【発明の詳細な説明】
βAPP−C100受容体のクローニングおよび発現
1.序論
本発明は、(アミロイドドメインを含む)β−アミロイド前駆体タンパク質の
カルボキシ末端の受容体(ここではC100−Rと呼ぶ)のクローニング、なら
びにC100−Rを発現する遺伝子操作された宿主細胞に関する。このような遺
伝子操作細胞は、アルツハイマー病の診断および/または治療に用いる薬剤を評
価したり、スクリーニングするのに用いられる。
2.発明の背景
アルツハイマー病は老人に最も多く見られる痴呆を引き起こす神経変性疾患で
ある。この病気は脳、特に側頭皮質と海馬に、そして大脳血管系の壁に沿ってア
ミロイド含有斑が蓄積する点に特徴がある(Rochら,1966,Nature 209:109-11
0;Terryら,1981,Ann.Neurol.10:184-192;Glenner G.G., 1983,Arch.Pat
hol.Lab.Med.107:281-282;Katzman,R., 1983,Banbury Report15,Cold Spri
ng Harbor Lab.,Cold Spring,N.Y.)。
脳のアミロイド含有斑に含まれるアミロイドペプチド(βA4)は、アミロイ
ド(またはβ−アミロイド)前駆体タンパク質(βAPP)と呼ばれるタンパク
質に由来するものである。βAPPは通常そのC末端の近傍にあるアミロイドド
メイン内で切断されるため、完全なアミロイドは産生されない。別のプロセシン
グ経路はアミロイドドメインのN末端側でβAPPを切断して完全なC末端を放
出させ、これによりアミロイド前駆体タンパク質の完全なアミロイドペプチド(
βA4)を生じる(Glenner andWong,1984,Biochem.Biophys.Res.Commun.
120:885-890;Masters ら,1985,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:4245-4249)
最近の知見からは、βAPPの異常なプロセシングがアルツハイマー病で起こ
るニューロン変性の原因となることが示唆されている。Neveと共同研究者達は、
アルツハイマー病における一次βAPPプロセシングがβ/A4配列のアミノ末
端の切断であり、これはβAPPのカルボキシ末端の104アミノ酸をコードす
るcDNA配列から発現される100アミノ酸残基のカルボキシ末端βAPP断
片(βAPP−C100)をもたらすことを提唱した(Yankner ら,1989,Scie
nce 245:417-420)。以後、このβAPP断片は、それがβAPPのカルボキシ
末端の100アミノ酸残基をコードするcDNA配列から発現されようと104
アミノ酸残基をコードするcDNA配列から発現されようと、βAPP―C10
0と呼ぶことにする。霊長類の細胞でβAPP−C100ペプチドを発現させる
と、アミロイド様繊維の形成をもたらす沈積物のような構造へと凝集して蓄積す
るタンパク質が産生されることが分かっている(Wolfら,1990,EMBO J.9:2079
-2084 )。また、βAPP−C100を発現するレトロウイルス組換え体は、N
GF(神経成長因子)の添加により分化するように誘導されたPC−12細胞に
トランスフェクトしたとき、神経毒性であることが判明した。さらに、トランス
フェクトしたこれらの細胞から得られた調整培地は分化した神経芽細胞腫や神経
細胞に対して毒
性を示し、この神経毒性はβAPP−C100に対する抗体を用いて免疫吸着す
ることにより培地から取り除かれた。このことは、βAPP−C100がトラン
スフェクトした細胞から分泌され、神経毒であることを示唆するものである(Ya
nkner ら,1989,Science 245:417-420 )。βAPP−C100の毒性は、この
ペプチドを発現する細胞を生まれたてのマウスの脳に移植することによって、あ
るいはヒトβAPP−C100の遺伝子を導入したトランスジェニックマウスの
作出によってさらに実証されている(Neveら,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.U
SA 89:3448-3452 )。これらの知見を総合すると、アルツハイマー病での神経変
性の発生においてβAPP−C100が何らかの役割を担っていることが明らか
である。
βAPP−C100ペプチドおよびアルツハイマー病の発症におけるその生物
学的役割に大きな関心が寄せられているにもかかわらず、このタンパク質、受容
体、またはβAPP−C100ペプチドが神経毒性を示すために相互作用する他
の組織要素についてはほんのわずかしか知られていない。ごく最近になって、分
化したPC−12細胞の表面へのβAPP−C100の高親和結合が実証され、
神経毒性との相互関係が明らかにされた(Kozlowskiら,1992,J.of Neuroscie
nce 12:1679-1687 )。結合相互作用と神経毒性反応の出現は両方とも同一のp
Hに依存する。その上、PC−12細胞では、結合と神経毒に対する感受性とが
NGF誘導分化の間に同じ時間経過でもって現れる。さらに、神経毒作用を消滅
させるβAPP−C100ペプチドの1個のアミノ酸の変化(Tyr687からPheへ
の変化)が結合能をも失わせる。
しかしながら、結合に関与する分子種は同定も特性決定もなされていない。βA
PP−C100の結合部位または受容体をコードするcDNAクローンの単離は
、C100−Rの生物学的機能ならびにアルツハイマー病の発症におけるその役
割を調べることを目的とした研究を進展させるだろう。ところが、これまで、こ
のようなことは達成されていない。
3.発明の概要
本発明は、C100−Rの遺伝子およびタンパク質に関するものである。βA
PP−C100とC100−Rとの相互作用により生じる神経毒作用は、この特
定の受容体/リガンドの相互作用をブロックするように設計された治療応用物が
アルツハイマー病の治療に有効でありうることを示唆する。本明細書中で開示さ
れたDNA配列は、C100−R生産用に設計された発現系および/またはC1
00−Rを発現する細胞系へと遺伝子操作することができる。こうした細胞系は
β−APP類似体(アゴニストおよびアンタゴニストを含む)のスクリーニング
および同定に有利に使用することができよう。本発明の別の面によると、C10
0−RのDNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド配列、またはC100−Rに
対する抗体を含むアンタゴニストがアルツハイマー病の診断および治療に使用さ
れ得る。C100−Rトランスジーンを含むトランスジェニック動物は、in viv
oでβ−APP−C100類似体を評価するためのモデル動物として使用するこ
とができる。
本発明は、部分的には、ニューロン由来の細胞の表面に発現さ
れるβAPP−C100結合部位の発見、同定およびクローニングに基づいてい
る。この結合部位は、本明細書ではC100−Rと呼ばれるもので、ペプチドβ
APP−C100の神経毒作用の仲介に深く係わっていることを示す特徴を有し
ている。
また、本発明は、アルツハイマー病の診断および治療用薬剤の設計に有用であ
りうるC100−RをコードするcDNAクローンの単離および特性決定に基づ
いている。
4. 図面の簡単な説明
図1. βAPP−C100による(A)NGF処理(5d)PC12細胞およ
び(B)SK−N−MC細胞への35S−βAPP−C100結合の阻害を示す代表
的曲線。
図2. NGF処理(6d)PC12細胞への35S−βAPP−C100結合
の代表的飽和等温線(上のパネル)およびスカッチャードプロット(下のパネル
)。線はコンピュータにより作成したもので、最良のデータ解釈を表す。
図3. 直接結合法を用いたλgt11ラットcDNAライブラリーのスクリ
ーニング。
図4. ラットC100−RクローンAB1RのcDNA挿入部のヌクレオチ
ド配列。下線を引いた領域はSER/THRキナーゼの“サイン(signature)
”または保存された触媒コア配列を表す。
図5. C100−Rと (A)“B”型カルシウムチャンネル、(B)カルレチク
リン(calreticulin)、および(C)リアノジンカルシウムチャンネルとの間の配
列相同性。
図6. ABIR cDNAのサザンブロット分析。レーンAはEcoRI消化ヒ
トDNAである。レーンBはEcoRI消化マウスDNAである。レーンCは HindII
I消化マウスDNAである。レーンDは HindIII消化ヒトDNAである。λ/Hin
dIII マーカーを用いて分子量を決定した。
図7. (A)前方レベルおよび(B)中央から後方レベルでのラット脳切片への特
異的結合を代表するオートラジオグラフ。より高い結合レベルの領域がより明る
くなるように、画像をデジタル化して強調した。嗅結節のある領域((A)の切片
の下方部分)および海馬((B)の切片の中央−側方部分)は灰白質残部の比較的
均一な標識化に比べて際立っていることに注目されたい。
図8. pAB1Rアンチセンスプローブのin situハイブリダイゼーション
を代表するオートラジオグラフ。切片の位置および再現方法は図7と同じである
。結合オートラジオグラフィー(図7)からの結果と一致する嗅結節および海馬
の高標識化領域(最も明るい領域)に注目されたい。
図9. ラットC100−RクローンAB2RのcDNA挿入部のヌクレオチ
ド配列。ヌクレオチド31からヌクレオチド409までの EcoRI断片を使ってヒト海
馬cDNAライブラリーをスクリーニングした。
図10. ラット100−Rクローンのヌクレオチド配列。記載した配列は多数
の重複するラットcDNAクローンのクローニングおよび配列解析の結果である
。ヌクレオチド686 の上に示した*は、図4に示したラットC100−Rヌクレ
オチド配列(ヌクレオチド40)との接合部を表す。
図11. ヒトC100−RクローンのcDNA挿入部のヌクレオチド配列。M
を指定したヌクレオチドはAかまたはCであり、Kを指定したヌクレオチドはT
かまたはGである。
図12A. ヒトC100−RとラットC100−Rとの配列相同性。ヒト#4
.t3配列と、ヌクレオチド544で出発する図9に示したラットC100−R配
列とを並列化させてある。
図l2B. ヒトC100−RとラットC100−Rとの配列相同性。ヒトクロ
ーンHAB1R#1#4と、ヌクレオチド182で出発する図4に示したラットC
100−R配列とを並列化させてある。
図12C. ヒトC100−RとラットC100−Rとの配列相同性。ヒトクロ
ーン#1#1T3と、ヌクレオチド1868で出発する図4に示したラットC100
−R配列とを並列化させてある。
5.発明の詳細な説明
本発明はC100−Rのクローニングおよび発現に関する。C100−Rは最
初はニューロン由来の細胞の表面に存在してアミロイドペプチドβAPP−C1
00と特異的に結合する結合部位として同定された。βAPP−C100アミロ
イドペプチドの発現は、アルツハイマー病で起こる特殊なタイプのニューロン変
性と関係があることがモデル動物ではっきりしている。本発明により調製された
C100−Rは、アルツハイマー病の診断および/または治療に使用しうる薬剤
およびβ−APPの類似体を評価し、スクリーニングするのに用いられる。
5.1. C100−Rコード配列
λAB1Rと呼ばれる最初のラットC100−RcDNAクローンは、35S−
メチオニンで標識したβ−APP−C100リガンドまたはペプチドエピトープ
“フラッグ(flag)”配列を用いて下記の第6節に記載するようにλgt11ラ
ット脳発現ライブラリーをスクリーニングすることにより得られた。pAB1R
−ラットと称する最初のクローンは、図4に示したヌクレオチドコード配列から
成る1970bpの挿入部および推定アミノ酸配列を含むことがわかった。対応するc
DNAクローンはATCCに寄託し、第7節に記載する受託番号を指定された。
配列解析から、このクローンは該遺伝子のカルボキシ末端部分を含有し、かつ13
95塩基対のコード配列と575bpの3’非翻訳配列を含むことが明らかになった(
図4)。
ラット脳から調製したRNA(AB1RcDNA挿入部の最も5’側の配列に
特異的なプライマーを使って、逆転写酵素反応により第1鎖の合成を行った。第
2鎖の合成後、cDNAを細菌のBluescriptプラスミド(Stratagene)に挿入し
た。追加のラットC100−RcDNAクローンを単離し、配列を決定した(図
9および図10)。新たな配列は図4に示したラット配列と重なり合い、コード領
域をC100−Rタンパク質のアミノ末端の方へ伸長させる。図9に示した配列
は図10に示したラット配列とヌクレオチド106の上流で異なっており、このこと
は異なる過程でスプライスされたmRNAがC100−Rクローンに存在しうる
ことを示すものである。
C100−Rへの相同についてGenebankのヌクレオチド配列デ
ータベースを検索したところ、“B”型カルシウムチャンネル、リアノジンカル
シウムチャンネル、および高親和カルシウム結合タンパク質のカルレチクリンと
の多くの一致が明らかになった(図5)。C100−Rとカルシウムチャンネル
の間の相同は、結合の異常なpH依存およびニューロン(特に皮質と海馬)のカ
ルシウムレベルの混乱が神経毒をもたらすという観察と一致する。C100−R
のcDNA配列はまた、Hanksら(1988,Science241:42-52)によって記載され
たSER/THRキナーゼの“サイン”または保存された触媒コア配列への相同
を含んでいる(図4)。
ノーザンブロットでの11KbのC100−RmRNAの検出により示されるよう
に、図4に示したヌクレオチド配列はC100−R遺伝子の一部を表すにすぎな
い。全長ラットC100−RcDNA配列は多くの異なる方法を使って得ること
ができる。例えば、ラットクローンの最も5’側の配列に特異的なプローブを使
ってラットcDNAライブラリーを再スクリーニングする。成功した各回のスク
リーニングごとに新しい5’プローブを設計し、これを用いて完全な配列が得ら
れるまでライブラリーを再度探索する。
全長ラットC100−R遺伝子を単離するのにPCRの技法も使用し得る。適
当なラット源から調製したRNAを用いると、ラットcDNA挿入部の最も5’
末端側に特異的なプライマーを使って逆転写酵素反応で第1鎖合成を開始させる
ことができる。次に、RNA/DNAハイブリッドにターミナルトランスフェラ
ーゼを使ってグアニンを“末端付加(tailed)”させ、RNAase Hで消化し、その
後ポリCプライマーを用いて第2鎖の合成を開始させる。特定の制限部位を組み
込んだプライマーを用いることによ
り、これらの“クローン特異的”cDNAの適当なプラスミドベクターへの挿入
および配列決定が容易になる。
また、本発明は、C100−R活性が存在する他の動物種(ヒトを含む)から
単離されたC100−R遺伝子に関する。C100−Rファミリーのメンバーは
、本明細書では、βAPP−C100または該ペプチドの断片と結合する受容体
と定義される。かかる受容体はDNA配列の実質的な範囲においてヌクレオチド
レベルで約80%の相同を示し、アミノ酸レベルでは90%もの相同を示す。バクテ
リオファージcDNAライブラリーは、低いストリンジェント条件下で、ラット
C100−Rクローンの放射性標識断片を用いてスクリーニングし得る。また、
ラットC100−R配列を用いて、PCRプローブとして使える縮重または完全
縮重オリゴヌクレオチドプローブを設計したり、バクテリオファージcDNAラ
イブラリーをスクリーニングすることができる。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR
)に基づいた戦略はヒトC100−Rのクローニングに使用し得る。ラットC1
00−Rとカルシウムチャンネル間の保存モチーフに対応する縮重オリゴヌクレ
オチドの2つのプールを設計して、PCR反応においてプライマーとして役立て
ることができる。この反応で用いる鋳型はヒトAPP−Rを発現することが知ら
れている細胞系または組織から調製したmRNAの逆転写により得られたcDN
Aである。PCR産物をサブクローニングし、配列決定により増幅配列がC10
0−R配列を表すことを確認する。PCR増幅断片を放射性標識し、バクテリオ
ファージcDNAライブラリーをスクリーニングすることにより全長C100−
RcDNAクローンを単離し得る。また、
標識断片を使ってゲノムライブラリーをスクリーニングすることもできる。採用
し得るクローニング戦略を検討する際には、例えば、Maniatis,1989,Molecula
r Cloning,A Laboratory Manual,Cold Springs Harbor Press,N.Y. および A
usubelら,1989,Current Protocols in Molecular Biology (Green Publishing
Associates and Wiley Interscience,N.Y.)を参照のこと。
また、cDNAライブラリーは、COS細胞に移入したとき、高コピー数のプ
ラスミドの発現を可能にするSV40複製起点の配列を含むpcDNA1のよう
な哺乳動物の発現ベクター中に構築することもできる。トランスフェクトしたC
OS細胞の表面上のC100−Rの発現は、βAPP−C100のような標識リ
ガンドあるいは放射性標識、蛍光標識または酵素で標識したβAPP−C100
アゴニストの使用を含む多くの方法で検出することができる。ヒトC100−R
を発現する細胞はトランスフェクトした細胞をFACS(蛍光活性化セルソータ
ー)選別に付すことにより濃縮できる。
ここに記載する特定の実施態様では、ラットC100−Rクローンからの標識
ヌクレオチド断片を用いて成人海馬cDNAライブラリーをスクリーニングした
。ヒトcDNAライブラリーを探索するにあたって、AB2Rラットクローンの
ヌクレオチド31からヌクレオチド409までの大きいEcoRI 断片を用いた(図9)
。いくつかのクローンが得られ、cDNA挿入部の配列を決定した。図11にヒト
C100−R配列を示し、図12にラットとヒトのC100−R配列間の相同領域
を示してある。
全長ラットC100−Rクローンを単離するための上記方法は
どれも全長ヒトC100−Rクローンの単離にも同様に使用できる。例えば、ヒ
トクローンの最も5’側の配列に特異的なプローブを用いてヒトcDNAライブ
ラリーを再スクリーニングする。成功した各回のスクリーニングごとに新しい5
’プローブを設計し、これを用いて完全な配列が得られるまでライブラリーを再
度探索する。
本発明によれば、C100−R、その断片、融合タンパク質または機能的均等
物をコードするヌクレオチド配列を用いて、適当な宿主細胞においてC100−
Rまたはその機能的に活性なペプチド、融合タンパク質もしくは機能的均等物を
発現する組換えDNA分子を作製することができる。また、C100−R配列の
一部にハイブリダイズするヌクレオチド配列を、核酸ハイブリダイゼーションア
ッセイ、サザンおよびノーザンブロット分析などに使用することもできる。
本発明の実施に際しては、遺伝暗号の縮重のため、C100−Rのアミノ酸配
列(例えば、図4に示したラット配列またはその機能的均等物)を実質的にコー
ドする他のDNA配列もC100−Rのクローニングおよび発現のために使用で
きる。このようなDNA配列として、ストリンジェント条件下でラットまたはヒ
トC100−R配列にハイブリダイズする能力があるもの、あるいは遺伝暗号の
縮重がなかったならばストリンジェント条件下でハイブリダイズし得ると推測さ
れるものが含まれる。ストリンジェント条件はいろいろな方法で調整することが
できる。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行う場合は、鋳型へプライ
マーをアニーリングさせる温度または反応緩衝液中のMgCl2の濃
度を調整する。放射性標識したDNA断片またはオリゴヌクレオチドを用いてフ
ィルターを探索する場合には、洗浄液のイオン強度を変えたり、フィルター洗浄
の実施温度を慎重に制御することによってストリンジェンシーを調整できる。
本発明において使用し得る改変DNA配列は、同一のまたは機能的に均等な遺
伝子産物をコードする配列をもたらすような、さまざまなヌクレオチド残基の欠
失、付加または置換を含んでいる。遺伝子産物それ自体が、サイレントな変化を
生じるアミノ酸残基の欠失、付加または置換をC100−R配列内に含んでいて
もよく、これらは機能的に均等なC100−Rをもたらす。こうしたアミノ酸の
置換は関係した残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性、および/または両
親媒性が類似していることを考慮して行われる。例えば、負に荷電したアミノ酸
としてはアスパラギン酸およびグルタミン酸を、正に荷電したアミノ酸としては
リシンおよびアルギニンを、そして類似の親水値を有する非荷電極性ヘッド基を
もつアミノ酸としてはロイシン、イソロイシン、バリン;グリシン、アラニン;
アスパラギン、グルタミン;セリン、トレオニン;フェニルアラニン、チロシン
;を挙げることができる。本明細書中で用いる機能的に均等なC100−Rとは
β−APP−C100またはその断片と結合する受容体を指すが、必ずしも天然
のC100−Rと同じ結合親和性で結合しなくてもよい。
本発明のDNA配列は、遺伝子産物のプロセシングおよび発現を改変する変化
を含むがこれに限らない種々の目的のために、C100−Rコード配列を改変す
べく遺伝子操作することができる。例えば、新たな制限部位を挿入するために、
またはグリコシル化
パターン、リン酸化などを変えるために、部位特異的突然変異誘発のような公知
の技法を用いて変異を導入し得る。一例として、酵母のようなある種の発現系で
は、宿主細胞が遺伝子産物を過剰にグリコシル化することがある。こうした発現
系を用いるときは、N−結合グリコシル化部位を除くようにC100−Rコード
配列を改変することが好ましい。本発明の他の実施態様では、融合タンパク質を
コードするように、C100−Rまたは改変C100−R配列を異種配列に連結
させることもできる。融合タンパク質はC100−R配列と異種タンパク質配列
との間に切断部位を挿入するように操作してもよく、こうするとC100−Rを
異種成分から切り離すことができる。
本発明の別の実施態様では、C100−Rのコード配列を全部または部分的に
、当分野で公知の化学的方法を使って合成することもできる。例えば、Caruther
s ら,1980,Nuc.Acids Res.Symp.Ser.7:215-233;Crea and Horn,180,Nu
c.Acids Res.9(10):2331;Matteucci and Caruthers,1980,Tetrahedron Let
ters 21:719;および Chow and Kempe,1981,Nuc.Acids Res.9(12):2807-2817
を参照のこと。また、タンパク質自体を化学的方法を使って製造して、C100
−Rのアミノ酸配列を全体的にまたは部分的に合成することもできる。例えば、
ペプチドを固相法により合成し、樹脂から切り離し、そして分離用高性能液体ク
ロマトグラフィーで精製し得る。例えば、Creighton,1983,Proteins,Structu
res And Molecular Principles,W.H.Freeman and Co.,N.Y.pp.50-60を参照
のこと。合成ペプチドの組成はアミノ酸の分析または配列決定法(例えば、エド
マン分
解法;Creighton,1983,Proteins,Structures And Molecular Principles,W.
H. Freeman and Co.,N.Y.pp.34-49を参照のこと)により確かめることができ
る。
5.2 C100-Rの発現
生物学的に活性なC100-Rを発現するためには、C100-Rをコードするヌクレオチ
ド配列、または上記5.l の項に記載したような機能的なその均等物を適当な発現
べクター、即ち、挿入されたコード配列の転写及び翻訳のための必要な要素を含
むベクターに挿入する。C100-R遺伝子産物、並びに組換えC100-R発現ベクターで
トランスフェクトまたは形質転換された宿主細胞または細胞系は、種々の目的に
使用することができる。これらは、限定するものではないが、競争的に結合を阻
害しβAPPまたはβAPPの断片のβ-APP活性を「中和」するものを含む、受容体に
結合する抗体(即ちモノクローナルまたはポリクローナル)の生産、及びβ−AP
P類似体またはC100-Rを介して作用する薬剤のスクリーニング等を包含する。
5.2.1 発現系
当業者によく知られた方法を、C100-Rコード配列及び適当な転写/翻訳制御シ
グナルを含む発現ベクターを構築するのに使用できる。これらの方法には、イン
ビトロ組換えDNA 法、合成法及びインビボ組換え/遺伝子組換えが含まれる。例
えば、Maniatisら,1989,Molecular Cloning A Laboratory Manual,Cold Spri
ng Harbor Laboratory,N.Y.及びAusubel ら,1989,Current Protocols in Mol
ecular Biology,Greene Publishing Associates andWiley Interscience,N.Y.
に記載された技術を参照されたい。
種々の宿主−発現ベクター系をC100-Rコード配列を発現するのに利用すること
ができる。これらには、限定するものではないが、
C100-Rコード配列を含む、組換え体バクテリオファージDNA、プラスミドDNAまた
はコスミドDNA発現ベクターにより形質転換された細菌、C100-Rコード配列を含
む組換え体酵母発現ベクターで形質転換された酵母、C100-Rコード配列を含む組
換え体ウィルス発現ベクター(例えばバキュロウィルス)を感染させた昆虫細胞
系、C100-Rコード配列を含む組換え体ウィルス発現ベクター(例えばカリフラワ
ーモザイクウィルス,CaMV;タバコモザイクウィルス,TMV)を感染させた、も
しくは組換え体プラスミド発現ベクター(例えばTiプラスミド)で形質転換され
た植物細胞系、二重微細(double-minute)クロモソームにおいて安定に増幅さ
れたか(例えばCHO/dhfr)、あるいは不安定に増幅された(例えばネズミ細胞系
)、C100-R DNAの多数のコピーを含むように作製された細胞系を含む、組換え体
ウィルス発現ベクター(例えばアデノウィルス、ワクシニアウィルス)を感染さ
せた動物細胞系が含まれる。
これらの系の発現要素は、その強度及び特異性において変化する。使用する宿
主/ベクター系に応じて、構成的なプロモーター及び誘導可能なプロモーターを
含む、多数の適当な転写及び翻訳要素の任意のものを発現ベクター中に使用する
ことができる。例えば、細菌系中にクローン化する場合は、バクテリオファージ
λのpL、plac、ptrp、ptac(ptrp-lacハイブリッドプロモーター)等のような誘
導可能なプロモーターを使用することができる。昆虫細胞系中にクローン化する
場合には、バキュロイウィルスポリヘドリンプロモーターのようなプロモーター
を使用することができる。植物細胞系中にクローン化する場合には、植物細胞の
ゲノ
ムから誘導されたプロモーター(例えば熱ショックプロモーター、RUBISCO の小
サブユニットのためのプロモーター、クロロフィルa/b結合タンパク質のため
のプロモーター)あるいは植物ウィルスから誘導されたプローター(例えばCaMV
の35S RNAプロモーター、TMV のコートタンパク質プロモーター)を使用するこ
とができる。哺乳類細胞系中にクローン化する場合には、哺乳類細胞のゲノムか
ら誘導されたプロモーター(例えばメタロチオネインプロモーター)または哺乳
類ウィルスから誘導されたプロモーター(例えばアデノウィルス後期プロモター
、ワクシニアウィルス7.5Kプロモーター)を使用することができる。C100-R DNA
の多数のコピーを含む細胞系を生成する場合には、SV40、BPV 及びEBV に基づく
ベクターを適当な選択可能なマーカーとともに使用することができる。
細菌系においては、発現されたC100-Rに意図される用途に応じて、多数の発現
ベクターを有利に選択することができる。例えば、抗体の生産のために多量のC1
00-Rを製造する場合は、容易に精製できる融合タンパク質生成物の高いレベルの
発現を導くベクターが望ましい。このようなベクターは、限定するものではない
が、E.coli発現ベクターpUR278(Rutherら,1983,EMBO J.2:1791)が含まれ、
ここではC100-Rコード配列をlacZコード領域と同じ読み枠でベクターに結合しハ
イブリッドC100-R/lacZ タンパク質が生産されるようにすることことができ、ま
たpINベクター(Inouye & Inouye,1985,Nucleic acids Res.13:3101-3109;V
an Heeke & Schuster,1989,J.Biol.Chem.264:5503-5509)等も含まれる。p
GEXベクターも、外来ポリペプチドをグルタチオンS-
トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として発現するのに使用できる。
一般に、そのような融合タンパク質は可溶性であり、アフィニティークロマトグ
ラフィーにより、例えばグルタチオン−アガロースビーズに対する吸着及びその
後の遊離のグルタチオンの存在下における溶出により、溶解細胞から容易に精製
することができる。pGEXベクターはトロンビンあるいはXa因子プロテアーゼ開裂
部位を含み、対象となるクローン化ポリペプチドをGST 部分から放出できるよう
に設計されている。Booth ら,1988,Immunol Lett.19:65-70;及びGardellaら
,1990,J.Biol.Chem.265:15854-15859;Pritchett ら,1989,Biotechnique
s 7:580も参照されたい。
酵母においては、構成的なあるいは誘導可能なプロモーターを含む多くのベク
ターを使用することができる。概観するためには、Current Protocols in Molec
ular Biology,Vol.2,1988,Ed.Ausubel ら,Greene Publish.Assoc.& Wil
ey Interscience,Ch.13;Grantら,1987,Expression and Secretion Vectors
for Yeast,in Method in Enzymoloogy,Eds.Wu & Grossman,1987,Acad.Pre
ss,N.Y.,Vol.153,pp.516-544;Glover,1986,DNA Cloning,Vol.II,IRL
Press,Wash.,D.C.,Ch.3;及びBitter,1987,Heterologous Gene Expressio
n in Yeast,Mehtods in Enzymology,Eds.Berger & Kimmel,Acad.Press,N.
Y.,Vol.152,pp.673-684;及びThe Molecular Biology of the Yeast Saccha
romyces,1982,Eds.Strathernら,Cold Spring Harbor Press,Vols.I及びI
Iを参照されたい。
植物発現ベクターを使用する場合は、C100-Rコード配列の発現
は多数のプロモーターの任意のもので駆動することができる。例えば、CaMVの35
S RNA及び19S RNAプロモーター(Brissonら,1984,Nature 310:511-514)、あ
るいはTMVのコートタンパク質プロモーター(Takamatsuら,1987,EMBO J.6:30
7-311)のようなウィルスプロモーターを使用でき、あるいは、RUBISCOの小サブ
ユニットのような植物プロモーター(Coruzziら,1984,EMBO J.3:1671-1680
;Broglieら,1984,Science 224:838-843);あるいは熱ショックプロモーター
、例えば大豆hsp17.5-E あるいはhsp-17.3-B (Gurleyら,1986,Mol.Cell.Bi
ol.6:559-565)を使用することができる。これらの構築物は、Tiプラスミド、R
iプラスミド、植物ウィルスベクター、直接のDNA形質転換、マイクロインジェク
ション、エレクトロポレーション等を使用して植物細胞に導入することができる
。このような技術の概観のためには、例えば、Weissbach & Weissbach,1988,M
ethods for Plant Molecular Biology,Academic Press,NY,Section VIII,pp
.421-463;及びGrierson & Corey,1988,Plant Molecular Biology,2d Ed.
,Blackie,London,Ch.7-9を参照されたい。
C100-Rを発現するのに使用できるまた別の発現系は昆虫系である。1つのその
ような系においては、Autographa californica核多角体病ウィルス(AcNPV)を
外来遺伝子を発現するためのベクターとして使用することができる。該ウィルス
はSpodoptera frugiperda細胞中で増殖する。C100-Rコード配列をこのウィルス
の非必須領域(例えばポリヘドリン遺伝子)中にクローン化し、AcNPVプロモー
ター(例えばポリヘドリンプロモーター)の制御下に置くことができる。C100-R
コード配列をうまく挿入することによ
り、ポリヘドリン遺伝子の不活性化と非封入組換え体ウィルス(即ち、ポリヘド
リン遺伝子によりコードされたタンパク質コートを欠いているウィルス)の生産
が得られる。これらの組換え体ウィルスを次にSpodoptera frugiperda細胞に感
染するのに使用し、この中で挿入された遺伝子が発現される(例えば、Smithら
,1983,J.Viol.46:584;Smith,米国特許第4,215,051 号を参照)。
哺乳類宿主細胞においては、ウィルスをベースとする多くの発現系を使用する
ことができる。アデノウィルスを発現ベクターとして使用する場合は、C100-Rコ
ード配列を、アデノウィルス転写/翻訳制御複合体、例えば後期プロモーター及
び三分割リーダー配列に結合することができる。このキメラ遺伝子は次に、イン
ビトロまたはインビボ組換えによりアデノウィルスゲノムに挿入することができ
る。ウィルスゲノムの非必須領域(例えばE1またはE3領域)に挿入することによ
り、生存可能で、感染した宿主中でC100-Rを発現できる組換え体ウィルスを得る
ことができる(例えば、Logan & Shenk,1984,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA
)81:3655-3659を参照)。あるいは、ワクシニア7.5Kプロモーターを使用するこ
とができる(例えば、Mackettら,1982,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)79:74
15-7419;Mackettら,1984,J.Virol.49:857-864;Panicaliら,1982,Proc.
Natl.Acad.Sci.79:4927-4931を参照)。
挿入されたC100-Rコード配列の効率的な翻訳のためには特定の開始シグナルも
必要な場合がある。これらのシグナルはATG 開始コドン及び隣接配列を含む。そ
れ自体の開始コドン及び隣接配列を含む全C100-R遺伝子を適当な発現ベクターに
挿入する場合には
追加の翻訳制御シグナルは必要ない。しかし、C100-Rコード配列の一部のみが挿
入される場合は、ATG開始コドンを含む外来の翻訳制御シグナルが与えられなけ
ればならない。さらに、開始コドンは、C100-Rコード配列の読み枠と同じ読み枠
にして、全挿入物の翻訳が確保されなければならない。これらの外因性翻訳制御
シグナル及び開始コドンは、種々の起源のものであってよく、天然のものあるい
は合成のものであってよい。発現の効率は、適当な転写エンハンサー要素、転写
ターミネーター等を含ませることにより増強され得る(例えば、Bitterら,1987
,Methods in Enzymol.153:516-544を参照)。
さらに、挿入された配列の発現を変調させたり、あるいは遺伝子産物を所望の
特異的な形で修飾し、プロセシングする宿主細胞株を選択することができる。タ
ンパク質産物のそのような修飾(例えばグリコシル化)及びプロセシング(例え
ば切断)は、タンパク質の機能にとって重要であり得る。種々の宿主細胞が、タ
ンパク質の翻訳後のプロセシング及び修飾のための特徴的で特異的なメカニズム
を有している。適当な細胞系または宿主系を選択して、発現された外来タンパク
質の正確な修飾及びプロセシングを確保することができる。この目的のためには
、一次転写物の適当なプロセシング、遺伝子産物のグリコシル化及びリン酸化の
ための細胞機構を有する真核宿主細胞を使用することができる。そのような哺乳
類宿主細胞には、限定するものではないが、CHO、VERO、BHK、HeLa、COS、MDCK
、293、WI38等が含まれる。
組換え体タンパク質を長期間にわたって高い収率で生産するためには安定な発
現が好ましい。例えば、C100-Rを安定に発現する
細胞系を作製することができる。ウィルスの複製起点を含む発現ベクターを使用
するのではなく、適当な発現制御要素(例えば、プロモーター、エンハンサー配
列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位等)により制御されたC100-R DNA
及び選択マーカーにより宿主細胞を形質転換することができる。外来DNA の導入
の後、操作された細胞を富栄養化培地中で1〜2日増殖させ、そして選択培地に
切り換えることができる。組換え体プラスミド中の選択マーカーは、選択に対す
る抵抗性を与え、細胞がプラスミドをそのクロモソームに安定に組み込み、増殖
してフォーカス(増殖巣)を形成し、その後細胞系中にクローン化し増殖できる
ことを可能とするものである。この方法は、C100-Rを細胞表面に発現する細胞系
を作製するのに有利に使用することができ、この細胞系はβAPP-C100媒介シグナ
ル変換に応答する。このような遺伝子操作された細胞系は、βAPP-C100類似体の
スクリーニングに特に有用である。
多数の選択系を使用することができ、限定するものではないが、単純ヘルペス
ウィルスチミジンキナーゼ(Wiglerら,1977,Cell 11:223)、ヒポキサンチン
−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska & Szybalski,1962
,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 48:2026)及びアデニンホスホリボシルトランス
フェラーゼ(Lowyら,1980,Cell 22:817)遺伝子を、tk-、hgprt-またはaprt-
細胞中でそれぞれ使用することができる。また、代謝拮抗物質耐性を選択の基礎
として使用することができ、dhfr遺伝子はメトトレキセート耐性を与えるもので
あり(Wigler ら,1980,Natl.Acad.Sci.USA 77;3567;0'Hareら,1981,Pro
c.Natl.
Acad.Sci.USA 78;1527)、gpt遺伝子はミコフェノール酸耐性を与えるもので
あり(Mulligan & Berg,1981,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:2072)、neo
遺伝子はアミノグリコシドG-418耐性を与えるものであり(Colberre-Garapin ら
,1981,J.Mol.Biol.150:1)、hygro遺伝子はヒグロマイシン耐性を与えるも
のである(Santerre ら,1984,Gene 30:147)。最近、別の選択可能な遺伝子が
記載されており、即ち、trpBは細胞にトリプトファンの代わりにインドールを利
用できるようにするものであり、hisDは細胞にヒスチジンの代わりにヒスチノー
ルを利用できるようにするものであり(Hartman & Mulligan,1988,Proc.Natl
.Acad.Sci.USA 85:8047)、ODC(オルニチンデカルボキシラーゼ)はオルニ
チンデカルボキシラーゼ阻害剤である2-(ジフルオロメチル)-DL-オルニチン(
DFMO)に対する抵抗性を与えるものである(McConlogue l.,1987,In:Current
Communications in Molecular Biology,Cold Spring Harbor Laboratory ed.
)。
5.2.2 C100-Rを発現するトランスフェクタントあるいは形質転換体の同定
前記コード配列を含み生物学的に活性な遺伝子産物を発現する宿主細胞は、少
なくとも4種の一般的な方法により同定することができ、即ち、(a)DNA-DNAまた
はDNA-RNAハイブリダイゼーション、(b)「マーカー」遺伝子機能の存在または不
存在、(c)宿主細胞内でのC100-R mRNA転写物の発現により測定される転写レベル
の測定、及び(d)免疫アッセイまたはその生物学的活性により測定される遺伝子
産物の検出である。
第1の方法においては、発現ベクター中に挿入されたC100-Rコード配列の存在
が、それぞれC100-Rコード配列に相同なヌクレオチド配列、またはその部分もし
くは誘導体からなるプローブを使用したDNA-DNAまたはDNA-RNAハイブリダイゼー
ションにより検出される。
第2の方法においては、組換え体発現ベクター/宿主系が特定の「マーカー」
遺伝子機能(例えば、チミジンキナーゼ活性、抗生物質に対する抵抗性、メトト
レキセートに対する抵抗性、形質転換表現型、バキュロウィルスにおける封入体
の形成等)の存在または不存在に基づいて同定及び選択される。例えば、C100-R
コード配列がベクターのマーカー遺伝子配列内に挿入されると、C100-Rコード配
列を含む組換え体はマーカー遺伝子機能の不存在により同定できる。あるいは、
マーカー遺伝子を、C100-Rコード配列の発現の制御に使用される同一または異な
るプロモーターの制御下においてC100-R配列とタンデムに位置させることができ
る。誘導または選択に応答するマーカーの発現はC100-Rコード配列の発現を示す
ものである。
第3の方法においては、C100-Rコード領域についての転写活性がハイブリダイ
ゼーションアッセイにより測定できる。例えば、C100-Rコード配列あるいはその
特定の部分に相同なプローブを使用したノーザンブロットによりRNAを単離し、
分析することができる。あるいは、宿主細胞の全核酸を抽出し、そのようなプロ
ーブとのハイブリダイゼーションについてアッセイすることができる。
第4の方法においては、C100-Rタンパク質産物の発現を、例え
ばウェスタンブロット、放射標識免疫沈降、酵素結合免疫アッセイ等のような免
疫アッセイにより免疫学的に測定することができる。しかし、発現系の成功の最
終的な試験は、生物学的に活性なC100-R遺伝子産物の検出を使用する。多数のア
ッセイを受容体活性を検出するのに使用でき、限定するものではないが、β-APP
結合アッセイ、及び遺伝子操作した細胞系を試験基質として使用するβ-APP生物
学的アッセイが含まれる。
5.2.3 C100-Rの回収
一旦生物学的に活性なC100-Rを高いレベルで生産するクローンが同定されれば
、そのクローンを増殖させ、大量の受容体を生産するのに使用でき、これは当分
野でよく知られた技術により精製することができる。そのような技術には、限定
するものではないが、免疫アフィニティー精製、高速液体クロマトグラフィー、
ビーズに結合したβ-APP-C100またはその類似体のような固定リガンドを使用す
るアフィニティークロマトグラフィーを含むクロマトグラフィー法が含まれ、免
疫アフィニティー精製は抗体等を使用するものである。
C100-Rコード配列が開裂可能な融合タンパク質をコードするように操作された
場合には、精製はアフィニティー精製法を使用して容易に行うことができる。例
えば、コラゲナーゼ開裂認識コンセンサス配列をC100-Rのカルボキシ末端とプロ
テインAの間に形成することができる。得られる融合タンパク質は、プロテイン
A部分に結合するIgGカラムを使用して容易に精製することができる。非融合C10
0-Rは、コラゲナーゼで処理することにより、カラ
ムから容易に放出させることができる。もう1つの例は、外来ポリペプチドをグ
ルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として発現するpGEX
ベクターを使用することである。この融合タンパク質は、クローン化された遺伝
子とGST部分の間にトロンビンまたはXa因子開裂部位を有するように形成するこ
とができる。この融合タンパク質は、グルタチオンアガロースビーズへの吸着と
その後のグルタチオンの存在下での溶出により細胞抽出物から容易に精製するこ
とができる。本発明のこの形態においては、任意の開裂部位あるいは酵素開裂基
質を、C100-R配列と、精製に使用できる結合相手を有する第2のペプチドあるい
はタンパク質、例えば抗原(これに対して免疫アフィニティーカラムを調製でき
る)との間に形成することができる。
5.3 C100-Rを規定する抗体の生成
組換え技術により製造されたC100-Rのエピトープに対する抗体の製造のために
は、当分野で知られた種々の方法を使用することができる。中和抗体、即ち受容
体のβAPP-C100結合部位について競合するものは、診断及び治療に特に好ましい
。このような抗体としては、限定するものではないが、モノクローナル、ポリク
ローナル、キメラ、単鎖、Fab断片及びFab発現ライブラリーにより生産された断
片が含まれる。
抗体の生産のためには、種々の宿主動物をC100-Rの注射により免疫することが
でき、これらの動物には、限定するものではないが、ウサギ、マウス、ラット等
が含まれる。宿主種に応じて、免疫応答を増加させるために種々のアジュバント
を使用することが
でき、そのようなものには、限定するものではないが、フロインド(完全及び不
完全)、水酸化アルミニウムのような無機ゲル、リゾレシチンのような表面活性
物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、オイルエマルジョン
、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、及び有用だと考え
られる、BCG(カルメット・ゲラン杆菌)及びCorynebacterium parbvumのような
ヒトアジュバントが含まれる。
任意の方法を使用することにより、培養下の連続細胞系による抗体分子の生産
が得られる。そのような方法には、限定するものではないが、Kohler及びMilste
inにより最初に記載されたハイブリドーマ法(Nature, 1975, 256:495-497)、ヒ
トB-細胞ハイブリドーマ法(Kosborら,1983, Immunology Today, 4:72; Coteら
,1983, Proc. Natl. Acad. Sci., 80:2026-2030)及びEBV-ハイブリドーマ法(Co
leら,1985, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc.
, pp.77-96)が含まれる。さらに、適当な抗原特異性を有するマウス抗体分子か
らの遺伝子を、適当な生物学的活性のヒト抗体分子からの遺伝子とスプライシン
グすることによる、「キメラ抗体」の生産のために開発された方法(Morrisonら
,1984, Proc. Natl. Acad. Sci., 81:6851-6855; Neubergerら,1984, Nature,
312:604-608; Takedaら,1985,Nature, 314:452-454)を使用することができる
。
C100-Rの特異的結合部位を含む抗体断片を公知の方法により生成することがで
きる。例えば、そのような断片には、限定するものではないが、抗体分子のペプ
シン消化により製造できるF(ab')2 断片、及びF(ab')2 断片のジスルフィド架橋
を還元することに
より生成できるFab断片が含まれる。あるいは、Fab発現ライブラリーを構築する
ことにより(Huseら,1989, Science, 246:1275-1281)、C100-Rに対して所望の特
異性を有するモノクローナルFab断片の迅速で容易な同定が可能となる。
5.4 アンチセンスRNA及びリボザイム
C100-R mRNAの翻訳を阻害するように機能するアンチセンスRNA及びDNA分子及
びリボザイムを含むオリゴヌクレオチド配列も本発明の範囲内のものである。ア
ンチセンスRNA及びDNA分子は、標的mRNAに結合し、タンパク質翻訳を防止するこ
とによりmRNAの翻訳を直接ブロックするように働く。アンチセンスDNAに関して
は、翻訳開始部位、例えばC100-Rヌクレオチド配列の-10及び+10の間の領域から
誘導されたオリゴデオキシリボヌクレオチドが好ましい。
リボザイムは、RNAの特異的開裂を触媒することができる酵素的RNA分子である
。リボザイム作用のメカニズムには、リボザイム分子の、相補的な標的RNAに対
する配列特異的ハイブリダイゼーションとその後の核酸内加水分解(endonucleol
ytic)切断が関連している。C100-R RNA配列の核酸内加水分解切断を特異的に効
率よく触媒する、遺伝子操作されたハンマーヘッドモチーフ(hammerhead motif)
リボザイム分子も本発明の範囲内のものである。
任意の可能性のあるRNA標的内の特異的リボザイム開裂部位は、次の配列:GUA
、GUU及びGUCを含むリボザイム開裂部位について標的分子を走査することにより
最初に同定される。一旦同定されれば、開裂部位を含む標的遺伝子の領域に対応
する15〜20リボ
ヌクレオチドの短いRNA 配列が、そのオリゴヌクレオチドを不適当なものにし得
る二次構造のような、予期される構造的特徴について評価される。候補標的が適
当であることは、リボヌクレアーゼ保護アッセイを使用して、相補的なオリゴヌ
クレオチドとのハイブリダイゼーションのしやすさを試験することにより評価す
ることができる。
本発明のアンチセンスRNA 及びDNA 分子の両方及びリボザイムは、RNA 分子の
合成のための当分野で知られた任意の方法により製造することができる。これら
の方法には、当分野で知られたオリゴデオキシリボヌクレオチドを化学的に合成
する方法、例えば固相ホスホルアミダイト化学合成が含まれる。あるいは、RNA
分子は、アンチセンスRNA 分子をコードするDNA 配列のインビトロ及びインビボ
転写により生成できる。そのようなDNA 配列は、T7あるいはSP6 ポリメラーゼプ
ロモーターのような適当なRNA ポリメラーゼプロモーターを含む広範な種類のベ
クターに導入することができる。あるいは、使用するプロモーターに応じて、構
成的にまたは誘導的にアンチセンスRNA を合成するアンチセンスcDNA構築物を、
細胞系に安定に導入することができる。
細胞内での安定性と半減期を増加させるための手段として、DNA 分子に対する
種々の修飾を導入することができる。可能な修飾には、限定するものではないが
、分子の5'及び/または3'末端へのリボーまたはデオキシーヌクレオチドのフラ
ンキング配列の付加、及びオリゴデオキシリボヌクレオチドバックボーン内での
ホスホジエステル結合ではなくホスホロチオエートまたは2'0-メチルの使用が含
まれる。
5.5 C100-R、DNA 及び遺伝子操作された細胞系の使用
上記したC100-R DNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド及びリボザイム、APP-
R発現産物、抗体及び遺伝子操作された細胞系は、アルツハイマー病の診断と治
療に多数の用途を有する。
例えばC100-R DNA配列は、in situ ハイブリダイゼーションアッセイを含むサ
ザンあるいはノーザン分析のような、C100-R発現の異常を診断するバイオプシー
あるいはオートプシーのハイブリダイゼーションアッセイに使用することができ
る。治療的な応用においては、C100-R DNA配列に基づいて設計されたアンチセン
スまたはリボザイム分子は、C100-R遺伝子産物の転写及び発現をブロックするの
に使用することができる。あるいはC100-R DNAは、正常な組換え遺伝子を個体の
欠損細胞に導入し、あるいは内因的な変異を修正してC100-R及びその機能を再構
成するための遺伝子治療法に使用することができる。
本発明の別の態様においては、C100-Rに特異的な抗体を、バイオプシー組織中
の受容体発現のパターンを決定するために、あるいはインビボにおける診断用画
像形成に使用することができ、このような用途においては、「中和」抗体が好ま
しい。例えば、画像形成化合物と結合した抗体を患者に投与し、C100-Rの位置及
び分布をインビボにおいて「マップ(map)」することができる。
本発明の他の態様においては、APP-R 自体、あるいはそのβAPP-C100結合部位
を含む断片をインビボで投与し得る。遊離のC100-Rあるいは前記ペプチド断片は
β-APPに競合的に結合して、インビボにおいて天然受容体とβ-APPとの相互作用
を阻害し得る。
本発明のさらに別の態様においては、全C100-Rあるいはそのリガンド結合ドメ
インを発現する遺伝子操作された細胞系を、活性なβAPP-C100アゴニストあるい
はアンタゴニストをスクリーニングし、同定するのに使用できる。あるいは、内
因的にC100-Rを発現する細胞系をこの目的に使用することができ、例えば本明細
書中で例示したSK-N-MCのような神経芽細胞腫細胞系を使用できる。βAPP-誘導
ペプチド、その他のペプチド、合成化合物、天然産物、及び生物学的に活性であ
りうる物質のその他の供給源は以下のようにしてスクリーニングすることができ
る。βAPP-C100(これは例えば35Met または「フラッグ」配列で標識でき、ある
いは該ペプチドに対する抗体により検出できる)のC100-Rへの結合を阻害する被
実化合物の能力、従ってそのアゴニストあるいはアンタゴニストとして作用する
能力を測定することができる。受容体の供給源としては、C100-R発現細胞ホモジ
ネートの全体、あるいは細胞下画分を使用できる。結合は、6.1.3 の項に記載し
たような、標準的な受容体結合法を使用して測定することができる。C100-R発現
細胞におけるシグナル変換応答に対するβAPP-C100の効果を妨げるあるいは模倣
する、試薬の能力を測定することができる。例えば、カルシウムの細胞質ゾル濃
度の変化、特異的なプロテインキナーゼの活性化、ホルモンあるいは神経伝達物
質の変化した分泌、第2メッセンジャー生産の変調、あるいは細胞代謝の変化等
の応答を監視することができる。これらのアッセイは、このような目的のために
開発された慣用の技術を用いて、細胞全体または膜調製物において行うことがで
きる。βAPP-C100の毒性効果に応答する遺伝子操作された細胞または細胞系にお
いては、毒性を
誘発または防止する物質の能力を測定することができる。毒性は、文献に記載さ
れたように (Yankner ら,1989, Science 245:417-420)、あるいはその他の確立
された方法により監視することができる。
上記の、あるいはその他のスクリーニングにより見出されたβAPP-C100アゴニ
ストあるいはアンタゴニストのインビボ効果を測定するために、あるいはアルツ
ハイマー病の治療に有効であり得るその他の薬剤を同定するために、C100-R DNA
をトランスジーンとして含むトランスジェニック動物を作出することができる。
最近、リガンド−受容体相互作用についてのコンピュータ作成モデルが開発さ
れており、本発明の特定の態様においては、C100-Rのコンピュータモデル化から
誘導された情報を受容体アゴニストあるいはアンタゴニストの設計に使用するこ
とができる。例えば、特定部位の突然変異誘発の技術を使用してC100-R配列に生
起した変化、及び細胞系における変異体受容体の発現は、特定の受容体領域及び
残基の機能的な役割をさらに規定するのに使用することができる。
6.実施例
以下の小項目は、ニューロン由来の細胞において発現されたAPP 結合タンパク
質の最初の特性決定と、ラットC100-Rの一部を示す相補的DNA のクローニング及
び配列決定とを記載するものである。C100-Rの推定アミノ酸配列は、“B”型カ
ルシウムチャンネル、リアノジンカルシウムチャンネル、カルレチクリン及びタ
ンパク質セリン/トレオニンキナーゼの間に共有されているいくつ
かのモチーフを明らかにした。
6.1 材料及び方法
6.1.1 フラッグ−βAPP-C100のインビトロ翻訳
下記の「フラッグ」配列含有オリゴヌクレオチドを合成し、pGEM7 に挿入した
:
ACC ATG GAC TAC AAA GAC GAT GAC GAT AAA TCG AT
MET ASP TYR LYS ASP ASP ASP ASP LYS SER
(Immunex; Prickettら,1989 BioTechniques 7:580)。さらにMETコドンの前で
、ACC トリプレットが真核細胞翻訳開始のコンセンサス配列を与え、フラッグ
配列の後のClaI部位をクローニングのために付加し、オリゴの5'末端におけるHi
ndIII リンカーも同様であった。pGEMフラッグ構築物をSmal及びClaIで切断し
、ClaI部位を修復した。βAPP-695からのBgII/SmaI断片をこの構築物中にクロー
ン化した。適当な配向を有するクローンを選択した。この組換え体を35S-βAPP-
Cl00ペプチドを製造するのに、2つの方法で使用した。最初は、結合転写/翻訳
システム、TNT Coupled Reticulocyte Lysate System (Promega Corp.)におい
て、推奨された方法に従い、閉環状プラスミドDNAを35S-メチオニン(6μC1)と
ともに溶解物中に加えた。2番目は、非結合反応において、製造業者の手順(Pr
omega Corp.)に従い、組換え体をSpeIで線状化し、5μg DNAをインビトロで
のRNA(約20〜30μg)の製造に使用した。製造業者の手順(Promega Corp.)に
従い、1〜5μgのこのRNA を小麦胚芽あるいはウサギ網状赤血球翻訳システム
にて翻訳した。いずれのインビトロ翻訳物も10分の1容量の100 mM N
-アセチルグルコサミン(Sigma)を加え、アリコートに分けて-80℃で凍結し、
使用の前に透析するか、アリコートに分けて直接凍結し、その後に使用の前に透
析してスピンカラム(BoehringerーMannheim)で精製するか、あるいは市販のAff
igel 10(Biorad)に結合したフラッグ-抗体(Ca ++依存性結合M1 Ab, IBI)を
使用してアフィニティー精製した。アフィニティークロマトグラフィーは、イン
ビトロ翻訳物を、0.5mM CaCl2 を含むPBS(120 mM NaCl, 2.7 mM KCl, 10 mM リ
ン酸バッファー、 pH 7.4)で平衡化したAffigel 10- 結合M1抗体カラム(1 ml
ベッド容量)を通すことにより行った。充分に洗浄した後(5〜10カラム容量)
、ペプチドをNa2EDTA(2 mM)を含むPBSによりカラムから溶出した。ペプチドは
シャープな0.7 mlピークとして溶出された。結合あるいはオートラジオグラフィ
ーにおける使用のために、透析によりEDTAを除去した。フラッグ- βAPP-C100構
築物の配列を決定し、インビトロ翻訳からの生成物ペプチドを質量分光分析法に
よりアミノ酸組成について分析し、その同一性を確認した。
6.1.2 細胞培養
結合アッセイ用のPC12細胞(ATCC)を、10%熱不活性化ウマ血清及び5%ウシ
胎児血清を補充したRPMI1640中で増殖させた。T-175フラスコに、10 ng/ml NGF
を含む増殖培地60 ml中の5×105 細胞/mlを接種した。細胞を収穫するまで(通
常6日目)、この培地の追加の60 mlを2日置きに添加した。示した場合は、NGF
の不在下であることを除いて上記のようにPC12細胞を培養した。細胞を138×gに
おける8分間の遠心分離により回収した。上清を
捨て、ペレットを5 mlの増殖培地に再懸濁した。10 ccのシリンジに装着した23
g針を通して3回細胞を破砕し、単一細胞懸濁物、あるいは、最大でも小さな細
胞凝集物とした。トリパンブルー染料排除により、99%を上回る細胞が生存可能
なものであることが分かった。
SK-N-MC細胞(ATCC)を10%子ウシ血清を補充したDME中で増殖させた。SK-N-M
C細胞は、NGFを含めなかったことを除いてPC-12細胞について記載したように培
養した。
6.1.3 細胞への結合
βAPP-C100結合実験のために、上記のようにして増殖させ調製したPC-12また
はSK-N-MC細胞を計測し、低速遠心分離(138xg)により回収し、1%BSA及び1%グ
ルコースを含むリン酸緩衝溶液(PBS,pH 7.4)(PBG)中に再懸濁した。2×106
細胞を含む0.08 ml容量の細胞懸濁物を、0.01 mlの35S-βAPP-C100、及び0.01 m
lのPBGまたは非標識βAPP-C100もしくはそのビヒクルを含む0.01mlのPBGと混合
した。反応速度及び阻害実験については、35S-βAPP-C100の濃度を25 pMあるい
は50 pMとした。飽和実験については、リガンド濃度を15 pM 〜6 nMの範囲とし
た。示していない場合は、混合物を4℃で3時間インキュベートした。インキュ
ベーション期間の終了時に、138×gでの90秒の遠心分離により細胞をペレット化
し、上清(非結合リガンドを含む)を除去し、0.2 mlの新鮮な氷冷したPBGを加
えた。細胞及び新鮮なバッファーを短時間攪拌し、再度遠心分離し、上記のよう
な新鮮な氷冷したバッファー中に懸濁した。最後に、細胞を遠心分離によりペレ
ット化し、BSA(0.1%)処理フィルターを通して濾過し、0.1% BSAを含む氷冷PBS
の1-mlリンスにより4回洗浄した。新鮮な氷冷バッファー中への細胞の再懸濁と
細胞の濾過の間の時間は10分未満であった。解離実験において、及び結合リガン
ドのサンプルの回収のためには、細胞を2回目の洗浄液として加えたバッファー
中で3時間までインキュベートして、結合したリガンドが解離するようにした。
その後細胞を遠心分離によりペレット化し、上清(解離した結合リガンドを含む
)を分離した。次いで細胞を再洗浄し、上記したようにして収穫した。フィルタ
ーにより保持された放射活性をシンチレーションカウントにより計測した。非特
異的結合は、過剰の(3.2 nM〜18 nM)のβAPP-C100の存在下で起こるものとし
た。飽和データは、市販のソフトウェアを使用してコンピュータにより分析した
。実験データに最も適合した結合モデルをF-検定(p<.05)により決定した。
6.1.4 結合オートラジオグラフィー
Sprague-Dawleyラットを炭酸過剰により屠殺し、その脳を摘出できるまで(1
時間未満)氷中においた。脳はドライアイスで-20℃に冷却したイソペンタン中
で迅速に凍結させ、直ちに使用するか、使用するまで-80℃で保存した。脳を低
温維持装置の標本ホルダーに固着させ、25μMの頭頂切片をゼラチン被覆顕微鏡
スライド上に回収した。切片は一晩-80℃で凍結させるか直ちに使用した。切片
を4℃で空気乾燥し、その後結合バッファー(PBS,1% BSA)と4℃で30分間予
備インキュベートした。このバッファーを、リガンドのみ(35S-βAPP-C100, 0.
01 nM)または最高10倍
過剰の非標識βAPP-C100もしくはそのビヒクルとともにリガンドを含む新鮮なバ
ッファーと置換した。インキュベーションを4℃で3時間継続した。その後リガ
ンド含有バッファーを除去し、切片を新鮮なバッファーで2回洗浄した(15分及
び1分、4℃)。そして切片を氷冷蒸留水に10回浸漬し、室温の空気流下で乾燥
させた。次に切片をX-線フィルムに1〜14日間にわたり当てて、フィルムを現像
した。脳領域を同定するためにいくつかの切片をクレシルバイオレットで染色し
た。オートラジオグラフの領域の光学密度を、画像分析システムを用いて定量的
に測定した。
6.1.5. 発現クローニングによるC100-R cDNAのスクーリニング
cDNAを胚18日目のラット脳mRNAからNeveらの方法にしたがって構築した(1986
; Current Protocols in Molecular BiologyでKlicksteinおよびNeveにより詳細
に記載されている)。λgt11ライブラリー(ラット脳cDNAライブラリー、RL Nev
e ; ヒト脳cDNAライブラリー、Clontech)を150,000 pfu/150 mmプレートの量で
Y1090大腸菌細胞に塗布した。プレートを42℃で3時間インキュベートし、この
間にプラークがちょうど見えるものとなった。あらかじめ10 mM IPTG(イソプロ
ピル-β,D-チオガラクトシド)で飽和させておいたSchleicherとSchuellの132
mmのニトロセルロースフィルターでプレートを重ねるように覆い、わずかに風乾
した。プレートを37℃で3時間放置し、第一フィルターをはずし、TBS(50 mMト
リス、pH 7.7,150 mM NaCl)中に入れた。IPTGに浸しておいたもう一つの第二ニ
トロセルロースフィルターをプレート表面上に置いて2時間放置した。第二フィ
ルターをはずしてTBS中に入れた。これらフィルターは、ブロッキング剤を含ま
ないTBSに12時間以上4日以内放置し、再生(refolding)させた。フィルターを
5%脱脂スキムミルクを含むTBS中で2時間から一晩までの時間でブロックした
。フィルターを結合用緩衝液(50 mMトリス塩酸,pH 7.7,50 mM NaCl,2 mM MgCl2
,1 mMジチオトレイトール)で洗浄した。インビトロで翻訳された3 nMの35S-
βAPP-C100といっしょにフィルターを2時間、4℃でインキュベートした。非結
合標識ペプチドを除去するために、3回の3分間の洗浄(4℃)[(i)結合用緩
衝液のみ、(ii)結合用緩衝液+0.1% NP40、および(iii)結合用緩衝液]を用いた
。フィルターをすぐに
洗浄液から取り出し、風乾した。こうして処理したフィルターをスクリーン付き
のX-OMAT RPフィルムに-70℃で6日間〜2週間さらした。十分なシグナルを得る
ためには、湿潤プレートは十分なタンパク質/プラークを得ることが必要なこと
が分かった。また、この操作全体にわたって、核酸プローブ精製の同等の段階で
通常必要とされるファージよりもさらに多いファージの塗布が必要であった。β
APP-C100結合タンパク質部位を有する「プラーク」的に純粋なファージ集団が上
記のように塗布されたときでさえ、低いパーセントのプラークのみがβAPP-C100
に結合しただけであったが、これは結合のために適当な折りたたみが必要性とさ
れるためであろう。
デュプリケートで作成したフィルターを比較して、35S-βAPPーC100に結合した
タンパク質を発現するプラークを同定した。陽性プラークを集め、さらに別の結
合と精製段階に供した。ラット脳のcDNAライブラリーから単一の陽性クローンを
得るために6段階の単離が必要であった。このラットクローンはλAB1Rと命名し
た。ヒト脳のcDNAライブラリーから5陽性クローンを得るためには5段階の単離
が必要であった。
λAB1Rからの挿入断片を、制限酵素部位(Sal IおよびNot I)を有するλgt11
配列決定用プライマーを用いるPCR増幅によりサブクローン化した。こうして増
幅された断片を精製し、製造業者の説明書にしたがって制限酵素により切断し、
SaII/NotIで切断したBluescript(SK+, Stratragene)中にサブクローン化した
。このラットサブクローンはpAB1R-ラットと命名した。第二のクローニング法は
、「フラッグ」タグ("flag" tag)に対する市販
の抗体を利用して開発されたものである。βAPP-C100を35S-メチオニンで標識し
なかった以外は前記のようにライブラリーを塗布し、プレートにフィルターを乗
せ、処理し、プローブを用いて同定し、洗浄した。フィルターをStratalinkerク
ロスリンカー(Stratagene)で架橋し、5%脱脂ミルクを含むTBS中で2時間イ
ンキュベートすることによりブロックした。次に、これらフィルターを、市販の
抗フラッグ抗体(M2,IBI)をTBS中10μg/mlの濃度でプローブとして用いること
で調べた。過剰の抗体はTBS(4℃)で3回の10分間の洗浄(その中間の洗浄溶
液は0.1 % NP40を補った)で除去した。フィルターを第二抗体であるヤギ抗マウ
スIgG(重鎖、軽鎖)ビオチン複合体(NEN)と一緒に第一抗体と同じようにイン
キュベートした。洗浄後、フィルターを上記の結合用緩衝液中で0.5μCi/mlの[125
I]-アビジン(NEN)とともにインキュベートした。最終的な3回の洗浄はTB
S(その中間の洗浄液は0.1% NP40を含む)を用いた。フィルターを風乾し、スク
リーン付きのXOMAT-RPフィルムに-70℃で6日間〜3週間さらした。これらフィ
ルターのオートラジオグラフを二重試験で比較した。陽性プラークを集めて、さ
らに複数のスクリーニング段階に供した。
βAPP-C100結合タンパク質のヒトの同系物を有するファージを前記の直接結合
法とフラッグ一抗体法の両者を用いてクローン化した。これらのcDNAをサブクロ
ーン化した後に配列を決定する。
6.1.6. cDNAの特性付け
cDNAは、高コピープラスミドベクターにサブクローン化して細
菌を形質転換するか、または複製連鎖反応(PCR)によりファージ組換え体から
直接増幅した。前者の場合では、二本鎖DNAの小量調製物をSequenase(U.S.Bioc
hemicals)を用いて配列決定を行い、後者の場合では、PCR産物を精製して、フ
ェムト(10-15)モル配列決定用システム(Promega)を用いて配列決定を行なっ
た。
これらクローンの配列決定は標準ジデオキシ法(Sequenase; U.S.Biochemical
s)により行なった。コンピュータ分析は主にGenePro(Riverside Scientific E
nterprises)とPCGene (Intelligenics)を用いて行なった。
ヒトDNAまたはラットDNA(PC12)のサザン転写物を、AB1R cDNAの5'末端を表
わす32P-標識260 bp断片(EcoRI/ScaI)をプローブとして用いることで同定した
。8μgのDNAを多様な制限酵素を用いて切断し、0.8%アガロースゲルで泳動し
、ナイロンまたはニトロセルロースに移した。
ノーザン分析は、グアニジニウムチオシアネート法(Chirgwinら,1979 Bioch
emistry 18 5294)により単離した全細胞RNAについて行なった。グリオキサルゲ
ル、ホルムアルデヒド−アガロースゲルおよびドット・ブロットを利用して、異
なる材料に由来するRNAを異なる条件下で定量、評価した(Tanziら,1987, Scie
nce 235:880-884; Tanziら,1988, Nature 331:528-530)。時間を変えて神経成
長因子で処理したPC12に由来するRNA、アルツハイマー病およびダウン症候群の
患者脳に由来するRNA、脳小領域に由来するRNA、多様な発達段階に由来するRNA
等を泳動した。アルツハイマー病またはダウン症候群の患者脳の試料は、Childr
en's Hospital(Boston)の病理部およびMcLean Hospital Brain Tissue Resour
ceから得られたものである。
λgt11中の1985 bpのAB1R cDNAの溶原菌は、Yl089細菌に組換えファージを10,
000 : 1の感染多重度(moi)で感染させ、溶菌しなかった細菌から温度感受性ク
ローンを同定することによりY1089中に構築した。この溶原菌は熱およびIPTGに
より誘導し、得られた細胞溶解物はLaemmilゲル試料用緩衝液に再懸濁した。Kag
eyamaとPastan(1989, Cell 59:815)の方法にしたがって、この試料の一部を10
%PAGE上で電気泳動し、ニトロセルロース上に移し、PBS-トリトンX中の連続的
な希釈濃度の尿素中で4℃で2日間インキュベートした。次に、35S-βAPP-C100
に対する結合を、cDNAライブラリーからABlRクローンを単離するために用いた方
法(但し、TBSの代わりにPBSを用いた)にしたがって行なった。
λABlRからのcDNA挿入断片を哺乳動物発現ベクターpCDNA1中にアンチセンスの
向きでサブクローン化し、これをエレクトロポレーションによりPC12細胞に感染
させた。これらの一時的細胞をDME培地で3日間生育させ、NGFで処理し、35S-標
識βAPP-C100に対するそれらの結合能を調べた。安定な移入細胞を培地中のG418
の含有により選択し、次にネオマイシン耐性細胞を、NGFによる処理後に標識βA
PP-C100に対するそれらの結合能について、結合アッセイにて調べた。
6.1.7. βAPP-C100結合タンパク質プローブを用いたin situハイブリダイゼー ション
ハイブリッド形成プローブは、多様な制限部位で直鎖状とした
pAB1Rラット構築物を標識することにより調製した。アンチセンスRNAプローブは
、BluescriptのT3プロモーターを利用してNcoI部位で直鎖状としたプラスミド鋳
型から作製し、センスコントロールRNAプローブは、BluescriptのT7プロモータ
ーを利用してBamHI部位で直鎖状としたプラスミドから作製した。プローブは多
様な方法で作製した。インビトロ転写を用いてRNAプローブを作った。RNAは35S-
UTP(Promega試薬)またはジゴキシゲニン-UTP(Boehringer-Mannheim試薬)の
いずれかで標識した。ジゴキシゲニン標識DNAプローブはPCRにより作った(Lanz
illo,1991; M.McKennaおよびJ. Carlson, 個人的なレポート); PCRプライマ
ーは適当な断片を作るために作製した(Genosys BiotechnologieS社)。
in situハイブリダイゼーション用切片は結合オートラジオグラフィー用切片
と同じように調製したが、RNAseを含まない条件のみを用いた。ハイブリッド形
成前に、それら切片をグリシン(0.75 g/ml)を含有するリン酸緩衝液(0.1 M)
を用いて3分間の洗浄を2回行なった後、リン酸緩衝液のみで15分間の洗浄を2
回行なった。次に、それら切片をプロテイナーゼK(15 mMトリス塩酸,pH 7.5お
よび15 mM EDTA中で1μg/ml)で30分間37℃で処理し、無水酢酸(0.1 Mトリエタ
ノールアミン、pH 7.5中で0.25%)で10分間洗浄した。この後、通常の濃度の2
倍(2×)のSSC(0.15 M NaCl,0.015 Mクエン酸ナトリウム,pH 7.0)を用いて
15分間の洗浄を2回行い、EtOHとクロロホルムで脱脂し、風乾した。上記のよう
に調製したハイブリッド形成プローブは、次に50%ホルムアミド、20×Denhardt
の試薬、300 μg/mlの一本鎖DN
A, 150 μg/mlのtRNA, 20 mM β-メルカプトエタノール(BME)および2×SSCを
含有する溶液中の切片上に置いた。カバーグラスを切片とハイブリッド形成用溶
液の上に置いて、ゴムのりを用いてこれを該スライドにシールした。ハイブリッ
ドの形成は60℃で一晩行なった。次に前記カバーグラスを取り外し、該切片を30
0 mM BMEを補った4×SSCで30分間、60℃で2回洗浄した。この後、それら切片
をRNAse(2×SSC,20 mM BME中で20μg/ml)で45℃で30分間処理した。次に切片
を2×SSCで4回(60分間、30分間、30分間および30分間、各60℃)洗浄し、1
× SSCで1回(30分間、60℃)洗浄し、2×SSC中に一晩放置した。翌日、切片
を0.05 Mリン酸緩衝液、次に蒸留水で素早くすすいだ。次に、これら切片を風乾
し、X線フィルムに接触するように置いた。これらフィルムは1日〜2週間後に
現像し、これらを用いてハイブリッドを形成したプローブの全体的な分布を確か
めた。プローブの微細位置決定はこれら切片を光乳剤で被覆し、次にこの乳剤を
現像し、多様な脳領域の細胞体上のグレン密度を測定することにより行なった。
6.1.8. 全長ラットAPP-4のクローニング
完全な長さのC100-Rを得るために、pABlR-ラットから作られた多様なプローブ
を用いてラットライブラリーをスクリーニングした。これらのプローブはラット
クローンの最も5'側の配列に対して特異的である。ラット配列がさらに利用でき
るようになれば、その後の複数のスクリーニング段階は、各段階のスクリーニン
グに利用できて最も5'側の配列に特異的であるプローブを利用する
ことになるであろう。さらに、第二のラット脳ライブラリーを、cDNA挿入断片の
5’領域に対して特異的なプライマーを有するλZAP(Stratagene)中に構築し
た。このライブラリーはRACE(cDNA末端迅速増幅)法(Frohmann et al., 1988,
Proc. Natl. Acad.Sci. USA 85:8998-9002)を用いて構築したが、この際に以
下の変更を行なった: (1)このcDNA合成は、オリゴ(dT)を用いる代りに、
ABlR mRNAの3'UTRに対して特異的なABlRT3-1またはABlRT3-3を用いて開始した。
(2)cDNA合成前にmRNAを水酸化メチル水銀で変性させた。(3)MMLV逆転写酵
素("Superscript"- Bethesda Research Labs)をAMV逆転写酵素の代わりに用い
た。(4)EcoRIリンカーの代わりにNotlアダプターをcDNAの末端に連結したた
めに、その後のcDNAの消化はクローニング前に必要ではなかった。消化したNotl
にこれらcDNAをクローン化し、λ ZAP IIに部分的に挿入して、それぞれが約105
個のcDNAクローンの2種類のライブラリーを作製した。このライブラリーは、
各段階のクローニングに利用できて5’配列に対して特異的であるプローブを用
いてスクリーニングされることになる。
全長遺伝子のクローニングに対するもう一つのアプローチはPCR技術を利用
することであろう。海馬メッセンジャーRNAを用いて、cDNA挿入断片の5’末端
に対して特異的なプライマーを利用し、逆転写酵素反応が実施される。次に、タ
ーミナルトランスフェラーゼを用いてグアニンがこのRNA/DNAハイブリッドに「
末端付加され」 ("tailed")、該RNAはRNAse Hで消化され、第二鎖の伸長がpo
ly-Cプライマーを用いて開始される。制限部位を導入したプライマーを用いるこ
とにより、「クローンに特異的な」cDNAがクロ
ーン化され、配列の決定がなされる。このプロセスは全11 kb配列が得られるま
で複数段階にわたって繰り返される(Frohmannら,1988, Proc .Natl. Acad. Sc
i. USA 85:8998-9002 )。
6.2. 結果
6.2.1. 放射性リガンド結合
βAPP-C100は、NGFで分化させたPC12細胞に対して毒性を有するために、前も
ってNGFで処理しておいたPC12細胞の表面に対するインビトロ合成βAPP-C100断
片の結合を調べた(Kozlowski etal. 1992 J. Neuroscience 12:1679)。分化し
たPC12細胞に対する35S-βAPP-C100の結合は、標識していないβAPP-C100に
より阻害できた(図1A)。同様な結果が神経芽細胞腫細胞系のSK-N-MCを用いて
得られた(図1Bを参照)。
NGFで処理したPC12細胞において、結合の阻害可能な割合は全結合の40%〜60%
を占めた。阻害可能な結合に関するIC50値は1.7±0.7 nM(n = 5)であった。
阻害可能な結合は3時間のインキュベーション後で最大に達し、完全な解離が可
能であった(図2)。飽和実験により、決定された上記IC50とほぼ一致する0.81
±0.37 nMの Kd を有する同じ種類の結合部位の存在と0.37±0.05 fmole/106細
胞の Bmax値が示された。NGF処理PC12に対する35S-βAPP-C100の結合は他のぺプ
チド(例えば、多くのタキキニン類(tachykinins))で顕著に阻害されること
はなかった。ラット脳切片において、最大レベルの特異的結合は海馬および嗅覚
器小結節の領域に見い出された。
阻害可能な35S-βAPP-C100結合の量は、NGFにPC12細胞をさら
した時間に依存した。NGFにさらされなかったPC12細胞は阻害可能な結合をほと
んど示さなかったが、他方、NGFの存在下で4日間または6日間培養したものは
漸増する結合量を示した。結合に影響を与えるもう一つの変数はpHであった。
最大量の結合はpH 7で起こった。結合はpH 6で最大量の25%だけであり、pH 8
.5では52%だけであった。
このアッセイ条件での35S-βAPP-C100の安定性を評価するために、インキュベ
ーション時間後の遊離リガンド(非結合)および細胞に結合させて遊離させたリ
ガンドの両者をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)により調べた。ア
ッセイに添加する前に、ほとんどの放射活性が15 kDaの見掛け分子量を有する単
一バンドに含まれていた。これはβAPP-C100の単量体を表わしている。少量の物
質が2本の別の拡散バンドにも存在した。一つは主要バンドの分子量の約2倍で
移動し、おそらくβAPP-C100の二量体を表わしている。他のバンドはさらに高い
分子量を有しており、凝集体であろう。インキュベーション時間後の非結合リガ
ンドのゲルの特徴はインキュベーション前のリガンドのものと同じであり、該リ
ガンドは分解していないことを示した。同様に、結合から遊離したリガンドは、
高分子量物質の量のわずかな減少が起こりうることを除けば、最初に添加したリ
ガンドと同じ特徴を有していた。これらのデータは、βAPP-C100リガンドの結合
がその変異を引き起さないことを示している。
ホスホチロシンに関する共通配列の意義を調べるために行なったβAPP-C100中
のチロシンの変異(Tyr687からPheへ)により、分化PC-12細胞に対して毒性のな
いぺプチドが作られた。Phe687-
βAPP-C100は、14 nM(n = 3)までの濃度では35S−βAPP-C100結合を顕著には
阻害せず、βAPP-C100結合部位において在来の形のものよりも効力が1/20以下の
リガンドとなった。
6.2.2. C100-Rのクローニングと特性付け
最終的な溶菌サイクルでタンパク質を発現させるために誘導されたλgt11プラ
ークに対する35S-βAPP-C100結合のオートラジオグラフィーのシグナルは不規則
であり不定である。我々はオートラジオグラフで明確なデュプリケートを作るた
めに、XOMAT-RP高分解能フィルムと長時間の露出を用いた(図3)。
ラットクローンであるλABlRのcDNA挿入断片の大きさは1970 bpであった。そ
の全配列を図4に示す(配列番号1〜2)。示された配列は、ベクターλgt11と
Bluescriptから誘導したβ-gal遺伝子の一部を含んでいる。クローンのこのオー
プンリーディングフレームはβ-Gal遺伝子に記録されていないので、クローンは
非融合タンパク質として発現している。175位置のATGは、大腸菌リボゾーム結合
部位の-AGAAA(標準的な部位はAGGAである)として働くことのできる8塩基対離
れた隣接配列を有している。このメチオニンから始まるオープンリーディングフ
レームの翻訳は、407アミノ酸からなる分子量45,253 Dのタンパク質を生むであ
ろう。そのような発現はおそらく再開始の産物であり、100 kD非融合タンパク質
の発現について既に記録されている(Yang C. H. Lambie,E. J.およびSnyder, M
. J. of Cell Biology 116:1303-1317)。配列の分析は、該クローンが遺伝子の
カルボキシル末端部分の1349塩基対(1395からβ-Gal配列を引いたもの)と3’
非翻訳領域の
575塩基対を含むことを明らかにした。核酸の配列分析は"B"タイプのカルシウム
チャンネルであるリアノジンカルシウムチャンネルおよび高親和性カルシウム結
合タンパク質であるカルレチクリン(calreticulin)との相同性を示している(
図5)。翻訳されたタンパク質配列の分析は、いくつかの潜在的なリン酸化部位
(多様なリン酸化酵素標的部位、例えばcAMP依存性タンパク質リン酸化酵素、cG
MP依存性タンパク質リン酸化酵素、タンパク質キナーゼC、カゼインリン酸化酵
素II等のもの)、潜在的N-グリコシル化部位、潜在的ミリストイル化部位、チロ
シン硫酸化部位、およびセリン/トレオニンタンパク質リン酸化酵素に特異的な
サインを明らかにしている。このセリン/トレオニンリン酸化酵素の「サイン」
または保存された触媒コア配列は、翻訳配列の246〜258からのAB1Rクローン中に
見つかっている(図4)。このサインは、Hunterと彼の共同研究者(Hanks, S.K
., Quinn, A.M., およびHunter, T. (1988)Science 241 42-52)により発見さ
れた共通パターンである-[LIVMFYC]-X- [HY]-D[LIVMFY]-K-X(2)-N-[L
IVMFC]と合致する。ラットABlRクローンにおいて、その配列はV-I-H-R-D-I-K-S
-D-N-I-L-Lである(図4)。
多くのさらに別のラットcDNAクローンを単離し、それらの配列を決定した(図
9)。この新しい配列情報は、5’方向で図4に示すC100-Rのコード領域を広げ
ている。図9のヌクレオチド686の上の*は、ヌクレオチド40で図4に示された
ラット配列との接合点を示している。
ノーザン分析は、このcDNAに対応するメッセンジャーRNAは脳全体にわたって
高度に発現することを示している。このcDNAは11
kbの目立つバンドとハイブリッドを形成し、約3 kbのバンドに弱くハイブリッ
ドを形成する。PC12細胞において、NGFで誘導されるハイブリッド形成バンドが9
.5 kbに存在する。PC12細胞には長期の培養とNGF処理により現われる4.4 kbのハ
イブリッド形成バンドも存在する。これらのさらに弱くハイブリッドを形成する
低分子量のバンドは、核酸レベルで相同性を示すカルレチクリンのような分子を
コードするメッセンジャーRNAに対して交差ハイブリッド形成を示すであろう。
アルツハイマー病患者の脳からのRNAのノーザン分析は、βAPP-C100結合タンパ
ク質がコントロールにおけるよりも高い又は低いレベルで発現しないことを示し
ている。
ヒトおよびラットの染色体DNAのサザン分析は、ABlR cDNAは少数のバンドとハ
イブリッドを形成することを示し、これは単一のコピー遺伝子を表わすABlRと一
致する(図6)。強くハイブリッドを形成する3.0 kbのバンドならびに2本の弱
くハイブリッドを形成するバンド(1本は8.5 kb)および種に依存して25〜30 k
bににある高分子量のバンドが観察された。
6.2.3. in situハイブリダイゼーション
ラット脳切片において、バックグランドよりも高いレベルのハイブリッド形成
が海馬および嗅覚器小結節においてのみ明らかであった(図8)。このことはオ
ートラジオグラフィーで測定された結合部位の分布に一致する(図7)。
7.実施例: ヒトC100-Rのクローニング
ラムダZAP 11 (Stratagene)中に構築した成人ヒト海馬cDNAライブラリーを
、ラットC100-R cDNA挿入断片からの標識断片を用いてスクリーニングした。こ
の標識断片は、図9でヌクレオチド31から409までのEcoRI断片として表わされ
る。ラットC100-R EcoRI断片をランダムプライマー反応(random priming react
ion)を用いて標識し、ライブラリーをストリンジェント条件下で当業者により
日常的に用いられている方法を用いてスクリーニングした。スクリーニング手法
の概説については、例えば、Maniatis, 1989,Molecular Cloning, A Laboratory
Manual, Cold Spring HarborPress, N.Y.を参照されたい。長さが600〜1500塩
基対の範囲の幾つかのクローンが得られた。1500塩基対クローンの部分的な配列
決定の結果を図11に示す。ヒトC100-R配列とラットC100-R配列の配列の相同領域
を図12に示す。
8.微生物の寄託
以下の微生物をメリーランド州ロックビル所在のアメリカンタイプカルチャー
コレクション(ATCC)に寄託し、以下の受託番号が与えられた:
寄託された微生物(実施態様)は発明の一つの特徴を示すことを意図するもの
であって、機能的に同等であるいかなる微生物も本発明の範囲内にあるので、本
発明は寄託された微生物により限定されるべきものではない。
本発明は、発明の一つの特徴を示すことを意図するものである
例示された実施態様によってその範囲が限定されるべきものではなく、機能的に
同等ないかなるクローン、DNAまたはアミノ酸配列も本発明の範囲内にある。
実際、本発明の多様な改良が前述の記載および添付の図面から当業者には自明で
ある。そのような改良は添付のクレームの範囲内にあることが意図されるもので
ある。
さらに、ヌクレオチドについて示したすべての塩基対の大きさは近似的なもの
であって説明の目的のみに用いられていることを理解されたい。
配列表
(2)配列番号1の情報
(i)配列の特徴:
(A)配列の長さ:1971塩基体
(B)配列の型:核酸
(C)鎖の数:一本鎖
(D)トポロジー:不明
(ii)配列の種類:cDNA
(ix)特徴
(A)名称/キー:CDS
(B)存在位置:1..1395
(C)鎖の数:一本鎖
(xi)配列の記載:配列番号1:
SEOUENCE ON PAGES 49−51
(2)配列番号2の情報
(i)配列の特徴:
(A)配列の長さ:465アミノ酸
(B)配列の型:アミノ酸
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:タンパク質
(xi)配列の記載:配列番号2:
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(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
C07K 19/00
C12N 5/10
C12P 21/02 C 9282−4B
G01N 33/53 D 8310−2J
33/577 B 8310−2J
//(C12P 21/02
C12R 1:91)
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AU,BB,BG,BR,BY,CA,
CZ,FI,HU,JP,KR,KZ,LK,MG,M
N,MW,NO,NZ,PL,RO,RU,SD,SK
,UA,VN
(72)発明者 マンリー,スーザン ピー.
アメリカ合衆国 06492 コネチカット州
ウォーリングフォード,ノース メイン
ストリート 245番地
(72)発明者 コズロースキー,マイケル アール.
アメリカ合衆国 06340 コネチカット州
ノーンク,ハイ ストリート 71番地
(72)発明者 ニーヴ,レイチェル エル.
アメリカ合衆国 02178 マサチューセッ
ツ州 ベルモント,#3,ビーチ ストリ
ート 103番地