【発明の詳細な説明】
同時粒子選択、粒子分離印刷方法およびシステム
技術分野
本発明は、コンピュータ制御印刷装置の分野に関し、特に液体インクドロップ
オンデマンド(DOD)印刷システムの分野に関するものである。
発明の背景
現在まで、多くの異なるタイプのディジタル制御印刷システムが発明され、多
くのタイプのものが現在生産されている。これらの印刷システムは、種々の作動
機構、種々のマーキング剤および種々の記録媒体を使用する。現在使用されてい
るディジタル印刷システムの例としては、レーザ電子写真プリンタ、LED電子
写真プリンタ、ドットマトリックスインパクトプリンタ、熱式ペーパープリンタ
、フィルムレコーダ、熱式ワックスプリンタ、染料分散熱式移動プリンタおよび
インクジェットプリンタ等がある。しかし、現在のところ、従来の方法が、設定
に非常に費用が掛かり、特定のページを数千枚印刷する場合でなければ、商業的
にほとんど引き合わないにもかかわらず、電子印刷システムが機械的印刷機に取
って代わっているケースはまだまだ少ない。それ故、例えば、普通紙を使用して
、高速、低コストで高品質のカラーイメージを印刷することができる改良型ディ
ジタル制御印刷システムが求められている。
インクジェット印刷は、ディジタル制御電子印刷分野での極めて優れた競争相
手とされてきた。何故なら、例えば、インパクト型ではなく、騒音が少なく、普
通紙に印刷でき、トナーの転写や定着を行う必要がないからである。
現在までに、多くのタイプのインクジェット印刷機構が発明されてきた。これ
らのインクジェット印刷機構は、連続インクジェット(CIJ)またはドロップ
オンデマンド(DOD)インクジェットに分類することができる。連続インクジ
ェット印刷の歴史は古く、少なくとも1929年には発明されていた。ハンセル
の米国特許第1、941、001号参照。
1967年のスイート他の米国特許第3、373、437号は、印刷に使用さ
れるインクの粒子が選択的に電荷を与えられ、記録媒体に向けて偏向される、連
続インクジェットノズルのアレーを開示している。この技術は、二進法偏向CI
Jとして周知であり、エルムジェットおよびサイテックスのような数社のメーカ
ーが使用している。
1966年のヘルツ他の米国特許第3、416、153号は、小さな孔を通る
インクの粒子の数を変調するために、電荷を帯びたインクの粒子の流れを静電的
に分散させることによって、CIJ印刷で印刷した点の濃度を光学的に変化させ
る方法を開示している。この技術は、イリスグラフィックス社が製造したインク
ジェットプリンタに使用されている。
1970年のカイザー他の米国特許第3、946、398号は、圧電クリスタ
ルに高電圧を掛け、クリスタルを曲げ、インクタンクに圧力を掛け、必要に応じ
てインクの粒子を噴出させるDODインクジェットプリンタを開示している。多
くのタイプの圧電ドロップオンデマンドプリンタが次から次へと発明されたが、
これら圧電プリンタは、圧電クリスタルを、曲げモード、押しモード、せん断モ
ードおよび絞りモードで使用している。圧電DODプリンタは、高温溶融インク
(例えば、テクトロニクスおよびデータプロダクトプリンタ)を使用して、商業
的に成功したが、その家庭用およびオフィス用のイメージ解像度は最高720d
piであった(セイコーエプソン)。圧電DODプリンタは、広い範囲の種類の
インクを使用することができるという利点を持っている。しかし、圧電印刷機構
は、通常、複雑な高電圧駆動回路と容積の大きい圧電クリスタルアレーを必要と
し、そのため製造が困難であり、性能の上でも不利になっている。
1979年の遠藤他の英国特許第2、007、162号は、ノズル内のインク
と熱的に接触している電熱トランスジューサ(ヒータ)に、電力パルスを加える
電熱DODインクジェットプリンタを開示している。ヒータは、急速に、水をベ
ースとしたインクを高温に加熱し、その場合、少量のインクは急速に蒸発しバブ
ルを形成する。このようなバブルが形成されると、その結果、圧力波ができ、こ
の圧力波はインクの粒子をヒータの基板の縁部にそって、小さな孔部から排出さ
せる。この技術は、BubblejetTM(日本のキャノン社の登録商標)と呼
ばれ、キャノン、ゼロックスおよびその他のメーカーが製造している多くの種類
の印刷システムで使用されている。
1982年のボート他の米国特許第4、490、728号は、バブルの形成に
よって作動する電熱粒子排出システムを開示している。このシステムの場合、粒
子はヒータの上に設置されている孔部を持つ板に形成されているノズルを通して
、ヒータの基板の面に垂直な方向に排出される。このシステムは熱インクジェッ
トと呼ばれ、ヒューレット−パッカード社が製造している。本明細書には熱イン
クジェットという用語は、ヒューレット−パッカード社のシステムおよびBub
blejetTMと通常呼ばれているシステムの両方を指すのに使用されている。
熱インクジェット印刷は、通常、一つの粒子を排出するのに約2マイクロ秒中
に約20マイクロジュールを必要とする。各ヒータが10ワットの有効電力を消
費するのは、それ自身不利であるうえに、特別なインクを必要とし、ドライバエ
レクトロニクスが複雑になり、ヒータ素子の劣化が促進される。
技術文献には、他のインクジェット印刷システムも記載されているが、現在は
商業的には使用されていない。例えば、米国特許第4、275、290号は、熱
パルスと水圧で、所定の印刷ヘッドノズルのアドレスを一致させることにより、
インクが印刷ヘッドの下を通して、スペーサにより分離されている紙に自由に流
れることができるシステムを開示している。米国特許第4、737、803号、
第4、737、803号および第4、748、458号は、印刷ヘッドノズル内
のインクのアドレスを熱パルスおよび静電誘引フィールドに一致させることによ
り、印刷シートにインクの粒子を排出させるインクジェット記録システムを開示
している。
上記各インクジェット印刷システムは、利点と欠点とを持つ。しかし、例えば
、コスト、速度、品質、信頼性、電力利用、簡単な構造と操作、耐久性および消
耗品の点で有利な改良型インクジェット印刷方法が依然として求められているこ
とは広く知られている。
発明の概要
「液体インク印刷装置およびシステム」および「同時粒子選択、粒子分離印刷
方法およびシステム」という名称の、本出願と一緒に提出された出願には、上記
の従来技術の問題を克服するための、有意な改良を行うことができる新しい方法
および装置が記載されている。これらの発明は、例えば、粒子の大きさおよび粒
子の印刷場所の正確さ、達成できる印刷速度、電力利用、耐久性および遭遇する
動作上の熱応力および他のプリンタ性能特性、並びに製造が容易であることおよ
び有益なインクの特性に関して、重要な利点を持っている。本発明の一つの重要
な目的は、上記出願に開示されている構造および方法をさらに改善し、それによ
り印刷技術の進歩に貢献することである。
それ故、本発明の一つの重要な目的は、従来技術の方法を改良することができ
るドロップオンデマンドインク印刷の新しい方法を提供することである。重要な
態様について説明すると、本発明の方法は、例えば、インク粒子の大きさおよび
インク粒子の印刷場所の正確さ、印刷速度、電力利用、耐久性および動作上の熱
応力および以下により詳細に説明する他のプリンタ性能特性について利点を持っ
ている。他の重要な態様について説明すると、本発明は製造および有用なインク
の性質に関して有意な利点を持っている。
ある実施形態の場合、本発明は、下記のステップ、すなわち、(1)(a)周
囲マニフオールド圧力より高くすることと、(b)選択エネルギーパルスとの結
合作用により、アドレスされたインク部分を選択されなかったノズルを超えて、
しかしその隣接しているインクの塊から分離しない程度に、その関連ノズルから
所定の領域へ移動させる、同時フォースにより、印刷ヘッドの選択されたノズル
内のインクにアドレスするステップと、(2)上記アドレスのステップ中、(a
)上記領域に送られた選択されたインクをその隣接しているインクの塊から分離
することができ、(b)アドレスされなかったインクをそのように分離させない
大きさと近接の力で、印刷ヘッドからのインクを印刷ゾーンへ誘引するステップ
とを含む、ドロップオンデマンド印刷方法からなる。
ある好適な実施形態の場合には、インク粒子選択手段は、インクに上記周囲圧
力が加えられるのと同時に、表面張力を下げるためにインクを加熱することであ
る。他の好適な実施形態の場合には、インク粒子分離手段は、所定の均一な電界
と一緒に、所定のインクの伝導性特性を含む。
他の好適な態様について説明すると、本発明は、インク粒子を排出するのに必
要なエネルギーが、上記インク粒子の量に等しい量のバルクインクの周囲温度よ
り高い温度をインク粒子排出温度以下の温度まで上昇させるのに必要なエネルギ
ーより低いことを特徴とする熱作動液体インク印刷ヘッドからなる。
他の好適な態様について説明すると、本発明は、使用するインクが室温では固
体だが、動作温度では液体である熱作動ドロップオンデマンドプリンタからなり
、選択手段は、選択するインク粒子の付近のインクの粘度を低くするために、変
動圧力パルスと選択加熱とを同時に行う。
さらに他の態様について説明すると、本発明は、インク粒子を排出するのに必
要なエネルギーが、上記インク粒子の量に等しい量のバルクインクの周囲のイン
ク温度より高い温度をインク粒子排出温度以下の温度まで上昇させるのに必要な
エネルギーより低いことを特徴とする熱作動液体インク印刷ヘッドからなる。
図面の簡単な説明
図1(a)は、本発明の一つの例示としての印刷装置の簡単なブロック図であ
る。
図1(b)は、本発明のノズルチップの一例の断面図である。
図2(a)−図2(f)は、インク粒子選択の流体力学シミュレーションであ
る。
図3(a)は、本発明の一実施形態の作動中のノズルの有限要素流体力学シミ
ュレーションである。
図3(b)は、インク粒子選択および分離の際の継続メニスカス位置である。
図3(c)は、インク粒子選択サイクル中の種々の点における温度である。
図3(d)は、種々のインク添加物に対する測定表面張力対温度曲線である。
図3(e)は、図3(c)の温度曲線を発生させるためのノズルヒータに送ら
れる電力パルスである。
図4は、本発明を実施するための印刷ヘッド駆動回路の簡単なブロック図であ
る。
図5は、故障許容を使用もしくは使用しない、本発明の特徴を実施するA4ペ
ージ幅のカラー印刷ヘッド用の予想製造歩留まりである。
図6は、本発明の一実施形態を使用する印刷システムの一般化したブロック図
である。
図7は、図8−図18に示すコンピュータシミュレーションに使用する、本発
明の印刷ヘッドノズル実施形態の一例の断面図である。
図8(a)は、一つのヒータ加熱パルスの間に印刷ヘッドに供給される電力サ
ブパルスである。
図8(b)は、インク粒子選択プロセス中の、ノズルの種々の点における温度
である。
図9は、インク粒子選択プロセス中の、メニスカス位置対時間のグラフである
。
図10は、インク粒子選択プロセス中の、5マイクロ秒毎のメニスカス位置と
形状のグラフである。
図11は、インク粒子選択プロセス開始前のインクメニスカスの静止位置であ
る。
図12−図17は、インク粒子選択プロセス中の種々の段階での、メニスカス
位置と等温線である。
図18は、インク粒子選択ヒータパルスの開始50マイクロ秒後の流体流線で
ある。
図19は、自己冷却と維持するのに許容できる最大インク粒子エネルギーのグ
ラフである。
図20は、時間の関数としての圧力変動の三つのサイクルである。
図21は、図8の第三のサイクル中に加えられた電熱パルスと、時間の関数と
してのノズル内の種々の点での温度である。
図22は、図7の周期中の時間の関数としてのメニスカスの極値の位置である
。
図23(a)、図23(c)、図23(e)、図23(g)および図23(i
)は、インク粒子排出サイクル中の種々の時点での、等温線およびインク粒子の
放出を示す。
図23(b)、図23(d)、図23(f)、図23(h)および図23(j
)は、インク粒子排出サイクル中の種々の時点での、等粘度線およびインク粒子
の放出で示す。
図24は、インク粒子が選択されない場合の、1サイクル中のメニスカス位置
の移動である。
図25は、インク粒子選択サイクル中のメニスカス位置の移動である。インク
粒子の分離は図示してない。
図26は、図20−図25の印刷ヘッドの周波数の半分の周波数で動作中の印
刷ヘッドに対する、時間の関数としてのメニスカスの極値の位置である。
図27は、図20−図25の印刷ヘッドの周波数の半分の周波数で動作中の印
刷ヘッド内でインク粒子が選択されない場合の、1サイクル中のメニスカス位置
の移動である。
図28は、図20−図25の印刷ヘッドの周波数の半分の周波数で動作中の印
刷ヘッド内のインク粒子選択サイクル中のメニスカス位置の移動である。インク
粒子の分離は図示してない。
好適な実施形態の詳細な説明
一つの一般的態様では、本発明は、ドロップオンデマンド印刷機構からなり、
そこでは、印刷に使用されるインク粒子を選択する手段が、選択されたインク粒
子と選択されていないインク粒子との間の位置関係を変えるが、これは、インク
粒子がインクの表面張力に打ち勝ち、インクの本体から分離するには不十分であ
り、されに、インク本体から、選択されたインク粒子を分離させるために別の手
段が使用されている。
インク粒子選択手段をインク粒子分離手段から分離すると、どのインク粒子を
印刷に使用するのかを選択するのに必要なエネルギーが有意に低減する。インク
粒子選択手段だけを、各ノズルに対する個々の信号によって駆動すればよいから
である。インク粒子分離手段は、電界または条件に応じて、すべてのノズルに同
時に使用することができる。
インク粒子選択手段は、下記のリストから選択することができるが、リストに
記載されているものだけに限定されるわけではない。
1)圧力が掛けられているインクの表面張力の電熱低減
2)インク粒子の排出を起こさせるには不十分なバブル体積による、電熱バルブ
の発生
3)インク粒子を排出させるには不十分な容積の変化を持つ圧電
4)各ノズルに一つの電極を使用する静電吸引
インク粒子分離手段は、下記のリストから選択することができるが、リストに
記載されているものだけに限定されるわけではない。
1)近接(印刷ヘッドに近接している記録媒体)
2)振動インク圧による近接
3)静電吸引
4)磁気吸引
「DOD印刷技術の目標」テーブルは、ドロップオンデマンド印刷技術のいく
つかの望ましい特性を示す。このテーブルはまた、それにより本明細書に記載し
たいくつかの実施形態、または本発明に関連する他の出願に記載されているいく
つかの実施形態が使用し、それにより従来技術を改良したいくつかの方法を表示
している。
熱的インクジェット(TIJ)および圧電インクジェットシステムの場合には
、選択したインク粒子が確実にインクの表面張力に打ち勝ち、インク本体から分
離し、記録媒体に吹き付けられるためには、インク粒子の秒速は好適には約10
メートルであることが好ましい。上記システムの電気的エネルギーを、インク粒
子の運動エネルギーに変換する効率は非常に低い。TIJシステムの効率は、約
0.02%である。このことは、TIJ印刷ヘッド用の駆動回路は、大電流を切
り替えなければならないことを意味する。圧電インクジェットヘッド用の駆動回
路は、大電圧を切り替えなければならないか、または大きな容量性の負荷を切り
替えなければならない。ページ幅のTIJ印刷ヘッドの全消費電力は、非常に高
い。1秒間に1つの4カラーブラックイメージを印刷する、800dpiのA4
全カラーページ幅のTIJ印刷ヘッド印刷は、約6キロワットの電力を消費する
が、その大部分は無駄な熱になる。この熱を除去するのが難しいので、ローコス
トで、高速、高解像度の小型のページ幅TIJシステムの生産がなかなかうまく
いかない。
本発明の実施形態の一つの重要な特徴は、印刷に使用するインク粒子の選択に
必要なエネルギーを有意に低減する手段である。上記のエネルギーの低減は、イ
ンク粒子を選択するための手段を、選択したインク粒子を確実にインク本体から
分離し、また記録媒体上にドットを形成するための手段から分離することによっ
て達成される。インク粒子選択手段だけは、各ノズルに対する個々の信号によっ
て駆動しなければならない。インク粒子分離手段は、すべてのノズルに同時に適
用されるフィールドまたはコンディションとなる。
「インク粒子選択手段」を示すテーブルには、本発明のインク粒子を選択する
ための可能な手段がいくつか表示されている。インク粒子選択手段は、選択され
たインク粒子の位置を十分に変化させるのに必要であり、それにより、インク粒
子分離手段は、選択されたインク粒子を、選択されなかったインク粒子から区別
することができるわけである。
他のインク粒子選択手段も、使用することができる。
水をベースとするインク用の好適なインク粒子選択手段は、方法1:「圧力下
のインクの表面張力を電熱により低減する」方法である。このインク粒子選択手
段は、他のシステムと比較すると、多くの利点を持つ。その利点としては下記の
ものが含まれる。すなわち、動作電力が低いこと(TIJの約1%)、CMOS
VLSIチップ製造法と互換性を持っていること、動作電圧が低いこと(約1
0V)、ノズル密度が高いこと、低温で動作できること、および適当なインク組
成の範囲が広いことである。インクの表面張力は、温度の上昇に従って、低下し
なければならない。
高温溶融インクまたはオイルをベースとするインク用の好適なインク粒子選択
手段は、方法2:「変動インク圧とともに、インクの粘度を電熱により下げる」
方法である。上記インク粒子選択手段は、温度の上昇と共に、粘度が大幅に低下
するが、表面張力は少ししか低下しないインクと一緒に使用するのに特に適して
いる。特に、比較的高い分子量を持つ非極性インクキャリヤの場合に適している
。これは特に、高温溶融インクおよびオイルをベースにしているインクの場合に
適している。
「インク粒子分離手段」を示すテーブルには、選択されたインク粒子をインク
本体から分離し、選択したインク粒子により、印刷媒体上にドットを形成するの
に使用することができるいくつかの方法が示されている。インク粒子分離手段は
、選択されなかったインク粒子が、印刷媒体上に絶対にドットを形成しないよう
にするために、選択されたインク粒子を選択されなかったインク粒子から区別す
る。
他のインク粒子分離手段も使用することができる。
好適なインク粒子分離手段は、用途によって変わる。
ほとんどの用途の場合には、方法1:「静電誘引」または方法2:「交流電界
」が最も適している。平滑なコーティングが行われた紙またはフィルムが使用さ
れ、非常な高速が絶対必要ではない場合には、方法3:「近接」が適当である。
高速、高品質を必要とする場合には、方法4:「転送近接」を使用することがで
きる。方法6:「磁気誘引」は、印刷媒体が、近接印刷に対してあまりにざらざ
らしていて、静電インク粒子分離用に必要な高電圧が望ましくない、ポータブル
印刷システムに適している。すべての用途に適用できるはっきりした「最善の」
インク粒子分離手段はない。
本発明の種々のタイプの印刷システムのより詳細な説明は、その開示が参考文
献として本明細書に記載されている、1995年4月12日付けの下記のオース
トラリアの特許明細書に記載されている。すなわち、
「液体インク故障許容(LIFT)印刷機構」(出願番号:PN2308)
「LIFT印刷の際の電熱インク粒子選択」(出願番号:PN2309)
「印刷媒体近接によるLIFT印刷の際のインク粒子分離」(出願番号:PN
2310
「ヘッドと媒体の間の距離を変化させることによる、近接LIFT印刷におけ
るインク粒子の大きさの調整」(出願PN2311)
「音響インク波を使用する増大近接LIFT印刷」(出願番号:2312)
「LIFT印刷における静電インク粒子分離」(出願番号:PN2313)
「近接印刷における多重同時インク粒子サイズ」(出願番号:PN2321)
「熱作動印刷ヘッドの自己冷却動作」(出願番号:PN2322)
「熱的粘度低減LIFT印刷」(出願番号:PN2323)
図1(a)は、本発明の一つの好適な印刷システムの略図である。
イメージ源52は、スキャナまたはコンピュータからのラスタイメージデータ
であってもよいし、ページ記述言語(PDL)の形のアウトラインイメージデー
タであってもよいし、または他の形のディジタルイメージ表現であってもよい。
このイメージデータは、イメージ処理システム53によってピクセルマップされ
たページイメージに変換される。上記イメージ処理システムは、PDLイメージ
データの場合には、ラスタイメージプロセッサ(RIP)かも知れないし、ラス
タイメージデータの場合には、ピクセルイメージ操作であるかもしれない。イメ
ージ処理ユニット53によって生じた連続トーンデータは、ハーフトーンである
。ハーフトーン化は、ディジタルハーフトーン化ユニット54によって行われる
。ハーフトーン化されたビットマップイメージデータは、イメージメモリ72に
記憶される。プリンタおよびシステム構成によって、イメージメモリ72は全ペ
ージメモリであったり、バンドメモリであったりする。ヒータ制御回路71は、
イメージメモリ72からデータを読み取り、印刷ヘッド50の一部であるノズル
ヒータ(図1(b)の103)に、時変電気パルスを送る。上記パルスは適当な
時間に、適当なノズルに送られ、その結果、選択されたインク粒子は、イメージ
メモリ72のデータによって指定された、記録媒体51上の適当な場所に点を形
成する。
記録媒体51は、マイクロコントローラ315によって制御されている、ペー
パー移動制御システム66によって電子的に制御されている、ペーパー移動シス
テム65によって、ヘッド50に対して移動する。図1(a)に示すペーパー移
動システムはその略図にしか過ぎず、多くの異なる機械的構成を使用することが
できる。ページ幅印刷ヘッドの場合には、記録媒体51を、定置型のヘッド50
に接触させながら移動させるのが最も便宜的な方法である。しかし、走査印刷シ
ステムの場合には、相互にラスタ動作が行われるように、普通ヘッド50を軸(
サブ走査方向)上にそって移動し、記録媒体51を直行軸(主走査方向)にそっ
て移動するのが最も便宜的な方法である。マイクロコントローラ315は、また
インク圧レギュレータ63およびヒータ制御回路71を制御することができる。
表面張力の低減を利用する印刷の場合には、インクは圧力が掛けられた状態で
インクタンク64に収容されている。(インク粒子が排出されない)静止状態の
場合には、インク圧は表面張力に打ち勝って、インク粒子を排出するほどまだ十
分高くない。インク圧レギュレータ63の制御の下で、インクタンク64に圧力
を加えることによって、インクに一定の圧力を加えることができる。別の方法と
しては、大型の印刷システムの場合には、ヘッド50上の適当な高さのところに
、インクタンク64のインク頂面を設定することによって、インク圧を非常に正
確に発生し、制御することができる。インクレベルは、簡単なフロート弁(図示
せず)により調整することができる。
粘度の低減を利用する印刷の場合には、インクはインクタンク64に収容され
ていて、インク圧は振動により与えられる。この振動を発生するための手段とし
ては、インクチャネル(図示せず)に実装されている圧電アクチュエータを使用
することができる。
インク粒子分離手段と共に適当に配置すれば、選択されたインク粒子は、記録
媒体51上に点を形成し、一方、選択されなかったインク粒子はインク本体の一
部として残る。
インクは、インクチャネル装置75によって、ヘッド50の背面に分配される
。インクは、好適にはヘッド50のシリコン基板に彫られたスロットおよび/ま
たは孔部を通って、ノズルおよびアクチュエータが設置されている前面に流れる
ことが好ましい。熱的選択が行われる場合には、ノズルアクチュエータは、電熱
ヒータである。
本発明のある種のタイプのプリンタの場合には、選択されたインク粒子をイン
ク本体から確実に分離し、記録媒体51の方向に確実に移動させるのに、外部電
界74が必要になる。インクは容易に電導性を持つことができるので、手ごろな
外部電界74として、定電界を使用することができる。この場合、ペーパーガイ
ドまたはプラテン67を、電導性の材料で作ることができ、電界を発生する一つ
の電極として使用することができる。もう一方の電極としては、ヘッド50自身
を使用することができる。他の実施形態は、選択されたインク粒子と選択されな
かったインク粒子とを区別するための手段として、印刷媒体の近接を使用してい
る。
小さなインク粒子の場合には、インク粒子に掛かる重力は非常に小さい。すな
わち、表面張力の約10-4で、ほとんどの場合、重力は無視することができる。
このため、印刷ヘッド50および記録媒体51を、局部的な重力の場に対して任
意の方向に向けることができる。このことはポータブル型のプリンタにとって、
重要な要件である。
図1(b)は、修正CMOSプロセスを使用して製造した、本発明の単一の顕
微鏡的ノズルチップの実施形態の断面の詳細な拡大図である。ノズルは基板10
1に彫られていて、この基板はシリコン、ガラス、金属または他の任意の適当な
材料で作ることができる。基板が半導体でない材料でできている場合には、(無
定型シリコンのような)半導体材料を基板上に配置して、表面に半導体層に集積
駆動トランジスタおよびデータ分配回路を形成することができる。単結晶シリコ
ン(SCS)基板は、下記に記載する利点を含めて、いくつかの利点を持つ。
1)高性能の駆動トランジスタ、および他の回路をSCS内に作ることができる
。
2)標準VLSI処理装置を使用して、現在の施設(工場)で印刷ヘッドを作る
ことができる。
3)SCSは機械的強度および剛性が高い。
4)SCSは高い熱伝導性を持つ。
この例の場合には、ノズルは円筒形をしていて、環状のヒータ103を持つ。
ノズルチップ104は、CMOS駆動回路の形成過程中に形成された二酸化シリ
コン層から作られている。ノズルチップは、窒化シリコン膜で保護されている。
突出しているノズルチップは、印刷ヘッド表面上の圧力が掛かっているインク1
00の接触点を制御している。印刷ヘッドの表面も、印刷ヘッドの前面を横切っ
て、不必要にインクが広がらないように疎水化されている。
多くの他の構成のノズルを使用することができ、本発明のノズルの実施形態の
形、大きさおよび使用材料をいろいろに変えることができる。その上にヒータお
よび駆動エレクトロニクスが形成されている基板に彫られたモノリシックなノズ
ルは、オリフィス板を必要としないという利点を持つ。オリフィス板を使用しな
いですむので、製造およびを組立の際のコストを有意に節減することができる。
オリフィス板を使用しないですむ最近の方法としては、ゼロックスに譲渡された
堂本他の1986年の米国特許第4、580、158号、ヒューレット−パッカ
ード社に譲渡されたミラー他の1994年の米国特許第5、371、527号に
記載されている方法のような「渦巻」アクチュエータ等がある。しかし、これら
の方法は、動作が複雑で、製造が難しい。本発明の印刷ヘッド用のオリフィス板
を使用しない好適な方法は、アクチュエータの基板内にオリフィスを内蔵させて
いる。
このタイプのノズルは、インク粒子を分離するために種々の技術を使用してい
る印刷ヘッドに対して使用することができる。
静電インク粒子分離を使用する動作
最初の例として、図2に表面張力の熱による低減および静電式インク粒子分離
を使用する動作を示す。
図2は、米国、イリノイ州所在のフルイドダイナミック社が販売している商業
的な流体の動的シミュレーションソフトウエアパッケージであるFIDAPを使
用して行ったエネルギーの移動および流体の動的シミュレーションの結果を示す
。このシミュレーションは、周囲温度が30℃の場合の、直径が8ミクロンの熱
的インク粒子選択ノズルの実施形態についてのものである。ヒータに供給された
全エネルギーは、276nJで、それぞれが4nJのエネルギーを持つ69のパ
ルスによって与えられる。インク圧は、周囲の空気圧より10kPa高く、30
℃のインクの粘度は1.84cPsであった。インクは水をベースとするもので
、温度が上昇するにつれて、表面張力を大きく低下させるために、0.1%のパ
ルミチン酸のゾルを含む。図に示すように、ノズルの中心軸から半径方向へのノ
ズルチップの断面の長さは40ミクロンである。シリコン、窒化シリコン,アモ
ルファス二酸化シリコン、結晶状二酸化シリコンを含むノズル材料内、および水
をベースとするインク中を流れる熱を、それぞれの密度、熱容量、および熱伝導
性を使用してシミュレートした。シミュレーションの時間的ステップは0.1マ
イクロ秒である。
図2(a)は、ヒータが作動する直前の静止状態を示す。平衡状態にあり、そ
のため静止状態の場合には、インク圧プラス外部電界は、絶対に、周囲温度での
表面張力に打ち勝つことができないので、ノズルからインクが噴出しない。静止
状態の場合には、インクのメニスカスは、印刷ヘッドの表面より有意に突出しな
いので、そのため静電界はメニスカスに有意に集中しない。
図2(b)は、ヒータ加熱パルスの供給が開始してから5マイクロ秒後の5℃
間隔の等温線を示す。ヒータが加熱すると、ノズルチップと接触しているインク
は急速に加熱される。表面張力が低下すると、メニスカスの加熱された部分が冷
たいインクのメニスカスに対して急速に膨張する。この状況下では、対流が起こ
り、この対流がこの熱をノズルチップのインクの自由面の一部上を通して急速に
移動させる。この場合、熱をインクがヒータと接触していないところを通して分
配しないで、インクの表面上を通して分配する必要がある。なぜなら、固体のヒ
ータに対して粘り気のあるインクが伝わると、ヒータと直接接触しているインク
が移動できなくなるからである。
図2(c)は、ヒータ加熱パルスの供給が開始してから、10マイクロ秒後の
5℃毎の等温線を示す。温度が上昇すると、表面張力が低下し、力の平衡状態が
破れる。全メニスカスが加熱されると、インクが流れ始める。
図2(d)は、ヒータ加熱パルスの供給が開始してから、20マイクロ秒後の
5℃毎の等温線を示す。インク圧により、インクが新しいメニスカス部分に流れ
、印刷ヘッドから突き出る。静電界は、突き出た電導性のインク粒子によって集
中する。
図2(e)は、ヒータ加熱パルスの供給が開始してから、30マイクロ秒後の
5℃毎の等温線を示す。ヒータパルスの持続時間は24マイクロ秒であるので、
この等温線はヒータパルスの終了後6マイクロ秒のものである。ノズルチップは
、酸化層を通しての熱伝導、および流動中のインクへの熱伝導により急速に冷却
する。ノズルチップは、インクにより効果的に水冷される。静電誘引により、イ
ンク粒子の記録媒体へ向かっての加速が開始される。ヒータパルスが有意に短く
なると(この場合は、16マイクロ秒以下になると)、インクは印刷媒体の方向
に加速されず、ノズルの方向に戻る。
図2(f)は、ヒータパルスの供給が終了してから、26マイクロ秒後の5℃
毎の等温線を示す。ノズルチップの温度は、周囲温度と比較した高さが5℃以下
になる。これにより、ノズルチップ周囲の表面張力が増大する。ノズルからイン
クが引き出される速度が、ノズルを通してのインクの流れの粘度による制限値を
超えると、ノズルチップの領域内のインクが「くびれ」を起こし、選択されたイ
ンク粒子がインク本体から分離する。その後、選択されたインク粒子は、外部の
静電界の影響を受けながら、記録媒体に向かって移動する。その後、ノズルチッ
プのインクのメニスカスは、静止位置に戻り、次の加熱パルスに対して次のイン
ク粒子を選択する準備が整う。各加熱パルスに対して、一つのインク粒子が選択
され、分離され、記録媒体上に点を形成する。加熱パルスは電気的に制御されて
いるので、ドロップオンデマンドインクジェット動作を行うことができる。
図3(a)は、ヒータ加熱パルスの供給が開始されてから5マイクロ秒毎の、
インク粒子選択サイクル中の連続メニスカスの位置を示す。
図3(b)は、メニスカスの中心の点の移動を示す、メニスカスの位置対時間
のグラフである。ヒータパルスはシミュレーションが開始してから10秒後にス
タートする。
図3(c)は、時間の経過中の、ノズルのいろいろな点での温度の合成曲線で
ある。グラフの垂直軸は100℃単位の温度である。グラフの水平軸は、10マ
イクロ秒単位の時間である。図3(b)の温度曲線は、0.1マイクロ秒毎にF
IDAPにより計算したものである。局部的な周囲温度は30℃である。三つの
点での温度履歴を示す。
A−ノズルチップ:不動態化層、インクおよび空気の間の接触円の温度履歴で
ある。
B−メニスカスの中間点:ノズルチップとメニスカスの中心との間のインクメ
ニスカスの中間点上の円である。
C−チップ表面:ノズルの中心から20ミクロン離れた、印刷ヘッドの表面上
の点である。温度は数度しか上がらない。このことは、能動回路をノズルに非常
に接近して設置しても、温度上昇による性能または寿命の劣化は起こらないこと
を示している。
図3(e)は、ヒータに加えられる電力を示す。最適な動作を行うには、ヒー
タパルスの供給が開始されたときに、温度が急速に上昇しなければならず、パル
スが持続している時間、温度をインクの沸点より少し低い温度に維持する必要が
あり、またパルスの供給が停止された場合には、温度が急速に低下しなければな
らない。そうするために、ヒータに供給される平均エネルギーを、パルスの持続
時間中変動させる。この場合、上記変動は、それぞれが4nJのエネルギーを持
つ、0.1マイクロ秒のサブパルスをパルス周波数変調することによって行われ
る。ヒータに供給されるピーク電力は40ミリワットで、ヒータパルスの持続時
間中の平均電力は、11.5ミリワットである。この場合、サブパルス周波数は
5Mhzである。この周波数は、印刷ヘッドの動作に有意な影響を与えずに、簡
単に変化させることができる。もっと高いサブパルス周波数を使用すれば、ヒー
タに供給される電力をもっと細かく調整することができる。サブパルス周波数と
しては、13.5Mhzが適当である。何故なら、この周波数はまた無線周波数
の干渉(RFI)の影響を最低限度に抑えるのに適しているからである。
負の温度係数の表面張力を持つインク
温度が下降するに従ってインクの表面張力が低下しなければならないという要
件があるからといって、インクの選択が大きな制限を受けることはない。何故な
ら、大部分の純粋な液体および多くの混合液は、上記特性を持っているからであ
る。任意の液体に対する表面張力対温度の関係を表す式はない。しかし、多くの
液体に対しては、ラムザイとシールドの下記の経験式で十分である。
但し、γTは温度Tにおける表面張力であり、kは定数であり、Tcは液体の臨
界温度であり、Mは液体の分子量であり、xは液体の結合の度合いであり、ρは
液体の密度である。この式は、温度が液体の臨界温度に達すると、大部分の液体
の表面張力はゼロに下がることを示している。大部分の液体の場合には、臨界温
度は、大気圧の下での沸点よりかなり高い。そのため、実際の排出温度付近で、
小さな温度変化で、表面張力が大きく変わるようなインクを作るには、界面活性
剤の混合物を使用することを勧める。
界面活性剤の選択は重要である。例えば、熱式インクジェットプリンタ用の水
をベースとするインクは、多くの場合、表面張力を低下させ、急速に乾燥させる
ためにイソプロピルアルコール(2−プロパノール)を含んでいる。イソプロピ
ルアルコールの沸点は、水の沸点より低い82.4℃である。温度が上昇すると
、アルコールは水より速く蒸発し、アルコールの濃度が低下し、表面張力が大き
くなる。1−ヘクサノール(沸点:158℃)のような界面活性剤は、このよう
な効果を抑えるために使用することができ、温度が上昇すると、表面張力を少し
下げる。しかし、温度の上昇と共に表面張力が比較的大きく下がるということは
、動作のラチチュードを最大にするために望ましいことである。大きな動作マー
ジンを達成するには、好適には、30℃以上の温度で、表面張力が20mN/m
だけ減少するのが好ましいが、一方、本発明の印刷ヘッドの動作を行うには、1
0mN/m程度の低い表面張力の低下を使用することができる。
大きなΔγTを持つインク
温度上昇に従って、表面張力を大きく下げるには、いつくかの方法を使用する
ことができる。そのような方法の中の二つを以下に説明する。
1)インクは、周囲温度では固体だが、しきい値温度で溶解する界面活性剤の低
濃度のゾルを含むことができる。粒子サイズは、1,000Å以下のものが望ま
しい。水をベースとするインク用の界面活性剤の望ましい融点は、50−90℃
であり、好適には60−80℃であることが好ましい。
2)インクは、転相温度(PIT)が最高周囲温度より高いが、インクの沸点よ
り低いオイル/水のマイクロ乳剤を含むことができる。安定状態に保持するため
に、マイクロ乳剤のPITは、好適には、インクが遭遇する最大非動作温度より
20℃またはそれ以上高いことが好ましい。約80℃のPITが適当である。
界面活性剤のゾルを含むインク
インクを、必要な温度範囲で溶解する小さな粒子の界面活性剤のゾルとして調
製することができる。上記界面活性剤のいくつかの例をあげると、下記の炭素数
が14−30のカルボン酸等がある。
粒子サイズが小さいゾルの融点は、普通バルク材料の融点より少し低いので、
必要なインク粒子選択温度より少し高い融点を持つカルボン酸を選ぶのが好まし
い。望ましい例としてはアラキジン酸がある。
上記カルボン酸は、高純度、低価格で入手できる。必要な界面活性剤の量は、
非常に少なくてすむので、インク以外のコストは問題にならないほど安い。鎖の
長さが少しずつ違うカルボン酸を、ある温度範囲にわたって融点の範囲を広くす
るために使用することができる。そのような混合物のコストは、通常純粋な酸よ
り安い。
界面活性剤の選択範囲を、簡単な直鎖のカルボン酸だけに制限する必要はない
。分岐した鎖またはフェニール基、または疎水部分を持っている界面活性剤を使
用することができる。また、カルボン酸を使用する必要もない。多くの高い極性
の部分は、界面活性剤の疎水性の終端部として適している。分散を助け、凝集を
防止する目的で、界面活性剤の粒子の表面を帯電させるために、極性を持つ端部
を水中でイオン化することが望ましい。カルボン酸の場合には、水酸化ナトリウ
ムまたは水酸化カリウムのようなアルカリを添加することにより、上記イオン化
を行うことができる。
界面活性剤ゾルを含むインクの調製
界面活性剤ゾルは、別個に高濃度で調製することができ、必要な濃度でインク
に添加することができる。
界面活性剤ゾルを調製する例示としてのプロセスは下記の通りである。
1)酸素を含まない空間内で、純化した水にカルボン酸を加える。
2)混合物を、カルボン酸の融点以上に加熱する。水を沸騰させる。
3)100−1,000Åの範囲の、通常の大きさのカルボン酸の小さな粒子が
得られるまで、混合物に超音波を当てる。
4)混合物を冷却する。
5)混合物の頂部から大きな粒子を他に移す。
6)NaOHのようなアルカリを加え、粒子の表面において、カルボン酸の分子
をイオン化する。適当なpHは約8である。このステップは絶対に必要なもので
はないが、ゾルを安定させるのに役立つ。
7)ゾルを遠心分離する。カルボン酸の密度は水より低いので、より小さな粒子
が遠心分離機の外側に堆積し、大きな粒子が中心に集まる。
8)5000Å以上のすべての粒子を除去するために、微小な孔を持つフィルタ
を使用して、ゾルをろ過する。
9)界面活性剤ゾルを、調製したインクに加える。ゾルの濃度は極めて薄いもの
であってよい。
調製したインクも、染料または色素、殺菌剤、また静電インク粒子分離を使用
した場合には、インクの電導性を高めるための薬剤、湿潤剤、および必要とした
他の薬剤を含んでいる。
泡消し剤は、一般に必要ではない。何故なら、インク粒子排出プロセス中には
バブルは形成されないからである。
陽イオン性界面活性剤ゾル
陰イオン性界面活性剤ゾルで調製したインクは、通常陽イオン性の染料または
色素と一緒に使用するのには適していない。何故なら、陽イオン性の染料または
色素は、陰イオン性の界面活性剤と一緒に使用すると、沈澱や凝集を起こすから
である。陽イオン性の染料および色素を使用するためには、陽イオン性の界面活
性剤ゾルが必要である。この目的のためには、アルキルアミン属が適している。
以下の表にこの目的に適している種々のアルキルアミンを示す。
陽イオン性界面活性剤ゾルの調製方法は、本質的には、pHバランスを調製し
、界面活性剤の粒子上の電荷を増大するために、アルカリの代わりに酸を使用す
るという点を除けば、陰イオン性界面活性剤ゾルを調製する方法と類似している
。HClを使用するpH6が適当である。
マイクロ乳剤をベースとするインク
ある種の温度しきい値である表面張力を大きく下げる他の方法は、マイクロ乳
剤上のインクに基づく方法である。必要な排出しきい値温度付近に転相温度(P
IT)を持つマイクロ乳剤を選ぶ。PIT以下の温度では、マイクロ乳剤は水中
にオイルの形(O/W)になっているが、PIT以上の温度では、マイクロ乳剤
はオイルの中の水の形(W/O)になっている。温度が低い場合には、マイクロ
乳剤を形成している界面活性剤は、オイルの周囲の曲率の高い表面に好んで集ま
り、温度がPITより有意に高い場合には、界面活性剤は水の周囲の曲率の高い
表面に好んで集まる。温度がPITに近い場合には、マイクロ乳剤は、水とオイ
ルとが位相的につながっている連続状態の「スポンジ」を形成する。
表面張力を下げるには、二つのメカニズムがある。PIT付近では、界面活性
剤は、非常に曲率が低い表面に好んで集まる。その結果、界面活性剤の分子は、
オイル乳剤の曲率より遥かに大きい曲率を持つインク/空気の界面に移動する。
それにより、水の表面張力は下がる。温度が転相温度より高い場合には、マイク
ロ乳剤は、O/WからW/Oに変化し、そのためインク/空気の界面は水/空気
からオイル/空気に変化する。オイル/空気の界面は、低い表面張力を持つ。
マイクロ乳剤をベースとするインクは、非常に種々様々な方法で調製すること
ができる。
インク粒子を急速に排出する場合には、好適には、粘度の低いオイルを選択す
ることが好ましい。
多くの場合、適当な極性溶媒は水である。しかし、ある場合には、異なる極性
溶媒が必要になる場合がある。これらの場合には、表面張力を大きく下げること
ができるように、表面張力の高い極性溶媒が選ばれる。
転相温度が必要な範囲に収まるようにするために、界面活性剤を選ぶことがで
きる。例えば、(CnH2n+1C4H6(CH2CH2O)mOHという一般化学式のポ
リ(オキシエチレン)アルキルフェニルエーテル(エトキシ化アルキルフェノー
ル))を選ぶことができる。界面活性剤の親水性は、mを大きくすることによっ
て増大させることができ、疎水性は、nを大きくすることによって増大させるこ
とができる。mの適当な数値は約10であり、nの適当な数値は8である。
市販の低コストの製剤は、種々の分子比の酸化エチレンとアルキルフェノール
を重合させて製造される。これらの市販の製剤で十分であり、特定の数のオキシ
エチレン基を持つ非常に純粋な界面活性剤を使用する必要はない。
この界面活性剤の化学式は、C8H17C4H6(CH2CH2O)nOHである(n
の平均=10)。
類似の界面活性剤は、オクトキシノール−10、PEG−10オクチルフェニ
ールエーテルおよびPOE(10)オクチルフェニールエーテルを含む。
HLBは13.6であり、融点は7℃であり、曇り点は65℃である。
この界面活性剤の市販の製剤は、種々のブランド名で販売されている。次の表
にメーカーおよびブランド名を示す。
表に表示した界面活性剤は、大量に低価格(ポンド当たり1ドル以下)で入手
することができ、5%の濃度の界面活性剤を含むマイクロ乳剤を調製する場合、
1リットルに占めるコストは10セント以下である。
他の適当なエトキシ化アルキルフェニールとしては、以下に記載するものがあ
る。
マイクロ乳剤をベースとするインクは、表面張力が制御できる他に種々の利点
を持つ。
1)マイクロ乳剤は、熱力学的に安定で、分離しない。それ故、貯蔵期間が非常
に長い。時々しか使用されない事務所用およびポータブル型のプリンタの場合に
は、このことは特に重要である。
2)特定の粒子サイズのマイクロ乳剤を、容易に作ることができ、乳化したオイ
ルの粒の大きさを確実に特定の範囲に制限するために、長くかき混ぜたり、遠心
分離したり、ろ過する必要がない。
3)インクに含まれているオイルの量を、非常に高くすることができるので、オ
イルにまたは水に溶ける染料、または両方に溶ける染料を使用することができる
。また、特定の色を得るために、水に溶ける染料、オイルに溶ける他の染料の混
合物を使用することもできる。
4)オイルの微細な油滴に捕らわれたとき、オイルと混合することができる色素
が、凝集するのを防止することができる。
5)マイクロ乳剤を使用することによって、印刷媒体の表面で、種々の色の染料
が混じり合うのを、少なくすることができる。
6)マイクロ乳剤の粘度は、非常に低い。
7)湿潤剤のための要件を緩やかにすることもできるし、無視することもできる
。
マイクロ乳剤をベースとするインクの染料および色素
水の混合物のオイルの含有量を、40%まで増やすことができ、それでもO/
Wマイクロ乳剤を形成することができる。そうすることにより、染料および顔料
の含有量を増やすことができる。
染料と顔料の混合物を使用することができる。染料と顔料の両方を含むマイク
ロ乳剤をベースとする一例を以下に示す。
1)水70%
2)水溶性染料5%
3)界面活性剤5%
4)オイル10%
5)オイルと混合できる顔料10%
下記の表は、使用することができるマイクロ乳剤のオイル相および水相内の着
色剤の九つの基本的な組み合わせを示す。
着色剤を含まない、9番目の組み合わせは、透明なコーティング、紫外線イン
クおよび選択的グロスハイライトに印刷する際に役に立つ。
多くの染料は両親媒性であるので、オイルと水の境界層に大量の染料も溶かす
ことができる。何故なら、この層は非常に広い表面積を持っているからである。
また、各相に複数の染料と顔料を含ませることもできるし、各相に染料と顔料
の混合物を含ませることもできる。
複数の染料または顔料を使用する場合には、調製されたインクの吸収スペクト
ルは、使用したいくつかの着色剤の吸収スペクトルの加重平均になる。それによ
り二つの問題が生じる。
1)両方の着色剤の吸収ピークが平均されると、吸収スペクトルは広くなる傾向
がある。そうなると、色が「濁る」傾向を示す。輝かしい色を出したい場合には
、人間の視覚に感じる色に頼るだけではなく、その吸収スペクトルに基づいて、
染料および顔料を注意深く選択しなければならない。
2)インクの色は、基質が異なると違って見えることがある。染料と顔料とを組
み合わせて使用すると、吸収力の高い紙の上に印刷したインクの色に対する染料
の色の影響が、低くなる傾向がある。何故なら、染料は紙に吸収されるが、顔料
は「吸収されずに、紙の表面に留まる」傾向があるからである。これはいくつか
の状況においては有利なものとして使用することができる。
インク粒子選択温度範囲にクラフト点を持つ界面活性剤
イオン性の界面活性剤の場合には、それ以下の温度では溶解性が非常に低いあ
る温度(クラフト点)があり、溶液は本質的にミセルを含んでいない。クラフト
温度点以上の温度においては、ミセルが形成されるようになり、界面活性剤の溶
解性が急速に増大する。臨界ミセル濃度(CMC)が、特定の温度で界面活性剤
の溶解性を超えると、どちらかといえば、CMCのところで溶解性が最大になる
ところで、表面張力が最小になる。界面活性剤は、通常クラフト点以下の温度で
は効果が非常に低くなる。
この性質は、温度が上昇した場合、表面張力を下げるのに使用することができ
る。室温の場合には、界面活性剤の一部だけが溶ける。ノズルヒータをオンにす
ると、温度が上昇し、もっと多くの界面活性剤が溶け、表面張力を下げる。
インクの温度が到達する温度範囲の一番高い温度付近にクラフト点がある、界
面活性剤を選ぶべきである。そうすることにより、室温での溶液中の界面活性剤
の濃度と、インク粒子選択温度における溶液中の界面活性剤の濃度との間の、マ
ージンを最大にすることができる。
界面活性剤の濃度は、クラフト点におけるCMCに、ほぼ等しいものでなけれ
ばならない。このようにすることにより、表面張力の低下が、上昇した温度にお
いて最大になり、室温において最小になる。
下記の表は、クラフト点が必要とする温度範囲にある市販のいくつかの界面活
性剤を示す。
インク粒子選択温度範囲内に、曇り点を持つ界面活性剤
ポリオキシエチレン(POE)鎖を使用する非イオン性界面活性剤は、温度が
上昇するにつれて、表面張力が低下するインクを調製するのに使用することがで
きる。温度が低い場合には、POE鎖は親水性で、界面活性剤は溶液の状態にな
っている。温度が上昇するにつれて、分子のPOE部分の周囲に形成された水は
分裂し、POE部分は疎水性になる。温度が高くなればなるほど、界面活性剤は
ますます水に溶け難くなり、その結果、空気/インク界面の界面活性剤の濃度が
増大し、それにより表面張力が下がる。非イオン性界面活性剤のPOE部分が親
水性になる温度は、その界面活性剤の曇り点と関連している。POE鎖それ自身
は、特に適してはいない。何故なら、曇り点は一般に100℃より高いからであ
る。
低温における疎水性を増大しないでPOE鎖の曇り点を下げるために、ポリオ
キシプロピレン(POP)を、POE/POPブロックコポリマーのPOEと、
結合させることができる。
下記の二つの主な形状を持つ対称的なPOE/POPコポリマーを入手するこ
とができる。
1)(一般的に、CAS9003−11−6)であるポロクサマクラスの界面活
性剤のような、分子の末端部にPOE部分を持ち、中心部にPOP部分を持つ界
面活性剤
2)(一般的にCAS9003−11−6)であるメロクサポールクラスの界面
活性剤のような、分子の末端部にPOP部分を持ち、中心部にPOE部分をもつ
界面活性剤
下記の表に、室温で高い表面張力を持ち、曇り点が40℃以上100℃以下で
ある種々のポロクサメールおよびメロクサポールのうちのいくつかを示す。
他の種類のポロクサメールおよびメロクサポールは、周知の技術により容易に
合成することができる。望ましい特性は、室温での表面張力ができるだけ高いこ
と、曇り点が40−100℃の範囲にあり、好適には60−80℃の範囲にある
ことである。
xおよびzの平均が約4であり、yの平均が約15である種々のメロクサポー
ル[HO(CHCH3CH2O)x(CH2CH2O)y(CHCH3CH2O)2OH]が適し
ている。
インクの電導性を高めるために塩を使用する場合には、界面活性剤の曇り点に
対する塩の影響を考慮しなければならない。
POEの曇り点は、(I-のような)水の構造を破壊するイオンによって高く
なり、それによりPOE酸素の孤立したペアと水素結合を形成するのに使用でき
る、水の分子の数がさらに増える。POE界面活性剤の曇り点は、(Cl-、O
H-のような)水構造を形成するイオンによって下がる。水素結合を形成するの
に使用できる水の分子の数が少なくなるからである。臭化物イオンは比較的弱い
効果しか持っていない。ブロックコポリマー界面活性剤のPOE鎖およびPOP
鎖の長さを変えることにより、また電導性を高くするために添加される塩(例え
ば、Cl-,Br-、I-)を変えることによって、インクの組成を、必要な温度
に合わ
せて「調製」することができる。NaClは、価格も安く、毒性もないので、イ
ンクの電導性を高めるには、最適の塩であるように思われる。NaClは、非イ
オン性界面活性剤の曇り点を少し下げる。
高温溶融インク
インクは室温で液体である必要はない。印刷ヘッドおよびインクタンクをイン
クの融点以上に加熱することにより、固体の「高温溶融」インクを使用すること
ができる。高温溶融インクは、溶融したインクの表面張力が温度が上昇するに従
って下がるように調製しなければならない。ワックスおよび他の物質を使用する
多くの上記調剤の表面張力は、約通常2mN/m下がる。しかし、粘度の減少よ
りも表面張力の減少を使用する場合には、良い動作マージンを得るためには、表
面張力の低下は約20mN/mであることが望ましい。
静止状態の温度とインク粒子選択温度との間の温度差は、水をベースとするイ
ンクの場合よりも、高温溶融インクの場合のほうが大きい場合がある。何故なら
、水をベースとするインクは水の沸点によって制限を受けるからである。
インクは静止温度で液体でなければならない。静止温度は、印刷されたページ
がなるかもしれない最高の周囲温度より高くなければならない。静止温度は、ま
た印刷ヘッドを加熱するのに要する電力を少なくし、静止温度とインク粒子排出
温度との間のマージンを最大にするために、できるだけ低くなければならない。
他の温度も使用することができるが、適当な静止温度は、一般に60−90℃の
範囲の温度である。また一般に、適当なインク粒子排出温度は、160−200
℃の範囲の温度である。
温度が上昇するにつれて表面張力を低下を促進するには、いくつかの方法があ
る。
1)融点が静止温度より実質的に高いが、インク粒子排出温度より実質的に低い
界面活性剤の分散している微小な粒子を、液相で高温溶融インクに添加すること
ができる。
2)極性および非極性化合物両方の融点より、好適には少なくとも20℃高いP
ITを持つ極性/非極性マイクロ乳剤
温度が上昇するにつれて表面張力を大きく下げるには、静止温度の時に、高温
溶融インクキャリヤが比較的高い表面張力(30mN/m以上)を持っているこ
とが望ましい。この条件だと、ワックスのようなアルカン類は除外される。適当
な材料は、一般に強い分子間引力を持っているが、この分子間引力は、例えば、
融点が88℃であるヘクサンテトロールのようなポリオールのような多重水素結
合によるものである。
種々の溶液の表面張力の低下
図3(d)は、下記の添加剤を含む種々の水性調剤の表面張力に対する測定効
果を示す。
1)アテアリン酸の0.1%ゾル
2)パルミチン酸の0.1%ゾル
3)プルロン酸10R5の0.1%溶液(商標:BASF)
4)プルロン酸L35の0.1%溶液(商標:BASF)
5)プルロン酸L44の0.1%溶液(商標:BASF)
本発明の印刷システムに適するインクは、その開示内容が参考文献として本明
細書に記載されている下記のオーストラリア特許明細書に開示されている。
「マイクロ乳剤に基づくインク組成物」(1995年9月6日出願、出願番号
:PN5223)
「界面活性剤ゾルを含むインク組成物」(1995年9月6日出願、出願番号
:PN5224)
「インク粒子選択温度ゾルに近いクラフト点を持つ、DODプリンタ用のイン
ク組成物」(1995年10月30日出願、出願番号:PN6240)
「マイクロ乳剤をベースとする、インクの染料および顔料」(1995年10
月30日出願、出願番号:PN6241)
粘度の低下を使用する動作
二番目の例として、高温溶融インクと組み合わせて、粘度の熱的低下および近
接インク粒子選択を使用する実施形態の動作を以下に説明する。プリンタを作動
する前に、インクタンク64内で固体のインクの溶融が行われる。インクタンク
、印刷ヘッドへのインクの通路、インクチャネル75および印刷ヘッド50は、
インク100が液状になっているが、比較的粘度が高い(例えば、約100cP
)状態に保持される温度に保たれる。インク100は、インクの表面張力により
ノズル中に保持される。インク100は、温度が上昇するにつれて粘度が下がる
ように調製される。インク圧は、ノズルからのインク粒子排出周波数の整数倍の
周波数で変動する。インク圧が変動するので、ノズルチップのインクのメニスカ
スは変動するが、インクの粘度が高いのでこの変動は小さい。通常の動作温度で
は、この変動はインク粒子を分離させるには不十分な振幅しか持っていない。ヒ
ータ103をオンにすると、選択されたインク粒子を形成するインクが加熱され
、粘度が好適には5cP以下であることが好ましい数値まで下がる。粘土が低下
すると、その結果として、インク圧サイクルの高圧部分の間に、インクのメニス
カスはさらに移動する。記録媒体51は、選択されたインク粒子が、記録媒体5
1に接触するには印刷ヘッド50に十分に近接して配置されているが、選択され
なかったインク粒子が、記録媒体51に接触しないように、十分な距離を置いて
設置されている。記録媒体51と接触すると、選択されたインク粒子の一部がフ
リーズし、記録媒体に付着する。インク圧が下がると、インクはノズルに戻り始
める。インク本体は記録媒体上にフリーズするインクから分離している。その後
、ノズルチップのインク100のメニスカスは、低い変動振幅に戻る。残りの熱
がバルクインクおよび印刷ヘッドに逃げるので、インクの粘度は静止時のレベル
まで上がる。一つのインク粒子が選択され、分離され、各ヒートパルス毎に記録
媒体51上に点を形成する。ヒートパルスは電気的に制御されているので、ドロ
ップオンデマンドインクジェット動作を行うことができる。
印刷ヘッドの製造
本発明のモノリシック印刷ヘッドの製造プロセスは、その開示内容が参考文献
として本明細書に記載されている、1995年4月12日出願の下記のオースト
ラリア特許明細書に記載されている。
「モノリシックLIFT印刷ヘッド」(出願番号:PN2301)
「モノリシックLIFT印刷ヘッド用の製造プロセス」(出願番号:PN23
02)
「LIFT印刷ヘッド用の自己整合ヒータ」(出願番号:PN2303)
「集積4色LIFT印刷ヘッド」(出願番号:PN2304)
「モノリシックLIFT印刷ヘッドでの電力要件の軽減」(出願番号:PN2
305)
「異方性ウエットエッチングを使用する、モノリシックLIFT印刷ヘッドの
ための製造プロセス」(出願番号:PN2306)
「モノリシックドロップオンデマンド印刷ヘッドへのノズルの設置」(出願番
号:PN2307)
「モノリシックLIFT印刷ヘッド用のヒータ構造体」(出願番号:PN23
46)
「モノリシックLIFT印刷ヘッド用の電源接続」(出願番号:PN2347
)
「近接LIFT印刷ヘッド用の外部接続」(出願番号:PN2348)
「モノリシックLIFT印刷ヘッド用の自己整合製造プロセス」(出願番号:
PN2349)
「LIFT印刷ヘッドのCMOSプロセス互換製造」(1995年9月6日出
願、出願番号:PN5222)
「ノズルリムヒータ付き、LIFT印刷ヘッド用の製造プロセス」(1995
年10月30日出願、出願番号:PN6238)
「モジューラLIFT印刷ヘッド」(1995年10月30日出願、出願番号
:PN6237)
「印刷ノズルのパッキング密度を増大する方法」(1995年10月30日出
願、出願番号:PN6236)
「同時にプリントされるインク粒子間の低減静電相互作用のノズル分散」(1
995年10月30日出願、出願番号:PN6239)
印刷ヘッドの制御
本発明のページイメージデータを供給し、印刷ヘッドのヒータ温度を制御する
方法は、その開示内容が参考文献として本明細書に記載されている、1995年
4月12日出願の下記のオーストラリア特許明細書に記載されている。
「LIFT印刷ヘッドの集積駆動回路」(出願番号:PN2295)
「液体インク故障許容(LIFT)印刷用のノズル清掃手順」(出願番号:P
N2294)
「LIFT印刷システムの温度に対するヒータ電力補償」(出願番号:PN2
314)
「LIFT印刷システムの熱的遅れに対するヒータ電力補償」(出願番号:P
N2315)
「LIFT印刷システムの印刷密度に対するヒータ電力補償」(出願番号:P
N2316)
「印刷ヘッドの温度パルスの正確な制御」(出願番号:PN2317)
「モノリシックLIFT印刷ヘッドのデータ分配」(出願番号:PN2318
)
「LIFT印刷システム用のページイメージおよび故障許容ルーティング装置
」(出願番号:PN2319)
「LIFT印刷ヘッド用の取り外し可能な圧力下の液体インクカートリッジ」
(出願番号:PN2320)
印刷ヘッド用のイメージ処理
本発明の印刷システム一つの目的は、オフセット印刷を使用して印刷した、人
々が高品質のカラー刊行物で見慣れているのと、同じ高品質の印刷を行うことで
ある。この目的は、約1,600dpiの印刷解像度を使用することによって、
達成することができる。しかし、1,600dpi印刷は、印刷が難しく、高価
である。シアンおよびマジェンタに対して、ピクセル当たり2ビットを使用し、
黄および黒に対してピクセル当たり1ビットを使用して、800dpi印刷を使
用すれば、同じような高品質の印刷を行うことができる。本明細書では、このカ
ラーモデルをCC’MM’YKと呼ぶ。高品質のモノクロイメージの印刷が必要
な場合には、黒に対して、ピクセル当たり2ビットを使用することができる。本
明細書では、このカラーモデルをCC’MM’YYK’と呼ぶ。本発明のシステ
ムおよび他の印刷システムに適するカラーモデル、ハーフトーン化、データ圧縮
、およびリアルタイム拡張システムは、その開示内容が参考文献として、本明細
書に記載されている、1995年4月12日出願の下記のオーストラリア特許明
細書に記載されている。
「2レベルカラー印刷用の4レベルインクセット」(出願番号;PN2339
)
「ページイメージ用の圧縮システム」(出願番号:PN2340)
「圧縮ページイメージ用のリアルタイム拡張装置」(出願番号:PN2341
)
「ディジタルカラープリンタ用の大容量圧縮文書イメージ」(出願番号:PN
2342)
「テキスト存在中の改良JPEG圧縮」(出願番号:PN2343)
「圧縮ページイメージ用の拡張およびハーフトン化装置」(出願番号:PN2
344)
「イメージのハーフトーン化の改良」(出願番号:PN2345)
本発明の印刷ヘッドを使用する出願
本発明の印刷装置および方法は、下記の広い範囲の用途に適しているが、(こ
れに限定されない)。オフィスでのカラーおよびモノクロ印刷;短期間のディジ
タル印刷;高速ディジタル印刷;プロセスカラー印刷;スポットカラー印刷;オ
フセットプレス補足印刷;走査印刷ヘッドを使用する低コストプリンタ;ページ
幅の印刷ヘッドを使用する高速プリンタ;ポータブル型のカラーおよびモノクロ
プリンタ;カラーおよびモノクロ複写機;カラーおよびモノクロファクシミリ;
プリンタ、ファクシミリおよび複写機一体型マシン;ラベル印刷;大型書式プロ
ッタ;写真複写;ディジタル写真処理用プリンタ;ディジタル「インスタント」
カメラに組み込まれたポータブルプリンタ;ビデオ印刷;光学CDイメージの印
刷;「個人用ディジタルアシスタント」用ポータブルプリンタ;壁紙印刷;室内
看板印刷;掲示板印刷;および布地印刷
本発明の印刷システムは、その開示内容が参考文献として、本明細書に記載さ
れている、1995年4月12日出願の下記のオーストラリア特許明細書に記載
されている。
「大容量ディジタルページイメージ記憶装置を備えた、オフィス用高速カラー
プリンタ」(出願番号:PN2329)
「大容量ディジタルページイメージ記憶装置を備えた、短期間ディジタルカラ
ープリンタ」(出願番号:PN2330)
「LIFT印刷技術を使用するディジタルカラー印刷機」(出願番号:PN2
331)
「モジュラディジタル印刷機」(出願番号:PN2332)
「高速ディジタル布地プリンタ」(出願番号:PN2333)
「カラー写真コピーシステム」(出願番号:PN2334)
「LIFT印刷システムを使用する、高速カラー写真複写機」(出願番号:P
N2335)
「LIFT印刷技術を使用する、ポータブルカラー写真複写機」(出願番号:
PN2336)
「LIFT印刷技術を使用する、写真処理システム」(出願番号:PN233
7)
「LIFT印刷システムを使用する、普通紙ファクシミリ」(出願番号:PN
2338)
「内蔵プリンタ付きの写真CDシステム」(出願番号:PN2293)
「LIFT印刷技術を使用する、カラープロッタ」(出願番号:PN2291
)
「内蔵LIFT印刷システムを備えた、ノートブックコンピュータ」(出願番
号:PN2292)
「LIFT印刷システムを使用する、ポータブルプリンタ」(出願番号:PN
2300)
「オンラインデータベース質問、およびカスタム化されたマガジン印刷付きの
ファクシミリ」(出願番号:PN2299)
「ミニアチュアポータブルカラープリンタ」(出願番号:PN2298)
「LIFT印刷システムを使用する、カラービデオプリンタ」(出願番号:P
N2296)
「LIFT印刷システムを使用する、内蔵プリンタ、複写機、スキャナおよび
ファクシミリ」(出願番号:PN2297)
環境条件に対する印刷ヘッドの補償
ドロップオンデマンド印刷システムのインク粒子は、一定で予測することがで
きる大きさと位置を持っていることが望ましい。インク粒子の大きさおよび位置
が不必要な変動を起こすと、それにより印刷の光学的密度が変動し、目に映る印
刷の品質が劣化する。上記変動は通常のインク粒子の量およびピクセルの間隔に
関して、それぞれ小さなものでなければならない。多くの環境変数の影響を無視
することができる程度にまで低減するために、多くの環境変数を補償することが
できる。ノズルヒータに供給される電力を変化させることによって、いくつかの
要因の能動的補償を行うことができる。
印刷ヘッドの一実施形態の最適温度分布は、ノズルチップの能動領域の温度を
排出温度へ瞬間的に上昇させること、パルスの持続期間中、この領域の温度をイ
ンク粒子排出温度に維持すること、この領域の温度を周囲温度まで瞬間的に下げ
ることに影響を与える。
この最適な温度分布は、本発明のノズルの製造に使用されている種々の材料の
蓄積熱容量および熱伝導性のために達成することができない。しかし、印刷ヘッ
ドの有限要素シミュレーションを反復修正することによって得ることができる曲
線を使用して、電力パルスを整形することにより、性能を改善することができる
。ヒータに供給される電力は、下記のものを含むが、それに限定されない種々の
技術によって、時間変化させることができる。
1)ヒータに供給される電圧の変化
2)一連の短いパルスの幅の変調(PWM)
3)一連の短いパルスの周波数の変調(PFM)
正確な結果を得るためには、自由面のモデル化による遷移流体動的シミュレー
ションを行う必要がある。何故なら、インク内の対流およびインクの流れが、特
定の電力曲線により達成した温度に有意の影響を与えるからである。
印刷ヘッド基板上に適当なディジタル回路を組み込むことによって、各ノズル
に供給される電力を実際に個々に制御することができる。この制御を行う一つの
方法は、印刷ヘッドチップを横切って、種々の異なるディジタルパルストレイン
を「広く伝播し」、多重化回路を使用して、各ノズルに対して適当なパルストレ
インを選択するという方法である。
以下の「環境要因に対する補償」表に、補償することができる環境要因の一例
を示す。この表は、(合成多重チップ印刷ヘッド内の各チップに対して)チップ
毎、およびノズル毎の、(印刷ヘッド全体に対して)どの環境要因が全体として
最もよく補償することができるかを示す。
大部分の用途の場合、これら変数全体を補償する必要はない。ある変数の持つ
影響は少なく、非常に高いイメージの品質が必要な場合にだけ、補償する必要が
ある。
印刷ヘッド駆動回路
図4は、本発明の印刷ヘッド駆動回路の一例の電子的動作を示す概略のブロッ
ク図である。この制御回路は、ヒータ電力を変調するために印刷ヘッドに供給さ
れる電源電圧をアナログ変調しているが、各ノズルに加えられる電力の個々の制
御は行わない。図4は、CC’MM’YKカラーモデルを使用して、プロセスカ
ラーを印刷する800dpiページ幅印刷ヘッドを使用する、システムのブロッ
ク図を示す。印刷ヘッド50は、全部で79、488のノズルを持ち、そのうち
39、744は主ノズルであり、39,744は冗長ノズルである。主ノズルお
よび冗長ノズルは、六つの色に分けられ、各色は8の駆動相に分けられる。各駆
動相は、ヘッド制御ASIC400からのシリアルデータを、ヒータ駆動回路を
イネーブルするためのパラレルデータに変換する、シフトレジスタを持つ。全部
でシフトレジスタの数は96であり、各シフトレジスタは、828のノズルに対
してデータを供給する。各シフトレジスタは、828のシフトレジスタ段217
からなり、その出力は、NANDゲート215によって、相イネーブル信号と論
理的に論理積される。NANDゲート215の出力は、反転用バッファ216を
駆動し、反転バッファは、駆動トランジスタ201を制御する。駆動トランジス
タ201は、電熱ヒータ200を作動させるが、この電熱ヒータとしては、図1
(b)に示すヒータ103を使用することができる。イネーブルパルス中、シフ
トしたデータを有効に維持するには、シフトレジスタへのクロックを停止し、イ
ネーブルパルスがクロックストッパ218により能動状態になる。図面を簡単に
するために、このクロックストッパは単一のゲートで図示してあるが、好適には
、任意の範囲の周知のグリッチを起こさないクロック制御回路であることが好ま
しい。シフトレジスタのクロックを停止させることは、印刷ヘッド内のパラレル
データラッチの必要性をなくすが、ヘッド制御ASIC 400内の制御回路が
少し複雑になる。データは、故障状態バスの適当な信号の状態次第で、データル
ータ219によって、主ノズルまたは冗長ノズルのどちらかに送られる。
図4に示す印刷ヘッドは、単純化したもので、ブロック故障許容のような生産
性を改善するための種々の手段は図示されていない。異なる構成の印刷ヘッド用
の駆動回路は、本明細書に開示してある装置から容易に作ることができる。
記録媒体上に印刷するドットのパターンを表すディジタル情報は、図1(a)
のイメージメモリ72と同じものであってもよい、ページまたはバンドメモリ1
513内に記憶される。単色のドットを表す32ビット語内に含まれるデータは
、アドレスマルチプレクサ417によって選ばれたアドレスおよびメモリインタ
フェース418が発生した制御信号により、ページまたはバンドメモリ1513
から読み出される。上記アドレスは、アドレス発生装置411により発生し、こ
のアドレス発生装置は、「パーカラー回路」410の一部を形成し、6色の構成
部分のそれぞれに対して一つの回路が使用されている。アドレスは、印刷ヘッド
に対するノズルの位置に基づいて発生する。ノズルの相対的な位置は、印刷ヘッ
ドが異なると違ってくるので、アドレス発生装置411は、好適にはプログラム
可能であることが好ましい。アドレス発生装置411は、通常主ノズルの位置に
対応するアドレスを発生する。しかし、欠陥のあるノズルがある場合には、欠陥
を持つノズルのブロックの位置を、欠陥マップRAM412内にマークすること
ができる。欠陥マップRAM412は、ページが印刷されるときに読み出される
。メモリがノズルのブロックに欠陥があることを示している場合には、アドレス
発生装置411が、冗長ノズルの位置に対応するアドレスを発生するように、ア
ドレスの変更が行われる。ページまたはバンドメモリ1513から読みき出され
たデータは、ラッチ413によりタッチされ、マルチプレクサ414によって四
つのシーケンシャルなバイトに変換される。これらのバイトのタイミングは、F
IFO415により、他の色を表すデータのタイミングと整合するように調整さ
れる。その後、このデータは、バッファ430によりバッファされ、印刷ヘッド
50への48ビットの主データバスを形成する。印刷ヘッドが、ヘッド制御AS
ICから比較的遠い場所に位置している場合、データはバッファされる。欠陥マ
ップRAM412からのデータも、FIFO416に対する入力を形成する。こ
のデータのタイミングは、FIFO415のデータ出力と整合され、バッファ4
31によってバッファされ、欠陥状態バスを形成する。
プログラム可能な電源320は、印刷ヘッド50に対して電力を供給する。電
源320の電圧は、RAMとDACとの組み合わせ(RAMDAC)316の一
部を形成している、DAC313によって制御される。RAMDAC316は、
二重ポートRAM317を含む。二重ポートRAM317の内容は、マイクロコ
ントローラ315によってプログラムされる。温度は、二重ポートRAM317
の内容を変更することによって補償される。上記数値は、熱センサ300によっ
て感知された温度に基づいて、マイクロコントローラ315によって計算される
。熱センサ300からの信号は、アナログ−ディジタルコンバータ(ADC)3
11に送られる。ADC311は、好適にはマイクロコントローラ315内に設
置することが好ましい。
ヘッド制御ASIC400は、熱的遅れ補償および印刷密度に対する制御回路
を含む。熱的遅れの補償を行うには、ヘッド50への電源電圧は、ヒータに対す
るイネーブルパルスと同期している急速な時変電圧でなければならない。このこ
とは、上記電圧を発生するためのプログラム可能な電源320を、プログラムす
ることによって行われる。アナログ時変プログラミング電圧は、二重ポートRA
M317から読み出されたデータに基づいて、DAC313が発生する。データ
は、カウンタ403が発生したアドレスに従って読み出される。カウンタ403
は、一つのイネーブルパルスの周期の間に、アドレスの一つの完全なサイクルを
発生する。同期は確実に行われる。何故なら、カウンタ403は、システムクロ
ック408によってクロック制御され、カウンタ403の最大の数値はイネーブ
ルカウンタ404を、クロック制御するのに使用されるからである。その後、イ
ネーブルカウンタ404からのカウントは、デコーダ405によって解読され、
バッファ432によってバッファされ、ヘッド50に対するイネーブルパルスが
発生する。カウントの状態の数が、一つのイネーブルパルス中のクロック周期の
数より少ない場合には、カウンタ403が、プリスケーラを含む場合がある。ヒ
ータの熱的遅れを正確に補償するには、16の電圧状態を使用するのが適当であ
る。上記16の電圧状態は、カウンタ403と二重ポートRAM317との間の
、4ビットの接続を使用して指定することができる。しかし、これらの16の電
圧状態は、時間間隔を直線的にとることはできない。これら電圧状態の時間的間
隔を非直線的にしてもよいように、カウンタ403は、自らが非直線的にカウン
トすることができるように、ROMまたは他の装置を含むことができる。他の方
法としては、16以下の電圧状態を使用することもできる。
印刷密度を補償するために、各イネーブル周期中に、(「オン」ピクセル)イ
ンク粒子が印刷されるピクセルの数をカウントして、印刷密度が検出される。「
オン」ピクセルは、オンピクセルカウンタ402によってカウントされる。8の
イネーブル相のそれぞれに対して、一つのオンピクセルカウンタ402が使用さ
れる。本発明の印刷ヘッド内のイネーブル位相の数は、設計によって異なる。イ
ネーブル位相の数は2の累乗である必要はないが、4、8および16が便宜上使
用される。オンピクセルカウンタ402は、1ニブルのデータのビットの中のい
くつがオンになっているかを判断する、組み合わせ論理ピクセルで構成すること
ができる。その後、この数字は、加算器421およびアキュミュレータ422に
よって累算される。ラッチ423は、イネーブルパルスの持続時間中、累算され
た数値を有効に保持する。マルチプレクサ401は、イネーブルカウンタ404
によって決定された、現在のイネーブル相に対応するラッチ423の出力を選択
する。マルチプレクサ401の出力は、二重ポートRAM317の一部を形成す
る。「オン」ピクセルの数の正確なカウントは必要ではなく、このカウントの最
上位の四つのビットで十分である。
熱的遅れ補償アドレスの4ビットと、印刷密度補償アドレスの4ビットとを組
み合わせるということは、二重ポートRAM317は、8ビットのアドレスを持
つことを意味する。このことは、二重ポートRAM317は、二次元のアレーで
ある256の数字を含むことを意味する。これら二つの次元は、(熱的遅れ補償
に対する)時間と、印刷密度である。第三の次元、温度を含めることもできる。
印刷ヘッドの周囲温度は、ゆっくりとしか変化しないので、マイクロコントロー
ラ315は、現在の温度で熱的遅れおよび印刷密度を補償する256の数字のマ
トリックスを計算するのに十分な時間がある。周期的に(例えば、1秒間に数回
)、マイクロコントローラは、現在の印刷ヘッドの温度を感知し、このマトリッ
クスを計算する。
印刷ヘッド50へ送られるクロックは、ヘッドクロック発生装置407によっ
て、システムクロック408から作られ、バッファ406によってバッファされ
る。ヘッド制御ASICの試験を容易にするために、JTAG試験回路499を
設置することができる。
熱的インクジェット技術との比較
「熱的インクジェットと本発明との比較」の表には、本発明による印刷の種々
の態様と熱的インクジェット印刷技術との比較が行われている。
本発明と熱的インクジェット技術とを直接比較したのは、両方とも熱的アクチ
ュエータおよび液体インクを使用して動作するドロップオンデマンドシステムで
あるからである。両者は類似しているように見えるが、二つの技術は異なる原理
により動作している。
熱的インクジェットプリンタは、下記の基本的な動作原理を使用している。電
気抵抗加熱により発生した熱インパルスにより、液体インク中にバブルが突発的
に形成される。急速で継続的なバブルは、インクを過熱することによって形成さ
れ、その結果、バブルの形成が完了する以前に十分な熱がインクに伝えられる。
水をベースとするインクの場合には、インクの温度は約280−400℃でなけ
ればならない。バブルが形成されると、圧力波が発生し、この圧力波によりイン
ク粒子は高速で開口から落下する。その後、バブルは壊れ、インクタンクから流
れ出るインクによりノズルは再び満たされる。ノズルの密集度が高く、信頼度の
高いIC製造技術の使用により、熱インクジェット印刷は商業的に非常な成功を
収めた。しかし、熱インクジェット印刷技術は、多くの部分を精密に製造しなけ
ればならないとか、装置の歩留まり、イメージの解像度、「ペッパー」ノイズ、
印刷速度、駆動トランジスタ電力、無駄な電力消費、余分なインク粒子の形成、
熱応力、不均一な熱膨張、キャビテーション、修正拡散およびインク調整が難し
いことなどのかなり困難な技術的な問題に当面することになる。
本発明の印刷は、熱インクジェット印刷の多くの利点を持ち、熱インクジェッ
ト技術の特有の問題の多くを完全または実質的に解決している。
歩留まりおよび故障許容
ほとんどの場合、製造時に完全に機能しない時には、モノリシック集積回路は
修理することができない。ウェーハから生産される動作装置の動作する百分率を
歩留まりと呼ぶ。歩留まりは製造コストに直接影響する。歩留まりが5%の装置
は、歩留まりが50%である同じ装置と比較すると、その生産コストは10倍で
ある。
歩留まりの測定法は多きく分けて三つある。
1)製造歩留まり
2)ウェーハ選別歩留まり
3)最終試験歩留まり
大型のダイの場合は、全歩留まりに最も重大な影響を持つ、ウェーハ選別歩留
まりが通常使用される。本発明の全ページ幅カラー印刷ヘッドは、通常のVLS
I回路と比較すると非常に大きい。ウェーハ選別歩留まりがよいということが、
上記印刷ヘッドの製造のコストパフォーマンスに非常に重要なことである。
図5は、本発明のモノリシック全幅カラーA4ヘッドの実施形態の、ウェーハ
選別歩留まり対欠陥密度のグラフである。この印刷ヘッドは、長さが215ミリ
、幅が5ミリである。非故障許容歩留まり198は、広く使用されている歩留ま
り予測法であるマーフィー法を使用して計算する。欠陥密度が、1平方センチ当
たりの欠陥が一つであるという場合には、マーフィー法による歩留まりの予測は
1%以下である。このことは製造した印刷ヘッドの中の99%を廃棄しなければ
ならないことを意味する。このような低い歩留まりは非常に望ましくない。何故
なら、印刷ヘッドの製造コストは、非常に高いからである。
マーフィー法は、欠陥の不均一の分布の影響を近似する。図5は、また欠陥ク
ラスタ化係数の導入により、欠陥の集合をはっきりとモデル化する非故障許容歩
留まり197のグラフである。欠陥クラスタ化係数は、製造の際に制御すること
ができるパラメータではなく、製造プロセスに特有なものである。製造プロセス
に関する欠陥クラスタ化係数は、約2であると予想することができ、この場合、
歩留まりの予測部分はマーフィー法とよく一致する。
歩留まりが低い場合の解決法は、チップ上に、欠陥のある機能ユニットと交換
するために使用する、冗長機能ユニットを設置することによって、故障許容を導
入する方法である。
メモリチップおよび大部分のウェーハスケール集積(WSI)装置の場合には
、チップ上の冗長サブユニットの物理的な位置は重要ではない。しかし、印刷ヘ
ッドの場合には、冗長サブユニットは、一つまたはそれ以上の印刷アクチュエー
タを含むことができる。これらアクチュエータは、印刷中のページに対して空間
的に固定された位置関係に設置されていなければならない。欠陥を起こしたアク
チュエータの印刷位置と同じ位置に、ドットを印刷させるためには、冗長のアク
チュエータを、走査方向でない方向に移動させてはならない。しかし、欠陥のあ
るアクチュエータの代わりに、走査方向に移動する冗長アクチュエータを使用す
ることができる。冗長のアクチュエータが、欠陥のあるアクチュエータと同じ場
所にドットを必ず印刷するために、走査方向への移動を補償する目的で、冗長ア
クチュエータへのデータタイミングを変えることができる。
すべてのノズルを交換することができるようにするためには、完全な一組の冗
長ノズルがなければならない。これは冗長度が100%であるということである
。100%の冗長度を達成するには、通常二倍以上のチップ面積を必要とするが
、この場合、冗長ユニットを置き換える前の一次歩留まりが非常に大きく低下し
、故障許容の利点の大部分が失われてしまう。
しかし、本発明の印刷ヘッドの実施形態を使用すれば、印刷ヘッドチップの最
小の物理的寸法は、印刷されるページの幅、印刷ヘッドチップの脆さ、およびイ
ンクをチップの裏面に供給するインクチャネルの製造上の制限によって決まる。
A4サイズの紙を印刷するための全幅、フルカラーヘッドの最小の実用サイズは
、約215ミリ x 5ミリである。1.5ミクロンのCMOS製造技術を使用
すれば、チップ面積を有意に増大しないで、100%の冗長度を達成することが
できる。それ故、一次歩留まりを有意に下げないで、高いレベルの故障許容を実
現することができる。
装置に故障許容を導入した場合、標準の歩留まりの式を使用することはできな
い。上記式をそのまま使わずに、故障許容の機構および程度を、特別に分析し、
歩留まりの式に導入しなければならない。図5は、種々の形の故障許容を含む全
幅カラーA4印刷ヘッドに対する故障許容選別歩留まり199である。そのモデ
ル化は歩留まりの式に含まれている。このグラフは、欠陥の頻度および欠陥の集
中の関数としての予測歩留まりである。図5に示す歩留まりの予測は、故障許容
を完全に実行すると、ウェーハ選別歩留まりを、同一の製造条件の下で、1%以
下から90%以上へと改善することができることを示している。このように歩留
まりを改善することにより、製造コストを係数100だけ下げることができる。
数千の印刷ノズルを含む印刷ヘッドの歩留まりと信頼性を改善し、それにより
ページ幅の印刷ヘッドを実用化するために、故障許容を導入を強く勧める。しか
し、故障許容が本発明の本質的な部分であるとは考えてほしくない。
ドロップオンデマンド印刷システム内の故障許容は、その開示内容が本明細書
に参考文献として記載されている、1995年4月12日出願の下記のオースト
ラリア特許明細書に記載されている。
「印刷機構の集積故障許容」(出願番号:PN2324)
「集積印刷ヘッドのブロック故障許容」(出願番号:PN2325)
「集積印刷ヘッドの故障許容用二重ノズル」(出願番号:PN2326)
「印刷ヘッドの欠陥ノズルの検出」(出願番号:PN2327)
「大容積印刷ヘッドの故障許容」(出願番号:PN2328)
印刷システムの実施形態
図6は、本発明の印刷ヘッドを使用する電子印刷システムの略図である。この
図は、記録媒体51上に多数のインク粒子からなるイメージ60を印刷する、モ
ノリシック印刷ヘッド50である。上記媒体は、通常紙であるが、上向き透明フ
ィルム、クロス、またはインク粒子を受けつける多くの他の実質的に平らな面で
もよい。印刷されるイメージはイメージ源52によって供給されるが、このイメ
ージとしては、ピクセルの二次元アレーに変換できる任意のタイプのものを使用
することができる。通常のイメージ源は、イメージスキャナ、ディジタル的に記
憶されたイメージ、アドービポストスクリプト、アドービポストスクリプトレベ
ル2またはヒューレットーパッカード PCL5のようなページ記述言語(PD
L)でコード化されたイメージ、アップルクイックドロウ、アップルクイックド
ロウ GXまたはマイクロソフト GDIのような手続き呼出に基づくラスタ化
装置によって発生したページイメージ、またはASCIIのような電子形式のテ
キストである。その後、イメージデータはイメージ処理システム53によって、
特定の印刷システムに適するピクセルの二次元アレーに変換される。このイメー
ジはカラーの場合もあり、モノクロの場合もあり、データは、通常イメージ源お
よび印刷システムの仕様に従って、ピクセル当たり1−32ビットを持っている
。ソースイメージがページ記述である場合には、イメージ処理システムは、ラス
タイメージプロセッサ(RIP)を使用することができ、ソースイメージがスキ
ャナからのものである場合には、二次元イメージ処理システムを使用することが
できる。
連続トーンイメージが必要な場合には、ハーフトーン化システム54が必要で
ある。適当なタイプのハーフトーン化は、分散形ドット配列ディザまたはエラー
拡散に基づいている。この目的に適しているものとしては、通常確率的スクリー
ニングまたは周波数変調スクリーニングと呼ばれる、上記ハーフトーン化システ
ムの種々のタイプのものがある。オフセット印刷に通常使用されるハーフトーン
化システム、すなわち、集合形ドット配列ディザは適していない。何故なら、こ
の技術を使用すると、有効なイメージ解像度が不必要に無駄になるからである。
ハーフトンー化システムの出力は、本発明による印刷システムの解像度を持つ、
二進法のモノクロまたはカラーイメージである。
二進法のイメージは、データシフトレジスタ56に、正しい順序でピクセルデ
ータを供給する(図4のヘッド制御ASIC400に内蔵できる)データ位相回
路55によって処理される。ノズルの配置および紙の動きを補償するためには、
データを正しい順序に並べなければならない。データがシフトレジスタ56にロ
ードされると、そのデータはヒータ駆動回路57に並列に送られる。正しいタイ
ミングで、駆動回路57は、対応するヒータ58を、パルス整形回路61および
電圧レギュレータ62によって発生した電圧パルスに電子的に接続する。ヒータ
58は、ノズル59の先端を加熱し、インクの物理的な特性を変化させる。イン
ク粒子60は、ヒータ駆動回路に供給されたディジタルインパルスに対応するパ
ターンで、ノズルから排出される。インクタンク64内のインクの圧力は、圧力
レギュレータ63によって調整される。選択されたインク粒子60は、選択され
たインク粒子分離手段によって、インク本体から分離され、記録媒体51と接触
する。印刷中、記録媒体51は、紙移送システム65によって、印刷ヘッド50
に対して連続的に移動する。印刷ヘッド50が、記録媒体51の印刷領域全体を
カバーする幅を持っている場合には、記録媒体51を一つの方向だけに移動させ
るだけでよく、印刷ヘッド50を固定しておけばよい。もっと小型の印刷ヘッド
50が使用される場合には、ラスタ走査システムを実行する必要がある。このこ
とは、通常記録媒体51を長手方向に移動させながら、印刷ヘッド50を横方向
に走査することによって行うことができる。
二進法のイメージは、データシフトレジスタ56に、正しい順序でピクセルデ
ータを供給する(図4のヘッド制御ASIC400に内蔵できる)データ位相回
路55によって処理される。ノズルの配置および紙の動きを補償するには、デー
タを正しい順序に並べなければならない。データがシフトレジスタ56にロード
されると、そのデータはヒータ駆動回路57に並列に送られる。正しいタイミン
グで、駆動回路57は、対応するヒータ58を、パルス整形回路61および電圧
レギュレータ62によって発生した電圧パルスに電子的に接続する。ヒータ58
は、ノズル59の先端を加熱し、インクの物理的な特性を変化させる。インク粒
子60は、ヒータ駆動回路に供給されたデジタルインパルスに対応するパターン
で、ノズルから排出される。インクタンク64内のインクの圧力は、圧力レギュ
レータ63によって調整される。選択されたインク粒子60は、選択されたイン
ク粒子分離手段によって、インク本体から分離され、記録媒体51と接触する。
印刷中、記録媒体51は、紙移送システム65によって、印刷ヘッド50に対し
て連続的に移動する。印刷ヘッド50が、記録媒体51の印刷領域全体をカバー
する幅を持っている場合には、記録媒体51を一つの方向だけに移動させるだけ
でよく、印刷ヘッド50を固定しておけばよい。もっと小型の印刷ヘッド50が
使用される場合には、ラスタ走査システムを実行する必要がある。このことは、
通常記録媒体51を長手方向に移動させながら、印刷ヘッド50を横方向に走査
することによって行うことができる。
ノズル力学のコンピュータシミュレーション
印刷ヘッドの動作の詳細は、コンピュータによって広範囲にわたってシミュレ
ーションされた。図7−図9は、静電インク粒子分離と組み合わせて行った、表
面張力の低減による電熱インク粒子選択を使用する、ノズル動作のシミュレーシ
ョンの一例からのいくつかの結果である。
コンピュータシミュレーションは、直接観察するのが困難な現象の特性を決定
するのに非常に有益である。下記の理由を含むいくつかの理由のために、ノズル
の動作を実験的に観察するのは難しい。
1)有用なノズルは、顕微鏡的な大きさで、重要な現象の大きさは1ミクロン以
下である。
2)インク粒子排出の時間的尺度は、数マイクロ秒で、非常な高速での観察を必
要とする。
3)重要な現象は、半透明な固体材料内で起こり、直接観察するのは不可能であ
る。
4)熱の流れおよび流体ベクトルフィールドのようないくつかの重要なパラメー
タは、どんな尺度をもってしても、直接観察するのは困難である。
5)実験用のノズルの製造コストが高い。
コンピュータシミュレーションが、上記問題を解決した。流体力学シミュレー
ション用の一番優れたソフトウェアパッケージは、米国、イリノイ州所在のフル
イドダイナミックインターナショナルインク(FDI)が作成したFIDAPで
ある。FIDAPは、上記会社の登録商標である。その他のシミュレーションプ
ログラムも市販されているが、遷移流体力学、エネルギー移動および表面張力計
算の精度が高いので、FIDAPを選んだ。使用したFIDAPのバージョンは
、FIDAP7.06である。
計算の理論的根拠
有限要素法を使用する流体力学およびエネルギー移動の計算の理論的根拠、お
よびこの理論的根拠をFIDAPコンピュータプログラムに適用する方法は、そ
の開示内容が参考文献として本明細書に記載されている、フルイドダイナミック
インターナショナルインク社発行のFIDAP7.0理論マニュアル(1993
年4月)に詳細に記載されている。
材料特性
「FIDAPシミュレーションに使用する材料の特性」表には、印刷ヘッドの
製造の際に使用することができる材料の、だいたいの物理的特性が表示されてい
る。
このシミュレーションで使用される「インク」の特性は、実際には純粋な水の
特性である。純粋な水を使用した理由は、インクの表面張力が温度が変化しても
ほんの僅かしか低下しない、インク粒子の分離にとって「最悪のケース」をシミ
ュレーションするためである。温度変化に伴って、表面張力を大きく低下させる
ために特に調整したインクを使用すれば、遥かに広い動作マージンを得ることが
できる。
FIDAP7.06を使用して、マイクロ秒の遷移で、マイクロメータの尺度
により、可変表面張力で、遷移自由表面のシミュレーションを収束させるには、
シミュレーションを無次元化する必要がある。
FIDAPプログラムを使用する、例示としてのシミュレーションで使用した
数値は、「FIDAPシミュレーションに使用する材料の特性」表に表示されて
いる。大部分の数値は、「化学および物理」の72版の「CRCハンドブック」
、またはラングの化学ハンドブックの14版からのものである。
流体力学シミュレーション
図7は、種々の時間ステップでの、印刷原理に基づいて動作するノズル内のイ
ンクのメニスカスの中心に向かい、半径方向に延びるノズルリムからの曲線に沿
った温度のグラフである。縦軸の目盛りの単位は100℃で、横軸の目盛りの単
位は10マイクロ秒である。5マイクロ秒の時点で、メニスカス沿いの半径方向
の距離は、約10ミクロンであり、温度は30℃のままで一定である。ヒータが
アクティブになっている期間(10−20マイクロ秒の間の曲線)、ノズルチッ
プの端部(座標0.0)の温度はほとんど100℃である。メニスカスの中心の
温度は約60℃に上昇した。インクがノズルから流れ出し始めると、ノズルチッ
プからメニスカスの中心までの曲線は長くなる。(24マイクロ秒の時点で)ヒ
ータをオフにすると、ノズルチップの温度は下がる。インクはノズルから流出し
続ける。75マイクロ秒経過するまでに、ノズルチップからメニスカスの中心ま
でのメニスカス上の半径方向の線の長さは、約40ミクロンである。
図8(a)−図8(i)は、熱および流体力学複合シミュレーションの種々の
時点でのノズルの一例のグラフである。軸対称シミュレーションが使用されてい
る。何故なら、例示としてのノズルは円筒形をしているからである。円筒形から
の四つの偏差がある。この偏差というのは、ヒータとの接続、ペーパーの移動に
よる空気の層流、(印刷ヘッドが垂直でない場合は)重力、および基板上の隣接
ノズルの存在である。インク粒子排出に対するこれらの要因の影響は少ない。ノ
ズルの半径は7ミクロンであり、グラフ一定の比率で拡大されている。
ノズルのチップの領域だけを図示してある。何故なら、インク粒子選択に関連
する大部分の現象は、この領域で起こるからである。このグラフは、対称軸から
22.1ミクロンの距離までのノズルチップの断面を示す。
図8(a)は、表面張力が、インク圧と外部の静電電界または磁界とバランス
がとれている静止位置のノズルである。図中、100はインク本体、101はシ
リコン、102は二酸化シリコン、103はヒータ位置、104はタンタル不動
態化層、および108は窒化シリコンの不動態化層である。窒化シリコン層の露
出面は、疎水コーティングされている。ノズルチップおよびインクの温度は、装
置周囲温度と同じで、この場合は、30℃である。動作中、装置の周囲温度は、
空気の周囲温度より若干高くなる。何故なら、多くのインク粒子排出期間中は、
温度は印刷密度に基づく平衡温度に維持されているからである。シリコンは熱伝
導度が高く、インク内で熱の対流が行われるので、ノズルの熱は、インク粒子の
排出の間に、極めて均等に配分される。
図8(b)は、ヒータのアクティブ期間スタート2マイクロ秒後のノズルであ
る。この部分は、急速温度遷移を得るために必要なピーク電力を、少なくする予
熱サイクル部分である。この時点でヒータに供給される電力は、61ミリワット
である。図示の等温線は、(マークがつけられている)35℃からスタートし、
5℃間隔での温度上昇を示す。
図8(c)は、ヒータのアクティブ期間スタート4マイクロ秒後のノズルであ
る。これは、インク内に急峻な温度遷移を確立するために供給されたピークヒー
タ電力(97ミリワット)の時点である。
図8(d)は、ヒータのアクティブ期間スタート9マイクロ秒後のノズルであ
る。インク、ノズルおよび空気の間のインタフェースのサークルの温度を、イン
クの沸点(水をベーストするインクの場合約100℃)より少し低い温度に維持
するために必要なヒータ電力は43ミリワットである。この図は、熱が対流によ
りメニスカスの中心に向かって急速に運び去られることを示している。
図8(e)は、ヒータのアクティブ期間スタート14マイクロ秒後のノズルで
ある。ヒータ電力は40ミリワットである。全メニスカスはすでに加熱され、イ
ンクが移動し始めている。
図8(f)は、ヒータをオフにしてから1マイクロ秒後のノズルである。この
シミュレーション用のヒータパルス幅は、18マイクロ秒であり、ヒータパルス
エネルギーは930nJである。
図8(g)は、ヒータをオフにしてから16マイクロ秒後のノズルである。こ
の図は、インク内の現在の温度は最高温度(56.6℃)であるのに、基板が急
速に冷却することを示す。この段階においては、垂れ下がったインク粒子が絶対
にノズル内に再度吸収されないようにするだけの十分な運動量を持つ。
図8(h)は、ヒータをオフにしてから36マイクロ秒後のノズルである。こ
の図は、上昇した温度がインク粒子のメニスカスの周囲に、非常に均等に広がっ
ていて、ノズルチップの温度が35℃に下がっていることを示す。
図8(i)は、ヒータをオフにしてから46マイクロ秒後のノズルである。ヒ
ータに供給された熱エネルギーの大部分は、インク粒子によって運び去られる。
この段階においては、すべてのノズルの温度は、35℃に下がっている。
図8(j)は、ヒータをオフにしてから56マイクロ秒後のノズルである。イ
ンクはノズルチップのところで‘くびれ’始め、まもなく分離したインク粒子を
形成する。
18マイクロ秒の持続時間を持つ、8個の重畳していないインク粒子排出位相
を使用する場合、全インク粒子排出サイクルは144マイクロ秒である。この時
間の長さは、構造物内に残っている熱がシリコンおよびインクを通して発散する
のに十分な時間である。それ故、後続のインク粒子の間に有意の干渉は起こらな
い。
図9は、メニスカス位置対ノズル内の時間のグラフである。縦軸の表示単位は
10ミクロンであり、横軸の表示単位は100マイクロ秒である。このシミュレ
ーションにおいては、最初のメニスカス位置は静止位置とは少し異なっていて、
温度パルスはない。このグラフは、共振周波数(継続ピーク間の距離による約2
5KHz)およびメニスカスおよびインクコラムが減衰する程度を示す。このグ
ラフから、メニスカスが静止位置に急速にもどり、次のインク粒子を排出するこ
とができるようになることは明かである。
ノズルの流体力学シミュレーション
印刷ヘッドは、広い範囲の条件および種々の印刷解像度で動作するように設計
することができる。現在入手可能な大量販売用のドロップオンデマンド印刷シス
テムの大部分は、300−400dpiの印刷解像度を持つ。この解像度は、熱
インクジェット設計に対する絶対的な制限ではないが、印刷解像度が向上するに
従って、印刷ヘッドの設計は通常それにつれてより難しくなる。印刷ヘッドは、
広い範囲の解像度で設計することができるが、大量販売市場向けの大部分の印刷
ヘッドの解像度は、400−800dpiのようである。テキストおよびグラフ
ィクス用には、400dpiの二レベル印刷が一般に適しているが、この解像度
は高品質のフルカラー写真複写には向いていない。これに対する例外は、クロス
上に印刷する場合であって、この場合は、400dpiの解像度の印刷で、標準
クロスより優れた結果が得られる。何故なら、機械的印刷技術を使用するクロス
上の印刷品質に対する主な制限は、見当合わせであるからである。何故なら、各
印刷した色の間でクロスが延びたり、歪んだりするのを防止するのは困難だから
である。800dpiの解像度が、大量販売用の印刷システムに対する最高の解
像度であるように思われる。何故なら、確率的スクリーニングを使用する800
dpi、6色CC’MM’YK印刷は、人々が慣れ親しんでいる133−150
lpiカラーオフセット印刷品質にほぼ相当する結果をもたらすからである。
極めて種々様々な種類のノズルのシミュレーションを行った。図10(a)−
図10(f)は、400、600および800dpi印刷用に設計されたノズル
のシミュレーションの結果の要約である。 流体力学シミュレーションは、FI
DAPシミュレーションソフトウェアを使用して行う。それぞれの場合、シミュ
レーションの持続時間は、100マイクロ秒であり、間隔は0.1マイクロ秒で
ある。ノズルチップは円筒形で、半径は、400dpiシミュレーションに対し
ては20ミクロン、600dpiシミュレーションに対しては14ミクロン、8
00dpiに対しては10ミクロンである。インク圧は、400dpiに対して
は3.85kPa、600dpiに対しては5.5kPa、800dpiに対し
ては7.7kPaである。三つのすべてのシミュレーションの場合の周囲温度は
30℃である。シミュレーションの開始時には、インクメニスカスはその静止位
置に近く、すべての速度はゼロである。時変電力パルスを、20マイクロ秒にス
タートし、ヒータに加えた。パルスの持続時間は、400dpiシミュレーショ
ンに対しては30マイクロ秒、600dpiシミュレーションに対しては24マ
イクロ秒、800dpiシミュレーションに対しては18マイクロ秒である。イ
ンクメニスカスが、インク粒子選択パルスのスタート前に静止位置に移動するこ
とができるように、パルスを20マイクロ秒にスタートさせた。
このシミュレーションの場合には、インク粒子選択プロセスだけをモデル化し
た。インク粒子選択プロセスは、近接でも、静電的なものでも、または他の手段
であってもよい。選択されなかったインク粒子から、選択されたインク粒子を分
離するには、選択されたインク粒子と選択されなかったインク粒子との間の、メ
ニスカス位置の物理的違いを利用した。インク粒子を分離するには、インク粒子
選択パルスのスタート前後のメニスカスの中心の位置の間の軸方向の違いを、1
5ミクロンにするのが適当である。
図10(a)、図10(c)および図10(e)は、それぞれ400dpiノ
ズル、600dpiノズルおよび800dpiノズルのメニスカスの中心位置対
時間の関係を示すグラフである。縦軸の表示単位は10ミクロン、横軸の表示単
位は100マイクロ秒である。これらグラフを視覚的に比較する場合には、グラ
フ間の縦軸の尺度が異なっていることを考慮にいれなければならない。重要な特
性は、メニスカスの位置を、静止位置(20マイクロ秒のところのパルス開始前
の位置)から約15ミクロンのところに設定することである。この場所において
、(このシミュレーションの場合には、シミュレーションされていない)インク
粒子選択手段は、確実に選択されたインク粒子をインク本体から分離し、記録媒
体に移動させることができる。インク粒子分離パルスが停止した後のメニスカス
の変動は、浸出したインク粒子の最初の非球形的性質によるものである。インク
粒子は、球形を通して、扁長の形から偏円へと変化し、また元へ戻る。この変動
は重要ではない。何故なら、インク粒子の選択が行われた後では、インク粒子分
離手段が、インクメニスカス位置を決める支配的な要因となるからである。
図10(b)、図10(d)および図10(f)は、それぞれ400dpiノ
ズル、600dpiノズルおよび800dpiノズルの、種々の瞬間のメニスカ
スの形状である。直接比較することができるように、三つのグラフは同じ尺度で
表示してある。メニスカス位置は、パルスの終了後20マイクロ秒から4マイク
ロ秒の時点でのインク粒子選択パルスのスタートから、2マイクロ秒間隔で表示
されている。
図10(b)、図10(d)および図10(f)の場合には、100はインク
、101はシリコン基板、102は二酸化シリコン、103は環状ヒータの一方
の側面の位置を示し、108はSi3N4の不動態化層、109は疎水性表面コー
ティングである。グラフは「等温線グラフ」と表示されているが、等温線は図示
されていない。
図10にシミュレーションの結果を示すノズルは、図7、図8および図9にシ
ミュレーションの結果が図示されているノズルとは異なる設計のものである。印
刷ヘッド用のノズルは種々様々に設計することができる。ノズルに対する基本的
な要件は、熱インクジェットノズルの要件より簡単なので、ノズルに対して選択
した実際の幾何学的形状は、主として製造プロセス上に都合のよいように決定す
ることができる。
熱作動印刷ヘッド内の自己冷却動作
本発明は、高速、小型、低コストおよびより多くのノズルを持つ印刷ヘッドを
製造することができるように、廃熱除去の問題を完全に解決するか、または有意
に軽減するためのシステムを提供する。
このシステムは、廃熱を除去するのに排出したインクそのものを使用している
が、設計する印刷ヘッドには下記の二つの制限がある。
1)静止電力消費(実際に印刷していないときに、印刷ヘッドが消費する電力)
は、対流または強制空気冷却により静止熱を発散できるように、十分低くなけれ
ばならない。
2)最大アクティブ電力消費(印刷中に消費する電力)は、印刷中のインクの温
度を信頼できる動作温度以上に上昇させるのに必要な電力より少なくなければな
らない。
第一の制限は、CMOS駆動回路を使用することにより解決することができる
。ほとんどの状況の場合、CMOS駆動回路を使用すると、ヒートシンクまたは
他の特殊な装置を使用しなくても、廃熱を発散できるほど静止電力を減少させる
ことができる。印刷ヘッドから周囲の環境への熱抵抗が過度の熱の蓄積を防止で
きるだけ十分に低い場合は、バイボーラ、nMOSまたは他の駆動回路も同様に
使用することができる。しかし、CMOSまたはnMOS回路を実際に使用する
には、現在の熱インクジェット(TIJ)印刷システムは、余りに高いアクティ
ブ電力要件を持つ。それ故、バイポーラ駆動回路が通常使用される。本発明の印
刷技術を使用する印刷ヘッドは、CMOS駆動回路を実際に使用できるほど十分
に低い(TIJの1%以下)アクティブ電力消費で設計することができる。
第二の制限は、一個のインク粒子を排出するのに必要なエネルギーを、同じ一
個のインク粒子を周囲のインク温度から、信頼できる印刷動作を維持することが
できる最大インク温度まで上昇させるのに必要なエネルギーより小さくなるよう
に、印刷ヘッドのノズルを設計することにより解決することができる。このこと
が達成できれば、有効電力の全部を印刷ヘッドそれ自身内で発散させることがで
きる。
アクティブ電力消費量は、単位時間当たりに印刷されるインク粒子の数に正比
例する。印刷ヘッド内で発散することができる電力も、単位時間当たりに印刷し
たインク粒子の数に正比例する。それ故、インク粒子当たりのエネルギーを、必
要な閾値以下に下げることができれば、印刷速度、ノズル数またはノズル密度に
対する電力発散の制限は、完全に解決することができ、「自己冷却動作」が行わ
れる。
自己冷却の閾値の数値は、周囲温度、インク粒子の半径、インクの比熱、イン
クの沸点および必要な動作マージンによって異なる。
図19は、自己冷却動作を維持することができる最大インク粒子排出工ネルギ
ーのグラフである。水をベースとするインクの場合の、インク粒子の半径および
周囲温度に対する、最大インク粒子排出エネルギーがグラフで表示されている。
20℃の動作マージンが想定されている。印刷ヘッドの静止電力発散は無視でき
ると見なされる。
図6の曲線以下の印刷ヘッド排出エネルギーで動作する印刷ヘッドは、自己冷
却により動作することができる。図19に示す以上のエネルギーをインク粒子を
排出するのに必要とする印刷ヘッドは、インク粒子の排出だけでは完全に冷却す
ることはできない。
商業的に入手できる熱インクジェット印刷技術は、現在自己冷却動作に対する
閾値の約10倍のインク粒子排出工ネルギーを持つ。インク粒子のサイズが10
0pl以下の熱インクジェットプリンタの場合には、自己冷却動作を行うのは非
常に難しいと思われる。
しかし、本発明によって動作する印刷ヘッドのノズルは、自己冷却動作ができ
るように容易に設計することができる。
粘度低減選択を使用する好適な実施形態
この好適な実施形態の場合には、印刷するインク粒子を選択する手段は、振動
インク圧の下でのインクの粘度の低減である。振動インク圧の平均圧力は、イン
クの表面張力に打ち勝ち、インクをノズルから排出するのには不十分である。周
囲温度の場合には、インクの粘度は、インク圧の振動から生じるインクメニスカ
スの振動の振幅より、インク粒子を分離させるには不十分である程度の数値を持
つ。ノズルの熱アクチュエータが作動すると、インクの粘度は、インク圧の振動
から生じるインクメニスカスの振動の振幅により、インク粒子を分離させること
ができるくらいに十分低い数値に低下する。
ほとんどの場合、ノズルから排出された時のインクの粘度は、排出されたイン
ク粒子を、インク本体から分離できるほど低くない。コンピュータ制御印刷関係
の大部分のインク粒子のサイズの場合、インク粒子に働く重力は表面張力の力と
比較すると小さい。その結果、重力をインク粒子の分離手段として使用すること
はできない。
それ故、インク本体から選択されたインク粒子を分離し、インク粒子に記録媒
体上に確実に点を形成させるための手段が必要になる。インク粒子分離手段は、
下記のリストから選択することができるが、リストに含まれている手段に限定さ
れない。
1)近接(印刷ヘッドの極めて近いところに記録媒体を配置する)
2)静電誘引
3)磁気誘引
効果的にインク粒子を分離するためには、温度の上昇と共に、インクの粘度が
大きく低下しなければならない。選択されないインクの粘度は、高くなければな
らないが(好適には、20cP以上)、選択されたインク粒子の粘度は、好適に
は10以上、下がらなければならない。適当なインク特性は、種々の有機ワック
ス、酸、アルコール、オイルおよび他の化合物の混合物を使用することにより得
ることができる。
本発明による種々の印刷は、室温ではインクが固体状態の高温溶融印刷に適し
ている。インクは、好適には60℃以上の融点を持っていることが好ましく、ま
たハッキリとした融点を持つのではなく、「軟化」するように、異なる融点を持
つ化合物の混合物の形で調整することもできる。インクタンクおよび印刷ヘッド
は、印刷を開始する前にインクの融点(例えば、80℃)以上の温度に加熱され
る。この温度は、静止温度と呼ばれる。印刷特性に対する周囲温度の影響を最小
限度に少なくするために、印刷ヘッドの温度を調節することができる。
インク粒子を印刷する場合には、ノズル中の電熱アクチュエータが作動し、ノ
ズルチップのインクの温度を上昇させる。適当な排出温度は、静止温度より10
0℃高い温度で、インクの粘度を大きく下げるだけの十分な温度差を生じる温度
である。高速高解像度印刷の場合には、排出温度でのインクの粘度は、好適には
10cP以下で、より好適には1cP程度であることが好ましい。インクの粘度
が低下すると、インク圧の振動に応じて、インクが遥かに高速で移動し、それに
よりインクがさらに遠くに移動する。
インクの粘度が低下すると、選択されたインク粒子は、選択されなかったイン
ク粒子のピークメニスカス位置よりさらに遠くに延びたピークメニスカス位置を
持つことになる。これにより、インク粒子分離手段は、選択されたインク粒子と
選択されなかったインク粒子とを区別することができる。
インク圧は、インクに音波を当てることにより振動させることができる。音波
の波形は重要ではないが、波形を制御し予測するには正弦波の使用が最も簡単な
方法であり、本明細書中では正弦波を使用する場合について説明する。周波数は
、一本のノズルからのインク粒子排出周波数と同じか、その整数倍である。振動
の位相は、好適にはインク粒子排出サイクルに正確にタイミングがあっているこ
とが好ましい。
音波発生装置は、ノズル列にインクを供給するインクチャネルのインク本体を
変位させるような方法で、ノズル列の全長にわたって配置されている圧電クリス
タルを含む。適当な周波数、振幅および位相を持つ正弦波電圧が、圧電クリスタ
ルに加えられる。圧電クリスタルは、加えられた電圧に従って伸縮し、インクを
変位させる。この変位は動的で、連続しているので、インク中に圧力波が形成さ
れる。
インク音波を使用すると、構造が複雑になり、印刷コストも増大するので、こ
の方法は、コストを重視しない用途に最も適している。そのような用途としては
、短期デジタルカラー印刷および高品質高速カラーオフィス印刷等がある。
粘度動作
インクの粘度の低下を利用する本発明の印刷の正確な動作は、その中の多くを
印刷ヘッド製造プロセス、インク製造、またはプリンタ動作中に正確に制御する
ことができる多くの要因に基づいている。上記要因としては下記のものがある。
1)ノズル半径
2)ノズル長
3)バレルの幾何学的形状
4)インク圧周期
5)インク圧力波の振幅
6)インク圧の一定のオフセット
7)インク圧力波に対するヒータ作動パルスの位相
8)ヒートパルスのエネルギー
9)時間に関するヒートパルスのエネルギーの分配
10)ヒータの幾何学的形状
11)ノズルに対するヒータ位置
12)ノズル材の熱伝導度
13)インクの熱伝導度
14)温度に対するインクの粘度
ノズル力学のコンピュータシミュレーション
印刷ヘッドの動作の詳細は、コンピュータによって広範囲にわたってシミュレ
ーションされた。図21−図26は、インクの粘度による電熱インク粒子選択を
使用する本発明のノズルの一実施形態の例示としてのシミュレーションからのい
くつかの結果である。このシミュレーションの場合には、インク粒子分離手段は
モデル化しない。その結果、選択されたインク粒子はインク本体から分離しない
で、ノズルに戻る。作動ドロップオンデマンドプリンタを製造するためには、本
明細書のモデル化したインク粒子選択手段を、適当なインク粒子分離手段と組み
合わせて使用しなければならない。
コンピュータシミュレーションは、直接観察するのが困難な現象の特性を決定
するのに非常に有益である。下記の理由を含むいくつかの理由のために、ノズル
の動作を実験的に観察するのは難しい。
1)本発明の有用なノズルは、顕微鏡的な大きさで、重要な現象の大きさは1ミ
クロン程度である。
2)インク粒子排出の時間的尺度は、数マイクロ秒で、非常な高速での観察を必
要とする。
3)重要な現象は、半透明な固体材料内で起こり、直接観察するのは不可能であ
る。
4)熱の流れ、粘度および流体速度のようないくつかの重要なパラメータは、直
接観察するのは困難である。
5)実験用のノズルの製造コストが高い。
コンピュータシミュレーションが、上記問題を解決した。流体力学シミュレー
ション用の一番優れたソフトウェアパッケージは、米国、イリノイ州所在のフル
イドダイナミックインターナショナルインク(FDI)が作成したFIDAPで
ある。FIDAPは、上記会社の登録商標である。その他のシミュレーションプ
ログラムも市販されているが、遷移流体力学、エネルギー移動および表面張力計
算の精度が高いので、FIDAPを選んだ。使用したFIDAPのバージョンは
、FIDAP7.06である。
計算の理論的根拠
有限要素法を使用する流体力学およびエネルギー移動の計算の理論的根拠、お
よびこの理論的根拠をFIDAPコンピュータプログラムに適用する方法は、そ
の開示内容が参考文献として本明細書に記載されている、フルイドダイナミック
インターナショナルインク社発行のFIDAP7.0理論マニュアル(1993
年4月)に詳細に記載されている。
材料特性
「FIDAPシミュレーションに使用する材料の特性」表には、印刷ヘッドの
製造の際に使用することができる材料の、だいたいの物理的特性が表示されてい
る。
このシミュレーションで使用する「インク」の特性は、炭素数が18−24の
酸、またはアルコールおよび/または融点が60−80℃の適当なワックスから
なる、媒体内に分散された固体顔料を含む高温溶融黒インクの推定値である。シ
ミュレーションの周囲温度(80℃)においては、媒体は粘度約100cPの液
体である。高温溶融インクの粘度値は、特定の処方を示さないが、望ましい目標
とする粘度曲線を持つ。黒の着色剤は、粒子サイズが10ミクロン以下の2%ア
チェソン黒鉛である。この黒鉛は、優れた安定性および耐光性を持つ非常に濃い
黒の着色剤で、インクの熱伝導度も増大する。アチェソン黒鉛は、押し出し軸に
平行に150Wm-1K-1の熱伝導性を持ち、100℃での押し出し軸に垂直に1
11Wm-1K-1の熱伝導性を持つ。着色剤として黒鉛を混入すると、インク媒体
の熱伝導度が向上する。このことは重要なことである。何故なら、高速低電力動
作にとっては、比較的高い熱伝導度が望ましいからである。選択した着色剤が高
い熱伝導度を持たず、インク媒体が低い熱伝導度を持っている場合には、高速プ
リンタ用には、熱伝導度を少なくとも0.5Wm-1K-1に増加させる添加物を使
用することを勧める。
FIDAP7.06を使用して、マイクロ秒の遷移で、マイクロメータの尺度
により、可変表面張力で、遷移自由表面のシミュレーションを収束させるには、
シミュレーションを無次元化する必要がある。
FIDAPプログラムを使用する、例示としてのシミュレーションで使用した
数値は、「FIDAPシミュレーションに使用する材料の特性」表に表示されて
いる。大部分の数値は、「化学および物理」の72版の「CRCハンドブック」
、またはラングの化学ハンドブックの14版からのものである。
流体力学シミュレーションの結果
図20−図25は、熱および流体力学複合シミュレーションのノズルの一例の
グラフである。軸対称シミュレーションが使用されている。何故なら、例示とし
てのノズルは円筒形をしているからである。円筒形からの五つの偏差がある。こ
の偏差というのは、ヒータとの接続、ペーパーの移動による空気の層流、(印刷
ヘッドが垂直でない場合は)重力、対称軸から25ミクロン以上離れたノズルバ
レルの幾何学的形状、および基板上の隣接ノズルの存在である。インク粒子排出
に対するこれらの要因の影響は少ない。
図22は、時間の関数としてのインク圧のグラフである。圧力は72マイクロ
秒の周期で正弦波状に変化する。三つ圧力サイクルが図示されている。横軸は0
−216マイクロ秒の間を100マイクロ秒単位で表示する。
図21は、図20の第三のサイクル中に電熱パルスを供給した場合の、時間の
関数としてのノズル内の種々の点での温度である。パルスは160マイクロ秒の
ところからスタートし、36マイクロ秒の持続時間を持つ。パルスは、パルスの
持続時間中、(インクメニスカスがノズルと接触する)ノズルチップの温度を1
80℃の温度にほぼ一定に維持するように、その頂部が形成されている。曲線B
がその様子を示す。曲線Aは、ヒータの中心の温度を示す。曲線Cは、ヒータか
ら14.5ミクロン離れた印刷ヘッドの表面の一点の温度を示す。横軸は図20
のものと同じである。縦軸の表示単位は100℃である。周囲温度は80℃であ
る。
図22は、時間の関数としてのメニスカスの極値の位置である。横軸は図20
のものと同じである。最初の二つのサイクル(0−144マイクロ秒)は、選択
されなかったインク粒子であり、この場合、ヒータに電力は供給されない。この
場合、温度は低く、粘度は高い(100cP)。粘度が高いので、図20に示す
圧力の変化によるインクの動きは小さい(ピークピーク値で2ミクロン程度)。
圧力波の第三のサイクル中、ヒータに電力が供給され、その結果、図21に示す
ように温度が上昇する。粘度が低下すると、メニスカス位置が約10ミクロン移
動する。選択されなかったインク粒子と、選択されたインク粒子との間のメニス
カス位置の違いにより、インク粒子分離手段は、選択されたインク粒子により、
確実に記録媒体上に点を形成することができるが、選択されなかったインク粒子
はそうすることができない。このシミュレーションの場合には、インク粒子分離
手段はモデル化されない。それ故、選択されたインク粒子はノズル内に戻る。こ
のことは、図22の196−216マイクロ秒間に図示されている。
図23、図24、図25、図27および図28は、動作中のノズルの断面図で
ある。ノズルチップの領域だけを示す。何故なら、インク粒子選択に関するほと
んどの現象はこの領域で起こるからである。これらグラフは、対称軸から22ミ
クロン離れた所までのノズルチップの断面図である。ノズル半径は10ミクロン
、グラフは一定の尺度で拡大されている。これらの図中、100はインク、10
1はシリコン基板、102は二酸化シリコン、103は環状ヒータの一側面上の
位置、108はSi3N4の不動態化層、109は疎油性表面コーティングである
。
図23(a)、図23(c)、図23(e)、図23(i)は、5℃間隔の等
温線を示す。図23(b)、図23(d)、図23(f)、図23(h)、図2
3(j)は、等粘度線およびインク粒子排出サイクル中の種々の時点での粒子の
放出を示す。
図23(a)は、図20−図22に示す160マイクロ秒の時点での、ヒータ
加熱パルスのスタート時の等温線である。この時にヒータに供給された電力は1
80ミリワットである。周囲温度は80℃であり、等温線は85−120℃の間
のもので、5℃間隔で表示されている。
図23(b)は、160マイクロ秒の時点での等粘度線である。バルクインク
の粘度は、100cPであり、この時点では粘度の変化は少しもない。固体材料
(シリコン101、二酸化シリコン102およびSi3N4108)中の線は、有
限要素計算のメッシュを示す。
図23(c)は、ヒータ加熱パルスのスタート10マイクロ秒後、すなわち、
170マイクロ秒の時点での等温線である。この時にヒータに供給された電力は
74ミリワットである。等温線は85−195℃の間のもので、5℃間隔で表示
されている。
図23(d)は、170マイクロ秒の時点での等粘度線である。インクの粘度
は、ヒータから遠いところでは100cP、近いところでは2cP以下へと変化
する。
図23(e)は、ヒータ加熱パルスのスタート20マイクロ秒後、すなわち、
180マイクロ秒の時点での等温線である。この時にヒータに供給された電力は
60ミリワットである。
図23(f)は、180マイクロ秒の時点での等粘度線である。インクの粘度
が下がったので、インク圧が増大し、インクはヒータに電力が供給されなかった
場合の位置よりさらに遠くに移動することができる。ノズルチップの壁部のとこ
ろでは、インクの粘度が最も低く、温度は最も高い。このことにより、インクの
移動が促進される。何故なら、インクの移動に対するインクの粘度の遅延効果は
、ノズルの軸のところよりノズルの壁部に近いところのほうが大きいからである
。
図23(g)は、ヒータ加熱パルスのスタート30マイクロ秒後、すなわち、
190マイクロ秒の時点での等温線である。この時にヒータに供給された電力は
58ミリワットである。
図23(h)は、190マイクロ秒の時点での等粘度線である。(特に4cP
の線上でハッキリと認められる)等粘度線の「しわ」は、温度と粘度との間の非
線形の関係と組み合わされた要素内の補間による有限要素シミュレーションの計
算上の人工産物である。シミュレーションに対するこの補間の影響は無視するこ
とができる。
図23(i)は、ヒータ加熱パルスのスタート40マイクロ秒後、すなわち、
200マイクロ秒の時点での等温線である。この時点は、ヒータをオフにしてか
ら4マイクロ秒経過した時点であり、この段階での最高温度は155℃である。
図23(j)は、200マイクロ秒の時点での等粘度線である。この段階にお
いては、インク粒子分離手段が、メニスカス位置を決める主な要因となる。高温
で粘度の低いインクの大部分は、選択されたインク粒子を形成し、記録媒体上に
点を印刷する。選択されたインク粒子の粘度が下がり、温度が上昇する結果、イ
ンク粒子がフリーズする前に、繊維質の記録媒体の繊維とインク粒子との結合が
促進される。
図24は、インク粒子が選択されない場合の、1サイクル中のメニスカス位置
の動きである。この図は、88−128マイクロ秒間のインクメニスカス位置を
10マイクロ秒間隔で示す。これらの位置は、図25に示す160−200マイ
クロ秒間のインターバルのインク圧力波の同じ位相に対応する。メニスカスは、
圧力の振動により約2ミクロン移動する。
図25は、インク粒子選択サイクル中のメニスカス位置の動きである。この図
は、160−200マイクロ秒間のインクメニスカス位置を10マイクロ秒間隔
で示す。これらの位置は、図24に示す88−128マイクロ秒間のインターバ
ルのインク圧力波の同じ位相に対応する。メニスカスは、加熱されたインクの粘
度が低下するので、圧力の振動により約10ミクロン移動する。
図26は、インク圧力波の周波数およびインク粒子選択および分離の周波数が
半分である場合の、シミュレーションに対する時間の関数としてのメニスカスの
極値の位置である。この装置の最大印刷速度は、図20−図25に結果を示す装
置の半分である。しかし、選択されなかったインク粒子と選択されたインク粒子
との間の位置の絶対的な違いがより大きいので、インク粒子分離プロセスに対す
る動作マージンが増大する。横軸は図20のものと類似しているが、時間軸は係
数2だけ拡大している。このグラフの縦軸の尺度は、図20のものとは違う。最
初の二つのサイクル(0−288マイクロ秒)は、選択されなかったインク粒子
であり、この場合、ヒータに電力は供給されない。この場合、温度は低く、粘度
は高い(100cP)。粘度が高いので、144マイクロ秒の周期を持つ圧力の
変化によるインクの動きは小さい(ピーク−ピーク値で4ミクロン程度)。圧力
波の第三のサイクル中、ヒータに電力が供給される。粘度が低下すると、メニス
カス位置が約15ミクロン移動する。このシミュレーションの場合には、インク
粒子分離手段はモデル化されない。それ故、選択されたインク粒子はノズル内に
戻る。この様子を、図26の392−432マイクロ秒間に示す。
図27は、インク粒子が選択されない場合の、1サイクル中のメニスカス位置
に動きである。この図は、176−256マイクロ秒間のインクメニスカス位置
を20マイクロ秒間隔で示す。これらの位置は、図28に示す320−400マ
イクロ秒間のインターバルのインク圧力波の同じ位相に対応する。メニスカスは
、圧力の振動により約4ミクロン移動する。
図28は、インク粒子選択サイクル中のメニスカス位置の動きである。この図
は、320−400マイクロ秒間のインクメニスカス位置を20マイクロ秒間隔
で示す。これらの位置は、図27に示す176−256マイクロ秒間のインター
バルのインク圧力波の同じ位相に対応する。メニスカスは、加熱されたインクの
粘度が低下するので、圧力の振動により約16ミクロン移動する。
図20−図28にシミュレーションの結果を示すノズルは、図1および図2に
示すノズルとは異なる設計のものである。印刷ヘッド用のノズルは種々様々に設
計することができる。ノズルに対する基本的な要件は、熱インクジェットノズル
の要件より簡単なので、ノズルに対して選択した実際の幾何学的形状は、主とし
て製造プロセス上に都合のいいように決定することができる。
可変インク粒子サイズ
二レベルプリンタではなく、コントーンプリンタとして動作することができる
ように、いくつかの機構を使用して、インク粒子のサイズを変えることができる
。インク粒子のサイズを変えることができる範囲は、印刷ヘッド、駆動回路、イ
ンク粒子分離手段 および使用するインクの正確な特性によって異なる。
各インク粒子毎にインク粒子のサイズを変調する手段としては、下記のもの等
がある。
1)ヒータパルスの立ち下がりを一定に維持しながら、その立ち上がりの時間を
変調する方法。
2)ヒータパルスの立ち上がりを一定に維持しながら、その立ち下がりの時間を
変調する方法。
3)ヒータパルスの幅を一定に維持しながら、その立ち上がりの時間を変調する
方法。
4)ヒータパルスの電圧を変調する方法。
本発明の種々な一般的および好適な実施形態を説明してきた。付録Aの表に、
詳細な好適な実施形態の特性を示す。当業者にとっては、本発明の範囲から逸脱
しないで、一般的および特定の実施形態を種々に修正できることは明らかであろ
う。
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フロントページの続き
(31)優先権主張番号 PN2323
(32)優先日 1995年4月12日
(33)優先権主張国 オーストラリア(AU)
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),AU,BR,CA,C
N,JP,KR,MX,US
【要約の続き】
ンデマンド機構は、低電力で作動し、変更したCMOS
プロセスを使用によるモノリシック多重ノズル印刷ヘッ
ドの製造を可能にする。この印刷ヘッドは、歩留まり、
装置の寿命および信頼性を改善するために、大規模な故
障許容を含むことができる。