JP3553690B2 - 豆腐の凝固方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、豆腐の凝固方法に係り、特に豆乳にニガリ、すまし粉、グルコノデルタラクトン(以下GDLと呼す)等の凝固剤を添加して豆乳を凝固することにより豆腐を製造する豆腐の凝固方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
豆腐は、豆乳にニガリ等の凝固剤を添加して豆乳を凝固させて製造するが、豆腐の製造方法として「腰掛け法」や「2度寄せ法」と称されている製造方法等が知られている。
この腰掛け法は木綿豆腐の製造に使用され、先ず、大豆から生搾り法により抽出してオカラを何度も洗い込んで得たタンパク質濃度の低い豆乳に、薄い水ニガリを数回に分けて少量づつ添加しながら豆乳を手作業で緩やかに攪拌する。これにより、容器内のタンパク質が細かい綿状や雪状に凝固して、容器の底に柔らかなブロック状の凝固が徐々に発生する。この場合、タンパク質の凝固状態は目視で確認される。次に、ブロック状に凝固したタンパク質を、木綿布を敷いた水切り穴付きの型箱に移し変えて、凝固したタンパク質の表面に重りを乗せて凝固したタンパク質を加圧成形する。これにより、箱型の水切り穴から水分が除去されて木綿豆腐が製造される。
【0003】
一方、2度寄せ法は絹ごし豆腐の製造に使用され、先ず、容器内の豆乳に所定量の凝固剤をまとめて同時に添加すると共に豆乳を攪拌して容器内のタンパク質を柔らかい状態に凝固する。次に、柔らかに凝固したタンパク質を容器から、絹ごし型箱に一気に流し込んで凝固したタンパク質を豆乳中に均一に分散(2度目の撹拌)させる。この状態でタンパク質をさらに凝固させて絹ごし豆腐が製造される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、腰掛け法で製造された木綿豆腐は、タンパク質の濃度が3%以下と低いので、凝固したタンパク質組織の密度が低くなり、凝固物中に保水できる水分量が少なくなる(即ち保水力が小さくなる)という問題がある。従って、凝固したタンパク質を重りで加圧成形する際に、多量の水分が排出されて成型後の豆腐の肌が悪くなるという問題がある。また、多量の水分と共に、凝固していない水溶性の大豆うま味成分が抜け出して豆腐の味が低下するために、加圧成形等における製造最終段階にあっては非常に高い熟練度を必要とするという問題がある。尚、この大豆うま味成分は、製造された豆腐を水晒し状態にした場合にも、豆腐から水中に徐々に溶出する。また、大豆の品質や浸漬・煮沸等の製造条件の微妙な変動により製品品質が不安定になりやすいため、経験や感など製造者の熟練に依存するところが大きかった。
【0005】
一方、2度寄せ法の場合、容器内にタンパクのソフトなブロックが凝固されかけたときに、絹ごし型箱に一気に流し込こんで2度目の撹拌を行うが、このときタンパクのソフトなブロックを破壊させないために、的確な凝固操作の調整が必要になる。そして、凝固操作の調整が的確に行われないと、例えば、タンパクのソフトなブロックが破壊され、この状態で熟成硬化しても破壊された粒子はそのままなので、離水が多く、もろくなり、さらに極端にざらついた食感になり、絹ごし豆腐の味が低下するという問題がある。このように、2度寄せ法においても、その攪拌タイミングなどの操作が難しく、熟練度を要するものであった。
【0006】
従って、本発明の目的は上記従来技術が有する問題を解消し、保水力を大きくして大豆うま味の抜けを防止し、豆腐の肌をよくし、ざらついた食感をなくすことができ、かつ熟練度を必要としない豆腐の凝固方法を提供することを目的としたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、豆乳に凝固性の異なる複数の凝固剤を添加して豆腐を凝固させるとき、タンパク質濃度が3%以上の豆乳に、まず凝固性の小さい凝固剤を添加して攪拌を行った後、凝固性のより大きい凝固剤を添加して攪拌を行う操作を少なくとも1回行うことにより、凝固性の小さい凝固剤から凝固性の大きい凝固剤の順での少なくとも2回の凝固剤の添加と、それに続く攪拌とを行い、かつ、前記凝固性の異なる複数の凝固剤を水溶液または水分散液として用いることを特徴とする豆腐の凝固方法により達成される。
【0008】
【作用】
本発明によれば、タンパク質濃度が3%以上の豆乳に、凝固性の異なる複数の凝固剤を、凝固性の小さい凝固剤から凝固性の大きい凝固剤へと順に添加して豆腐を凝固製造する。このようにすると、タンパク質の濃度が3%以上の豆乳を使用することによって、凝固したタンパク質組織が緻密になり保水力が大きく維持でき、うま味成分の保持力が上がる。
また、先ず凝固性の小さい凝固剤でタンパク質をソフトに凝固させて豆乳に粘りを与え、次に凝固性の大きい凝固剤を添加することにより、凝固性の大きい凝固剤の凝固粒子の沈降を防止して容器内のタンパク質を均一に凝固させることが可能となり、これにより、製造された豆腐の組織を均一にすることができる。
【0009】
【実施例】
以下に本発明を実施例により更に具体的に説明する。ここに示す成分、割合、操作順序等は本発明の精神から逸脱しない範囲において変更しうるものであることは本業界に携わるものにとっては容易に理解されることである。
【0010】
本発明の方法に使用する豆乳は、タンパク質濃度が3wt%以上のものであれば特に限定されない。タンパク質濃度が3wt%以上の豆乳とは、一般にブリックス比重計で6%以上の濃度を示すものであり、通常大豆に10〜3倍量の水を使用して作られるものである。タンパク質濃度の低い豆乳を使用すると、豆腐のタンパク質凝固組織が粗くなるため、組織中に水分を保持することが難しく離水しやすくなる。この離水に伴って豆腐のうま味成分が流出し易いため、味気なく、強度的にも脆い豆腐になってしまう。
【0011】
本発明で使用される凝固剤とは、豆乳を固める作用を有するものであれば特に限定されないが、具体例としては、ニガリ(塩化マグネシウム)、スマシ粉(硫酸カルシウム)、グルコノデルタラクトン(GLD)、塩化カルシウム、酸、天然ニガリ、海水、食塩等が挙げられ、中でもニガリ(塩化マグネシウム)、スマシ粉(硫酸カルシウム)、グルコノデルタラクトン(GLD)が凝固剤の品質が安定しているという点で好ましい。
なお凝固性の大小(強弱ともいう)とは、単位量の凝固剤で単位量の豆乳を豆腐にまで凝固するための反応速度をいうものである。
上記具体例として示した凝固剤の中から、主なものの凝固性の強さを表1及び2に示す。
【0012】
【表1】
Figure 0003553690
【0013】
【表2】
Figure 0003553690
【0014】
豆腐の凝固に頻繁に使用される凝固剤としては、ニガリが最も凝固性が強く、次いでスマシ粉、GDLと続くことが分かる。
また本発明でいう凝固性の異なる凝固剤とは、上記のように単品としての種類が異なるものは当然であるが、同じ単品でも凝固性が異なる場合もある。その例を以下に示す。a)水溶液または分散液等で使用する場合、その濃度又は分散量が異なると、凝固性も異なってくる。例えば、表1に示すように、ニガリや塩化カルシウム等では、溶水量が多いほど強くと凝固性が強くなり、少ないほど弱くなる傾向にある。)凝固温度が異なると凝固性も異なってくることが、表2により示されている。これは、温度が高いほど、凝固反応が活発になるものと考えられる。同一単体の凝固剤のみを使用した場合でも、その添加時の温度を何段階かに分けることにより、本発明でいう凝固性の異なる凝固剤を使用したということがいえる。)2種以上の単品の凝固剤を配合した場合、配合に使われる単品成分が同じでも、配合割合が異なれば凝固性も異なるので、上記配合割合が異なるものは、本発明でいう凝固性の異なる凝固剤に含まれるものである。
【0015】
〔実施例1〕
図1に示すように、深箱2に入った、タンパク質濃度11.0wt%の60℃に温度調節した豆乳1 10リットルに、スマシ粉(平均粒径30μm)20gを200mlの水に溶いたものを添加して、図2に示すような包丁3操作で攪拌後に、50w/w%の水ニガリ20gを添加、同様に攪拌した。その後、60℃で30分間放置・熟成して、豆乳1を凝固させた。さらに15℃の水で一晩水晒しを行った。
〔比較例1〕
62.1℃に温度調節した豆乳1に、スマシ粉(平均粒径30μm)20gと50w/w%の水ニガリ20gとを混合したものを添加・攪拌して、62.1℃で30分間放置・熟成して豆乳1を凝固させた以外は、実施例1と同様に行った。
【0017】
〔比較例
61.0℃に温度調節した豆乳1に、50w/w%の水ニガリ60gを添加・攪拌後、61.0℃で30分間放置・熟成して豆乳1を凝固させた以外は、実施例1と同様に行った。
〔比較例
77.1℃に温度調節した豆乳1に、スマシ粉(平均粒径30μm)30gを添加・攪拌後、77.1℃で20分間放置・熟成して豆乳1を凝固させた以外は、実施例1と同様に行った。
上記の実施例1および比較例1〜の方法により作った豆腐の特性を表3に示す。なお、モニター試験の点数については、5人のモニターがそれぞれ個人的に良いと感じた場合にはプラス側10段階、悪いと感じた場合にはマイナス側10段階に点数をつけさせ、各モニター5人の合計点を求め、最終的には、全モニターの平均値を算出した。
【0018】
【表3】
Figure 0003553690
【0019】
実施例1で作られた豆腐は、肉眼観察により、その表面が滑らかで光沢がある肌の良いものであった。モニター試験においてもその外観は、実施例1では3.5という高い評価点数であった。味の点においても、適度な甘味があり、モニター試験では、実施例1で2.0という比較的高い評価点数であった。
これに対して比較例1〜では、外観、食味のいずれかにおいて優れているものはあるが、外観、食味の双方を満足するものはなかった。
【0020】
〔実施例
3種類の凝固剤を用いた実施例である。
深箱に入った、70℃に温度調節したタンパク質濃度11wt%の豆乳14リットルに、GDL粉末14gを100mlの水に溶いた液を添加して、包丁で十分に攪拌した。数秒後に、スマシ粉(平均粒径30μm)14gを100mlの水に溶いたものを添加し、包丁でやや強めに攪拌した。更に数秒後に、50w/w%の水ニガリ28gを添加後、直ちに包丁で数秒間ソフトに攪拌した。その後、69.0℃で30分間熟成して豆乳を凝固させ、さらに15℃の水で一晩の水晒しを行った。
〔比較例
深箱に入った、70℃に温度調節したタンパク質濃度11wt%の豆乳14リットルに、GDL粉末とスマシ粉(平均粒計30μm)とニガリ粉末をそれぞれ14gづつ混合して214mlの水に解いたものを添加して、包丁で十分に攪拌した。その後、69.0℃で30分間熟成して豆乳を凝固させ、さらに15℃の水で一晩の水晒しを行った。
【0021】
実施例で作られた豆腐は、肉眼観察により、その表面が滑らかで光沢がある肌の良いものであった。これに対して比較例で作られた豆腐は、その表面が粗く、気泡の痕の様な小さな穴(「す」ともいう)があることも観察された。表4のモニター試験の結果からも、実施例の豆腐は3.5点と高く、比較例の豆腐は−3.5点と極端に低かった。
さらに、食味の官能試験を行った。実施例で作られた豆腐は、滑らかで柔らかく、豆腐の程よい甘味があった。これに対して比較例で作られた豆腐は、ざらつきがあり、甘味も薄かった。モニター試験の結果からも、実施例の豆腐は3.6点と高く、比較例の豆腐は−1.8点と低かった。
【0022】
〔実施例
凝固温度の範囲がそれぞれ異なる各凝固剤を用いた実施例である。
深箱に入った、70℃に温度調節したタンパク質濃度12wt%の豆乳14リットルに、室温下で、GDL粉末14gを1400mlの水に溶いたものを添加して包丁で十分に攪拌した。豆乳の温度が65℃になった時点で、スマシ粉(平均粒径30μm)14gを1400mlの水に溶いたものを添加し、包丁で攪拌した。更に豆乳の温度が60℃になった時点で、50w/w%の水ニガリ28gを添加後、直ちに包丁で3秒間攪拌した。その後、60.2℃で30分間放置・熟成して豆乳を凝固させ、さらに15℃の水で一晩の水晒しを行った。
この実施例の凝固方法は、1)始めに、凝固温度域が比較的高くて(70℃)凝固性の低い凝固剤GDLを、加熱した豆乳に室温下で添加する、2)豆乳が溶き水によって冷やされた時点で、凝固温度域が65℃でGDLよりも凝固性の高いスマシ粉を水に溶いて添加する、3)更に豆乳が溶き水によって冷やされた時点で、凝固温度域が60℃でスマシ粉よりも凝固性の高いニガリを添加するようにしたものである。このような方法では、豆乳の室温下放置による温度の低下に合わせて、その温度に適した凝固性を持つ凝固剤が、凝固性の小さい順に添加されることになるため、作業性が容易になる。
この実施例の凝固方法で得られた豆腐は、実施例1〜の方法で得られた豆腐と同様に、外観の表面が滑らかで光沢がある肌のよいものであり、食味の官能試験では、滑らかで柔らかく、豆腐の程よい甘味があった。
【0023】
〔実施例
凝固性の異なる2種類の配合凝固剤を用いた実施例である。
深箱に入った、70℃に温度調節したタンパク質濃度11wt%の豆乳14リットルに、GDL6gおよびスマシ粉14gを200mlの水に溶いた凝固剤Aを添加して、包丁で十分に攪拌した。数秒後に、GDL8gおよびニガリ14gを14mlの水に溶いた凝固剤Bを添加して、包丁で十分に攪拌した。その後、69.0℃で30分間放置・熟成して豆乳を凝固させ、さらに15℃の水で一晩の水晒しを行った。
この実施例の凝固方法で得られた豆腐は、実施例1〜の方法で得られた豆腐と同様に、外観の表面が滑らかで光沢がある肌のよいものであり、食味の官能試験では、滑らかで柔らかく、豆腐の程よい甘味があった。
実施例および比較例の方法により作った豆腐の特性を表4に示す。
【0024】
【表4】
Figure 0003553690
【0025】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明による豆腐の凝固方法によれば、タンパク質濃度が3%以上の豆乳に、凝固性の異なる複数の凝固剤を、凝固性の小さい凝固剤から凝固性の大きい凝固剤へと順に添加して豆腐を凝固製造する。このように、タンパク質の濃度が3%以上の豆乳を使用するので、凝固したタンパク質組織が緻密になり保水力が大きくなる。
また、先ず凝固性の小さい凝固剤でタンパク質をソフトに凝固させて豆乳に粘りを与え、次に凝固性の大きい凝固剤を添加することにより、凝固性の大きい凝固剤の凝固粒子の沈降を防止して容器内のタンパク質を均一に凝固する。これにより、製造された豆腐の組織が均一なものとなる。このように、保水力が大きくなると共に豆腐の組織を均一にすることにより、大豆うま味の抜けを防止し、また豆腐の肌をよくし、さらにざらついた食感をなくすことができる。
さらに本発明の方法は、熟練した技術を要さず、大豆の品質や製造条件の変動による影響も受けにくいため、機械を使用する生産システムにも容易に適用することができる。本発明の方法が機械化されて行われることにより、保水性がよく組織が均一な豆腐、即ち外観及び食味の双方において優れた豆腐を、効率よく生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による豆腐の凝固方法おいて豆乳の撹拌を説明した斜視図である。
【図2】本発明による豆腐の凝固方法おいて豆乳の撹拌を説明した平面図である。
【符号の説明】
1 豆乳
2 深箱
3 包丁

Claims (1)

  1. 豆乳に凝固性の異なる複数の凝固剤を添加して豆腐を凝固させるとき、タンパク質濃度が3%以上の豆乳に対して、まず凝固性の小さい凝固剤を添加して攪拌を行った後、凝固性のより大きい凝固剤を添加して攪拌を行う操作を少なくとも1回行うことにより、凝固性の小さい凝固剤から凝固性の大きい凝固剤の順での少なくとも2回の凝固剤の添加と、それに続く攪拌とを行い、かつ、前記凝固性の異なる複数の凝固剤を水溶液または水分散液として用いることを特徴とする豆腐の凝固方法。
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