処理材の
めっき層構造は、上層が純Alめっき層、下層がAl−
Cr合金めっき層からなる2層めっき構造であることが
不可決の要件となる。
【0026】次に、下層Al−Cr合金めっき層の相構
造について述べる。下層Al−Cr合金めっき層は、塩
化物イオン等に対して優れた耐孔食性を有するAl−C
r金属間化合物層を必須成分として含むものでなければ
ならない。Al−Cr合金めっき層中に形成される該金
属間化合物は1種類に限定されるわけではなく、製造条
件やめっき層中のCr含有量等によって、例えばAl13
Cr 2 (θ相)、Al11Cr2 (η相)、Al4 Cr
(ε相)等のAl−Cr金属間化合物の1種又は2種以
上を含むものであってもよい。これらのAl−Cr金属
間化合相は、いずれも耐孔食性に優れるものであるが、
該金属間化合物相の中でも特にAl13Cr2 相(θ相)
は、他の金属間化合物相に比べて耐孔食性が良好であ
り、しかも電気化学的電位が鋼板の電位に対してより卑
な電位を示す(但し、上層純Alめっきの電位よりは必
ず貴である)ために、鋼板に対する犠牲防食効果も発揮
されるので好ましい。この様なところから、下層Al−
Cr合金めっき層中に存在するAl−Cr金属間化合物
相としては、Al13Cr2 相(θ相)が最良である。
【0027】また下層Al−Cr合金めっき層中には、
上述の各種Al−Cr金属間化合物相以外に、他の成分
としてAl相又は/及びCr相を含有するものであるこ
とが望ましい。即ち下層Al−Cr合金めっき層中に含
有されるAlは、下層めっき層の塑性変形能を高めると
共に、上層純Alめっき層との層間めっき密着性を高め
る作用があり、めっき後の加工工程でめっき基材表面層
間あるいは上層/下層めっき層の界面からめっき層の剥
離が生じるのを抑制する作用を発揮する。
【0028】また下層Al−Cr合金めっき層中に含有
されるCr原子は、それらの全てがAl原子と反応して
Al−Cr金属間化合物相を形成する訳ではなく、特に
本発明で規定するCr含有量範囲のうちCr含有量の高
い領域では、下層めっき層中にCrが存在する可能性が
高くなる。そして下層めっき層中のCrは、基本的に塩
化物イオン等に対して腐食を受けない金属であり、下層
めっき層中に微量に存在することによって、めっき層の
耐孔食性向上に寄与する。更にはこの蒸着Al/Al−
Cr合金2層めっき鋼板を高温環境下(たとえば500
℃以上)で使用した場合、下層めっき中に存在する微量
Crは、下層Al−Cr合金めっき層と鋼板との界面で
脆弱なAl−Fe系金属間化合物相が形成されるのを抑
制する働きを有しており、めっき層の耐熱性の向上にも
寄与するからである。
【0029】次に、上層めっきと下層めっきの好ましい
付着量の比率について説明する。両者の付着量比は、上
層純Alめっき層の付着量(g/m2 )を下層のAl−
Cr合金めっき層の付着量(g/m2 )で除した値をR
で表したとき、1/5≦R≦1.5/1を満足する様に
各めっき層の付着量を調整することが望ましい。即ちR
が1/5未満ということは、めっき層全体で考えた場合
に、上層純Alめっき付着量が下層Al−Crめっき付
着量よりも大幅に小さくなることを意味する。
【0030】そして上層純Alめっき層の主な役割は、
上述した如く下層Al−Cr合金めっき層の犠牲防食能
であり、純Alめっき層自身は、下層Al−Cr合金め
っき層に比べて耐孔食性に劣るものであるため、めっき
厚み方向への孔食進展を抑制する能力はないが、全面腐
食による犠牲防食作用によって下層Al−Cr合金めっ
き層の腐食を防止するものであり、こうした上層めっき
としての効果を発揮させるには、下層のめっき付着量に
対して上層めっき付着量を1/5以上にすべきであり、
これ未満では犠牲防食作用を発揮する期間が短くなって
満足のいく耐食性が得られない。
【0031】更に上層純Alめっき層の重要な役割とし
て、めっき層全体としての基材に対する犠牲防食能があ
る。前述した様に、めっき層の基材に対する犠牲防食能
は、一般的には基材の電気化学的電位に対してより大き
な卑な電位を有するめっき層である程、犠牲防食電流が
両者間に十分に流れるため優れたものとなる。
【0032】ところで、下層Al−Cr合金めっき層が
上層純Alめっき層に比べて電気化学的電位がやや貴で
あることは既に述べたが、そのために鋼板との電位差が
上層の純Alめっきと鋼板間の電位差に比べてやや小さ
くなる。
【0033】そして電位差が小さくなれば、その分だけ
犠牲防食電流が低下するためめっき層自身の腐食速度
(溶出速度)が小さくなってめっき層自体の寿命が長く
なるが、一方で端面(切断面)や加工部あるいは鋼板表
面まで達する様なめっき層表面からの傷発生部において
は、鋼板に対する犠牲防食能は純Alめっき層の方が優
れたものになる。この様にめっき層と基材との電気化学
的電位差が小さくなることは、必ずしも全ての条件下で
耐食性を向上させる方向ばかりに有利に作用するもので
はない。
【0034】従って上層純Alめっき層は、被めっき材
である鋼板の端面が露出する様な状況下でも犠牲防食作
用を有効に発揮させる必要があり、そのためには、前記
めっき付着量比率Rが1/5位以上となる様な上層純A
lめっき付着量を確保することが望ましい。以上の様な
理由から、好ましいめっき付着量比率Rを1/5以上に
規定した。
【0035】又、めっき付着量比率Rの好ましい上限値
を1.5/1に規定したのは、以下の理由による。即ち
Rが1.5/1を超えるということは、めっき層全体で
考えた場合に上層純Alめっき付着量が下層Al−Cr
めっき付着量よりも大きくなりすぎることを意味する。
この様な比率の2層めっきは、上層の純Alめっき層の
持つ役割のみを考えれば、犠牲防食作用がより長期的に
発揮されるため有利なめっき層構造であると考えること
もできない訳ではないが、下層の耐孔食性に優れるAl
−Cr合金めっき層の付着量比率が小さくなるために、
本来の目的である高耐食性めっき材としての性能を低下
させる恐れがでてくる。従って、下層Al−Cr合金め
っき層の有する優れた耐食性を有効に発揮させるため、
前記めっき付着量比率Rの上限を1.5/1にすること
が望まれる。
【0036】尚、蒸着Al/Al−Cr合金2層めっき
の全めっき付着量には一切制限がなく、前述した好適め
っき付着量比率Rの条件を満たす範囲で、全めっき付着
量を増加させると、必然的に耐食性はより長期間にわた
って維持される。しかし必要以上にめっき付着量を高め
てもコストアップにつながるだけであり、経済的に好ま
しくない。よって全めっき付着量は、本発明の表面処理
材を適用する部材、使用する環境条件、要求される耐用
年数等によって適宜定めるべきであるが、一般的には耐
食性と経済性の両面を考慮して、10〜100g/m
2 、好ましくは20〜60g/m2 の範囲のめっき付着
量が推奨される。
【0037】次に本発明の高耐食性表面処理材を工業的
に製造する方法について、図1(工程説明図)を例にと
って説明する。予め脱脂・酸洗等により表面清浄化処理
された被処理帯1は、入側真空シール装置2Aを通して
第一蒸着室4aに導入された後、デフレクターロール
3,3を経て第二蒸着室4bへ送られ、各蒸着室4a,
4bで片面ずつ両面に蒸着めっきが施された後、出側真
空シール装置2Bを通して引き出される。
【0038】蒸着室4a,4bは夫々所望の真空もしく
は希薄ガス雰囲気に保持されると共に、該蒸着室4a,
4b内には被処理帯1の走行軌跡の下方に2つの蒸発槽
5A,5Bが設置されており、被処理帯1の走行方向上
流側の蒸発槽5A内にはAl−Cr合金、同下流側の蒸
発層5B内には純Alを装入しておき、電子ビーム加熱
等によって加熱蒸発させることによって、蒸発したAl
−Cr合金及び純Alを走行する被処理帯1の表面に蒸
着させる。
【0039】図2は蒸着めっき状況を拡大して示す模式
図であり、蒸着室4内の被処理帯1走行軌跡の下方に設
置した蒸発槽5a,5bの被処理帯1走行方向上流側の
蒸発槽5aにはAl−Cr合金、下流側の蒸発槽5bに
は純Alを装入し、蒸着室4の側壁に取付けた電子銃G
から発射される電子線Eによって各蒸発槽5a,5b内
の金属を加熱蒸発させる。尚本例では1つの電子銃Gを
使用し、図示しない偏向コイルによる蒸発槽5a,5b
近傍の空間に形成される磁場によって電子ビームEを各
蒸発槽の幅方向に走査させ、また一定周期で蒸発槽間を
ジャンピングさせることによって、各蒸発槽内を連続的
に加熱する。
【0040】電子ビームEによって加熱され蒸発した各
蒸発槽5a,5b内のAl−Cr合金及び純Alは、走
行する被処理帯1の下面に蒸着していくが、該被処理帯
1にはまず上流側の蒸発槽5aから蒸発したAl−Cr
混合蒸気が先に蒸着してAl−Cr合金めっき層を形成
した後、下流側の蒸発槽5bから蒸発した純Alが蒸着
して純Alめっき層を形成する。
【0041】ところで純Alは蒸気圧の高い金属であ
り、電子ビーム加熱方式等によって容易に加熱蒸発させ
ることができる。これに対しCrは昇華性金属であって
蒸発挙動がAlとは異なり、固体Cr表面から直接Cr
蒸気が発生するので、通常の溶融金属浴からの蒸発に比
べて蒸発量が不安定になり易い。その理由は、蒸発量
(蒸発速度)の安定性は、蒸発面の温度と蒸発面積の安
定性に大きく影響され、溶融金属の湯面はほぼ一定に保
つことができるのに対し、固形の昇華性金属では経時的
に蒸発面積が著しく変わってくるからである。
【0042】そこで本発明においてAl−Cr合金めっ
き層を形成するに当たっては、蒸発量の制御を容易にす
るためCrをAlと合金化することによって溶融浴と
し、この溶融浴からAlとCrを同時に加熱蒸発させる
ことによって蒸発速度を容易にコントロールできる様に
する。
【0043】尚Al−Cr合金浴の組成と該合金浴表面
から蒸発するAlとCrの混合蒸気組成は、両者の蒸気
圧の差から必ずしも同一とはならないが、ある任意の合
金浴組成に対して当該浴温度を一定としたときに発生す
る混合蒸気組成は一義的に決まってくるので、本発明で
定める下層めっき層のCr含有量と合致する混合蒸気が
発生する様にAl−Cr合金浴組成を定めれば、目標組
成の下層めっき(Al−Cr合金めっき)層を容易に得
ることができる。
【0044】ところで上記図1,2に示した様な方法で
Al−Cr合金/純Al蒸着めっきを行なう場合、蒸発
槽5a,5bの槽間距離Dに対して蒸発浴面−鋼帯間の
距離Hvを大きめに設定すると、蒸発槽5aから発生し
たAl−Cr混合蒸気と蒸発槽5bから発生した純Al
蒸気が被処理帯1表面に到達するまでの間に一部混合さ
れ、下層Al−Cr合金めっき層と上層純Alめっき層
との間に両者の拡散反応層である中間層が形成される。
この中間層は下層Al−Cr合金めっき層よりもCr含
有量の少ないAl−Cr合金めっき層となるが、この様
な中間層が形成されたとしても得られる表面処理鋼材の
性能、殊に耐食性には何らの悪影響を及ぼすものではな
く、むしろ下層めっきと上層めっきの親和性が向上して
めっき層自身の層間密着性が高まるので好ましく、従っ
てこの様な中間層を有するめっき層構造を有するものも
本発明の技術的範囲に含まれる。
【0045】但し、製品仕様として上層の純Alめっき
付着量を少なめに設定し、下層のAl−Cr合金めっき
付着量を多めに設定した場合は、該中間層の形成によっ
て上層純Alめっき層の付着量が前述した目標値よりも
小さくなり、一方該中間層をAl−Cr合金めっき層の
範疇に含めると下層Al−Cr合金めっき層の付着量が
大きくなりすぎて、先に定義した上・下層めっき付着量
比率Rが好適範囲を外れる場合がでてくる。従って蒸着
めっきに当たっては、前述した蒸着槽間距離Dやめっき
浴表面−鋼帯間距離Hvをその都度適正に調整し、上記
の好適付着量比Rを確保することが望まれる。もっとも
本発明では蒸着室の構造や蒸発槽の配置等まで制限を加
えるものではなく、蒸着装置固有の特性等も考慮してそ
の都度最適の条件を設定すればよい。
【0046】尚、Hvを小さくするかあるいはDを大き
くすると、Al−Cr混合蒸気と純Al蒸気が、被めっ
き帯表面に到達するまでの間で混合されにくくなり、上
述の中間めっき層が殆ど形成されなくなる。しかし電子
ビームEは蒸発槽と被めっき帯の間の空間を通過させな
ければならないので最小のHvには自ずと制限があり、
また、蒸発槽間距離Dについても、電子ビームEの蒸発
槽間ジャンピング距離Jが電子銃本体の能力及び蒸着室
の構造等によって制約をうけるため、当然のことながら
上限が存在する。従って用いる蒸着室の構造、電子銃−
蒸発槽−被処理帯の関係によっては該中間層が自ずと形
成される場合もでてくる。よってこの様な場合も考慮し
て所望のめっき付着量比率R(特に加減値)が確保でき
る様に製造条件等を適宜選定することが好ましい。
【0047】又、本発明方法を実施する際の蒸発原料の
加熱蒸発源としては、電子ビーム加熱方式を規定した
が、それは以下の理由によるものである。即ち電子ビー
ムを発生させるための電子銃(EBガン)は高価ではあ
るがメンテナンス性に優れ、電子ビームの発生・停止を
容易に行なうことができるという点で有利な加熱・蒸発
手段である。しかも電子ビームは、蒸発させたい金属原
料の表面に直接照射することができるため、加熱・蒸発
効率が高く、結果として、蒸発原料の蒸発速度を大きく
することが可能である。更には電子ビーム加熱方式の他
の特徴として、複数個の蒸発槽内に各々に分けて装入さ
れた各蒸発原料に対して1台の電子銃から発生される電
子ビームを極めて短いサイクル時間毎に各蒸発槽間にジ
ャンピングさせつつ各蒸発槽表面を走査させることによ
って、各々の蒸発原料を一斉に加熱蒸発させることがで
き、複数元素からなる各種合金めっきや多層めっきが容
易に行なえるという利点がある。これらの点から、各種
金属材表面に連続的に蒸着めっき処理するための加熱方
式としては、電子ビーム加熱方式が最も有力な手段であ
るからである。
【0048】また、本発明において蒸着Al/Al−C
r合金2層めっき材の更なるめっき密着性の向上及びめ
っき層中の欠陥の低減を目的として、発生させた金属蒸
気を金属基板表面に蒸着させる前に、何らかの手法によ
り該蒸気の一部をイオン化させて蒸着させる、いわゆる
イオンプレーティング法も本発明における好ましい蒸着
めっき法の一つとして奨励される。Al、Crの金属蒸
気をイオン化させる手法は特に制限されないが、好まし
い方法としてはRF(高周波)法、アーク放電法等が推
奨される。以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に
説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限
を受けるものではない。
【0049】
【実施例】図1及び図2に示した様な連続蒸着めっき設
備を使用し、以下に示す種々の条件で蒸着A1/A1−
Cr合金2層めっき鋼板を作製した。 (蒸着めっき条件) 被めっき帯:冷延鋼板(低炭素A1キルド鋼) 被めっき帯前処理:アルカリ電解脱脂−水洗−乾燥後、
2 −N2 混合ガスを用いたガス還元炉へ導入し、鋼板
表面を還元により清浄化前処理する。
【0050】めっき前の鋼帯温度:200〜350℃ 蒸発原料:A1(図1の6Bに相当)及びA1−Cr合
金(図1の6Aに相当)蒸発槽、 A1用蒸発槽:高純度電融アルミナ蒸発槽(図1の5B
に相当)、A1−Cr合金用蒸発槽:高純度電融アルミ
ナ蒸発槽(図1の5Aに相当) 蒸発原料の蒸発槽への供給:A1浴(A1ワイヤーによ
る供給)、A1−Cr合金浴(A1−Crブリケットに
よる供給) 蒸発原料の加熱蒸発源:ピアス型電子銃(最大出力30
0kw) 蒸着室真空度:1×10-2Pa以下 めっき付着量及びめっき組成のコントロール方法:電子
ビームのトータル出力及びトータル出力のA1浴及びA
1−Cr合金浴への配分比のコントロールと、被処理帯
1の走行速度の組み合わせによる制御 得られた各蒸着めっき鋼板の耐食性を下記の評価試験
1,2によって調べ、表1,2に示す結果を得た。尚表
1,2には、比較のため従来の溶融A1めっき鋼板及び
そのクロメート処理物の耐食性評価結果を併記した。
【0051】(耐食性評価試験) ・評価試験1:めっき層表面からカッターナイフによる
クロスカット傷及びエリクセンによる張り出し加工(張
り出し高さ7mm)を付与し、端面をテープシールした
ものを供試材とし、塩水墳霧試験(5%NaC1水溶
液、35℃)を行って、各供試材の腐食による赤錆が発
生するまでの試験時間で評価した。
【0052】 ◎:腐食性優れる :赤錆発生5000時間以上 △:腐食性やや劣る: 〃 1000〜5000時間 ×:腐食性劣る : 〃 1000時間以内 ・評価試験2:切断面が露出された各供試材を、食塩水
溶液中に浸漬し、切断面の鋼板部から赤錆が発生するま
での時間で評価した。
【0053】 ◎:腐食性優れる :赤錆発生100時間以上 △:腐食性やや劣る: 〃 24〜100時間 ×:腐食性劣る : 〃 24時間以内
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】表1,2からも明らかである様に、No.
1〜12,23〜25は本発明の規定要件を満たす実施
例であり、いずれも優れた耐食性評価結果が得られてい
る。これに対しNo.13〜22,26〜35は下記の
通り規定要件のいずれかを欠く比較例であり、満足な耐
食性が得られない。
【0057】No.13,14,26,27:A1もし
くはA1−Cr合金よりなる単層構造の蒸着めっきであ
る。 No.15,28:下層A1−Cr合金めっき層中のC
r含有量が不足する。 No.16〜22,30〜35:上層A1めっき層を下
層A1−Cr合金めっき層の付着量比率(R)が本発明
の規定範囲を外れている。
【0058】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、下
層をAl−Cr合金めっき、上層を純Alめっきとする
2層構造の蒸着めっきを施すと共に、下層Al−Cr合
金めっき中のCr含有量を特定し、且つ上層Alめっき
と下層Al−Cr合金めっきの付着量比率を特定するこ
とによって、ハロゲン化物イオン等が存在する厳しい腐
食環境下においても優れた耐食性を示す表面処理金属材
を提供し得ることになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明で採用される蒸着めっき法を例示する
概略説明図である。
【図2】 蒸着室内の配置例を示す概略説明図である。
【符号の説明】
1 被処理帯 2A 入側真空シール装置 2B 出側真空シール装置 3 デフレクターロール 4,4a,4b 蒸着室 5a,6b 蒸発槽 G 電子銃 E 電子ビーム 7 サポートロール
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成5年5月13日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】発明の詳細な説明
【補正方法】変更
【補正内容】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は建築材料、家庭用電気製
品、各種容器、自動車用部品等として用いられる耐食性
に優れた表面処理金属材及びその製法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】Al及びAl合金材は、鋼材に比べて耐
食性が良く且つ軽量で意匠性にも優れたものであるとこ
ろから、上記の様な用途をはじめとして広く汎用されて
いる。またAl素材の有する上記特性をめっき層として
活用したAl系めっき鋼板も多様されている。一方、自
動車等の排気系部材、ストーブ等の熱反射板、焼却炉構
成部材等は、高温で且つ厳しい腐食環境に曝らされるた
め、高温下の耐食性、耐酸化性に優れたものでなければ
ならず、そのため従来はステンレス鋼が多様されてき
た。しかしステンレス鋼は高価であるため、性能的には
ステンレス鋼よりも劣るが、経済的な理由から鋼材表面
に高耐食性・耐酸化性の溶融Alめっきを施した表面処
理鋼材も使用されている。
【0003】ところがAlめっき鋼材はCl- イオンの
様なハロゲン化物イオンが存在する腐食環境下では、A
lめっき表面の不働態皮膜がハロゲン化物イオンによっ
て破壊されて孔食を起こし易く、この孔食発生部周辺に
はAlの腐食生成物であるAl(OH)3 等を主成分と
する白錆が発生する。しかも孔食がめっき厚み方向に更
に進行して素地鋼材にまで達すると、鋼材の腐食による
赤錆が発生する。こうした白錆や赤錆はめっき鋼材の物
性を低下させるばかりでなく外観を著しく悪化させ、商
品価値を損なう。
【0004】こうした溶融Alめっき鋼材の耐食性を改
善するため、Zn等の合金元素をAlめっき層に含有さ
せた溶融Al合金めっき鋼材も一部で使用されている。
しかし溶融めっき法では、Alめっき溶中に溶解可能な
金属の種類や添加量が著しく制限されるため、期待され
る様な耐食性改善効果は得られない。
【0005】またAlめっき層の表面にクロメート処理
等によって化成処理皮膜を形成したり、あるいは有機樹
脂からなる保護皮膜を形成することによって耐食性を改
善する方法も実施されている。これらの後処理は、溶融
Alめっき鋼材の製造ラインで連続的に実施することが
できるので、生産性の点でも大きなメリットがある。し
かしながらそれらの後処理皮膜は非常に薄いものである
から、取扱い時や加工時、或は使用時に損傷したり破壊
し易く、耐食性改善効果の確実性に欠ける。更にクロメ
ート等の化成処理では処理廃液による環境汚染、あるい
は使用時の溶出Crイオンの問題があり、また有機樹脂
皮膜で保護したものでは溶接性の低下等の問題が生じて
くる。
【0006】しかも現在汎用されている溶融Alめっき
法では、大気中で溶融状態のAl系めっき浴中に鋼材を
浸漬走行させる方法が採用されており、めっき後の鋼材
温度は700℃前後にまで昇温するため、鋼素材とAl
系めっき層の界面に脆弱なFe2 Al5 等のFe−Al
系金属間化合物が生成し、後加工工程でめっき剥離を起
こし易いという問題もある。
【0007】そこでAl系めっき浴中に少量のSiを添
加することによってめっき層中にSiを含有させ、それ
により上記Fe−Al系金属間化合物の生成を抑制する
方法も提案されているが、該金属間化合物の生成を皆無
にできる訳ではなく、しかもSiの添加によってAl系
めっき層自身の耐食性が低下するという障害が生じてく
る。
【0008】他方、上記の様な溶融Alめっきに代わる
手段として電気めっき法を利用したAlめっき鋼材の研
究も進められている。Al自身は、水素過電圧の問題が
あるため水溶液中から鋼材表面に電析させることはでき
ないので、電析手法としては各種Al塩を非水系有機溶
剤に溶解させた非水溶液中での電析法、あるいはAl系
溶融塩を用いた電析法が検討されている。
【0009】この様な電気めっき法では、前述の溶融め
っき法に比べて添加可能な金属の種類や含有量に対する
自由度が高く、純Alめっきのみならず例えばAl−M
n合金めっきの如く各種のAl系合金めっきが可能であ
る。しかしながら上記の電気めっき法では通常の水溶液
からの電析法に比べて電流効率が悪く、あるいは高電流
密度域での電析が困難であるため、生産性が非常に悪
い。しかも電解めっき浴(排水系有機溶液浴や溶融塩
浴)が電気的に不安定であるため、工業的規模での実用
化が難しい。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の様な事
情に着目してなされたものであって、その目的は、溶融
Al系めっき鋼材や電気Al系めっき鋼材に指摘される
前述の様な問題を解消し、高温の腐食環境あるいはハロ
ゲン化物イオンを含む腐食環境においても優れた耐食性
を示す表面処理鋼材、及びその様な表面処理鋼材を生産
性良く製造することのできる方法を提供しようとするも
のである。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決すること
のできた本発明に係る表面処理金属材の構成は、金属基
材上に、下層めっき材がCr含量1〜30重量%のAl
−Cr合金、上層めっき材が純Alよりなり、上層めっ
き材と下層めっき材の付着量の比率(R)が、1/5≦
R≦1.5/1の要件を満たす2層構造の蒸着めっき層
が形成されたものであるところに要旨を有するものであ
る。
【0012】尚上記蒸着めっき層における下層めっき材
は、Al−Cr金属間化合物相、殊にAl13Cr2
(θ相)を主体としAl相及び/又はCr相を含むもの
が好ましく、また蒸着めっき後の熱処理等によって下層
めっき材を上層めっき材の界面に両めっき材の拡散反応
層を形成したものはめっき層自体の層間密着性が良く、
成形加工性においても優れた性能を発揮する。
【0013】そしてこの様な表面処理金属材は、蒸着室
内を通して金属基材を連続走行させると共に、該蒸着室
内には金属基材の走行方向に対して上流側にAl−Cr
合金蒸発槽、下流側にAl蒸発槽を配置してAl−Cr
合金と純Alを加熱蒸発せしめ、めっき層の下層側がA
l−Cr合金、上層側が純Alよりなる蒸着めっき層を
形成することによって容易に得ることができる。
【0014】
【作用】上記の様に本発明の表面処理金属材は、金属基
材上に、Cr含量の特定されたAl−Cr合金を下層、
純Alを上層とする2層構造の蒸着めっき層を形成した
ものであり、金属基材としては普通鋼やステンレス鋼、
各種合金鋼のほかAl,Cu,Ti等の非鉄金属やそれ
らの各種合金が挙げられ、またその形状も板、棒、管な
ど様々の形状のものが使用されるが、以下の説明では最
も一般的な鋼板を基材として使用する場合を主体にして
説明する。
【0015】まず本発明では、めっき法として蒸着めっ
き法を採用する。即ち蒸着めっき法とは、金属を加熱蒸
発させて金属基材上に蒸着させる方法であり、Alめっ
き層中に添加可能な合金元素の種類や添加量に対する制
約が殆どなく、しかも2層めっきや3層以上の多層めっ
きも容易であり、また生産性にも優れた方法であるから
である。
【0016】ところで本発明者らはかねてより蒸着Al
合金めっき鋼板についての改良研究を進めており、蒸着
Al−Cr合金めっき鋼板が優れた耐食性を示すことを
確認している。そしてこうした耐食性改善効果は、Cr
の添加によって、塩化物アニオン等を含む腐食環境下に
おけるめっき層自身の溶解(溶出)による腐食電流密度
(交換電流密度)が低下すると共に、めっき層と基材と
の間に流れる犠牲防食電流密度が低下するためと思われ
る。
【0017】前者のAl−Crめっき層自身の溶解(溶
出)による腐食電流密度が低下するということは、当該
めっき層自身が塩化物アニオン等に対して基本的に腐食
され難くなって耐食性が向上することを意味し、また後
者のめっき層と基材間に流れる犠牲防食電流が低下する
ということは、めっき層と基材間の電気化学的電位差が
小さくなることを意味するものと考えられ、これらの効
果が複合的に好結果をもたらして耐食性の向上に寄与し
ているものと思われる。
【0018】ところで前者の効果によってAl−Crめ
っき層自身の耐孔食性が向上すると、孔食によるめっき
厚さ方向の腐食の進行が抑えられ、鋼板(基材)の腐食
による赤錆発生時期は大幅に遅延される。しかし後者の
効果によってめっき層と基材間の電位差が小さくなった
場合、それが耐食性の向上のみに有利に作用するとは限
らない。なぜならば、一般的にめっき層と基材間の電気
化学的電位差が大きくなる程(即ちめっき基材の電気化
学的電位に対してめっき層がより大きな卑の電位を有す
る程)両者間に流れる犠牲防食電流が大となるので、基
材に対する犠牲防食作用は向上する。従って両者間電位
差が小さくなればその分だけ犠牲防食電流は低減し、め
っき層の腐食速度(溶出速度)が小さくなってめっき層
自身の寿命が延長する反面、加工部や側縁部等での犠牲
防食性能は悪くなる恐れがある。
【0019】本発明はこうした腐食機構を加味して鋼板
の耐食性改善を図るものであって、鋼板表面を下層がA
l−Cr合金めっき層、上層が純Alめっき層からなる
2層構造の蒸着めっき層で被覆することによって、めっ
き層自身の溶解を抑えると共に犠牲防食作用も有効に発
揮させ、塩化物イオン等の存在する腐食環境下において
も優れた耐食性(殊に孔食性)を示す表面処理鋼板を得
るものである。
【0020】まずめっき層の下層を構成するAl−Cr
合金めっき層は、塩化物イオン等の存在する腐食環境下
における耐孔食性を担うものであって、1〜30%(以
下、特記しない限り重量%を意味する)のCrを含有す
るものであることが必須である。しかしCr含有量が1
%未満では、Cr添加による耐食性向上効果が十分に発
揮されないばかりでなく、後述する上層めっき(純A
l)層との間の電気化学的電位差が殆ど生じなくなり、
上層の純Alめっき層の下層めっきに対する犠牲防食作
用が有効に発揮されず、めっき層深さ方向の孔食の進行
を抑制できなくなる。
【0021】そして下層Al−Cr合金めっき層のCr
含有量を1%以上に増やしていくにつれて、当該下層め
っき自身の耐食性が向上すると共に、上層純Alめっき
層の犠牲防食作用も有効に発揮されて耐孔食性も向上し
てくるが、その効果はCr含有量が25%程度で飽和
し、30%以上に増やしても耐食性はそれ以上は向上せ
ず、いたずらにめっきコストが高くなるだけであるので
経済的に無駄である。
【0022】次に上層めっき材を純Alに定めた理由
は、該上層めっき材を下層のAl−Cr合金めっき層の
犠牲防食層として作用させ、該下層めっき層の腐食を防
止するためである。即ち純AlはAl−Cr合金に比べ
て電気化学的に卑な電位を有しており、従ってめっき鋼
板におけるめっき層の孔食が上層純めっき層と下層のA
l−Cr合金めっき層の界面にまで達成すると、両者の
電位差によってガルバニック腐食現象が生じ、その後は
上層の純Alめっき層が選択的に腐食される。即ち上層
純Alめっき層は下層のAl−Cr合金めっき層に対し
て犠牲防食作用を発揮し、下層のAl−Cr合金めっき
層の腐食を防止する。
【0023】即ち上層純Alめっき層は、初期孔食発生
時期及び孔食進行時期においてはめっき厚さ方向に腐食
されるが、孔食が上・下めっき層の界面に達した後は、
上記ガルバニック腐食現象により上層純Alめっき層の
全面腐食が優先的に起こり、下層のAl−Cr合金めっ
き層の孔食は全く起こらない。そして上層純Alめっき
層の全面腐食は当該上層純Alめっき層がほぼ完全に溶
出してしまうまで継続されることになり、その結果、下
層のAl−Cr合金めっき層の孔食開始時期は著しく遅
延される。
【0024】その後、上層純Alめっき層のほぼ全てが
溶出してしまうと(従ってめっき表面上下層Al−Cr
合金めっき層が露出した後は)、塩化物イオン等によっ
て下層Al−Cr合金めっき層の腐食が開始されるが、
前述の如くAl−Cr合金めっき層はCrの含有によっ
てそれ自身の耐食性が高められているので、めっき深さ
(厚み)方向への孔食の進行は非常に遅く、従って基材
鋼板との界面にまで孔食が進行して赤錆が発生するまで
には長時間を要することになり、優れた耐食性が発揮さ
れる。
【0025】この様に本発明では、上層純Alめっき層
は、それ自身耐孔食性に優れたものではないが、下層A
l−Crめっき層を保護するための犠牲防食能を有する
めっき層として重要な役割を担い、下層Al−Crめっ
き層は、上層めっきの消失後、被めっき材の腐食時期を
遅らせる高耐孔食性めっき層としての役割を担い、両め
っき層の相乗効果によって、被めっき材である鋼板の腐
食開始時期を大幅に遅らせるものである。そしてこうし
た防食効果は、めっき層の上層を純Alめっき層とし、
下層をAl−Cr合金めっき層とすることによって有効
に発揮される。しかして上層がAl−Crめっき層で、
下層が純Alめっき層である2層構造としたもの(本発
明のめっき層構造とは逆の構造)では、特に端縁部や加
工部、あるいは鋼板表面にまで達する様なめっき層の傷
発生部等を開始点として腐食が始まったとき、上層のA
l−Cr合金めっき層よりも下層の純Alめっき層が優
先的に腐食されることになり、その結果として上層めっ
き層の膨れや剥離現象が生じ、満足な耐食性が得られな
くなる。従って本発明における蒸着めっき表面処理材の
めっき層構造は、上層が純Alめっき層、下層がAl−
Cr合金めっき層からなる2層めっき構造であることが
不可決の要件となる。
【0026】次に、下層Al−Cr合金めっき層の相構
造について述べる。下層Al−Cr合金めっき層は、塩
化物イオン等に対して優れた耐孔食性を有するAl−C
r金属間化合物層を必須成分として含むものでなければ
ならない。Al−Cr合金めっき層中に形成される該金
属間化合物は1種類に限定されるわけではなく、製造条
件やめっき層中のCr含有量等によって、例えばAl13
Cr 2 (θ相)、Al11Cr2 (η相)、Al4 Cr
(ε相)等のAl−Cr金属間化合物の1種又は2種以
上を含むものであってもよい。これらのAl−Cr金属
間化合相は、いずれも耐孔食性に優れるものであるが、
該金属間化合物相の中でも特にAl13Cr2 相(θ相)
は、他の金属間化合物相に比べて耐孔食性が良好であ
り、しかも電気化学的電位が鋼板の電位に対してより卑
な電位を示す(但し、上層純Alめっきの電位よりは必
ず貴である)ために、鋼板に対する犠牲防食効果も発揮
されるので好ましい。この様なところから、下層Al−
Cr合金めっき層中に存在するAl−Cr金属間化合物
相としては、Al13Cr2 相(θ相)が最良である。
【0027】また下層Al−Cr合金めっき層中には、
上述の各種Al−Cr金属間化合物相以外に、他の成分
としてAl相又は/及びCr相を含有するものであるこ
とが望ましい。即ち下層Al−Cr合金めっき層中に含
有されるAlは、下層めっき層の塑性変形能を高めると
共に、上層純Alめっき層との層間めっき密着性を高め
る作用があり、めっき後の加工工程でめっき基材表面層
間あるいは上層/下層めっき層の界面からめっき層の剥
離が生じるのを抑制する作用を発揮する。
【0028】また下層Al−Cr合金めっき層中に含有
されるCr原子は、それらの全てがAl原子と反応して
Al−Cr金属間化合物相を形成する訳ではなく、特に
本発明で規定するCr含有量範囲のうちCr含有量の高
い領域では、下層めっき層中にCrが存在する可能性が
高くなる。そして下層めっき層中のCrは、基本的に塩
化物イオン等に対して腐食を受けない金属であり、下層
めっき層中に微量に存在することによって、めっき層の
耐孔食性向上に寄与する。更にはこの蒸着Al/Al−
Cr合金2層めっき鋼板を高温環境下(たとえば500
℃以上)で使用した場合、下層めっき中に存在する微量
Crは、下層Al−Cr合金めっき層と鋼板との界面で
脆弱なAl−Fe系金属間化合物相が形成されるのを抑
制する働きを有しており、めっき層の耐熱性の向上にも
寄与するからである。
【0029】次に、上層めっきと下層めっきの好ましい
付着量の比率について説明する。両者の付着量比は、上
層純Alめっき層の付着量(g/m2 )を下層のAl−
Cr合金めっき層の付着量(g/m2 )で除した値をR
で表したとき、1/5≦R≦1.5/1を満足する様に
各めっき層の付着量を調整することが望ましい。即ちR
が1/5未満ということは、めっき層全体で考えた場合
に、上層純Alめっき付着量が下層Al−Crめっき付
着量よりも大幅に小さくなることを意味する。
【0030】そして上層純Alめっき層の主な役割は、
上述した如く下層Al−Cr合金めっき層の犠牲防食能
であり、純Alめっき層自身は、下層Al−Cr合金め
っき層に比べて耐孔食性に劣るものであるため、めっき
厚み方向への孔食進展を抑制する能力はないが、全面腐
食による犠牲防食作用によって下層Al−Cr合金めっ
き層の腐食を防止するものであり、こうした上層めっき
としての効果を発揮させるには、下層のめっき付着量に
対して上層めっき付着量を1/5以上にすべきであり、
これ未満では犠牲防食作用を発揮する期間が短くなって
満足のいく耐食性が得られない。
【0031】更に上層純Alめっき層の重要な役割とし
て、めっき層全体としての基材に対する犠牲防食能があ
る。前述した様に、めっき層の基材に対する犠牲防食能
は、一般的には基材の電気化学的電位に対してより大き
な卑な電位を有するめっき層である程、犠牲防食電流が
両者間に十分に流れるため優れたものとなる。
【0032】ところで、下層Al−Cr合金めっき層が
上層純Alめっき層に比べて電気化学的電位がやや貴で
あることは既に述べたが、そのために鋼板との電位差が
上層の純Alめっきと鋼板間の電位差に比べてやや小さ
くなる。
【0033】そして電位差が小さくなれば、その分だけ
犠牲防食電流が低下するためめっき層自身の腐食速度
(溶出速度)が小さくなってめっき層自体の寿命が長く
なるが、一方で端面(切断面)や加工部あるいは鋼板表
面まで達する様なめっき層表面からの傷発生部において
は、鋼板に対する犠牲防食能は純Alめっき層の方が優
れたものになる。この様にめっき層と基材との電気化学
的電位差が小さくなることは、必ずしも全ての条件下で
耐食性を向上させる方向ばかりに有利に作用するもので
はない。
【0034】従って上層純Alめっき層は、被めっき材
である鋼板の端面が露出する様な状況下でも犠牲防食作
用を有効に発揮させる必要があり、そのためには、前記
めっき付着量比率Rが1/5位以上となる様な上層純A
lめっき付着量を確保することが望ましい。以上の様な
理由から、好ましいめっき付着量比率Rを1/5以上に
規定した。
【0035】又、めっき付着量比率Rの好ましい上限値
を1.5/1に規定したのは、以下の理由による。即ち
Rが1.5/1を超えるということは、めっき層全体で
考えた場合に上層純Alめっき付着量が下層Al−Cr
めっき付着量よりも大きくなりすぎることを意味する。
この様な比率の2層めっきは、上層の純Alめっき層の
持つ役割のみを考えれば、犠牲防食作用がより長期的に
発揮されるため有利なめっき層構造であると考えること
もできない訳ではないが、下層の耐孔食性に優れるAl
−Cr合金めっき層の付着量比率が小さくなるために、
本来の目的である高耐食性めっき材としての性能を低下
させる恐れがでてくる。従って、下層Al−Cr合金め
っき層の有する優れた耐食性を有効に発揮させるため、
前記めっき付着量比率Rの上限を1.5/1にすること
が望まれる。
【0036】尚、蒸着Al/Al−Cr合金2層めっき
の全めっき付着量には一切制限がなく、前述した好適め
っき付着量比率Rの条件を満たす範囲で、全めっき付着
量を増加させると、必然的に耐食性はより長期間にわた
って維持される。しかし必要以上にめっき付着量を高め
てもコストアップにつながるだけであり、経済的に好ま
しくない。よって全めっき付着量は、本発明の表面処理
材を適用する部材、使用する環境条件、要求される耐用
年数等によって適宜定めるべきであるが、一般的には耐
食性と経済性の両面を考慮して、10〜100g/m
2 、好ましくは20〜60g/m2 の範囲のめっき付着
量が推奨される。
【0037】次に本発明の高耐食性表面処理材を工業的
に製造する方法について、図1(工程説明図)を例にと
って説明する。予め脱脂・酸洗等により表面清浄化処理
された被処理帯1は、入側真空シール装置2Aを通して
第一蒸着室4aに導入された後、デフレクターロール
3,3を経て第二蒸着室4bへ送られ、各蒸着室4a,
4bで片面ずつ両面に蒸着めっきが施された後、出側真
空シール装置2Bを通して引き出される。
【0038】蒸着室4a,4bは夫々所望の真空もしく
は希薄ガス雰囲気に保持されると共に、該蒸着室4a,
4b内には被処理帯1の走行軌跡の下方に2つの蒸発槽
5A,5Bが設置されており、被処理帯1の走行方向上
流側の蒸発槽5A内にはAl−Cr合金、同下流側の蒸
発層5B内には純Alを装入しておき、電子ビーム加熱
等によって加熱蒸発させることによって、蒸発したAl
−Cr合金及び純Alを走行する被処理帯1の表面に蒸
着させる。
【0039】図2は蒸着めっき状況を拡大して示す模式
図であり、蒸着室4内の被処理帯1走行軌跡の下方に設
置した蒸発槽5a,5bの被処理帯1走行方向上流側の
蒸発槽5aにはAl−Cr合金、下流側の蒸発槽5bに
は純Alを装入し、蒸着室4の側壁に取付けた電子銃G
から発射される電子線Eによって各蒸発槽5a,5b内
の金属を加熱蒸発させる。尚本例では1つの電子銃Gを
使用し、図示しない偏向コイルによる蒸発槽5a,5b
近傍の空間に形成される磁場によって電子ビームEを各
蒸発槽の幅方向に走査させ、また一定周期で蒸発槽間を
ジャンピングさせることによって、各蒸発槽内を連続的
に加熱する。
【0040】電子ビームEによって加熱され蒸発した各
蒸発槽5a,5b内のAl−Cr合金及び純Alは、走
行する被処理帯1の下面に蒸着していくが、該被処理帯
1にはまず上流側の蒸発槽5aから蒸発したAl−Cr
混合蒸気が先に蒸着してAl−Cr合金めっき層を形成
した後、下流側の蒸発槽5bから蒸発した純Alが蒸着
して純Alめっき層を形成する。
【0041】ところで純Alは蒸気圧の高い金属であ
り、電子ビーム加熱方式等によって容易に加熱蒸発させ
ることができる。これに対しCrは昇華性金属であって
蒸発挙動がAlとは異なり、固体Cr表面から直接Cr
蒸気が発生するので、通常の溶融金属浴からの蒸発に比
べて蒸発量が不安定になり易い。その理由は、蒸発量
(蒸発速度)の安定性は、蒸発面の温度と蒸発面積の安
定性に大きく影響され、溶融金属の湯面はほぼ一定に保
つことができるのに対し、固形の昇華性金属では経時的
に蒸発面積が著しく変わってくるからである。
【0042】そこで本発明においてAl−Cr合金めっ
き層を形成するに当たっては、蒸発量の制御を容易にす
るためCrをAlと合金化することによって溶融浴と
し、この溶融浴からAlとCrを同時に加熱蒸発させる
ことによって蒸発速度を容易にコントロールできる様に
する。
【0043】尚Al−Cr合金浴の組成と該合金浴表面
から蒸発するAlとCrの混合蒸気組成は、両者の蒸気
圧の差から必ずしも同一とはならないが、ある任意の合
金浴組成に対して当該浴温度を一定としたときに発生す
る混合蒸気組成は一義的に決まってくるので、本発明で
定める下層めっき層のCr含有量と合致する混合蒸気が
発生する様にAl−Cr合金浴組成を定めれば、目標組
成の下層めっき(Al−Cr合金めっき)層を容易に得
ることができる。
【0044】ところで上記図1,2に示した様な方法で
Al−Cr合金/純Al蒸着めっきを行なう場合、蒸発
槽5a,5bの槽間距離Dに対して蒸発浴面−鋼帯間の
距離Hvを大きめに設定すると、蒸発槽5aから発生し
たAl−Cr混合蒸気と蒸発槽5bから発生した純Al
蒸気が被処理帯1表面に到達するまでの間に一部混合さ
れ、下層Al−Cr合金めっき層と上層純Alめっき層
との間に両者の拡散反応層である中間層が形成される。
この中間層は下層Al−Cr合金めっき層よりもCr含
有量の少ないAl−Cr合金めっき層となるが、この様
な中間層が形成されたとしても得られる表面処理鋼材の
性能、殊に耐食性には何らの悪影響を及ぼすものではな
く、むしろ下層めっきと上層めっきの親和性が向上して
めっき層自身の層間密着性が高まるので好ましく、従っ
てこの様な中間層を有するめっき層構造を有するものも
本発明の技術的範囲に含まれる。
【0045】但し、製品仕様として上層の純Alめっき
付着量を少なめに設定し、下層のAl−Cr合金めっき
付着量を多めに設定した場合は、該中間層の形成によっ
て上層純Alめっき層の付着量が前述した目標値よりも
小さくなり、一方該中間層をAl−Cr合金めっき層の
範疇に含めると下層Al−Cr合金めっき層の付着量が
大きくなりすぎて、先に定義した上・下層めっき付着量
比率Rが好適範囲を外れる場合がでてくる。従って蒸着
めっきに当たっては、前述した蒸着槽間距離Dやめっき
浴表面−鋼帯間距離Hvをその都度適正に調整し、上記
の好適付着量比Rを確保することが望まれる。もっとも
本発明では蒸着室の構造や蒸発槽の配置等まで制限を加
えるものではなく、蒸着装置固有の特性等も考慮してそ
の都度最適の条件を設定すればよい。
【0046】尚、Hvを小さくするかあるいはDを大き
くすると、Al−Cr混合蒸気と純Al蒸気が、被めっ
き帯表面に到達するまでの間で混合されにくくなり、上
述の中間めっき層が殆ど形成されなくなる。しかし電子
ビームEは蒸発槽と被めっき帯の間の空間を通過させな
ければならないので最小のHvには自ずと制限があり、
また、蒸発槽間距離Dについても、電子ビームEの蒸発
槽間ジャンピング距離Jが電子銃本体の能力及び蒸着室
の構造等によって制約をうけるため、当然のことながら
上限が存在する。従って用いる蒸着室の構造、電子銃−
蒸発槽−被処理帯の関係によっては該中間層が自ずと形
成される場合もでてくる。よってこの様な場合も考慮し
て所望のめっき付着量比率R(特に加減値)が確保でき
る様に製造条件等を適宜選定することが好ましい。
【0047】又、本発明方法を実施する際の蒸発原料の
加熱蒸発源としては、電子ビーム加熱方式を規定した
が、それは以下の理由によるものである。即ち電子ビー
ムを発生させるための電子銃(EBガン)は高価ではあ
るがメンテナンス性に優れ、電子ビームの発生・停止を
容易に行なうことができるという点で有利な加熱・蒸発
手段である。しかも電子ビームは、蒸発させたい金属原
料の表面に直接照射することができるため、加熱・蒸発
効率が高く、結果として、蒸発原料の蒸発速度を大きく
することが可能である。更には電子ビーム加熱方式の他
の特徴として、複数個の蒸発槽内に各々に分けて装入さ
れた各蒸発原料に対して1台の電子銃から発生される電
子ビームを極めて短いサイクル時間毎に各蒸発槽間にジ
ャンピングさせつつ各蒸発槽表面を走査させることによ
って、各々の蒸発原料を一斉に加熱蒸発させることがで
き、複数元素からなる各種合金めっきや多層めっきが容
易に行なえるという利点がある。これらの点から、各種
金属材表面に連続的に蒸着めっき処理するための加熱方
式としては、電子ビーム加熱方式が最も有力な手段であ
るからである。
【0048】また、本発明において蒸着Al/Al−C
r合金2層めっき材の更なるめっき密着性の向上及びめ
っき層中の欠陥の低減を目的として、発生させた金属蒸
気を金属基板表面に蒸着させる前に、何らかの手法によ
り該蒸気の一部をイオン化させて蒸着させる、いわゆる
イオンプレーティング法も本発明における好ましい蒸着
めっき法の一つとして奨励される。Al、Crの金属蒸
気をイオン化させる手法は特に制限されないが、好まし
い方法としてはRF(高周波)法、アーク放電法等が推
奨される。以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に
説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限
を受けるものではない。
【0049】
【実施例】図1及び図2に示した様な連続蒸着めっき設
備を使用し、以下に示す種々の条件で蒸着A1/A1−
Cr合金2層めっき鋼板を作製した。 (蒸着めっき条件) 被めっき帯:冷延鋼板(低炭素A1キルド鋼) 被めっき帯前処理:アルカリ電解脱脂−水洗−乾燥後、
2 −N2 混合ガスを用いたガス還元炉へ導入し、鋼板
表面を還元により清浄化前処理する。
【0050】めっき前の鋼帯温度:200〜350℃ 蒸発原料:A1(図1の6Bに相当)及びA1−Cr合
金(図1の6Aに相当)蒸発槽、 A1用蒸発槽:高純度電融アルミナ蒸発槽(図1の5B
に相当)、A1−Cr合金用蒸発槽:高純度電融アルミ
ナ蒸発槽(図1の5Aに相当) 蒸発原料の蒸発槽への供給:A1浴(A1ワイヤーによ
る供給)、A1−Cr合金浴(A1−Crブリケットに
よる供給) 蒸発原料の加熱蒸発源:ピアス型電子銃(最大出力30
0kw) 蒸着室真空度:1×10-2Pa以下 めっき付着量及びめっき組成のコントロール方法:電子
ビームのトータル出力及びトータル出力のA1浴及びA
1−Cr合金浴への配分比のコントロールと、被処理帯
1の走行速度の組み合わせによる制御 得られた各蒸着めっき鋼板の耐食性を下記の評価試験
1,2によって調べ、表1,2に示す結果を得た。尚表
1,2には、比較のため従来の溶融A1めっき鋼板及び
そのクロメート処理物の耐食性評価結果を併記した。
【0051】(耐食性評価試験) ・評価試験1:めっき層表面からカッターナイフによる
クロスカット傷及びエリクセンによる張り出し加工(張
り出し高さ7mm)を付与し、端面をテープシールした
ものを供試材とし、塩水墳霧試験(5%NaC1水溶
液、35℃)を行って、各供試材の腐食による赤錆が発
生するまでの試験時間で評価した。
【0052】 ◎:腐食性優れる :赤錆発生5000時間以上 △:腐食性やや劣る: 〃 1000〜5000時間 ×:腐食性劣る : 〃 1000時間以内 ・評価試験2:切断面が露出された各供試材を、食塩水
溶液中に浸漬し、切断面の鋼板部から赤錆が発生するま
での時間で評価した。
【0053】 ◎:腐食性優れる :赤錆発生100時間以上 △:腐食性やや劣る: 〃 24〜100時間 ×:腐食性劣る : 〃 24時間以内
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】表1,2からも明らかである様に、No.
1〜12,23〜25は本発明の規定要件を満たす実施
例であり、いずれも優れた耐食性評価結果が得られてい
る。これに対しNo.13〜22,26〜35は下記の
通り規定要件のいずれかを欠く比較例であり、満足な耐
食性が得られない。
【0057】No.13,14,26,27:A1もし
くはA1−Cr合金よりなる単層構造の蒸着めっきであ
る。 No.15,28:下層A1−Cr合金めっき層中のC
r含有量が不足する。 No.16〜22,30〜35:上層A1めっき層を下
層A1−Cr合金めっき層の付着量比率(R)が本発明
の規定範囲を外れている。
【0058】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、下
層をA1−Cr合金めっき、上層を純A1めっきとする
2層構造の蒸着めっきを施すと共に、下層A1−Cr合
金めっき中のCr含有量を特定し、且つ上層A1めっき
と下層A1−Cr合金めっきの付着量比率を特定するこ
とによって、ハロゲン化物イオン等が存在する厳しい腐
食環境下においても優れた耐食性を示す表面処理金属材
を提供し得ることになった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 綾部 東太 兵庫県加古川市金沢町1番地 株式会社神 戸製鋼所加古川製鉄所内 (72)発明者 加藤 淳 兵庫県加古川市金沢町1番地 株式会社神 戸製鋼所加古川製鉄所内 (72)発明者 三宅 昭二 兵庫県加古川市金沢町1番地 株式会社神 戸製鋼所加古川製鉄所内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属基材上に、下層めっき材がCr含量
    1〜30重量%のAl−Cr合金、上層めっき材が純A
    lよりなり、上層めっき材と下層めっき材の付着量の比
    率(R)が、1/5≦R≦1.5/1の要件を満たす2
    層構造の蒸着めっき層が形成されたものであることを特
    徴とする高耐食性表面処理金属材。
  2. 【請求項2】 下層めっき材が、Al−Cr金属間化合
    物相とAl相及び/又はCr相を含むものである請求項
    1記載の表面処理金属材。
  3. 【請求項3】 下層めっき材中のAl−Cr金属間化合
    物相が、Al13Cr2 相(θ相)を主体とするものである請
    求項2記載の表面処理金属材。
  4. 【請求項4】 下層めっき材と上層めっき材の界面に、
    中間層として両層めっき材の拡散反応層が形成されたも
    のである請求項1〜3のいずれかに記載の表面処理金属
    材。
  5. 【請求項5】 蒸着室内を通して金属基材を連続走行さ
    せると共に、該蒸着室内には金属基材の走行方向に対し
    て上流側にAl−Cr合金蒸発槽、下流側にAl蒸発槽
    を配置してAl−Cr合金と純Alを加熱蒸発せしめ、
    めっき層の下層側がAl−Cr合金、上層側が純Alよ
    りなる蒸着めっき層を形成することを特徴とする高耐食
    性表面処理金属材の製法。
JP23974592A 1992-09-08 1992-09-08 高耐食性表面処理金属材及びその製法 Withdrawn JPH06228737A (ja)

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