JP2000336193A - 熱可塑性樹脂シートの製造方法 - Google Patents

熱可塑性樹脂シートの製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高品質な熱可塑性樹脂シートを生産性良く製
造する。 【解決手段】 熱可塑性樹脂シート上に設置した電極に
電圧を印加することにより該シートを回転体に密着させ
る熱可塑性樹脂シートの製造方法において、前記電極
に、繰り返し周波数fが200Hz〜30kHzの範囲
にあるパルス波形電圧を印加することを特徴とする熱可
塑性樹脂シートの製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱可塑性樹脂シー
トの製造方法に関し、特に生産性、すなわち高速キャス
ト性に優れ、得られるシートの品質にも優れた熱可塑性
樹脂シートの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の熱可塑性樹脂シートの製造方法で
は、例えば特公昭37−6142号公報に示されるよう
に、口金から溶融押し出ししたシートを該樹脂のガラス
転移温度未満に保たれた移動冷却体上に直流高電圧を印
加しながら密着させて急冷し、表面が平滑な非晶質のキ
ャストシートを得、さらに必要に応じて引き続き一軸延
伸または二軸延伸する方法が採られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この様
な方法では、次のような欠点が生じることがある。すな
わち、溶融した熱可塑性樹脂シートを冷却ドラムに密着
急冷して、結晶性の低い、透明で表面平滑なシートを得
る最高速度は、シートと冷却媒体との静電密着力の限界
から空気の噛み込みを防止出来ないために、40〜60
m/分程度より速くすることが出来ず、生産性の悪いも
のとならざるを得なかった。シートと回転冷却体との密
着力を高めるためにはより多くの電荷をシートに与える
ことが必要であるが、このために印加電圧を高めれば電
極とシート間での放電が発生するので、密着力を高める
ことが困難である。またこのような放電は、回転冷却体
にキズを付けるおそれがあるため、シート表面に欠点が
発生する原因にもなる。
【0004】一方、冷却固化したシートを延伸する場
合、通常、シートを加熱したロールに接触させながら加
熱し、周速度の異なるロール間で延伸を行っている。延
伸時にはシートに張力がかかるため、ニップロールなど
でシートを延伸ロールに押さえつけているが、シートの
ロール上での滑りを完全に防止することが難しく、滑り
によるキズがシートに発生するなどの問題があった。
【0005】本発明の課題は、上記従来技術の欠点を解
消し、生産性・品質ともに優れた熱可塑性樹脂シートを
得ることのできる製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上述した問
題に鑑み、鋭意検討した結果、熱可塑性樹脂シートへパ
ルス波形電圧を印加しながら回転冷却体またはロールに
密着させることによって前記問題が解決できることを見
出し、本発明に至った。
【0007】すなわち、本発明に係る熱可塑性樹脂シー
トの製造方法は、熱可塑性樹脂シート上に設置した電極
に電圧を印加することにより該シートを回転体に密着さ
せる熱可塑性樹脂シートの製造方法において、前記電極
に、繰り返し周波数fが200Hz〜30kHzの範囲
にあるパルス波形電圧を印加することを特徴とする方法
からなる。
【0008】この方法では、たとえば、熱可塑性樹脂を
溶融後、口金から溶融シートとして吐出し、該溶融シー
ト上に設置した電極に前記パルス波形電圧を印加しなが
ら該溶融シートを回転冷却体上に密着冷却固化させる。
熱可塑性樹脂の溶融比抵抗としては、108Ω・cm〜
1012Ω・cmの範囲にあることが好ましい。
【0009】上記方法では、たとえば、熱可塑性樹脂シ
ート上に設置した電極にパルス波形電圧を印加しながら
該シートをロールに密着させ、該シートを冷却または加
熱または搬送または延伸する。
【0010】このような熱可塑性樹脂シートの製造方法
においては、印加されるパルス波形電圧におけるパルス
の半値幅が0.1〜10マイクロ秒の範囲にあることが
好ましい。また、パルスの立ち上がり時間は0.05〜
5マイクロ秒の範囲にあることが好ましい。
【0011】印加するパルス波形電圧は正電圧とするこ
ともでき、パルスが孤立した1周期の正弦波である態様
をすることもできる。
【0012】パルス波形のピーク電圧は1kV〜20k
Vの範囲にあることが好ましい。また、パルス波形電圧
に1kV〜20kVの直流電圧を重畳させることで、よ
り溶融シートと冷却体との密着力が向上する。
【0013】電極の温度としては、100℃以上とする
ことが好ましい。電極としては、ワイヤー状電極、テー
プ状電極およびロール状電極のいずれかを用いることが
できる。
【0014】このような本発明に係る熱可塑性樹脂シー
トの製造方法は、熱可塑性樹脂がポリエステル組成物で
ある場合に好適である。また、本発明に係る熱可塑性樹
脂シートの製造方法は、熱可塑性樹脂シートの製造にお
ける各種の工程に適用できるが、本発明に係る方法を用
いた後に、熱可塑性樹脂シートを延伸および/または熱
処理に供することもできる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下に、本発明を、望ましい実施
の形態とともに詳細に説明する。本発明は、熱可塑性樹
脂シートにパルス波形電圧を印加することで回転体に密
着させる熱可塑性樹脂シートの製造方法であり、さらに
は溶融した熱可塑性樹脂シートへパルス波形電圧を印加
しながらキャスティングする熱可塑性樹脂シートの製造
方法と熱可塑性樹脂シートへパルス波形電圧を印加しな
がらロール上で冷却、加熱、搬送、延伸等を行う熱可塑
性樹脂シートの製造方法を含む。いずれの場合も、パル
ス波形電圧を印加することで、熱可塑性樹脂シートが回
転体に従来よりも強く密着することから、溶融シートに
適用すれば高速キャストが可能になり、固化したシート
に適用すればロール上での滑りが抑制されてシート表面
キズが防止できる。
【0016】本発明の方法によれば、電極からの放電を
招くことなく多くの電荷を熱可塑性樹脂シートへ注入す
ることができる。この理由は、従来の直流電圧印加に比
較し、パルス波形電圧を印加すれば電極での空気のイオ
ン化が起こりやすいためである。電極で多量に発生した
イオンは、電極から発生する電気力線に沿って熱可塑性
樹脂シートへ到達し熱可塑性樹脂シートを帯電させる。
つまり、従来の直流電圧印加に比較して熱可塑性樹脂シ
ートの帯電量が多くなるのである。熱可塑性樹脂シート
と回転体との密着力は熱可塑性樹脂シートの帯電量に対
応するため、熱可塑性樹脂シートの密着力が高まる。こ
のため、溶融熱可塑性樹脂シートを回転冷却体上で高速
キャストすることが可能となり、さらに熱可塑性樹脂シ
ートをロールを用いて処理や加工する場合においては、
ロール上でシートが滑ることを防止できるのである。ま
た、本発明の方法は、電極からの放電が起こりにくいた
め、回転体を放電によって傷付けることもなく、シート
の表面欠点が発生しにくいという特徴も持つ。
【0017】本発明において用いられるパルス波形電圧
は、直流電圧のように時間的に定常な電圧とは異なり、
時間的に変化する電圧のことである。さらには通常の正
弦波のような時間的に連続変化する波形ではなく、孤立
した波形と定常な出力の組み合わせからなる。
【0018】本発明において用いられるパルス波形電圧
は、繰り返し周波数fが200Hz〜30kHzの範囲
にあることが必要である。200Hz未満である場合、
発生する空気のイオン量が少なく、熱可塑性樹脂シート
の密着力が小さく、高速キャストやロール上での滑り防
止に不十分である。一方、繰り返し周波数が30kHz
を越える場合、電極からの放電が起こりやすく、キャス
トが不安定になったり、ロール上ではビビリが発生する
おそれがある。好ましい繰り返し周波数は500Hz〜
20kHzの範囲であり、さらに好ましくは1kHz〜
15kHzの範囲である。
【0019】本発明におけるパルス波形としては、パル
ス幅が短いほど好ましく、その半値幅が0.1〜10マ
イクロ秒の範囲にあることが好ましい。半値幅とは、パ
ルスがピーク値の50%以上出力されている持続時間の
ことであり、ピーク値とは時間的に変化する出力から時
間的に定常な出力を差し引いた値のことである。さら
に、パルス立ち上がり時間としては、0.05〜5マイ
クロ秒の範囲にあることが好ましい。パルス立ち上がり
時間とは、パルス出力が10%から90%まで上昇する
までにかかる時間のことであり、パルス出力とは時間的
に変化する出力から時間的に定常な出力を差し引いた値
のことである。このように鋭いパルス波形が好ましい。
【0020】次にパルス波形の形状であるが、正電圧ま
たは負電圧の凸形状のみならず、孤立した1周期の正弦
波も好ましく用いられる。凸形状である場合には正電圧
出力が好ましい。
【0021】パルス波形のピーク出力は、正電圧、負電
圧いずれの場合も1kV〜20kVの範囲が好ましく、
さらにはパルス波形電圧に1kV〜20kVの直流電圧
を重畳することが好ましい。例えば、正弦波ピーク出力
に直流正電圧を重畳すれば正電圧ピークが負電圧ピーク
よりも大きくなる。
【0022】本発明で用いるパルス波形電圧は、パルス
発信回路と高圧トランスを組み合わせた高周波発生装置
によって得ることができ、その出力を熱可塑性樹脂シー
ト上に設置した電極へ印加すればよい。この時、回転体
はアース(接地)しておけばよく、熱可塑性樹脂シート
に流れる電流値を制限するために、アースと回転体間に
電気抵抗を挿入することもできる。
【0023】本発明では、熱可塑性樹脂シート上に設置
した電極へ高電圧を印加するが、このための電極として
はワイヤー状電極やテープ状電極、またはロール状電極
を好ましく用いることができる。ワイヤー状電極および
テープ状電極の場合には、これらの電極を熱可塑性樹脂
シートから1mm〜50mm離れた位置にシート幅方向
に張ればよい。ロール状電極の場合には、直接熱可塑性
樹脂シートに接触させて印加することができる。
【0024】本発明ではさらに、熱可塑性樹脂シートに
含有されるオリゴマーなどの揮発成分が電極に析出しな
いように電極自身を100℃以上に加熱することが好ま
しい。電極の加熱は、パルスの半値幅が1マイクロ秒以
下であるパルス波形電圧を2kHz以上の繰り返し周波
数で印加したり、加熱ヒータによって加熱することによ
って実施することができる。
【0025】次に本発明で用いる回転体は、溶融シート
のキャスティングに使用する場合には形態としてドラム
が好ましく、その内部には冷却水などを循環させ、ドラ
ム表面温度を一定に保つことが好ましい。ドラム表面は
金属であることが好ましく、例えばハードクロムメッキ
を施した、表面粗度が0.5S以下の表面を有するもの
が好ましい。さらに固化したシートの冷却、加熱、搬
送、延伸に用いる回転体としては、ロールを用い、必要
に応じて冷却、加熱機構を設ける。ロール表面は金属で
あることが好ましく、例えばハードクロムメッキを施し
た、表面粗度が0.5S以下の表面を有するものが好ま
しい。
【0026】本発明の方法によって得られたシートに
は、必要に応じてさらに延伸および/または熱処理を施
すことができる。延伸は縦一軸延伸、横一軸延伸、逐次
二軸延伸、同時二軸延伸など、各種方法によって行うこ
とができ、通常は二軸延伸することによって機械的バラ
ンスのとれたシートを得ることができる。延伸は周速度
の異なるロール間で行う方法や、クリップによってシー
トを把持し、該クリップ間隔を変更するテンター方式で
行うことができる。延伸倍率は特に限定されないが、一
方向へ2〜8倍延伸することが好ましく、さらには3〜
6倍程度が好ましい。この延伸時に本発明の方法を用い
れば、シートのロール上での滑りキズを抑制できる。な
お、延伸はガラス転移温度Tg以上の温度で行えばよ
い。熱処理は延伸後、必要に応じて所定の温度で行えば
よく、必要なシート特性によって適宜条件を設定すれば
よい。
【0027】本発明に係る製造方法は、各種の熱可塑性
樹脂シート製造に好ましく用いることが出来る。本発明
における熱可塑性樹脂とは、加熱によって流動性を示す
樹脂であり、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィ
ン、ポリフェニレンスルフィド、ビニルポリマー、およ
びそれらの混合体や変性体などから選ばれた樹脂が代表
的であり、本発明の場合、ポリエステル樹脂、ポリアミ
ド樹脂などが好ましく、特にポリエステル樹脂が好まし
い。
【0028】ポリエステルとは、分子主鎖中にエステル
結合を有する高分子化合物であり、例えばポリエチレン
テレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエ
チレンナフタレートおよびこれらの共重合体を挙げるこ
とができ、中でもポリエチレンテレフタレートとポリエ
チレンナフタレートおよびこれらの共重合体が好まし
く、特にポリエチレンテレフタレートおよびその共重合
体が好ましい。これらの高分子化合物の繰替し単位は8
0以上、好ましくは120以上有るのがよい。固有粘度
としては、オルトクロルフェノール(OCP)中での測
定値として0.4(dl/g)以上、好ましくは0.5
5(dl/g)以上であるのがよい。もちろんこれらの
ポリエステル樹脂には各種の添加剤、例えば滑材、安定
剤、酸化防止剤、粘度調整剤、帯電防止剤、着色剤、顔
料、液晶ポリエステルなどの樹脂を併用することができ
る。
【0029】また、ポリアミド樹脂とは、主鎖中にアミ
ド結合を有する高分子化合物であり、代表的な物として
は、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイ
ロン12、ナイロン11、ナイロン7、ポリメタ/パラ
キシリレンアジパミド、ポリヘキサメチレンテレフタラ
ミド/イソフタラミド、およびそれらの関連共重合体、
混合体などから選ばれたポリアミド化合物である。さら
にポリフェニレンスルフィド樹脂としては、分岐構造を
実質的に含まない直鎖状の化合物が良い。
【0030】本発明の方法によってキャスティングを行
う場合、熱可塑性樹脂の溶融比抵抗は108Ω・cm〜
1012Ω・cmの範囲が好ましい。
【0031】本発明の熱可塑性樹脂シートの製造方法に
よれば、熱可塑性樹脂シートを高速キャストによって生
産性良く製造することができ、さらにシートのロール加
工時に発生する滑りキズが抑制できるために品質の高い
シートが製造できる。
【0032】次に、本発明における熱可塑性樹脂シート
の製造方法をポリエチレンテレフタレートシートの製造
を例としてより具体的に示す。原料としてポリエチレン
テレフタレート樹脂または必要に応じて他の化合物を添
加ブレンドした原料、例えば、液晶ポリマーや他のポリ
エステル樹脂、さらに酸化珪素、酸化マグネシウム、炭
酸カルシウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、架橋ポ
リエステル、架橋ポリスチレン、マイカ、タルク、カオ
リンなどの無機化合物、エチレンビスステアリルアミ
ド、イオン性高分子化合物アイオノマー等の有機化合物
等を添加した原料、一旦溶融させた原料、さらには本発
明のシートの回収原料などを混合した原料などを準備
し、これを乾燥・脱水した後、一軸押出機、二軸押出
機、ベント押出機、タンデム押出機などの溶融押出機に
供給し、分子量、例えば固有粘度[η]を極力低下させ
ないように窒素気流下、あるいは真空下で溶融押出す
る。もちろん、溶融温度は該ポリエステル樹脂の融点T
m以上であることが普通であるが、一旦、該樹脂の融点
Tm以上で溶融させた後に該融点Tm以下、該溶融結晶
化温度Tmc以上に冷却する、いわゆる過冷却状態で押
出を行うこともできる。このような過冷却状態での押出
は、該樹脂の熱分解・ゲル化を減少させる効果があるば
かりか、低分子量オリゴマーの生成も少なくなるため
に、ドラム汚れも少なくなりキャストしやすくなるとい
う効果もある。なお、原料中の異物を除去するために、
溶融樹脂を適宜のフィルター、例えば、焼結金属、多孔
性セラミック、サンド、金網等で濾過しながら押し出す
ことが好ましい。
【0033】口金とキャストドラムの位置関係は特に限
定はしないが、溶融樹脂シートが鉛直方向へ押し出され
るように調整することが安定したキャスティングには好
ましい。さらに、該口金から溶融シートを押し出すとき
のドラフト比(=口金リップ間隔/押出されたシート厚
み)は、好ましくは3以上、より好ましくは7〜20の
範囲とすることにより、厚みむらの小さい、平面性の良
いシートが得られやすい。
【0034】かくして溶融されたポリエステル樹脂を口
金から押し出すのであるが、溶融シートと冷却ドラムが
接する地点の上部付近に、たとえばワイヤー状電極をシ
ート幅方向に張っておき、この電極にパルス波形の電圧
を印加しながらキャスティングし、冷却体のドラムに密
着させて急冷してキャストする。
【0035】かくして得られたキャストシートは必要に
応じて延伸処理を行うが、例えば逐次二軸延伸法であれ
ば、キャストシートをまず予熱ロールによってガラス転
移温度Tg以上に加熱し、周速度の異なるロールによっ
て長手方向に2〜8倍延伸し、冷却ロールによってシー
トを冷却する。このとき予熱ロール、延伸ロール、冷却
ロール上でシートへパルス波形電圧を印加すればロール
上での滑りが抑制され、シート表面キズの発生が防止で
きる。次いで長手方向に延伸されたシートはテンター式
横延伸機に導かれ、シート両端をクリップによって把持
し熱風によってシートをTg以上に加熱する。両端クリ
ップの幅を拡げることでシートを横方向に2〜8倍延伸
し、さらに必要に応じて熱風によってシートを熱処理す
る。
【0036】〔物性の測定法〕つぎに本発明の説明に使
用した物性の測定法について以下に述べる。 (1)ポリエステル樹脂の固有粘度[η] 25゜Cで、o−クロルフェノールを溶媒として次式よ
り求めた。 [η]= lm[ηsp/c] 比粘度ηspは、相対粘度ηr から1を引いたものであ
る。cは、濃度である。単位はdl/gで表わす。
【0037】(2)キャスト密着性 キャストドラム上で空気などを噛み込んだり垂れ下がっ
たり、その他のキャスト欠点が何ら見えない場合を○、
何らかの欠点が肉眼で見える場合を×とした。
【0038】(3)キャスト表面性 キャストされたシート表面10m2以上に光を当て、そ
の反射光を肉眼で見てクレーターなどの表面凹凸の有無
で判定する。判定基準は次のとおりである。 ・全く表面に凹凸が見あたらない・・・○ ・表面に凹凸があるが、深さが0.1μm未満と浅く、
延伸によって消失する・・・△ ・全面に凹凸が見られる ・・・×
【0039】(4)キャスト剥離性 キャストドラムからの剥離のしやすさであり、判定基準
は次のとおりである。 ・キャストから自然に剥離するもの ・・・○ ・剥離できるが、剥離力が100g/cm以上の時・・・△ ・剥離が困難な場合 ・・・×
【0040】(5)シート表面キズ 延伸されたシートを幅20cmにおいて8等分し、2.
5cm角の大きさに切り出しアルミニウム蒸着した。蒸
着サンプルを光学顕微鏡で表面を観察し、キズの本数を
数えた。なお、キズの本数は8等分した8サンプルの平
均本数とした。判定基準は次のとおりである。 ・キズが0本であったもの ・・・○ ・キズが1本から10本あったもの・・・△ ・キズが11本以上あったもの ・・・×
【0041】(6)熱可塑性樹脂の溶融比抵抗 熱可塑性樹脂を真空乾燥後、内径50mmの試験管に入
れ、窒素雰囲気下で溶融後、溶融樹脂中に一対の銅製電
極を挿入し、280℃で直流電圧を印加し、次式によっ
て溶融比抵抗を求めた。 [ρ]=(V×S)/(I×D) Vは印可電圧、Sは電極面積、Iは電流値、Dは電極距
離である。
【0042】
【実施例】実施例により、本発明をさらに詳細に説明す
る。 実施例1 熱可塑性樹脂として、ポリエチレンテレフタレート(P
ET)(固有粘度〔η〕=0.63、280℃での溶融
比抵抗=3×109Ω・cm)を用い、これに添加剤と
して平均粒径0.8μmの合成炭酸カルシウム粒子を
0.1wt添加した。PET樹脂の含水率が20ppm以
下になるように乾燥した後、シリンダー径250mmの
公知の溶融押出機に供給して285℃で溶融した後に1
0μmカットの繊維燒結金属フィルターを通過させて濾
過した後、Tダイ口金に導入し、溶融体をシート状に押
出した。
【0043】溶融シートは直径1.5mの表面がハード
クロムメッキされた表面粗度0.1Sのキャスティング
ドラムへ押し出し、さらに溶融シートがドラム上に着地
する部分の上部に溶融シートから5mm離れた位置に直
径0.15mmのタングステンワイヤー電極を張り、該
ワイヤー電極にパルス繰り返し周波数2kHz、立ち上
がり時間が1マイクロ秒、半値幅1.5マイクロ秒、ピ
ーク値+8kVのパルス状電圧を印加しながら80m/
分の速度でキャスティングした。この時、ドラムには冷
却水を通水し、ドラム表面温度を25℃とし、タングス
テンワイヤーは、該ワイヤーを巻いたロールから新しい
ワイヤーを送り出しながら電圧を印加した。
【0044】このようにしてキャスティングした結果、
表1に示すように、キャスト密着性、キャスト剥離性が
良好であり、さらに得られたシートの表面性も良好であ
った。
【0045】かくして得られたキャストシートは厚み1
20μm、幅850mmであり、厚みむらの小さい、平
面性の優れた、表面欠点のない、非晶性のシートであっ
た。
【0046】続いて、該押出シートをロール式長手方向
多段延伸機で延伸温度93℃で3.5倍長手方向に延伸
した後Tg以下に冷却した。該ロール式延伸機の冷却ロ
ール上では別途導電性ロールを設置し、該ロールと冷却
ロールで一軸延伸シートを挟みながら導電性ロールには
パルス繰り返し周波数2kHz、立ち上がり時間が1マ
イクロ秒、半値幅1.5マイクロ秒、ピーク値+5kV
のパルス電圧を印加した。
【0047】ロール延伸終了後、続いて該長手方向延伸
シートの両端をクリップで把持しながらテンタに導き、
延伸温度98℃に加熱された熱風雰囲気中で幅方向に
3.5倍延伸後、220℃で定長熱固定、および150
℃で幅方向に3%のリラックス熱固定し、厚さ10μm
の二軸配向ポリエステルシート(ポリエステルフィル
ム)を、破れることなく安定な状態で約280m/分と
いう高速で巻取り製膜した。
【0048】かくして得られたシートは表面欠点が全く
無い平面性の優れたシートであった。結果を表1に示
す。
【0049】比較例1 タングステンワイヤーに印加する電圧を直流+8kVと
する以外は実施例1と全く同様にしてシートを製膜し
た。80m/分のキャスト速度ではキャスト密着性およ
び表面性は不良であり、シート幅も変動が大きく、横延
伸工程でクリップはずれが頻発した。さらに延伸された
シート表面には空気噛み込みによる凹凸が存在し、品質
・生産性ともに劣っていた。十分な品質のフィルムを得
るには、キャスト速度を50m/分まで落とすことが必
要であった。結果を表1に示す。
【0050】実施例2、3 パルス波形の繰り返し周波数、パターンを変更する以外
は実施例1と全く同様にしてシートを製膜した。いずれ
の場合にも品質・生産性共に優れていた。結果を表1に
示す。
【0051】実施例4 パルス波形として、パルス繰り返し周波数3kHz、波
長2マイクロ秒、ピーク高さ+8kVから−4kVであ
る孤立した1周期の正弦波を用い、これに+2kVの直
流高電圧を重畳してタングステンワイヤーへ印加する以
外は実施例1と全く同様にしてシートを製膜した。結果
を表1に示す。
【0052】実施例5 実施例1におけるパルス波形の繰り返し周波数を10k
Hz、パルス半値幅を0.5マイクロ秒、立ち上がり時
間を0.2マイクロ秒とし、タングステンワイヤーの巻
だしをやめる以外は実施例1と全く同様にしてシートを
製膜した。製膜中、タングステンワイヤーは220℃に
加熱されており、PETのオリゴマーが付着することは
無く、安定した製膜を行うことができた。結果を表1に
示す。
【0053】比較例2 キャスティング速度を50m/分とし、ロール延伸機の
冷却ロール上での導電性ロールによるニップおよび印加
を中止する以外は比較例1と同様の方法によって製膜を
行った。キャスティング速度を50m/分とすることで
キャスト工程での問題はなかったが、ロール延伸でのキ
ズが多く発生した。結果を表1に示す。
【0054】実施例6 ロール延伸機の冷却ロール上での導電性ロールによるニ
ップおよびパルス波形電圧の印加を実施例1と同様にお
こなう以外は比較例2と同様の方法によって製膜を行っ
た。比較例2で見られたロール延伸でのキズは発生しな
くなった。結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【発明の効果】本発明の熱可塑性樹脂シートの製造方法
によれば、パルス波形の電圧を溶融シートに印加しなが
らキャスティングすることにより、キャスティング速度
が高速化でき、さらに高品質なシートを生産性良く製造
することができる。また、パルス波形の電圧を成形され
た樹脂シートに印加しながらロールに密着させることに
より、冷却、加熱、搬送、延伸などの工程でのロールと
の間の滑りを防止できるとともに、ロール表面の傷発生
も防止でき、工程の安定化とともに得られるシートの表
面品質の向上を達成できる。このようにして製造された
シートは、工業材料、磁気材料、包装材料として好まし
く使用することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) B29K 101:12 B29L 7:00 C08L 67:00 (72)発明者 吉竹 文則 滋賀県大津市園山1丁目1番1号 東レ株 式会社滋賀事業場内 (72)発明者 萬 俊一 滋賀県大津市園山1丁目1番1号 東レ株 式会社滋賀事業場内

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱可塑性樹脂シート上に設置した電極に
    電圧を印加することにより該シートを回転体に密着させ
    る熱可塑性樹脂シートの製造方法において、前記電極
    に、繰り返し周波数fが200Hz〜30kHzの範囲
    にあるパルス波形電圧を印加することを特徴とする熱可
    塑性樹脂シートの製造方法。
  2. 【請求項2】 熱可塑性樹脂を溶融後、口金から溶融シ
    ートとして吐出し、該溶融シート上に設置した電極に前
    記パルス波形電圧を印加しながら該溶融シートを回転冷
    却体上に密着冷却固化させることを特徴とする、請求項
    1に記載の熱可塑性樹脂シートの製造方法。
  3. 【請求項3】 熱可塑性樹脂の溶融比抵抗が108Ω・
    cm〜1012Ω・cmの範囲にあることを特徴とする、
    請求項2に記載の熱可塑性樹脂シートの製造方法。
  4. 【請求項4】 熱可塑性樹脂シート上に設置した電極に
    パルス波形電圧を印加しながら該シートをロールに密着
    させ、該シートを冷却または加熱または搬送または延伸
    することを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性樹脂
    シートの製造方法。
  5. 【請求項5】 パルスの半値幅が0.1〜10マイクロ
    秒の範囲にあることを特徴とする、請求項1〜4のいず
    れかに記載の熱可塑性樹脂シートの製造方法。
  6. 【請求項6】 パルスの立ち上がり時間が0.05〜5
    マイクロ秒の範囲にあることを特徴とする、請求項1〜
    5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂シートの製造方法。
  7. 【請求項7】 印加するパルス波形電圧が正電圧である
    ことを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の熱
    可塑性樹脂シートの製造方法。
  8. 【請求項8】 パルスが孤立した1周期の正弦波である
    ことを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の熱
    可塑性樹脂シートの製造方法。
  9. 【請求項9】 パルス波形のピーク電圧が1kV〜20
    kVの範囲にあることを特徴とする、請求項1〜8のい
    ずれかに記載の熱可塑性樹脂シートの製造方法。
  10. 【請求項10】 パルス波形電圧に1kV〜20kVの
    直流電圧を重畳することを特徴とする、請求項1〜9の
    いずれかに記載の熱可塑性樹脂シートの製造方法。
  11. 【請求項11】 電極の温度を100℃以上とすること
    を特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の熱可
    塑性樹脂シートの製造方法。
  12. 【請求項12】 電極としてワイヤー状電極、テープ状
    電極およびロール状電極のいずれかを用いることを特徴
    とする、請求項1〜11のいずれかに記載の熱可塑性樹
    脂シートの製造方法。
  13. 【請求項13】 熱可塑性樹脂がポリエステル組成物で
    あることを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記
    載の熱可塑性樹脂シートの製造方法。
  14. 【請求項14】 熱可塑性樹脂シートを延伸および/ま
    たは熱処理することを特徴とする、請求項1〜13のい
    ずれかに記載の熱可塑性樹脂シートの製造方法。
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