JP2000290505A - ポリサルホン樹脂組成物および製造方法 - Google Patents

ポリサルホン樹脂組成物および製造方法

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JP2000290505A
JP2000290505A JP10022199A JP10022199A JP2000290505A JP 2000290505 A JP2000290505 A JP 2000290505A JP 10022199 A JP10022199 A JP 10022199A JP 10022199 A JP10022199 A JP 10022199A JP 2000290505 A JP2000290505 A JP 2000290505A
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JP
Japan
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resin composition
silane
polysulfone resin
group
clay composite
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JP10022199A
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English (en)
Inventor
Noriyuki Suzuki
紀之 鈴木
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Kanegafuchi Chemical Industry Co Ltd
Original Assignee
Kanegafuchi Chemical Industry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 表面平滑性や滞留熱安定性を損なわず異方性
や反りを抑え、かつ機械的特性が改良されたポリサルホ
ン樹脂組成物を提供すること。 【解決手段】 ポリサルホン樹脂、およびシラン粘土複
合体を含有するポリサルホン樹脂組成物であって、シラ
ン粘土複合体が、膨潤性ケイ酸塩に下記一般式(1): YnSiX4-n (1) (ただし、nは0〜3の整数であり、Yは、炭素数1〜
25の炭化水素基、及び炭素数1〜25の炭化水素基と
置換基から構成される有機官能基であり、Xは加水分解
性基および/または水酸基である。n個のY、4−n個
のXは、それぞれ同種でも異種でもよい。)で表される
シラン系化合物が導入される事により調製され、そし
て、ポリサルホン樹脂組成物中における上記シラン粘土
複合体の平均層厚が500Å以下である、ポリサルホン
樹脂組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリサルホン樹脂
およびシラン粘土複合体を含有するポリサルホン樹脂組
成物および該樹脂組成物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリサルホン樹脂は優れた耐熱性、透明
性、耐衝撃性、寸法精度および耐クリープ特性を利用し
て、電気・電子、精密機械、食品・医療など、種々の分
野で広く用いられている。ポリサルホン樹脂にガラス繊
維のような繊維状強化剤を配合することにより、成形収
縮率がより小さくなり、機械的強度や弾性率が向上する
ために主に電子部品としてより好適な材料となり、リレ
ー、スイッチ、コネクター、ソケット、コイルボビンな
どに応用されている。ガラス繊維にはエポキシ樹脂など
の収束剤で表面処理を施し、ガラス繊維自体の収束性を
付与して樹脂との配合性を容易にしたり樹脂との親和性
を向上させているが、その様な場合、ポリサルホン樹脂
の溶融熱安定性が損なわれる場合がある。すなわち、ポ
リサルホン樹脂の溶融粘度が比較的高い理由から、特に
小物で複雑な形状を有する部品や薄肉部を有する部品な
どを射出成形する場合、高い成形温度・射出圧力・射出
速度を必要とする為、射出時あるいシリンダー内での溶
融滞留時の熱が原因で分解ガスを発生したり、架橋反応
を起こして増粘・ゲル化に至る場合もあった。また、ガ
ラス繊維が射出成形時に配向するために異方性が生じて
寸法精度が低下したり、ガラス繊維の浮きによる成形品
の表面平滑性が損なわれるという別の問題も発生してい
た。
【0003】機械的強度や弾性率を向上させるための別
の手段としては無機フィラーが利用されてきた。無機フ
ィラーには収束剤は必要ないので溶融熱安定性を損なう
こともなく、また射出成形時に配向することもないので
異方性が生じる心配もない。しかしながら、無機フィラ
ーの配合では、機械強度や弾性率の改善効果は十分なも
のではなかった。こうした無機フィラーの配合における
欠点は、一般に、該無機フィラーの分散粒子のサイズが
大きすぎることに起因するものと考えられている。
【0004】無機フィラーの微分散化技術としては、
(1)シラン系化合物などの有機金属化合物等が結合
し、平均層厚が約50Å以下かつ最大層厚が約100Å
以下である層状粒子等と樹脂マトリックスを含有する樹
脂複合材料に関する発明(国際公開第95/06090
パンフレット(1995)号、米国特許5514734
号、国際公開第93/04118パンフレット(199
3)、国際公開第93/11190パンフレット(19
93))、(2)熱可塑性樹脂中に平均層厚が25〜1
000Åでアスペクト比が20〜300である層状ケイ
酸塩が分散された樹脂組成物に関する発明(特開平9−
124836号公報)が開示されている。
【0005】しかし、上記(1)の発明では、カプロラ
クタムが共重合されたイソシアネートプロピルトリエト
キシシラン他が結合したモンモリロナイトおよびナイロ
ン6からなるナイロン6系複合材料の引張弾性率が単独
のナイロン6に比べて改善されてはいるが、決して充分
なものではない。また、ナイロン6系複合材料は開示さ
れているが、ナイロン6系での方法をポリサルホン樹脂
に直接適用することによって、層状粒子が微分散化した
ポリサルホン樹脂複合材料とする事は困難であった。
【0006】また、上記(2)の技術では、層状ケイ酸
塩として膨潤性雲母を用い、水で膨潤化した膨潤性雲母
またはキシレンで膨潤化したアルキルアンモニウム処理
膨潤性雲母をポリプロピレン樹脂等と2軸押出して得ら
れる樹脂組成物の技術が開示されている。しかしなが
ら、上記技術をポリサルホン樹脂に直接適用しても、層
状ケイ酸塩は部分的に微分散化されてはいても不完全で
かつ不均一であるため所望の物性を有するポリサルホン
樹脂組成物を得ることができない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】従って、滞留熱安定
性、寸法精度、表面平滑性を損なわずに、機械強度や弾
性率が十分に改善されたポリサルホン樹脂組成物を得る
技術は未だ提供されていないのが現状であり、本発明の
目的はこのような従来の問題を解決することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、鋭意検討
した結果、膨潤性ケイ酸塩の単位層同士を分離劈開し、
1つの膨潤性ケイ酸塩の凝集粒子を非常に多数の極微小
な薄板状の粒子に細分化して調製される薄板状のシラン
粘土複合体が、ポリサルホン樹脂中に均一に分散される
ことによって上記目的を達成することができることを見
出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】即ち本発明の第1は、ポリサルホン樹脂お
よびシラン粘土複合体を含有するポリサルホン樹脂組成
物であって、シラン粘土複合体が膨潤性ケイ酸塩に下記
一般式(1): YnSiX4-n (1) (ただし、nは0〜3の整数であり、Yは、炭素数1〜
25の炭化水素基、及び炭素数1〜25の炭化水素基と
置換基から構成される有機官能基であり、Xは加水分解
性基および/または水酸基である。n個のY、4−n個
のXは、それぞれ同種でも異種でもよい。)で表される
シラン系化合物が導入される事により調製され、かつ樹
脂組成物中のシラン粘土複合体の平均層厚が500Å以
下である、ポリサルホン樹脂組成物に関する。
【0010】好ましい実施態様としては、シラン粘土複
合体の最大層厚が2000Å以下である、前記記載のポ
リサルホン樹脂組成物に関する。
【0011】更に好ましい実施態様としては、樹脂組成
物の面積100μm2中に存在する、シラン粘土複合体
の単位比率当たりの粒子数であると定義される[N]値
が30以上である、前記記載のポリサルホン樹脂組成物
に関する。
【0012】更に好ましい実施態様としては、樹脂組成
物中のシラン粘土複合体の平均アスペクト比(層長さ/
層厚の比)が10〜300である、前記記載のポリサル
ホン樹脂組成物に関する。
【0013】本発明の第2は、ポリサルホン樹脂および
シラン粘土複合体を含有するポリサルホン樹脂組成物で
あって、シラン粘土複合体が膨潤性ケイ酸塩に下記一般
式(1): YnSiX4-n (1) (ただし、nは0〜3の整数であり、Yは、炭素数1〜
25の炭化水素基、及び炭素数1〜25の炭化水素基と
置換基から構成される有機官能基であり、Xは加水分解
性基および/または水酸基である。n個のY、4−n個
のXは、それぞれ同種でも異種でもよい。)で表される
シラン系化合物が導入される事により調製され、かつ樹
脂組成物中のシラン粘土複合体の平均アスペクト比(層
長さ/層厚の比)が10〜300であり、かつ樹脂組成
物の面積100μm2中に存在する、シラン粘土複合体
の単位比率当たりの粒子数であると定義される[N]値
が30以上であるポリサルホン樹脂組成物に関する。
【0014】本発明の第3は、(A)シラン粘土複合体
と分散媒を含む粘土分散体を調製する工程、(B)ポリ
サルホン樹脂の重合性モノマーと上記の粘土分散体とを
混合する工程、(C)重合性モノマーを重合する工程を
包含する、前記いずれか記載のポリサルホン樹脂組成物
の製造方法に関する。
【0015】好ましい実施態様としては、工程(A)で
得られる粘土分散体中のシラン粘土複合体の底面間隔
が、膨潤性ケイ酸塩の底面間隔の3倍以上であることを
特徴とする、前記記載のポリサルホン樹脂組成物の製造
方法に関する。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明で用いられるポリサルホン
樹脂は、アリーレン単位、エーテル結合およびスルホン
結合が必須の構成単位であって、アリーレン単位がエー
テル結合およびスルホン結合と共に無秩序に、または秩
序正しく位置するポリアリーレン化合物として定義され
る。代表的な例としては次の一般式(2)、(3)、
(4)のような繰り返し単位を有するものが挙げられる
が、これらに限定されるものではない。 一般式(2):
【0017】
【化1】 (式中、R1は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜
10のアルケニル基、フェニル基またはハロゲン原子を
表し、pは0〜4の整数である。m、nは平均の繰り返
し単位数を示し、mとnは0.1〜100の正数であ
る。各R1は互いに同一であっても異なっていても良
い。各pは互いに同一であっても異なっていても良
い。) 一般式(3):
【0018】
【化2】 (式中、R2は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜
10のアルケニル基、フェニル基またはハロゲン原子を
表し、pは0〜4の整数である。m、nは平均の繰り返
し単位数を示し、mとnは0.1〜100の正数であ
る。各R2は互いに同一であっても異なっていても良
い。各pは互いに同一であっても異なっていても良い。
また(3)の化合物はランダム共重合体を含む) 一般式(4):
【0019】
【化3】 (式中、R3は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜
10のアルケニル基、フェニル基またはハロゲン原子を
表し、pは0〜4の整数である。q、m、nは平均の繰
り返し単位数を示し、qは1〜3の整数、mとnは0.
1〜100の正数である。各R3は互いに同一であって
も異なっていても良い。各qは互いに同一であっても異
なっていても良い。この化合物はランダム共重合体を含
む。) 本発明で用いられるポリサルホン樹脂としては、上記一
般式(3)または(4)で表される繰り返し単位中の
(m/m+n)は0.8以上であることが好ましい。ま
た、一般式(4)の構造単位中のqは1であることが好
ましい。
【0020】従って本発明で用いられるポリサルホン樹
脂の具体例としては、次の式(5)〜(20):
【0021】
【化4】
【0022】
【化5】
【0023】
【化6】
【0024】
【化7】
【0025】
【化8】
【0026】
【化9】
【0027】
【化10】
【0028】
【化11】
【0029】
【化12】
【0030】
【化13】
【0031】
【化14】
【0032】
【化15】
【0033】
【化16】
【0034】
【化17】
【0035】
【化18】
【0036】
【化19】 のような構造式で表されるものが挙げられる。中でも式
(5)〜(10)の構造を有するモノが好ましい。上記
のポリサルホン樹脂は単独で、または組成あるいは成分
の異なるもの及び/または分子量の異なるものを2種以
上組み合わせて使用し得る。
【0037】本発明で用いられるシラン粘土複合体と
は、膨潤性ケイ酸塩に下記一般式(1): YnSiX4-n (1) (ただし、nは0〜3の整数であり、Yは、炭素数1〜
25の炭化水素基、及び炭素数1〜25の炭化水素基と
置換基から構成される有機官能基であり、Xは加水分解
性基および/または水酸基である。n個のY、4−n個
のXは、それぞれ同種でも異種でもよい。)で表される
シラン系化合物が導入されているものである。
【0038】上記の膨潤性ケイ酸塩は、主として酸化ケ
イ素の四面体シートと、主として金属水酸化物の八面体
シートから成り、その例としては、例えば、スメクタイ
ト族粘土および膨潤性雲母などが挙げられる。膨潤性ケ
イ酸塩としてスメクタイト族粘土および膨潤性雲母を使
用する場合には、本発明のポリサルホン樹脂組成物中に
おける膨潤性ケイ酸塩の分散性、入手の容易さ及び樹脂
組成物の物性改善の点から好ましい。
【0039】前記のスメクタイト族粘土は下記一般式
(21): X0.20.623410(OH)2・nH2O (21) (ただし、XはK、Na、1/2Ca、及び1/2Mg
から成る群より選ばれる1種以上であり、YはMg、F
e、Mn、Ni、Zn、Li、Al、及びCrから成る
群より選ばれる1種以上であり、ZはSi、及びAlか
ら成る群より選ばれる1種以上である。尚、H2Oは層
間イオンと結合している水分子を表すが、nは層間イオ
ンおよび相対湿度に応じて著しく変動する)で表され
る、天然または合成されたものである。該スメクタイト
族粘土の具体例としては、例えば、モンモリロナイト、
バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、鉄サポナ
イト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト及
びベントナイト等、またはこれらの置換体、誘導体、あ
るいはこれらの混合物が挙げられる。前記スメクタイト
族粘土の初期の凝集状態における底面間隔は約10〜1
7Åであり、凝集状態でのスメクタイト族粘土の平均粒
径はおおよそ1000Å〜1000000Åである。
【0040】また、前記の膨潤性雲母は下記一般式(2
2): X0.51.023(Z410)(F、OH)2 (22) (ただし、XはLi、Na、K、Rb、Ca、Ba、及
びSrから成る群より選ばれる1種以上であり、YはM
g、Fe、Ni、Mn、Al、及びLiから成る群より
選ばれる1種以上であり、ZはSi、Ge、Al、F
e、及びBから成る群より選ばれる1種以上である。)
で表される、天然または合成されたものである。これら
は、水、水と任意の割合で相溶する極性溶媒、及び水と
該極性溶媒の混合溶媒中で膨潤する性質を有する物であ
り、例えば、リチウム型テニオライト、ナトリウム型テ
ニオライト、リチウム型四ケイ素雲母、及びナトリウム
型四ケイ素雲母等、またはこれらの置換体、誘導体、あ
るいはこれらの混合物が挙げられる。前記膨潤性雲母の
初期の凝集状態における底面間隔はおおよそ10〜17
Åであり、凝集状態での膨潤性雲母の平均粒径は約10
00〜1000000Åである。
【0041】上記の膨潤性雲母の中にはバーミキュライ
ト類と似通った構造を有するものもあり、この様なバー
ミキュライト類相当品等も使用し得る。該バーミキュラ
イト類相当品には3八面体型と2八面体型があり、下記
一般式(23): (Mg,Fe,Al)23(Si4-xAlx)O10(OH)2・(M+,M2+ 1/2)x・nH2O (2 3) (ただし、MはNa及びMg等のアルカリまたはアルカ
リ土類金属の交換性陽イオン、x=0.6〜0.9、n=
3.5〜5である)で表されるものが挙げられる。前記
バーミキュライトの初期の凝集状態における底面間隔は
おおよそ10〜17Åであり、凝集状態でのバーミキュ
ライトの平均粒径は約1000〜5000000Åであ
る。
【0042】膨潤性ケイ酸塩は単独で用いても良く、2
種以上組み合わせて使用しても良い。これらの内では、
モンモリロナイト、ベントナイト、ヘクトライトおよび
層間にナトリウムイオンを有する膨潤性雲母が、本発明
のポリサルホン樹脂組成物中での分散性、入手の容易さ
及び樹脂組成物の物性改善効果の点から好ましい。
【0043】膨潤性ケイ酸塩の結晶構造は、c軸方向に
規則正しく積み重なった純粋度が高いものが望ましい
が、結晶周期が乱れ、複数種の結晶構造が混じり合っ
た、いわゆる混合層鉱物も使用され得る。
【0044】膨潤性ケイ酸塩に導入されるシラン系化合
物とは、通常一般に用いられる任意のものが使用され
得、下記一般式(1): YnSiX4-n (1) で表されるものである。一般式(1)中のnは0〜3の
整数であり、Yは、置換基を有していても良い炭素数1
〜25の炭化水素基である。炭素数1〜25の炭化水素
基が置換基を有する場合の置換基の例としては、例えば
エステル結合で結合している基、エーテル結合で結合し
ている基、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、末
端にカルボニル基を有する基、アミド基、メルカプト
基、スルホニル結合で結合している基、スルフィニル結
合で結合している基、ニトロ基、ニトロソ基、ニトリル
基、ハロゲン原子および水酸基などが挙げられる。これ
らの内の1種で置換されていても良く、2種以上で置換
されていても良い。Xは加水分解性基および(または)
水酸基であり、該加水分解性基の例としては、アルコキ
シ基、アルケニルオキシ基、ケトオキシム基、アシルオ
キシ基、アミノ基、アミノキシ基、アミド基、ハロゲン
原子よりなる群から選択される1種以上である。一般式
(1)中、nまたは4−nが2以上の場合、n個のYま
たは4−n個のXはそれぞれ同種でも異種でも良い。
【0045】本明細書において炭化水素基とは、直鎖ま
たは分岐鎖(すなわち側鎖を有する)の飽和または不飽
和の一価または多価の脂肪族炭化水素基、および芳香族
炭化水素基、脂環式炭化水素基を意味し、例えば、アル
キル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基、ナ
フチル基、シクロアルキル基等が挙げられる。本明細書
において、「アルキル基」という場合は、特に指示が無
い限り「アルキレン基」等の多価の炭化水素基を包含す
ることを意図する。同様にアルケニル基、アルキニル
基、フェニル基、ナフチル基、及びシクロアルキル基
は、それぞれアルケニレン基、アルキニレン基、フェニ
レン基、ナフチレン基、及びシクロアルキレン基等を包
含する。
【0046】上記一般式(1)において、Yが炭素数1
〜25の炭化水素基である場合の例としては、デシルト
リメトキシシランの様に直鎖長鎖アルキル基を有するも
の、メチルトリメトキシシランの様に低級アルキル基を
有するもの、2−ヘキセニルトリメトキシシランの様に
不飽和炭化水素基を有するもの、2−エチルヘキシルト
リメトキシシランの様に側鎖を有するアルキル基を有す
るもの、フェニルトリエトキシシランの様にフェニル基
を有するもの、3−β−ナフチルプロピルトリメトキシ
シランの様にナフチル基を有するもの、及びp−ビニル
ベンジルトリメトキシシランの様にアラルキル基を有す
るものが挙げられる。Yが炭素数1〜25の炭化水素基
の中でも特にビニル基を有する基である場合の例として
は、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラ
ン、及びビニルトリアセトキシシランが挙げられる。Y
がエステル基で結合している基で置換されている基を有
する基である場合の例としては、γ−メタクリロキシプ
ロピルトリメトキシシランが挙げられる。Yがエーテル
基で結合している基で置換されている基を有する基であ
る場合の例としては、γ−ポリオキシエチレンプロピル
トリメトキシシラン、及び2−エトキシエチルトリメト
キシシランが挙げられる。Yがエポキシ基で置換されて
いる基である場合の例としては、γ−グリシドキシプロ
ピルトリメトキシシランが挙げられる。Yがアミノ基で
置換されている基である場合の例としては、γ−アミノ
プロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチ
ル)アミノプロピルトリメトキシシラン、及びγ−アニ
リノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。Yが末
端にカルボニル基を有する基で置換されている基である
場合の例としては、γ−ユレイドプロピルトリエトキシ
シランが挙げられる。Yがメルカプト基で置換されてい
る基である場合の例としては、γ−メルカプトプロピル
トリメトキシシランが挙げられる。Yがハロゲン原子で
置換されている基である場合の例としては、γ−クロロ
プロピルトリエトキシシランが挙げられる。Yがスルホ
ニル基で結合している基で置換されている基を有する基
である場合の例としては、γ−フェニルスルホニルプロ
ピルトリメトキシシランが挙げられる。Yがスルフィニ
ル基で結合している基で置換されている基を有する基で
ある場合の例としては、γ−フェニルスルフィニルプロ
ピルトリメトキシシランが挙げられる。Yがニトロ基で
置換されている基である場合の例としては、γ−ニトロ
プロピルトリエトキシシランが挙げられる。Yがニトロ
ソ基で置換されている基である場合の例としては、γ−
ニトロソプロピルトリエトキシシランが挙げられる。Y
がニトリル基で置換されている基である場合の例として
は、γ−シアノエチルトリエトキシシランおよびγ−シ
アノプロピルトリエトキシシランが挙げられる。Yがカ
ルボキシル基で置換されている基である場合の例として
は、γ−(4−カルボキシフェニル)プロピルトリメト
キシシランが挙げられる。前記以外にYが水酸基を有す
る基であるシラン系化合物もまた使用し得る。その様な
例としては、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)アミ
ノ−3−プロピルトリエトキシシランが挙げられる。水
酸基はまたシラノール基(SiOH)の形であり得る。
【0047】上記のシラン系化合物の置換体、または誘
導体もまた使用し得る。これらのシラン系化合物は、単
独、又は2種以上組み合わせて使用され得る。
【0048】本発明で用いられるシラン粘土複合体の底
面間隔は、導入されたシラン系化合物の存在により、膨
潤性ケイ酸塩の初期の底面間隔に比べて拡大し得る。例
えば、分散媒中に分散されて底面間隔が拡大された膨潤
性ケイ酸塩は、シラン系化合物を導入しない場合、分散
媒を除去すると再び層同士が凝集した状態に戻るが、本
発明によれば、底面間隔を拡大した後にシラン系化合物
を導入することによって、分散媒を除去した後も、得ら
れるシラン粘土複合体は層同士が凝集することなく底面
間隔が拡大された状態で存在し得る。シラン粘土複合体
の底面間隔は膨潤性ケイ酸塩の初期の底面間隔に比べ
て、1.3倍以上、好ましくは1.5倍以上、更に好まし
くは1.7倍以上、特に好ましくは2倍以上拡大してい
る。このように、シラン系化合物が導入されることによ
り、および底面間隔が拡大されることにより、シラン粘
土複合体と樹脂との親和性を高めることができる。
【0049】ここで、膨潤性ケイ酸塩にシラン系化合物
が導入されている事は種々の方法で確認し得る。確認の
方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
【0050】まず、テトラヒドロフランやクロロホルム
などの有機溶剤を用いてシラン粘土複合体を洗浄する事
によって、単に吸着しているシラン系化合物を洗浄し除
去する。洗浄後のシラン粘土複合体を乳鉢などで粉体状
にしたのち充分に乾燥する。次いで、シラン粘土複合体
を粉末状の臭化カリウム(KBr)等のような窓材質と
所定の比率で充分に混合して加圧錠剤化し、フーリエ変
換(FT)−IRを用い、透過法等により、シラン系化
合物に由来する吸収帯を測定する。より正確に測定する
ことが所望される場合、あるいは導入されたシラン系化
合物量が少ない場合には、充分に乾燥した粉末状のシラ
ン粘土複合体をそのまま拡散反射法(DRIFT)で測
定することが望ましい。
【0051】また、シラン粘土複合体の底面間隔が膨潤
性ケイ酸塩よりも拡大している事は、種々の方法で確認
し得、確認の方法としては、例えば、以下の方法が挙げ
られる。
【0052】すなわち、上記と同様にして、吸着してい
るシラン系化合物を有機溶媒で洗浄してシラン粘土複合
体から除去し、乾燥した後に、小角X線回折法(SAX
S)などで確認し得る。この方法では、粉末状のシラン
粘土複合体の(001)面に由来するX線回折ピーク角
値をSAXSで測定し、Braggの式に当てはめて算
出することにより底面間隔を求め得る。同様に初期の膨
潤性ケイ酸塩の底面間隔を測定し、この両者を比較する
ことにより底面間隔の拡大を確認し得る。
【0053】前記のように、有機溶剤で洗浄した後に、
添加したシラン系化合物に由来する吸収帯がFT−IR
等で観測され、かつ底面間隔が原料の膨潤性ケイ酸塩よ
りも拡大していることをSAXS等で測定することによ
り、シラン粘土複合体が生成していることが判る。
【0054】本発明のポリサルホン樹脂組成物におい
て、ポリサルホン樹脂100重量部に対するシラン粘土
複合体の配合量が、代表的には0.1〜50重量部、好
ましくは0.2〜45重量部、より好ましくは0.3〜4
0重量部、更に好ましくは0.4〜35重量部、特に好
ましくは0.5〜30重量部となるように調製される。
シラン粘土複合体の配合量が0.1重量部未満であると
機械的特性、寸法精度の改善効果が不充分となる場合が
あり、50重量部を超えると表面平滑性が損なわれる傾
向がある。
【0055】また、シラン粘土複合体に由来するポリサ
ルホン樹脂組成物の灰分率が、代表的には0.1〜30
重量%、好ましくは0.2〜28重量%、より好ましく
は0.3〜25重量%、更に好ましくは0.4〜23重量
%、特に好ましくは0.5〜20重量%と成るように調
製される。灰分率が0.1重量%未満であると機械的特
性、寸法精度の改善効果が不充分となる場合があり、3
0重量%を超えると表面平滑性が損なわれる傾向があ
る。
【0056】本発明のポリサルホン樹脂組成物中で分散
しているシラン粘土複合体の構造は、配合前の膨潤性ケ
イ酸塩が有していたような、層が多数積層したμmサイ
ズの凝集構造とは全く異なる。すなわち、マトリックス
樹脂と親和性を有するシラン系化合物が導入され、かつ
初期の膨潤性ケイ酸塩に比べて底面間隔が拡大されたシ
ラン粘土複合体を用いることによって、層同士が劈開
し、互いに独立して細分化する。その結果、シラン粘土
複合体はポリサルホン樹脂組成物中で非常に細かく互い
に独立した薄板状で分散し、その数は、原料である膨潤
性ケイ酸塩に比べて著しく増大する。この様な薄板状の
シラン粘土複合体の分散状態は以下に述べるアスペクト
比(層長さ/層厚の比率)、分散粒子数、最大層厚及び
平均層厚で表現され得る。
【0057】まず、平均アスペクト比を、樹脂中に分散
したシラン粘土複合体の層長さ/層厚の比の数平均値で
あると定義すると、本発明のポリサルホン樹脂組成物中
のシラン粘土複合体の平均アスペクト比は10〜300
であり、好ましくは15〜300であり。更に好ましく
は20〜300である。シラン粘土複合体の平均アスペ
クト比が10未満であると、本発明のポリサルホン樹脂
組成物の機械的特性や寸法精度の改善効果が十分に得ら
れない場合がある。また、300より大きくても効果は
それ以上変わらないため、平均アスペクト比を300よ
り大きくする必要はない。
【0058】また、[N]値を、ポリサルホン樹脂組成
物の面積100μm2における、膨潤性ケイ酸塩の単位
重量比率当たりの分散粒子数であると定義すると、本発
明のポリサルホン樹脂組成物におけるシラン粘土複合体
の[N]値は、30以上であり、好ましくは45以上で
あり、より好ましくは60以上である。上限値は特にな
いが、[N]値が1000程度を越えると、それ以上効
果は変わらなくなるので、1000より大きくする必要
はない。[N]値は、例えば、次のようにして求められ
得る。すなわち、ポリサルホン樹脂組成物を約50μm
〜100μm厚の超薄切片に切り出し、該切片をTEM
等で撮影した像上で、面積が100μm 2の任意の領域
に存在するシラン粘土複合体の粒子数を、用いた膨潤性
ケイ酸塩の重量比率で除すことによって求められ得る。
あるいは、TEM像上で、100個以上の粒子が存在す
る任意の領域(面積は測定しておく)を選んで該領域に
存在する粒子数を、用いた膨潤性ケイ酸塩の重量比率で
除し、面積100μm2に換算した値を[N]値として
もよい。従って、[N]値はポリサルホン樹脂組成物の
TEM写真等を用いることにより定量化できる。
【0059】また、平均層厚を、薄板状で分散したシラ
ン粘土複合体の層厚みの数平均値であると定義すると、
本発明のポリサルホン樹脂組成物中のシラン粘土複合体
の平均層厚の上限値は500Å以下であり、好ましくは
450Å以下であり、より好ましくは400Å以下であ
る。平均層厚が500Åより大きいと、本発明のポリサ
ルホン樹脂組成物の機械的特性や寸法精度の改良効果が
十分に得られない場合がある。平均層厚の下限値は特に
限定されないが、好ましくは50Åより大きく、より好
ましくは60Å以上であり、更に好ましくは70Å以上
である。また、最大層厚を、本発明のポリサルホン樹脂
組成物中に薄板状に分散したシラン粘土複合体の層厚み
の最大値であると定義すると、シラン粘土複合体の最大
層厚の上限値は、2000Å以下であり、好ましくは1
800Å以下であり、より好ましくは1500Å以下で
ある。最大層厚が2000Åより大きいと、本発明のポ
リサルホン樹脂組成物の機械的特性、寸法精度、表面平
滑性のバランスが損なわれる場合がある。シラン粘土複
合体の最大層厚の下限値は特に限定されないが、好まし
くは100Åより大きく、より好ましくは150Å以上
であり、更に好ましくは200Å以上である。
【0060】層厚および層長さは、本発明のポリサルホ
ン樹脂組成物を加熱溶融した後に、熱プレス成形あるい
は延伸成形して得られるフィルム、および溶融樹脂を射
出成形して得られる薄肉の成形品等を、顕微鏡等を用い
て撮影される像から求めることができる。
【0061】すなわち、いま仮に、X−Y面上に上記の
方法で調製したフィルムの、あるいは肉厚が約0.5〜
2mm程度の薄い平板状の射出成形した試験片を置いた
と仮定する。上記のフィルムあるいは試験片をX−Z面
あるいはY−Z面と平行な面で約50μm〜100μm
厚の超薄切片を切り出し、該切片を透過型電子顕微鏡な
どを用い、約4〜10万倍以上の高倍率で観察して求め
られ得る。測定は、上記の方法で得られた透過型電子顕
微鏡の象上に置いて、100個以上のシラン粘土複合体
を含む任意の領域を選択し、画像処理装置などで画像化
し、計算機処理する事等により定量化できる。あるい
は、定規などを用いて計測しても求めることもできる。
【0062】本発明のポリサルホン樹脂組成物の製造方
法には特に制限はないが、例えば、(A)シラン粘土複
合体と分散媒を含む粘土分散体を調製する工程、(B)
ポリサルホン樹脂の重合性モノマーと上記の粘土分散体
とを混合する工程、(C)重合性モノマーを重合する工
程、を包含する方法が好ましい。
【0063】まず、工程(A)を詳細に述べる。工程
(A)の中で、シラン粘土複合体は、例えば、膨潤性ケ
イ酸塩を分散媒中で底面間隔を拡大させた後にシラン系
化合物を添加する事により得られる。
【0064】上記の分散媒とは、水、水と相溶する極性
溶媒、及び水と該極性溶媒の混合溶媒を意味する。該極
性溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イ
ソプロパノール等のアルコール類、エチレングリコー
ル、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等
のグリコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケ
トン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエ
ーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジ
メチルアセトアミド等のアミド化合物、その他の溶媒と
してピリジン、ジメチルスルホキシドやN−メチルピロ
リドン等が挙げられる。又、炭酸ジメチルや炭酸ジエチ
ルような炭酸ジエステルも使用できる。これらの極性溶
媒は単独で用いても良く2種類以上組み合わせて用いて
も良い。
【0065】膨潤性ケイ酸塩を分散媒中で底面間隔を拡
大させることは、該膨潤性ケイ酸塩を該分散媒中で充分
に撹拌して分散させる事によりなし得る。拡大後の底面
間隔は初期の膨潤性ケイ酸塩の底面間隔に比べて、好ま
しくは3倍以上であり、より好ましくは4倍以上であ
り、特に好ましくは5倍以上である。上限値は特にな
い。ただし、底面間隔が約10倍以上に拡大すると、底
面間隔の測定が困難になるが、この場合、膨潤性ケイ酸
塩は実質的に単位層で存在する。
【0066】ここで、本明細書において、膨潤性ケイ酸
塩の初期の底面間隔とは、分散媒に添加する前の、単位
層が互いに積層し凝集状態である粒子状の膨潤性ケイ酸
塩の底面間隔である事を意図する。
【0067】底面間隔は小角X線回折法(SAXS)な
どで求めることが出来る。すなわち、分散媒と膨潤性ケ
イ酸塩を含む分散体におけるX線回折ピーク角値をSA
XSで測定し、該ピーク角値をBraggの式に当ては
めて算出することにより底面間隔を求め得る。
【0068】膨潤性ケイ酸塩の底面間隔を効率的に拡大
させるためには、数千rpm以上で撹拌するか、以下に
示す物理的な外力を加える方法が挙げられる。物理的な
外力は、一般に行われるフィラーの湿式微粉砕方法を用
いることによって加えられ得る。一般的なフィラーの湿
式微粉砕方法としては、例えば、硬質粒子を利用する方
法が挙げられる。この方法では、硬質粒子と膨潤性ケイ
酸塩と任意の溶媒とを混合して撹拌し、硬質粒子と膨潤
性ケイ酸塩との物理的な衝突によって、膨潤性ケイ酸塩
を分離させる。通常用いられる硬質粒子はフィラー粉砕
用ビーズであり、例えば、ガラスビーズまたはジルコニ
アビーズ等が挙げられる。これら粉砕用ビーズは、膨潤
性ケイ酸塩の硬度、または撹拌機の材質を考慮して選択
され、上述したガラスまたはジルコニアに限定されな
い。その粒径もまた、膨潤性ケイ酸塩のサイズなどを考
慮して決定されるために一概に数値で限定されるもので
はないが、直径0.1〜6.0mmの範囲にあるものが
好ましい。ここで用いる溶媒は特に限定されないが、例
えば、上記の分散媒が好ましい。
【0069】上記のように、膨潤性ケイ酸塩の底面間隔
を拡大して、凝集状態であった層を劈開してばらばらに
し、個々独立に存在させた後にシラン系化合物を添加し
て撹拌する。この様に、劈開された膨潤性ケイ酸塩の層
の表面に該シラン系化合物を導入する事によってシラン
粘土複合体が得られる。
【0070】シラン系化合物の導入は、分散媒を用いる
方法の場合は、底面間隔が拡大された膨潤性ケイ酸塩と
分散媒を含む分散体中にシラン系化合物を添加して撹拌
することにより行われ得る。攪拌の方法は特に限定され
ず、例えば、従来公知の湿式撹拌機を用いて行われる。
該湿式撹拌機としては、撹拌翼が高速回転して撹拌する
高速撹拌機、高剪断速度がかかっているローターとステ
ーター間の間隙で試料を湿式粉砕する湿式ミル類、硬質
媒体を利用した機械的湿式粉砕機類、ジェットノズルな
どで試料を高速度で衝突させる湿式衝突粉砕機類、超音
波を用いる湿式超音波粉砕機などを挙げることができ
る。シラン系化合物をより効率的に導入したい場合は、
撹拌の回転数を1000rpm以上、好ましくは150
0rpm以上、より好ましくは2000rpm以上にす
るか、あるいは500(1/s)以上、好ましくは10
00(1/s)以上、より好ましくは1500(1/
s)以上の剪断速度を加える。回転数の上限値は約25
000rpmであり、剪断速度の上限値は約50000
0(1/s)である。上限値よりも大きい値で撹拌を行
ったり、剪断を加えても効果はそれ以上変わらない傾向
があるため、上限値よりも大きい値で撹拌を行う必要は
ない。
【0071】物理的外力を用いる方法の場合、膨潤性ケ
イ酸塩に物理的外力を加えながら(例えば、湿式粉砕し
ながら)そこにシラン系化合物を加えることによって、
シラン系化合物を導入し得る。
【0072】あるいは、物理的外力によって底面間隔が
拡大された膨潤性ケイ酸塩を分散媒中に加え、上記の分
散媒を用いる方法の場合と同様に、そこにシラン系化合
物を添加することによって、シラン系化合物を膨潤性ケ
イ酸塩に導入することもできる。
【0073】膨潤性ケイ酸へのシラン系化合物の導入
は、底面間隔が拡大した膨潤性ケイ酸塩の表面に存在す
る水酸基と、シラン系化合物の加水分解性基および(ま
たは)水酸基とが反応する事によって、膨潤性ケイ酸塩
にシラン系化合物が導入され得る。
【0074】膨潤性ケイ酸塩中に導入されたシラン系化
合物がさらに水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポ
キシ基、あるいはビニル基などの様な反応活性な官能基
を有している場合、この様な反応活性基と反応できる化
合物を更に添加して、この化合物をこの反応活性基と反
応させることも可能である。この様にして膨潤性ケイ酸
塩に導入されたシラン系化合物の官能基鎖の鎖長を長く
したり、極性を変えることができる。この場合、添加さ
れる化合物としては上記のシラン系化合物自体も用いら
れ得るが、それらに限定されることなく、目的に応じて
任意の化合物が用いられ得、例えば、エポキシ基含有化
合物、アミノ基含有化合物、カルボキシル基含有化合
物、酸無水物基含有化合物、及び水酸基含有化合物等が
挙げられる。
【0075】反応は室温で充分に進行するが、必要に応
じて加温しても良い。加温時の最高温度は用いるシラン
系化合物の分解温度未満であり、かつ分散媒の沸点未満
で有れば任意に設定されうる。
【0076】シラン系化合物の使用量は、粘土分散体に
おけるシラン粘土複合体の分散性、シラン粘土複合体と
樹脂との親和性、ポリサルホン樹脂組成物中でのシラン
粘土複合体の分散性が十分に高まるように調製し得る。
必要であるならば、異種の官能基を有する複数種のシラ
ン系化合物を併用し得る。従って、シラン系化合物の添
加量は一概に数値で限定されるものではないが、膨潤性
ケイ酸塩100重量部に対して、0.1から200重量
部であり、好ましくは0.2から180重量部であり、
より好ましくは0.3から160重量部であり、更に好
ましくは0.4から140重量部であり、特に好ましく
は0.5から120重量部である。シラン系化合物の量
が0.1重量部未満であると得られるシラン粘土複合体
の微分散化効果が充分で無くなる傾向がある。また、2
00重量部以上では効果が変わらないので、200重量
部より多く添加する必要はない。
【0077】粘土分散体の調製方法は特に限定されず、
例えば、シラン粘土複合体を調製した際に得られる、分
散媒とシラン粘土複合体を含む系をそのまま粘土分散体
として用いる方法(直接法と称す:この場合は、シラン
粘土複合体を調製する事が工程(A)となる)、また
は、シラン粘土複合体を調製した際に得られる、分散媒
とシラン粘土複合体を含む系に、他の所望の分散媒を添
加混合してから置換する事により、新たに加えた所望の
分散媒とシラン粘土複合体から成る系を粘土分散体とし
て用いる方法(置換法と称す)、あるいは、分散媒を乾
燥除去して得られるシラン粘土複合体と所望の分散媒を
充分に混合する方法(混合法と称す)等が挙げられる。
【0078】尚、混合を効率よく行うためには、撹拌の
回転数は500rpm以上、あるいは300(1/s)
以上の剪断速度を加える。回転数の上限値は25000
rpmであり、剪断速度の上限値は500000(1/
s)である。上限値よりも大きい値で撹拌を行っても効
果はそれ以上変わらない傾向があるため、上限値より大
きい値で撹拌を行う必要はない。
【0079】工程(A)で得られる粘土分散体に含まれ
るシラン粘土複合体は、膨潤性ケイ酸塩が有していたよ
うな初期の積層・凝集構造はほぼ完全に消失して薄板状
に細分化するか、あるいは層同士の間隔が拡大していわ
ゆる膨潤状態となる。膨潤状態を表す指標として底面間
隔が用いられ得る。粘土分散体中のシラン粘土複合体の
底面間隔は、シラン粘土複合体が細分化して薄板状に成
るためには、膨潤性ケイ酸塩の初期の底面間隔の3倍以
上が好ましく、4倍以上がより好ましく、5倍以上更に
好ましい。
【0080】次に、工程(B)、すなわち、上記の粘土
分散体およびポリサルホン樹脂の重合性モノマーとを混
合する工程を行う。ポリサルホン樹脂の重合性モノマー
とは、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニ
ル)プロパン(「ビスフェノールA」)、1,1−ビス
(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル
シクロヘキサン(「ビスフェノールTMC」)、ビス
(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、
2,2−ビス(4’−ヒドロキシ−3,5’−ジブロモ
フェニル)プロパン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシ
−3’,5’−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−
ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタ
ン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビス
(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エーテ
ル、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、及びビス
(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド等の下記一般式
(24):
【0081】
【化20】 (式中、−A−は、−O−、−S−、−SO−、−CO
−、炭素数1〜20のアルキレン基または炭素数6〜2
0のアルキリデン基、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10
よびR11はいずれも水素原子、ハロゲン原子または炭素
数1〜5の1価の炭化水素基であり、それらはそれぞれ
同一であっても異なっていても良い。)で表されるビス
フェノール化合物、メチルスルホン酸、クロロスルホン
酸、ジクロロスルホン、ビス(4−クロロ−3,5−ジ
メチルフェニル)スルフォン、4,4’−ジクロロジフ
ェニルスルホン、ジフェニルスルホン等の下記一般式
(25): R12−SO2−R13 (25) (式中、R12、R13は置換基を有していても良い炭素数
1〜15の炭化水素基、水酸基、ハロゲン原子であり、
それらはそれぞれ異なっていても良い。)で表されるス
ルホン化合物を意味する。
【0082】粘土分散体と重合性モノマーとの混合の方
法は特に限定されず、例えば、粘土分散体にポリサルホ
ンの重合性モノマーを直接混合する方法や、ジメチルス
ルホキサイド(DMSO)等の溶媒に重合性モノマーを
溶解させてから、粘土分散体と混合する方法、重合の途
中、溶融状態または溶液にした重合性モノマーに粘土分
散体を一括混合する方法や、連続・逐次的に添加・混合
する方法が挙げられる。連続的に添加する場合、粘土分
散体の添加速度は特に限定されないが重合性モノマー1
00重量部に対して、粘土分散体を0.01〜10.0重
量部/分、好ましくは0.03〜8.0重量部/分、より
好ましくは0.05〜6.0重量部/分で連続的にまたは
逐次的に添加する。
【0083】そして工程(C)、すなわち、重合性モノ
マーを重合する工程を行い得る。重合方法は特に限定さ
れず、通常一般に行われるポリサルホン樹脂の重合方法
によってなし得るが、溶液中での脱塩重縮合が好ましく
採用される。
【0084】脱塩重縮合では、例えば、水酸化ナトリウ
ム水溶液等のアルカリ水溶液に溶解したビスフェノール
A等のビスフェノール化合物と、DMSO等の非プロト
ン性極性溶媒に溶解した4,4’−ジクロロジフェニル
スルホン等のスルホン化合物とを、触媒の存在化に常温
で反応させるが、上記アルカリ水溶液および非プロトン
性極性溶媒の何れか一方または両方が、シラン粘土複合
体が分散している粘土分散体である。あるいは、アルカ
リ水溶液に溶解したビスフェノール化合物と非プロトン
性極性溶媒に溶解したスルホン化合物との反応の任意の
段階で、別に用意した粘土分散体を添加混合する方法も
好ましく行われ得る。
【0085】本発明のポリサルホン樹脂組成物は以下に
示す方法によっても製造され得る。
【0086】まず、DMSOなどのポリサルホン樹脂の
良溶媒と、予め調製したシラン粘土複合体を十分に混合
する。混合時の撹拌数等は上記の条件と同様であり、混
合後のシラン粘土複合体の底面間隔は、膨潤性ケイ酸塩
の初期の底面間隔の3倍以上が好ましく、4倍以上がよ
り好ましく、5倍以上更に好ましい。次いで、ポリサル
ホン樹脂を添加溶解させ、十分に混合した後に溶媒を除
去する事によって、ポリサルホン樹脂組成物が得られ
る。
【0087】本発明のポリサルホン樹脂組成物が、寸法
精度および表面平滑性を損なわずに、機械強度や弾性率
がが優れる理由は、ポリサルホン樹脂中にシラン粘土複
合体が、多数の微小な薄板状粒子となって分散し、その
分散状態の指標となるシラン粘土複合体の平均層厚、最
大層厚、分散粒子数および平均アスペクト比が前述した
範囲になっているためである。
【0088】シラン粘土複合体の分散状態は、上記のポ
リサルホン樹脂組成物の製造方法における工程(A)お
よび工程(B)から選ばれる1種以上の工程によって制
御され得る。
【0089】すなわち、例えば、工程(A)における直
接法では、膨潤性ケイ酸塩を分散させる際の撹拌力や剪
断力が一定であるならば、分散媒の種類、複数種の分散
媒を用いる場合はその混合比率および混合の順番に伴っ
て、膨潤性ケイ酸塩の膨潤・劈開の状態は変化する。例
えば、膨潤性ケイ酸塩としてモンモリロナイトを用いた
場合、分散媒が水のみでは、モンモリロナイトはほぼ単
位層に近い状態にまで膨潤・劈開するので、その状態で
アミノ基、メルカプト基またはニトリル基等の極性が高
い基を有するシラン系化合物を反応させれば、ほぼ単位
層厚のシラン粘土複合体が分散した分散体が調製され
る。一方、エタノール、テトラヒドロフラン(TH
F)、メチルエチルケトン(MEK)やピリジン、N,
N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチ
ルアセトアミド(DMAc)、N−メチルピロリドン
(NMP)等の極性溶媒と水との混合溶媒を分散媒とし
た場合や、該極性溶媒にモンモリロナイトを分散させ次
いで水を加える等した場合は、約数枚〜約百数十枚程度
の単位層が積層した状態に劈開、細分化する。その状態
でシラン系化合物を反応させれば、ほぼ数枚〜約百数十
枚分の厚みを有するシラン粘土複合体が分散した分散体
が調製される。それらの状態を保持するように、ポリサ
ルホン樹脂組成物の製造方法における工程(B)および
(C)を行う事によってシラン粘土複合体の分散状態を
制御し得る。
【0090】工程(A)における置換法(シラン粘土複
合体の調製時に用いた分散媒を他の所望の分散媒と置換
する方法)では、新たに加える分散媒の種類、複数種の
分散媒を用いる場合はその混合比率および混合の順番に
よって、粘土分散体中でのシラン粘土複合体の分散状態
は変化する。例えば、単位層状態のシラン粘土複合体を
含有する水マトリックスの分散体に、シラン系化合物の
官能基と親和性が低い極性溶媒を加えて水と置換する
と、単位層状態であったシラン粘土複合体は約数枚〜約
数十枚が凝集し、積層化し得る。それらの状態を保持す
るように、ポリサルホン樹脂組成物の製造方法における
工程(B)および(C)を行う事によってシラン粘土複
合体の分散状態を制御し得る。
【0091】また、工程(B)では、粘土分散体と混合
される重合性モノマーの種類や分子量等でシラン粘土複
合体の分散状態は変化する。それらの状態を保持するよ
うに、ポリサルホン樹脂組成物の製造方法における工程
(C)を行う事によってシラン粘土複合体の分散状態を
制御し得る。
【0092】本発明のポリサルホン樹脂組成物には、必
要に応じて、ポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共
重合体、アクリルゴム、アイオノマー、エチレン−プロ
ピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合
体、天然ゴム、塩素化ブチルゴム、α−オレフィンの単
独重合体、2種以上のα−オレフィンの共重合体(ラン
ダム、ブロック、グラフトなど、いずれの共重合体も含
み、これらの混合物であっても良い)、またはオレフィ
ン系エラストマー等の熱可塑性エラストマーなどの耐衝
撃性改良剤を添加することができる。これらは無水マレ
イン酸等の酸化合物、またはグリシジルメタクリレート
等のエポキシ化合物で変性されていても良い。また、機
械的特性、成形性などの特性を損なわない範囲で、他の
任意の樹脂、例えば、ポリエステル樹脂、ポリカーボネ
ート樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂、液晶ポリエ
ステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレン系樹脂、ゴ
ム質重合体強化スチレン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ
フェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹
脂、ポリアセタール樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイ
ミド、ポリエーテルイミド樹脂等の熱可塑性樹脂や、不
飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、及びフェノール
ノボラック樹脂等の熱硬化性樹脂の単独または2種以上
を組み合わせて使用し得る。
【0093】更に、本発明のポリサルホン樹脂組成物に
は、目的に応じて、顔料や染料、熱安定剤、酸化防止
剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、可塑剤、難燃剤、
及び帯電防止剤等の添加剤を添加することができる。本
発明のポリサルホン樹脂組成物は、射出成形や押出成
形、熱プレス成形で成形しても良く、ブロー成形にも使
用できる。そのような成形品は外観、機械的特性等に優
れる為、例えば、自動車部品、家庭用電気製品部品、精
密機械部品、家庭日用品、包装・容器資材、電気磁気基
材、その他一般工業用資材に好適に用いられる。
【0094】本発明のポリサルホン樹脂組成物中ではシ
ラン粘土複合体が非常に細かく、かつ薄い板状で均一分
散していることから、寸法安定性や表面平滑性を損なう
ことなく、機械的特性を改善することができる。
【0095】
【実施例】以下実施例により本発明を更に詳細に説明す
るが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるも
のではない。
【0096】実施例、及び比較例で使用する主要原料を
以下にまとめて示す。尚、特に断らない場合は、原料の
精製は行っていない。 (原料) ・4,4’−ジクロロジフェニルスルフォン:和光純薬
(株)の4,4’−ジクロロジフェニルスルフォン(和
光1級)(以降、DCDPSと称す)を用いた。 ・ビスフェノールA:和光純薬(株)の2,2’−ビス
(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン(和光1級)
(以降、ビスフェノールAと称す)を用いた。 ・ジメチルスルホキサイド:和光純薬(株)のジメチル
スルホキサイド(試薬特級)(以降、DMSOと称す)
を用いた。 ・膨潤性ケイ酸塩:クニミネ工業(株)のクニピアF
(以降、クニピアFと称す、底面間隔=13Å)、豊順
洋行(株)のベンゲルHVP(以降、ベンゲルHVPと
称す、底面間隔=13Å)を用いた。 ・γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシ
ラン:日本ユニカー(株)製、A−1120(以降、A
1120と称す) ・γ-アミノプロピルトリメトキシシラン:日本ユニカ
ー(株)のA−1110(以降、A1110と称す)を
用いた。 ・ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル:ナガ
セ化成(株)のポリエチレングリコールジグリシジルエ
ーテル(以降、PEGDGと称す)を用いた。 また、実施例および比較例における評価方法を以下にま
とめて示す。 (FT−IR)シラン粘土複合体1.0gをテトラヒド
ロフラン(THF)50mlに添加し、24時間撹拌し
て吸着しているシラン系化合物を洗浄・除去した後、遠
心分離して上澄みを分離した。この洗浄操作を3回繰り
返した。洗浄後、十分に乾燥したシラン粘土複合体約1
mgとKBr粉末約200mgとを乳鉢で充分に混合し
た後、卓上プレスを用いて測定用のKBrディスクを作
製した。次いで赤外分光器(島津製作所(株)、810
0M)を用いて透過法で測定した。検出器は液体窒素で
冷却したMCT検出器を用い、分解能は4cm−1、ス
キャン回数は100回とした。 (分散状態の測定)シラン粘土複合体に関しては、TE
Mを用いて以下のように行った。
【0097】厚み50〜100μmの超薄切片を用い
た。透過型電子顕微鏡(日本電子JEM−1200E
X)を用い、加速電圧80kVで倍率4万〜100万倍
でシラン粘土複合体の分散状態を観察撮影した。TEM
写真において、100個以上の分散粒子が存在する領域
を選択し、粒子数([N]値)、層厚および層長を、目
盛り付きの定規を用いた手計測または、必要に応じてイ
ンタークエスト社の画像解析装置PIASIIIを用いて
処理する事により測定した。平均アスペクト比は個々の
シラン粘土複合体の層長と層厚の比の数平均値とした。
[N]値の測定は以下のようにして行った。まず、TE
M像上で、選択した領域に存在するシラン粘土複合体の
粒子数を求める。これとは別に、シラン粘土複合体に由
来する樹脂組成物の灰分率を測定する。上記粒子数を灰
分率で除し、面積100μm2に換算した値を[N]値
とした。
【0098】平均層厚は個々のシラン粘土複合体の層厚
の数平均値、最大層厚は個々のシラン粘土複合体の層厚
の中で最大の値とした。
【0099】分散粒子が大きく、TEMでの観察が不適
当である場合は、光学顕微鏡(オリンパス光学(株)製
の光学顕微鏡BH−2)を用いて上記と同様の方法で
[N]値を求めた。ただし、必要に応じて、サンプルは
LINKAM製のホットステージTHM600を用いて
280〜320℃で溶融させ、溶融状態のままで分散粒
子の状態を測定した。
【0100】板状に分散しない分散粒子のアスペクト比
は、長径/短径の値とした。ここで、長径とは、顕微鏡
像等において、対象となる粒子の外接する長方形のうち
面積が最小となる長方形を仮定すれば、その長方形の長
辺を意図する。また、短径とは、上記最小となる長方形
の短辺を意図する。 (小角X線回折法(SAXS)による底面間隔の測定)
X線発生装置(理学電機(株)製、RU−200B)を
用い、ターゲットCuKα線、Niフィルター、電圧4
0kV、電流200mA、走査角2θ=0.2〜16.0
°、ステップ角=0.02°の測定条件で底面間隔を測
定した。
【0101】底面間隔は、小角X線回折ピーク角値をB
raggの式に代入して算出した。ただし、小角X線ピ
ーク角値の確認が困難である場合は、層が十分に劈開し
て結晶性が実質的に消失したかあるいは、ピーク角値が
おおよそ0.8°以下である為に確認が困難であるとみ
なし、底面間隔の評価結果としては>100Åとした。 (滞留熱安定性)東洋精機製作所のキャピログラフを用
い、径1mmφ、長さ10mmのオリフィスを使用し、
設定温度380℃、剪断速度1000(1/S)での見
かけの溶融粘度を測定した。 (曲げ特性)ポリサルホン樹脂組成物を乾燥(120
℃、5時間)した。型締圧75tの射出成形機(東芝機
械(株)製、IS−75E)を用い、樹脂温度320
℃、ゲージ圧約10MPa、射出速度約50%の条件で
射出成形して、寸法約10×100×6mmの試験片を
作製した。得られた試験片の曲げ強度および曲げ弾性率
を、ASTMD−790に従って測定した。 (寸法精度;異方性)上記と同様の条件で作製した、厚
さ約3mmのJIS1号ダンベル状試験片のMD方向と
TD方向の線膨張係数の比率で異方性を評価した。比率
が1に近いほど異方性が小さく、等方性である、すなわ
ち寸法精度が優れていることを表す。尚、線膨張係数は
以下のようにして測定した。
【0102】上記のダンベル状試験片の中心部分を約7
mm×7mmに切り取り、セイコー電子(株)社製のS
SC−5200およびTMA−120Cを用いて測定し
た。 (反り)ポリサルホン樹脂組成物を乾燥(120℃、5
時間)した後、型締圧75tの射出成形機(東芝機械
(株)製、IS−75E)を用い、金型温度80℃、樹
脂温度320℃、ゲージ圧約10MPa、射出速度約5
0%の条件で射出成形して、寸法約120×120×1
mmの平板状試験片を作製した。平面上に上記の平板状
試験片を置き、反りの程度をみた。 (表面平滑性)寸法精度の場合と同様の条件で作製し
た、厚さ約3mmのJIS1号ダンベル状試験片の中心
線平均粗さで評価した。
【0103】中心線表面粗さは、東京精密(株)製の表
面粗さ計;surfcom1500Aを用いて測定し
た。 (灰分率)シラン粘土複合体に由来する、ポリサルホン
樹脂組成物の灰分率は、JISK7052に準じて測定
した。 (実施例1) 工程(A) 3500gのイオン交換水に160gのモンモリロナイ
トを加え、日本精機(株)製の湿式ミルを用いて500
0rpm、5分間撹拌して混合した。その後、16gの
A1120を加えてから更に、表1に示す条件で撹拌す
る事によってシラン粘土複合体を調製した。(シラン粘
土複合体の確認は、固形分を分離、乾燥、粉砕したもの
をSAXSにより底面間隔を測定し、およびTHFで洗
浄したもののFT−IRによりシラン系化合物に由来す
る官能基の吸収帯を測定することにより行った。結果は
表1に示す。)。
【0104】
【表1】 次いで4000mLのDMSOを加えて十分に混合した
あと加熱して水を除去する事、すなわち置換法によっ
て、シラン粘土複合体およびDMSOを含む粘土分散体
を調製した。粘土分散体中のシラン粘土複合体の底面間
隔は、>100Åであった。
【0105】工程(B) 窒素雰囲気下、上記の粘土分散体に更に10000mL
のDMSOを加えて充分に混合した。次いで中に、15
50gのDCDPSを溶解・攪拌混合した。
【0106】工程(C) 窒素雰囲気下、14000gのイオン交換水中に、13
90gのビスフェノールA、44gのp−t−ブチルフ
ェノール、3120mLの5N水酸化ナトリウム水溶液
を投入して充分に混合し、ビスフェノールAのアルカリ
水溶液を調製した。
【0107】次いで、窒素雰囲気下、別に用意した反応
容器中にイオン交換水4000mlおよび重合触媒を仕
込んた。
【0108】前記の重合触媒を含む水溶液を500〜8
00rpmで撹拌しながら、予め調製しておいた上記ビ
スフェノールAのアルカリ水溶液、工程(B)で調製し
た粘土分散体とDCDPSを含有する混合物を、混合し
ながら、同時に約30分かけて連続的に添加し、そのま
ま3時間撹拌した。その後、中和、水洗脱塩、乾燥を行
うことによって、ポリサルホン樹脂組成物を得、評価し
た。結果は表2に示す。
【0109】
【表2】 (実施例2) 工程(A) A1120の量を8gとした以外は、実施例1と同様に
粘土分散体を調製した。結果は表1に示す。粘土分散体
中のシラン粘土複合体の底面間隔は、80Åであった。 工程(B)、(C) 実施例1と同様に行い、ポリサルホン樹脂組成物を得、
評価した。結果は表2に示す。 (実施例3) 工程(A) クニピアFの代わりに、180gのベンゲルHVPを用
い、A1120の量を18gにした以外は実施例1と同
様に粘土分散体を調製した。結果は表1に示す。粘土分
散体中のシラン粘土複合体の底面間隔は、>100Åで
あった。 工程(B)、(C) 実施例1と同様に行い、ポリサルホン樹脂組成物を得、
評価した。結果は表2に示す。 (実施例4) 工程(A) A1120の代わりに15gのA1110を用いてシラ
ン粘土複合体を調製し、次いで、15gのPEGDGを
添加して、更に30分間攪拌を続けた以外は実施例1と
同様に行った。結果は表1に示す。 工程(B)、(C) 実施例1と同様に行い、ポリサルホン樹脂組成物を得、
評価した。結果は表2に示す。 (実施例5)粘土分散体の代わりにDMSOのみを用い
た以外は、実施例1の工程(B)と(C)と同様の方法
によってポリサルホン樹脂を重合した。
【0110】上記ポリサルホン樹脂の重合とは別に、実
施例1と同様に粘土分散体を調製した。結果は表1に示
す。得られた粘土分散体に上記のポリサルホン樹脂25
00gを徐々に添加・混合後、乾燥することによってポ
リサルホン樹脂組成物を得、評価した。結果は表2に示
す。 (比較例1)実施例5と同様の方法でポリサルホン樹脂
を得、評価した。結果は表3に示す。
【0111】
【表3】 (比較例2)160gのクニピアFと14000mLの
DMSOを高速攪拌機で5000rpm、30分攪拌・
混合した。粘土分散体の代わりに上記混合物を用いた以
外は実施例1と同様にポリサルホン樹脂を重合し、評価
した。結果は表3に示す。 (比較例3)160gのクニピアF、16gのA112
0を1時間、室温で直接混合する事によってクニピアF
を処理した。シラン処理クニピアFの底面間隔は13Å
であった。シラン処理クニピアFと14000mLの塩
化メチレンを高速攪拌機で5000rpm、30分攪拌
・混合した。粘土分散体の代わりに上記混合物を用いた
以外は実施例1と同様にポリサルホン樹脂を重合し、評
価した。結果は表3に示す。 (比較例4)イオン交換水768gと256gのクニピ
アFとを超音波をかけて混合し、クニピアFを膨潤させ
た。
【0112】2軸押出機(日本製鋼(株)、TEX4
4)を用い、温度300〜320℃、回転数350rp
mの条件にて、実施例5と同様の方法で重合したポリサ
ルホン樹脂4000gと上記混合物を溶融混練し、揮発
する水分はベント口から減圧除去し、ポリサルホン樹脂
組成物を得、評価した。結果は表3に示す。 (比較例5)実施例5と同様の方法で重合したポリサル
ホン樹脂2500gおよびエポキシ樹脂(0.4重量
部)で表面処理されたガラス繊維440gを、2軸押出
機(日本製鋼(株)、LABOTEX30)を用い、温
度300〜320℃、回転数100rpmの条件にて溶
融混練し、ポリサルホン樹脂組成物を得、評価した。結
果は表3に示す。
【0113】
【発明の効果】ポリサルホン樹脂中で、膨潤性ケイ酸塩
の単位層同士を分離劈開して、1つの膨潤性ケイ酸塩の
凝集粒子を、非常に多数の極微小な薄板状の層に細分化
することによって、滞留熱安定性や表面平滑性、寸法安
定性を損なうことなく、機械的特性改善の効果が効率的
に得られるポリサルホン樹脂組成物が得られる。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリサルホン樹脂およびシラン粘土複合
    体を含有するポリサルホン樹脂組成物であって、シラン
    粘土複合体が膨潤性ケイ酸塩に下記一般式(1): YnSiX4-n (1) (ただし、nは0〜3の整数であり、Yは、炭素数1〜
    25の炭化水素基、及び炭素数1〜25の炭化水素基と
    置換基から構成される有機官能基であり、Xは加水分解
    性基および/または水酸基である。n個のY、4−n個
    のXは、それぞれ同種でも異種でもよい。)で表される
    シラン系化合物が導入される事により調製され、かつ樹
    脂組成物中のシラン粘土複合体の平均層厚が500Å以
    下である、ポリサルホン樹脂組成物。
  2. 【請求項2】 シラン粘土複合体の最大層厚が2000
    Å以下である、請求項1記載のポリサルホン樹脂組成
    物。
  3. 【請求項3】 樹脂組成物の面積100μm2中に存在
    する、シラン粘土複合体の単位比率当たりの粒子数であ
    ると定義される[N]値が30以上である、請求項1ま
    たは2記載のポリサルホン樹脂組成物。
  4. 【請求項4】 樹脂組成物中のシラン粘土複合体の平均
    アスペクト比(層長さ/層厚の比)が10〜300であ
    る、請求項1または2記載のポリサルホン樹脂組成物。
  5. 【請求項5】 ポリサルホン樹脂およびシラン粘土複合
    体を含有するポリサルホン樹脂組成物であって、シラン
    粘土複合体が膨潤性ケイ酸塩に下記一般式(1): YnSiX4-n (1) (ただし、nは0〜3の整数であり、Yは、炭素数1〜
    25の炭化水素基、及び炭素数1〜25の炭化水素基と
    置換基から構成される有機官能基であり、Xは加水分解
    性基および/または水酸基である。n個のY、4−n個
    のXは、それぞれ同種でも異種でもよい。)で表される
    シラン系化合物が導入される事により調製され、かつ樹
    脂組成物中のシラン粘土複合体の平均アスペクト比(層
    長さ/層厚の比)が10〜300であり、かつ樹脂組成
    物の面積100μm2中に存在する、シラン粘土複合体
    の単位比率当たりの粒子数であると定義される[N]値
    が30以上であるポリサルホン樹脂組成物。
  6. 【請求項6】 (A)シラン粘土複合体と分散媒を含む
    粘土分散体を調製する工程、(B)ポリサルホン樹脂の
    重合性モノマーと上記の粘土分散体とを混合する工程、
    (C)重合性モノマーを重合する工程を包含する、請求
    項1、2、3、4または5記載のポリサルホン樹脂組成
    物の製造方法。
  7. 【請求項7】 工程(A)で得られる粘土分散体中のシ
    ラン粘土複合体の底面間隔が、膨潤性ケイ酸塩の底面間
    隔の3倍以上であることを特徴とする、請求項6記載の
    ポリサルホン樹脂組成物の製造方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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