JPH0653023A - 酸化物磁性体材料 - Google Patents

酸化物磁性体材料

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JPH0653023A
JPH0653023A JP4237874A JP23787492A JPH0653023A JP H0653023 A JPH0653023 A JP H0653023A JP 4237874 A JP4237874 A JP 4237874A JP 23787492 A JP23787492 A JP 23787492A JP H0653023 A JPH0653023 A JP H0653023A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 高周波帯域(1MHz前後)において、磁気
損失が少なく、かつ磁気損失が極小となる温度が40〜
60℃以上である磁性体材料、およびこれを用いて構成
した、低発熱・高効率で熱暴走しにくいスイッチング電
源を提供する。 【構成】 特定比率のFe23,MnO,ZnOよりな
るMnZn系フェライトに、特定量のCaO、SiO2
およびMxz(MxzはZrO2、HfO2、Ta25
Cr23、MoO3、WO3、Al23、Ga23、In
23、GeO2、SnO2、Sb23、Bi23より選ば
れた少なくとも1種類以上)を含有する焼結体であるこ
とを特徴とする酸化物磁性体材料。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、インダクタンス部品、
電源用トランスコア等に用いられる酸化物磁性体材料に
関し、特に高周波特性に優れた低損失MnZn系フェラ
イト磁性体に関する。
【0002】
【従来の技術】近年のエレクトロニクス技術の発展にと
もなう機器の小型化・高密度化により、使用周波数の高
周波化が進んでいる。例えばスイッチング電源用トラン
ス磁芯その他に用いられる磁性体材料においても、高周
波化への対応が必要とされ、特に小型化した場合の発熱
を防止するために、高周波において低磁気損失であるこ
とが要求されている。
【0003】例えば磁芯材料等に適用される磁性体材料
には、大きく分けて金属系材料と酸化物フェライト系材
料がある。金属系の材料は、飽和磁束密度・透磁率とも
高いという長所があるが、電気抵抗率が10-6〜10-4
Ω・cm程度と低いため、高周波においては渦電流に起
因する磁気損失が増大するという欠点があった。この欠
点は、磁性体の厚さを薄くすることによって改善される
ため、金属を薄い箔状に加工し絶縁体をはさんでロール
状に巻いたものも作られているが、薄体化には約10μ
m程度と限界があり、また複雑形状のものが作りにく
い、高コストであるといった問題点がある。このため、
100kHz程度の周波数帯域までしか使用不可能であ
った。
【0004】一方フェライト系材料は、飽和磁束密度は
金属系材料の1/2程度と低い。しかしながら電気抵抗
率は、通常用いられているMnZn系のもので1Ω・c
m程度と、金属系材料に比べてはるかに高く、また、C
aOやSiO2等の添加物を用いることにより、電気抵
抗率をさらに10〜数百Ω・cm程度まで高めることが
でき、渦電流に起因する磁気損失が高周波数まで比較的
小さく、特別な工夫をすることなく使用可能である。ま
た複雑形状のものも容易に作れ、かつ低コストであると
いった利点を持つ。このため、例えば100kHz以上
のスイッチング周波数での電源用トランス磁芯材料とし
ては、このフェライト系の材料が一般に用いられてい
た。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うなフェライト系材料といえども、500kHz以上に
なると渦電流に起因する磁気損失が増大して使用するこ
とができないという課題がある。
【0006】また、磁気損失の温度係数が室温付近で正
であると、実使用時にトランスが磁気損失により発熱
し、そのために温度が上昇し、温度上昇にともないさら
に磁気損失が増大して発熱が大きくなることを繰り返
し、熱暴走を起こす危険性がある。このため、室温付近
での磁気損失の温度係数が負で、実際に使用する60〜
80℃付近の温度で、磁気損失が最小となるような温度
特性を持つことが要求される。
【0007】ところが充分低磁気損失な材料が無い上
に、比較的磁気損失が低い材料では、一般に磁気損失最
小温度が室温付近にあって熱暴走を起こしやすく、一方
磁気損失最小温度が60℃以上にあるような材料は、非
常に磁気損失が大きいという問題点があった。従って、
超低磁気損失で同時に温度特性も良い材料は、現在まで
得られていないという課題があった。
【0008】本発明は、前記従来技術の課題を解決する
ため、高周波における磁気損失が極めて低く、かつ温度
特性に優れた磁性体材料を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、主組成とし
て、Fe23成分を53mol%以上59mol%以
下、MnO成分を34mol%以上44mol%以下、
ZnO成分を9mol%以下含有し、かつ副成分として
0.05重量%以上0.3重量%以下のCaO成分およ
び0.005重量%以上0.05重量%以下のSiO2
成分を含有する焼結体の構成または、主組成としてFe
23成分を53mol%以上59mol%以下、MnO
成分を34mol%以上44mol%以下、ZnO成分
を9mol%以下含有し、かつ副成分として0.05重
量%以上0.3重量%以下のCaOと、0.005重量
%以上0.05重量%以下のSiO2とを必ず含み、さら
に0.01重量%以上0.2重量%以下のMxz(但
し、MxzはZrO2、HfO2、Ta25、Cr23
MoO3、WO3、Al23、Ga23、In23、Ge
2、SnO2、Sb23、Bi23より選ばれた少なく
とも1種類以上)を含有する焼結体の構成の何れかの酸
化物磁性体材料によって、上記目的を達成した。
【0010】
【作用】前記した本発明の構成によれば、特定組成範囲
内のMnZn系フェライトもしくはMn系フェライト
(以下特に断わらない限りMnZn系フェライトはこの
両者を示す)に、少なくとも特定量のCaOおよびSi
2を添加し、これに好ましくはさらに特定量のMxz
(MxzはZrO2、HfO2、Ta25、Cr23、M
oO3、WO3、Al23、Ga23、In23、GeO
2、SnO2、Sb23、Bi23より選ばれた少なくと
も1種類以上)を添加することにより、磁気損失の温度
特性に優れ、かつ磁気損失の低い磁性体材料とすること
ができる。
【0011】本発明において、MnZn系フェライトの
主組成を限定する理由は、磁気損失の絶対値を減少さ
せ、同時に磁気損失の温度特性を制御する必要性からで
ある。
【0012】副成分の役割は、上記MnZn系フェライ
トの組成範囲内で、主に電気抵抗値を増大させ、渦電流
にともなう磁気損失を低下させるものである。
【0013】副成分の添加量の下限は、磁気損失低下の
効果が表れるのに必要な最低限度である。一方、上限を
設定する理由は、添加量が増加し過ぎると透磁率の低下
等を招き、磁気損失を増大させるためである。
【0014】これらの副成分は、一種類のみの単独添加
でも効果が無くはないが、十分低損失な試料を得るため
には、CaOおよびSiO2の同時添加は必須である。
さらに、CaOおよびSiO2と、Mxz(MxzはT
25、ZrO2、Ga23、GeO2、Sb23、Al
23、HfO2、In23、WO3、Bi23)の3種類
の同時添加で、より磁気損失を低下させることができ
る。
【0015】Mxzとして2種類以上の金属酸化物を用
い、CaOおよびSiO2と合わせて4種類以上の複合
添加とした場合、Mxzの内の一種類の添加量が下限で
ある0.01重量%未満であっても、用いられたMxz
全ての合計量が0.01重量以上であれば、複合添加に
よる低損失化の効果は現れる。もちろん、複数の種類の
xzそれぞれが添加範囲内であっても問題はなく、C
aOおよびSiO2のみの場合に比べて磁気損失を低下
させることができる。
【0016】
【実施例】一般にフェライトの磁気特性のうち、飽和磁
束密度・キュリー温度・損失極小温度などは、その主組
成に依存し、一方、透磁率・残留磁束密度・保持力・磁
気損失などは、主組成の影響も受けるが、微細構造によ
って支配される特性であるとされている。また、高周波
で低損失なMnZn系フェライトとしては、飽和磁束密
度・キュリー温度・損失極小温度・透磁率が高いことが
必要とされている(「粉体および粉末冶金」第34巻5
号P191)。
【0017】飽和磁束密度は、ZnO量がある程度多
く、Fe23量が多いほど増加する。しかしながら、Z
nO量が多すぎるとキュリー温度が低下し、またFe2
3量が多すぎると透磁率が低下することが知られてい
る。このため低損失MnZn系フェライトの主組成とし
ては、Fe23を53〜54mol%程度、ZnOを9
〜12mol%程度含有するものが最適とされている
(「エレクトロニク・セラミクス」1985年冬号P4
4)。実際に開発されている低損失フェライトも、ほと
んどがこの範囲内であり、低損失化は、この付近の主組
成を用い、添加物・微細構造による検討が中心であっ
た。
【0018】一方、MnZn系フェライトの磁気損失極
小温度については、従来は透磁率の温度特性によって説
明がなされていた。すなわち、MnZn系フェライトの
透磁率の温度変化を測定すると、一般に2つの極大が現
れる。1つはキュリー温度直下の極大で、ホプキンソン
効果によるプライマリーピークと呼ぶ。他の1つは室温
近傍での極大で、セカンダリーピークと呼ぶ。このセカ
ンダリーピークの温度で、磁気損失が極小になると言わ
れていた。
【0019】このセカンダリーピークは、結晶磁気異方
性定数K1の符号が温度上昇に伴って負から正の値に変
わるK1=0の温度に一致する。K1は、温度上昇に対し
て単調に増加するが、Fe2+は負のK1を持つため、F
2+の量が増加すると(すなわちFe23量が増加する
と)、セカンダリーピークの温度は低温側に移動する。
従って、主組成のFe23量が多いと極小損失温度が低
くなり過ぎるため、Fe23量は、54mol%程度以
下が一般的であった。
【0020】発明者等は、同一の添加物条件の元で、主
組成比の異なるMnZn系フェライトを実際に作製し、
主組成の効果を詳細に検討した。その結果、従来用いら
れていたものとは全く異なる、Fe23が過剰でZnO
量の少ない主組成において、特定の添加物を用いること
により、磁気損失極小温度が60℃以上で、かつ100
kHz〜数MHzでも低磁気損失なフェライトが得られ
ることを見いだした。
【0021】発明者等の検討によると、磁気損失の絶対
値のMnZn系フェライト主組成に対する依存性は極め
て大きく、Fe23量が増加するに従い低損失化した。
また、その主組成に効果的な副成分を複合添加すること
で、さらに磁気損失の絶対値を低減させることができ
る。すなわち特定の主組成を選択し、これに特定量のC
aOおよびSiO2を添加することにより、低磁気損失
のものが得られる。これにさらにZrO2、HfO2、T
25、Cr23、MoO3、WO3、Al23、Ga2
3、In23、GeO2、SnO2、Sb23およびB
23より選ばれる少なくとも1種類のMxzを添加す
ることによって、さらに低磁気損失な材料が実現でき
る。このMxzを含む発明の好ましい構成においては、
xzの粒界層部分の濃度が、粒子内部の濃度の5倍以
上となっていると、低磁気損失の効果がさらに向上する
ため好ましい。
【0022】特に、Mxzとして、ZrO2と他のもう
一種類の金属酸化物を複合して用いることは、低損失化
と同時に、焼結体のチッピングや欠けを防止する点で有
効である。なお、本発明であげた以外の添加物、例えば
TiO2,CoO,NiO,V25,Nb25等を加え
ても、その量が特に多くない限り差支えない。
【0023】またMxzの粒界層部分の濃度が、粒子内
部の濃度の5倍以上であるという本発明の好ましい構成
によれば、さらに損失を低下させることが出来る。
【0024】しかしながら、CaO,SiO2およびMx
zを適当量添加していたとしても、主組成が異なれ
ば、充分低損失な試料は得られない。また主組成が異な
ると、添加物による低損失化が認められなくなる場合も
ある。従って主組成、特にFe 23量が重要である。最
も低損失な材料は、主組成、副成分の条件を同時に満た
すことで実現できる。
【0025】次に、磁気損失極小温度については、測定
周波数によっても変化するが、1MHz近傍以上の高周
波領域では、従来説のセカンダリーピークの現われる温
度とは必ずしも一致せず、実際は数10℃程度低温側と
なることが多いことが確認できた。この低下幅はMnZ
n系フェライト主組成によって変化し、同程度のFe 2+
量であっても、Mn/Zn比で大きく変化した。特に、
従来最適とされているFe23を53〜54mol%程
度、ZnOを9〜12mol%含む組成では、そのずれ
幅が大きく、1MHzでの極小損失温度は40℃程度以
下であった。一方ZnOが9mol%以下では、ZnO
量が減少するに従いセカンダリーピークの現われる温度
と1MHz付近での極小損失温度との差は少なくなり、
逆に高温側にシフトする場合もある。このため、低損失
の実現できるFe23がかなり多い組成であっても、Z
nO量を減らすことにより、極小損失温度は40〜60
℃以上となった。
【0026】一方添加物による低損失化については、C
aOおよびSiO2を同時に添加し、これらを粒界に偏
析させることにより高電気抵抗化させ、渦電流損失を減
少させることができるが、これにさらに選択された3番
目の添加物を用いることで、より低損失化できる。しか
しながら発明者等の検討によると、この3番目の添加物
についても粒界に析出させることが重要である。添加物
を多量に用いると、必ず電気抵抗は高くなり、渦電流損
失は減少するが、添加物のフェライト相への固溶は逆に
ヒステリシス損を増加させることになる。従って、添加
物量はできる限り少なくし、粒界に薄く均一に析出させ
ることにより、低損失な材料が得られる。
【0027】その他低磁気損失MnZn系フェライトに
必要な特性としては、焼結体の相対密度が4.6g/c
3以上であることが望ましい。焼結密度が低いと実効
断面積が減少するために損失が増大する。また焼結密度
が低いと、焼成の冷却時に雰囲気の影響を受け易くな
り、特にFe23が多いような組成では、精密に雰囲気
制御を行わなければ本来の特性が得られにくくなる場合
があり、製造時の歩留まりを下げる原因となる。
【0028】次に、低磁気損失MnZn系フェライトに
必要な特性としては、透磁率として700以上1600
以下程度の範囲内が望ましい。また、電気抵抗率は、直
流抵抗率が300〜2kΩ・cm程度、1MHzの交流
抵抗率が50Ω・cm程度以上が望ましい。なお、透磁
率や電気抵抗率は、結晶粒径によって変化し、粒径が小
さすぎると透磁率が低くなり、また大きすぎると電気抵
抗が低くなる傾向にある。従って、平均結晶粒径は10
μm以下で、2〜5μm程度が望ましい。
【0029】本発明のMnZn系フェライト材料は、測
定周波数がMHz帯域であっても、40〜60℃以上の
磁気損失極小温度を持ち、かつ超低磁気損失を示す。従
って、本材料を磁気コアとして用いたスイッチング周波
数が100kHz〜5MHzのスイッチング電源は、小
型・高効率で、熱暴走する危険性が低い。
【0030】本発明の酸化物磁性体材料はこのような特
性を有するため、焼結体をスイッチング周波数100k
Hz〜5MHzのスイッチング電源の磁芯として使用す
ると、より効果が顕著となるため好ましい。
【0031】以下、Mxzとして一部のものを用いた場
合を中心に、実施例によって本発明を説明するが、実施
例5および6に示すように、他の本発明の請求項に挙げ
た添加物を用いた場合にも、程度の差はあれ同様の効果
が認められた。
【0032】(実施例1)出発原料に純度99.5%の
α−Fe23、MnCO3、ZnOの各粉末を用いた。
これらの粉末を(表1)の組成比となり、合計重量が3
00gとなるようにそれぞれ秤量し、ボールミルにて湿
式10時間混合粉砕し、乾燥させた。これらの混合粉末
を850℃で2時間空気中で仮焼した後、CaOが0.
1重量%、SiO2が0.02重量%となるように、C
aCO3とSiO2を添加し、再度ボールミルにて10時
間、湿式混合粉砕して乾燥させ、仮焼粉末とした。
【0033】これらの仮焼粉末にポリビニルアルコール
の5重量%水溶液を10重量%加え、30#のふるいを
通過させて造粒した。これらの造粒粉を一軸金型成形
し、この成形体を500℃で1時間、空気中でバインダ
アウトした後、次の2種類の焼成条件で焼成した。
【0034】焼成条件Aでは、焼成温度を1200℃と
し、昇温時および最高温度保持時をフェライトの平衡酸
素分圧に応じてO2雰囲気制御し、冷却時窒素中の雰囲
気とした。この時、焼成時間及び成形時の圧力を、焼結
体の平均結晶粒径が3〜5μm程度、焼結体密度がほぼ
4.7g/cm3程度で、4.6〜4.8g/cm3の範
囲内に入るように変化させた。
【0035】焼成条件Bでは、同様の温度雰囲気条件
で、焼成時間及び成形時の圧力を、焼結体の平均結晶粒
径が4μm以下、焼結体密度がほぼ4.4g/cm3程度
で、4.3〜4.6g/cm3の範囲内に入るように変
化させた。
【0036】特性の測定は、得られた焼結体より外径2
0mm、内径14mm、厚さ3mmのリング状試料を切
り出し、1MHz・50mTにおける磁気損失を、20
℃〜120℃の間で20℃きざみで測定した。磁気損失
の測定方法はリング状フェライトコアに絶縁テープを一
層巻いた後、線径0.26mmφの絶縁導線を全周にわ
たって一層巻いた試料を準備し、交流B−Hカーブ・ト
レーサーを用いて測定した。結果を(表1)に示した。
【0037】
【表1】
【0038】(表1)の焼成条件Aの結果より明らかな
ように、主組成の効果について、Fe23が53mol
%以上59mol%以下、MnOが34mol%以上4
4mol%以下、ZnOが0mol%以上9mol%以
下の範囲内で、40〜60℃以上に損失極小温度を持
ち、かつ損失が700kW/m3以下と低損失であった。
さらに、Fe23が55mol%以上59mol%以
下、MnOが35mol%以上42mol%以下、Zn
Oが1mol%以上6mol%以下の範囲内で、損失は
300kW/m3程度以下と超低損失となった。
【0039】しかしながら、焼成条件によって特性は異
なり、密度が4.4g/cm3程度で、4.6g/cm3
満となる焼成条件Bでは、より高密度となる焼成条件A
に比べて全体に損失が大きく、特にFe23が58mo
l%以上でその傾向が顕著になった。これは密度が低い
ために実効断面積が減少する効果と、焼成冷却時に窒素
雰囲気により焼結体内部まで部分的に還元され、不均質
な焼結体となったためと考えられる。また損失極小温度
は、焼成条件BではAに比べて低くなる傾向があった。
この理由は、同じく冷却時の還元によりFe2+が増大し
たためと考えられる。従って、焼結密度は高い方が望ま
しい。
【0040】(実施例2)実施例1と同様の方法で、
(表2)の組成比となり、CaOが0.1重量%、Si
2が0.02重量%、Ta25が0.1重量%となる
ように、CaCO3とSiO2とTa25を添加し、実施
例1とおなじ焼成条件AおよびBで焼結体を作製した。
得られた焼結体より、実施例1と同様の方法・条件で磁
気損失の温度特性を測定した。結果を(表2)に示し
た。
【0041】
【表2】
【0042】(表2)の焼成条件Aの結果より明らかな
ように、実施例1と同様にFe23が53mol%以上
59mol%以下、MnOが34mol%以上44mo
l%以下、ZnOが0mol%以上9mol%以下の範
囲内で、40〜60℃以上に損失極小温度を持ち、かつ
損失が600kW/m3以下と低損失であった。さらに、
Fe23が55mol%以上59mol%以下、MnO
が35mol%以上42mol%以下、ZnOが1mo
l%以上6mol%以下の範囲内で、損失は200kW
/m3程度以下、最低で90kW/m3と超低損失となっ
た。この結果を、実施例1の(表1)の同じ焼成条件A
と比較すると、CaOとSiO2以外にさらにTa25
を添加した(表2)では、主組成にもよるが、磁気損失
が約100kW/m3程度低下した。
【0043】一方、より低密度となる焼成条件Bでは、
実施例1と同様全体に損失が大きく、また損失極小温度
は低くなる傾向があった。従って、この3成分添加系に
おいても、焼結密度は高い方が望ましい。
【0044】次にこれらの試料を破壊し、その破断面を
観察すると、いずれも粒界破壊を生じ、平均結晶粒径
は、約4μmであった。そこで、No.14,17,2
0,26,29の試料(焼成条件A,Bとも)につい
て、破断面のTa元素の分布を、SIMS(2次イオン
質量分析装置)を用いて測定した。まず、分析範囲を3
μm径に絞って、同一試料について数十点分析したとこ
ろ、Ta濃度は分析位置によって若干の差があった。そ
こで分析範囲を50×50μmとして、平均的なTa濃
度を求めることとし、破断面からのTa元素の深さ方向
のプロファイルを測定した。その結果、いずれの試料に
おいても、Ta濃度は、破断面(すなわち粒界部分)か
ら深くなる(粒子内部に進む)に従って低下し、数十n
m程度の深さからあとはほぼ一定となった。そこで粒界
部分と、濃度がほぼ一定となった粒子内部のTa濃度を
比較してみると、いずれの試料においても粒界部分の濃
度が約10倍高くなっていた。
【0045】(実施例3)実施例1と同様の方法で、組
成比がFe23=56.5mol%、MnO=40mo
l%、ZnO=3.5mol%となり、合計重量が30
0gとなるようにそれぞれの粉体を秤量し、ボールミル
にて湿式10h混合粉砕し、乾燥させた。この混合粉末
を800℃で2時間空気中で仮焼した後、CaOとSi
2が(表3)の量となるように、CaCO3とSiO2
を添加し、再度ボールミルにて10h、湿式混合粉砕し
て乾燥させ、仮焼粉末とした。これらの仮焼粉末より、
実施例1の焼成条件Aと同様の方法で焼結体(a)を作製
した。
【0046】また同様に、組成比Fe23=54mol
%、MnO=37.5mol%、ZnO=8.5mol
%で、CaOとSiO2が(表4)の量となるように、
実施例1の焼成条件Bで焼結体(b)を作製した。
【0047】これらの焼結体について、実施例1と同方
法・同条件(1MHz,50mT)で磁気損失の温度依
存性を測定した。その結果、焼結体(a)では、磁気損失
はいずれのCaOとSiO2量においても、80℃で極
小値を示した。また焼結体(b)では、いずれのCaOと
SiO2量においても、60℃で極小値を示した。この
極小磁気損失値をkW/m3の単位で(表3)または(表
4)に示した。
【0048】
【表3】
【0049】
【表4】
【0050】(表3)および(表4)より明らかなよう
に、CaOまたはSiO2の単独添加では高磁気損失で
あるが、両者を組み合わせることにより低磁気損失化
し、特に0.05≦CaO≦0.3重量%、0.005
≦SiO2≦0.05wt%の範囲内にあるときは、焼
結体(a)で磁気損失が300kW/m3前後、焼結体
(b)で磁気損失が400kW/m3程度以下と低磁気損
失であった。
【0051】(実施例4)実施例3と同様の方法で、組
成比がFe23=56.5mol%、MnO=40mo
l%、ZnO=3.5mol%からなり、ZrO2
0.05重量%、CaOとSiO2が(表5)の量とな
るように、ZrO2,CaCO3およびSiO2を添加
し、実施例1の焼成条件Aで焼結体(c)を作製した。ま
た組成比がFe23=54mol%、MnO=37.5
mol%、ZnO=8.5mol%からなり、ZrO2
が0.05重量%、CaOとSiO2が(表6)の量と
なるように、ZrO2,CaCO3およびSiO2を添加
し、実施例1の焼成条件Bで焼成した焼結体(d)を作製
した。得られた焼結体より切り出したリング状試料につ
いて、実施例3と同じ条件で磁気損失の温度依存性を測
定した。その結果、焼結体(c)では、いずれのCaOと
SiO2量においても80℃で極小値を示した。また焼
結体(d)では、いずれのCaOとSiO2量においても
60℃で極小値を示した。この極小磁気損失値をkW/
3の単位で(表5)または(表6)に示した。
【0052】
【表5】
【0053】
【表6】
【0054】実施例2の(表3)および(表4)と、
(表5)および(表6)を比較すると明らかなように、
どちらの焼結体においても、CaOとSiO2量のあら
ゆる組合せに対して、さらにZrO2を添加したものは
より低磁気損失化した。しかしながら、もともと磁気損
失の低い、0.05≦CaO≦0.3重量%、0.00
5≦SiO2≦0.05wt%の範囲内に対するZrO2
の添加が、磁気損失の絶対値から考えて、効果的であっ
た。
【0055】(実施例5)実施例1と同様に、組成比が
Fe23=56.5mol%、MnO=39.5mol
%、ZnO=4mol%となり、合計重量が300gと
なるようにそれぞれの粉体を秤量し、ボールミルにて湿
式10時間混合粉砕し、乾燥させた。この混合粉末を8
00℃で2時間空気中で仮焼した後、CaOが0.1重
量%、SiO2が0.02重量%となり、ZrO2、Hf
2、Ta25、Cr23、MoO3、WO3、Al
23、Ga23、In23、GeO2、SnO2、Sb2
3、Bi23が(表7)の量となるように、CaCO3
およびそれぞれの金属酸化物を添加した焼結体を、実施
例1の焼成条件Aで作製した。
【0056】得られた焼結体より切り出したリング状試
料について、実施例1と同じ条件で磁気損失の温度依存
性を測定したところ、損失はいずれの試料においても、
80℃で極小値を示した。この極小損失値をkW/m3
単位で(表7)に示した。
【0057】
【表7】
【0058】(表7)より明らかなように、CaOとS
iO2のみの添加に比べ、さらにZrO2、HfO2、T
25、Cr23、MoO3、WO3、Al23、Ga2
3、In23、GeO2、SnO2、Sb23、Bi2
3を複合して添加したものは、特定の添加範囲内でより
低磁気損失化し、最低損失値はGeO2=0.05重量
%添加で110kW/m3と超低損失であった。
【0059】次にこれら各副成分を用いた試料のうち、
最も低損失となった添加量(0.05または0.2重量
%)の試料について、実施例2と同様の方法で、破断面
からの各添加金属元素の深さ方向のプロファイルを測定
した。その結果、いずれの試料においても、添加金属濃
度は粒界部分から粒子内部に進むに従って低下し、数十
nm程度の深さからあとはほぼ一定となった。そこで粒
界部分と濃度がほぼ一定となった粒子内部の濃度を比較
してみると、いずれの試料においても粒界部分の濃度が
約10〜数十倍高くなっていた。
【0060】(実施例6)実施例5と同様の方法で、組
成比がFe23=55mol%、MnO=37.5mo
l%、ZnO=7.5mol%となり、合計重量が30
0gとなるようにそれぞれの粉体を秤量し、ボールミル
にて湿式10時間混合粉砕し、乾燥させた。この混合粉
末を800℃で2時間空気中で仮焼した後、CaOが
0.1重量%、SiO2が0.02重量%となり、Zr
2、HfO2、Ta25、Cr23、MoO3、WO3
Al23、Ga23、In23、GeO2、SnO2、S
23、Bi23が(表8)の量となるように、CaC
3およびそれぞれの金属酸化物を添加した焼結体を、
実施例1の焼成条件Bで作製した。
【0061】得られた焼結体より切り出したリング状試
料について、実施例1と同じ条件で磁気損失の温度依存
性を測定したところ、損失はいずれの試料においても、
60℃で極小値を示した。この極小損失値を(表8)に
示した。
【0062】
【表8】
【0063】(表8)より明らかなように、CaOとS
iO2のみの添加に比べ、さらにZrO2、HfO2、T
25、Cr23、MoO3、WO3、Al23、Ga2
3、In23、GeO2、SnO2、Sb23、Bi2
3を複合して添加したものは、特定の添加範囲内でより
低磁気損失化し、最低損失値はZrO2=0.05重量
%添加で250kW/m3と超低損失であった。
【0064】次にこれら各副成分を用いた試料のうち、
最も低損失となった添加量(0.05または0.2重量
%)の試料について、実施例5と同様の方法で、破断面
からの各添加金属元素の深さ方向のプロファイルを測定
した。その結果、いずれの試料においても、添加金属濃
度は粒界部分から粒子内部に進むに従って低下し、数十
nm程度の深さからあとはほぼ一定となった。そこで粒
界部分と、濃度がほぼ一定となった粒子内部の濃度を比
較してみると、いずれの試料においても粒界部分の濃度
が約10〜数十倍高くなっていた。
【0065】(実施例7)実施例1と同様の方法で、F
23、MnCO3、ZnOの各粉末を用い、これらの
粉末を、組成比がFe23=55mol%、MnO=3
9mol%、ZnO=6mol%となり、合計重量が3
00gとなるようにそれぞれ秤量し、これにさらに、最
終的な焼結体においてCaOが0.1重量%、SiO2
が0.02重量%、Ta25が0.05重量%となるよ
うに、CaCO3とSiO2とTa25を秤量添加し、ボ
ールミルにて湿式10時間混合粉砕し、乾燥させた。こ
の混合粉末を800〜1200℃の各温度で2時間空気
中で仮焼した後、再度ボールミルにて10〜20時間、
湿式混合粉砕して乾燥させ、仮焼粉末とした。
【0066】この仮焼粉末に、ポリビニルアルコールの
5重量%水溶液を10重量%加え、30#のふるいを通
過させて造粒し、一軸金型成形した後、1200℃で1
時間、実施例1に示した雰囲気条件で焼成し、焼結体を
得た。また同様の方法で、Ta25のみ、添加を仮焼後
の粉砕時とした試料を作製した。得られた焼結体より切
り出したリング状試料について、実施例1と同様に磁気
損失の温度依存性を測定したところ、損失はいずれの試
料においても60℃で極小値を示した。また焼結体破断
面の電子顕微鏡観察により、焼結体の平均結晶粒径を測
定した。さらに、実施例2と同様の方法で、粒界層およ
び粒子内部におけるTa濃度を測定し、粒界部濃度/粒
内部濃度比を決定した。結果を(表9)に示した。
【0067】
【表9】
【0068】(表9)より明かなように、無添加のもの
に比べ、Ta25により、より低磁気損失化するが、T
a濃度比が5以下の場合にはその効果が大幅に低減し
た。
【0069】(実施例8)実施例7と同様に、組成比が
Fe23=57mol%、MnO=39mol%、Zn
O=4mol%となり、CaOが0.1重量%、SiO
2が0.02重量%、Ta25が0.05重量%となる
ように、CaCO3とSiO2とTa25を添加した焼結
体を、1200℃−5時間焼成で、実施例1の雰囲気で
焼成し、焼結体を得た。また同様の方法で、Ta25
み添加を仮焼後の粉砕時とした試料を作製した。得られ
た焼結体より切り出したリング状試料について、実施例
1と同様に磁気損失の温度依存性を測定したところ、損
失はいずれの試料においても80℃で極小値を示した。
また焼結体破断面の電子顕微鏡観察により、焼結体の平
均結晶粒径を測定した。さらに、実施例2と同様の方法
で、粒界層および粒子内部におけるTa濃度を測定し、
粒界部濃度/粒内部濃度比を決定した。結果を(表1
0)に示した。
【0070】
【表10】
【0071】(表10)より明かなように、無添加のも
のに比べ、Ta25により、より低磁気損失化するが、
Ta濃度比が5以下の場合にはその効果が大幅に低減し
た。なお、焼結体密度が4.5g/cm3未満の試料10
では、Ta濃度比が5以上であっても、若干高損失であ
った。
【0072】(実施例9)実施例2と同様の方法で、組
成比がFe23=57mol%、MnO=39mol
%、ZnO=4mol%となり、CaOを0.1重量
%、SiO2を0.02重量%、GeO2を0.05重量
%となる比率で添加した仮焼粉末を用意し、実施例1の
焼成条件Aで焼結体(e)を作製した。
【0073】また同様に、主組成がFe23=55mo
l%、MnO=39mol%、ZnO=6mol%と
し、CaOを0.1重量%、SiO2を0.02重量
%、GeO2を0.05重量%添加し、実施例1の焼成
条件Bで焼結体(f)を作製した。さらに同様に、主組成
がFe23=52mol%、MnO=38mol%、Z
nO=10mol%とし、CaOを0.1重量%、Si
2を0.02重量%、GeO2を0.05重量%添加
し、実施例1の焼成条件Bで焼結体(g)を作製した。こ
れらの焼結体の磁気損失を実施例1と同様の方法・条件
で測定した。
【0074】焼結体(e)は、密度4.71g/cm3で、
80℃で磁気損失極小温度を持ち、磁気損失値は130
kW/m3の本開発品の超低磁気損失材である。また焼結
体(f)は、密度4.39g/cm3で、60℃で磁気損失
極小温度を持ち、磁気損失値は210kW/m3の本開発
品の超低磁気損失材である。一方焼結体(g)は、密度
4.41g/cm3で、60℃磁気損失極小温度を持ち磁
気損失値は850kW/m3である従来材料である。
【0075】これらの3種類の試料について、それぞれ
の損失極小温度において、磁束密度Bと周波数fの積、
B・f=50(mT・MHz)で一定となる条件で磁気
損失を測定した(この条件では、同一出力時の電源トラ
ンスでコアサイズが一定となる)。結果を(表11)に
示した。
【0076】
【表11】
【0077】(表11)より明らかなように、これらの
焼結体は0.5〜2MHz付近で損失が最小となる。
(e)(f)と(g)を比較すると、300kHz以上で本発
明の焼結体(e)(f)が有利となる。しかしながら10M
Hzでは、かなり損失が増加し、他の材料(例えば、N
iZn系フェライト)に対する優位性がなくなる。
【0078】次にこれらの焼結体より、それぞれE型コ
アを切り出し、これを用いてフォワード方式のスイッチ
ング電源回路を試作し、磁気損失にあたる温度上昇を評
価した。一定の軽負荷条件下で、周波数、磁芯磁束密度
にたいする磁芯の温度上昇について測定した。結果を
(表12)に示した。
【0079】
【表12】
【0080】(表12)より明らかなように、トランス
の磁芯損失による温度上昇許容値を25℃見込んだ場
合、焼結体(g)を用いた電源は温度上昇が大きく、あま
り高周波では使用できないことが分かる。これに対し
て、開発したフェライト材料(e)または(f)を用いた電
源は温度上昇が少なく、50mTで2MHzまで充分使
用できる。これは、用いた材料が超低磁気損失で、かつ
温度特性が良好なためである。より高周波では磁束密度
を下げて使用するのが一般的であるので、(表11)の
結果より5MHzまで使用可能と考えられる。しかしな
がら、2MHz以上のスイッチング電源は回路側の損失
が増大するため、現時点では現実的ではない。
【0081】以上の結果より、開発したフェライト材料
を用いたスイッチング周波数が100kHz〜2MHz
の電源は、発熱が少なく高効率で、熱暴走する危険性が
低い。また、特に300kHz以上でその特徴が顕著と
なり、電源回路側の損失が減少すれば、5MHzまで使
用可能である。
【0082】
【発明の効果】以上説明した通り本発明は、Fe23
分を53mol%以上59mol%以下、MnO成分を
34mol%以上44mol%以下、ZnO成分を9m
ol%以下含有する主組成と、CaO成分を0.05重
量%以上0.3重量%以下、SiO2成分を0.005
重量%以上0.05重量%以下含有する副成分とを含有
する焼結体の酸化物磁性体材料であるため、従来にない
高周波領域においても極めて低磁気損失で、かつ温度特
性に優れた材料であるという効果がある。特に、これを
用いて作製されたスイッチング電源は、低発熱・高効率
で、温度暴走の危険性の少ない効果も有する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 釘宮 公一 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Fe23成分を53mol%以上59mo
    l%以下 MnO成分を34mol%以上44mol%以下 ZnO成分を9mol%以下含有する主組成と、 CaO成分を0.05重量%以上0.3重量%以下 SiO2成分を0.005重量%以上0.05重量%以
    下含有する副成分とを含有する焼結体であることを特徴
    とする酸化物磁性体材料。
  2. 【請求項2】副成分に、ZrO2、HfO2、Ta25
    Cr23、MoO3、WO3、Al23、Ga23、In
    23、GeO2、SnO2、Sb23、Bi2 3より選ば
    れた少なくとも1種類以上とするMxz成分を、0.0
    1重量%以上0.2重量%以下含有することを特徴とす
    る、請求項1記載の酸化物磁性体材料。
  3. 【請求項3】Mxzの粒界層部分の濃度が、粒子内部の
    濃度の5倍以上であることを特徴とする、特許請求項2
    記載の酸化物磁性体材料。
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