JP3709256B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は空気入りタイヤに係り、特に、トレッドパターンにサイプを備えた空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、スノータイヤもしくはスタッドレスタイヤ等のタイヤは、氷上でのグリップ性能を向上させる目的で、一つのブロック内に複数のサイプと呼ばれる細い溝を有している。
【0003】
サイプが多くなると、パターンブロックの剛性が低下し、操縦安定性の不良をもたらす。そのため、図9〜11に示すように、サイプ100にブロック102の剛性を向上させる目的で、底上げ部104と呼ばれる幅広で部分的に浅くなっている個所を設ける場合が多い。
【0004】
また、サイプの溝壁に凹凸を設けたり、互いに向かい合う溝壁を3次元的に嵌合させるような形状にしてブロックの剛性を向上させる提案もなされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、サイプの溝壁に凹凸を設けたり、3次元的に嵌合させるような形状によりサイプの動きを抑制し、ブロックの剛性の向上をねらった場合、実際にサイプの動きを抑制できるだけの凹凸を持たせようとすると、タイヤの製造上加硫時モールドからタイヤを取り出す際に、取り出し難くなる問題が発生する。
【0006】
また、図9〜11に示すように、従来一般に行われているサイプ100に幅広の底上げ部104を設ける方法で、更にブロック剛性を高めようとすれば、底上げ部104をさらに幅広にしなければならず、実質的に溝深さの浅いサイプになってしまい、摩耗中期〜摩耗末期にはサイプが実質的に無くなってしまう問題がある。
【0007】
本発明は上記事実を考慮し、操縦安定性を確保すると共にサイプ本来の持つ役割を摩耗末期まで維持し、製造上に問題も生じない空気入りタイヤを提供することが目的である。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、トレッドパターン内の一つの連続したサイプのなかに、一部の溝深さが浅くなるように設けた底上げ部を複数有する空気入りタイヤであって、前記サイプは、屈曲部を有し、前記底上げ部は、幅が1.5mm以下であり、高さが前記サイプの溝深さの80%以上である、ことを特徴としている。
【0009】
次に請求項1に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
請求項1に記載の空気入りタイヤでは、サイプに設けた底上げ部分の1個当たりの幅を1.5mm以下とし、かつ底上げ部の高さをサイプの溝深さの80%以上としたので、氷上での走行性能を左右するサイプの総長さには余り影響を与えることがない。
【0010】
また、互いに向かい合うサイプの壁面同士を底上げ部分が互いに連結するので、3次元的にサイプ壁面を嵌合させるものより格段にブロックの動きを抑制でき、ドライ路面において高い操縦安定性能を確保できる。
【0011】
また、加硫時のモールドからタイヤを取り出すときにも、従来の底上げ形状を持つサイプと何ら変わらない作業性を確保することができる。
【0012】
また、従来の底上げ方法では、底上げ部が露出するほどトレッドの摩耗が進んでも、本発明の空気入りタイヤのサイプは新品同様のサイプ長さが残ることになり、トレッド摩耗による氷上ブレーキ性能の変化も最小に抑えることができる。
【0013】
なお、底上げ部分の1個当たりの幅が1.5mmを越えると、摩耗進行時に底上げ部分がサイプ(溝)でなくなるため、外見が悪化する(例えば、乗用車用のスタッドレスタイヤのブロックに設けられるジグザグサイプの一つの辺の長さは5mm程度かそれ以下であり、幅が1.5mmを越えるとジグザグサイプでなくなる)。また、溝の減少によるサイプの引っかき効果の減少のため、氷上グリップ性能が低下する。
【0014】
また、底上げ部の高さがサイプの溝深さの80%未満では、ブロック剛性を高めることが出来なくなる。
【0015】
また、サイプが波形(ジグザグ)の場合、波(ジグザグ)の数に比例した数の底上げ部を有すること、例えば、1波に1つあるいは2波に一つ有することが好ましい。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の空気入りタイヤにおいて、前記サイプをタイヤ周方向に沿って複数本形成したブロックを備え、一つのブロック内において各サイプの底上げ部がタイヤ周方向に一直線に配置されていることを特徴としている。
【0017】
次に請求項2に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
サイプの底上げ部をタイヤ周方向に沿って一直線に配置したブロックは、一直線に配置しないブロックに比較してタイヤ周方向のブロック剛性を更に高めることができ、制動・駆動といった力が働いた際のブロックの倒れ込みをより一層抑制することができる。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の空気入りタイヤにおいて、前記サイプの総長さのうち、前記底上げ部の総長さが20%以下であることを特徴としている。
【0019】
次に請求項3に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
底上げ部の総長さがサイプの総長さの20%を越えると、底上げ部が踏面に露出した際のサイプの総長さが短くなり、エッジ成分の低下、サイプの溝体積の低下等により氷上ブレーキ性能が低下する。したがって、底上げ部の総長さをサイプの総長さの20%以下とする。
【0020】
【発明の実施の形態】
[第1の実施形態]
本発明の空気入りタイヤの第1の実施形態を図1乃至図4にしたがって説明する。
【0021】
本実施形態の空気入りタイヤ(タイヤサイズ:185/70R14)のトレッドには、図1に示すような平行四辺形状のブロック10が複数設けられている。
【0022】
ブロック10には、タイヤ幅方向(矢印A方向)に沿ってジグザグ状に延びるサイプ12がタイヤ周方向(矢印B方向)に所定の間隔をおいて複数本形成されており、タイヤ幅方向の一端10Aから他端10Bへ向けて延びて他端10Bの手前で終端するものと、タイヤ幅方向の他端10Bから一端10Aへ向けて延びて一端10Aの手前で終端するものとが交互に形成されている。
【0023】
本実施形態のブロック10は、幅Aが22.5mm、長さBが22.8mmであり、側壁10Aのタイヤ幅方向に対する角度θが15°である。また、サイプ12は、総長さが27mmであり、溝深さDが8mm(図2参照)である。
【0024】
図2に示すように、サイプ12には、長手方向の3個所に、本発明の底上げ部としての幅狭底上げ部14が設けられている。図1及び図2に示すように、この幅狭底上げ部14は、幅Wが1.5mmで溝底16から垂直に立ち上がっており、溝底16からの高さHが7.5mmである。
【0025】
したがって、本実施形態では、1本のサイプ12の総長さの内、幅狭底上げ部14の総長さ(幅Wを合計した寸法)は17%であり、幅狭底上げ部14の高さHはサイプ12の溝深さDの94%である。
【0026】
また、図1に示すように、タイヤ幅方向の一端10Aから他端10Bへ向けて延びるサイプ12に設けられている幅狭底上げ部14と、タイヤ幅方向の一端10Aから他端10Bへ向けて延びるサイプ12に設けられている幅狭底上げ部14とは、タイヤ幅方向にずらされて配置されている。
【0027】
次に本実施形態の空気入りタイヤの作用を説明する。
サイプ12に設けた幅狭底上げ部14の1個当たりの幅Wを1.5mm以下とし、かつ1本のサイプ12の総長さの内、幅狭底上げ部14の総長さを20%以下としたので、氷上での走行性能を左右するサイプ12の総長さ、即ち、エッジ成分の長さには余り影響を与えることがない。また、トレッドの摩耗が進んでも、サイプ12は新品時と同様のサイプ長さが残ることになり、トレッド摩耗による氷上性能変化も最小に抑えられ、新品時から摩耗末期まで高い氷上性能が維持できる。
【0028】
また、高さHがサイプ12の溝深さDの80%以上とされた幅狭底上げ部14が、互いに向かい合うサイプ12の壁面同士を連結して固定するので、サイプ壁面を3次元形状としてサイプ壁面を嵌合させるものより格段にブロック10の剛性を高めることができ、接地時のブロック10の動きを抑制でき、ドライ路面において高い操縦安定性能が得られる。
【0029】
また、サイプ壁面を3次元形状としないので、加硫時のモールドから空気入りタイヤを取り出すときにも、従来の底上げ形状を持つサイプと何ら変わらない作業性を確保することができ、製造時に問題が生じない。
【0030】
また、トレッドの摩耗が進んでも、サイプ12は新品同様のサイプ長さが残ることになり、トレッド摩耗による氷上性能の変化も最小に抑えることができる。
【0031】
なお、幅狭底上げ部14の1個当たりの幅Wの最低寸法は、少なくとも0.5mmとすることが好ましい。幅Wが0.5mm未満になると、幅狭底上げ部14自身の引っ張り強度が低下し、使用時に幅狭底上げ部14が破損等する虞れがある。
【0032】
幅狭底上げ部14を有するサイプ12を形成するには、図3及び図4に示すように、幅狭底上げ部14を形成するためのスリット18を設けたブレード20を加硫用のモールドに設ければ良い。
[第2の実施形態]
本発明の空気入りタイヤの第2の実施形態を図5にしたがって説明する。なお、第1の実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0033】
図5に示すように、本実施形態では、各サイプ12の幅狭底上げ部14がタイヤ周方向に沿って一直線状に配置されており、これによってサイプの幅狭底上げ部14を一直線に配置しないブロック10に比較してタイヤ周方向のブロック剛性をさらに高めることができる。このため、制動・駆動といった力が働いた際のブロック10の倒れ込みをさらに抑制することができ、実接地面積をより一層確保することができ、トラクション性能及びブレーキ性能を向上することが可能となる。
[第3の実施形態]
本発明の空気入りタイヤの第3の実施形態を図6にしたがって説明する。なお、第1の実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0034】
図6(A),(B)に示すように、本実施形態では、サイプ12の中央部分に、ブロック剛性を更に高めるための第2の底上げ部22が形成されている。
【0035】
なお、前記実施形態のサイプ12はジグザグ形状であったが、本発明はこれに限らず、図7(A),(B)に示すように湾曲していても良く、波形、サインカーブ等のその他の形状であっても良い。
【0036】
さらに、図8(A),(B)に示すように、湾曲したサイプ12の両端に第2の底上げ部22を形成しても良い。
(試験例)
本発明の効果を確かめるために、本発明の適用された実施例タイヤ1,2及び従来例タイヤを用意し、新品時と50%摩耗時の氷上ブレーキ性能を調べると共に、ブロック剛性及び実車フィーリングを調べた。
【0037】
実施例タイヤ1:第1の実施形態(図1及び図2参照)で説明したブロックを有するタイヤである。
【0038】
実施例タイヤ2:第2の実施形態(図5参照)で説明した、幅狭底上げ部がタイヤ周方向に一直線に配置されたタイヤである。
【0039】
従来例タイヤ:図9(A),(B)に示すように、サイプ100の中央に幅広の底上げ部104が配置されたタイヤである。なお、底上げ部104の底部の幅WB(但し、サイプの溝壁に沿って計測した値)は11.3mm、頂部の幅WT(但し、サイプの溝壁に沿って計測した値)は5.6mm、高さHは5.6mmである。
【0040】
なお、各試験タイヤ共に、ブロック数、ブロック寸法、サイプ形状、サイプ数、サイプの総長さ、サイプ深さは全て同一であり、底上げ部分の形状及び寸法のみが異なる。
【0041】
氷上ブレーキ性能:氷上ブレーキ性能はその指標として、氷上制動性能で表す。185/70R14サイズの各試験タイヤ4本を排気量1600ccの乗用車に装着し、氷温度−1°C、−8°Cの氷上で制動性能を測定した。氷上ブレーキ性能は次式により指数表示した。
【0042】
氷上ブレーキ性能=(コントロールタイヤ(従来例タイヤ)の制動距離/試験タイヤの制動距離)×100
ブロック剛性:タイヤより10cm四方のタイヤトレッド部を試験片として切り出し、ブロック剛性測定装置にて測定を行った。なお、評価は従来例タイヤを100とする指数表示であり、数値が大きいほどブロック剛性が高いことを示す。
【0043】
実車フィーリング:ブリヂストンプルービンググランドにおいて、ドライ路面上でのレーンチェンジの収まり、コーナリング性能、微小舵角に対する応答性などを総合的にドライバーの感覚で判断し、各項目の点数を合計し、指数化した。
【0044】
なお、評価は従来例タイヤを100とする指数表示であり、数値が大きいほど操縦安定性に優れていることを示す。
【0045】
【表1】
【0046】
上記表1の試験結果に示すように、本発明の適用された実施例タイヤ1,2は従来例タイヤと新品時で同等、摩耗の進展に対して氷上ブレーキ性能の変化が少ないことが確認された。
【0047】
また、実施例タイヤ1,2は従来例タイヤと新品時で同等、摩耗の進展に対してブロック剛性の変化が少ないことが確認された。
【0048】
さらに、各サイプの幅狭底上げ部を一直線に配置した実施例タイヤ2は、幅狭底上げ部を一直線に配置しない実施例タイヤ1よりもブロック剛性が高められ、実車試験でのフィーリング(操縦安定性)も高められていることが確認された。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に記載の空気入りタイヤは上記の構成としたので、新品時から高い操縦安定性を確保すると共に摩耗末期まで高い氷上ブレーキ性能を維持し、製造上にも問題を生じない、という優れた効果を有する。
【0050】
請求項2に記載の空気入りタイヤは上記の構成としたので、制動・駆動といった力が働いた際のブロックの倒れ込みをより一層抑制することができ、ブレーキ性能及びトラクション性能を向上できる、という優れた効果を有する。
【0051】
また、請求項3に記載の空気入りタイヤは上記の構成としたので、摩耗末期まで高い氷上性能を確実に維持できる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る空気入りタイヤのブロックの平面図である。
【図2】図1に示すブロックのサイプに沿った断面図(2−2線断面図)である。
【図3】図1及び図2に示すブロックのサイプを形成するためのブレードの正面図である。
【図4】図3に示すブレードの下面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る空気入りタイヤのブロックの平面図である。
【図6】(A)は本発明の第3の実施形態に係る空気入りタイヤのブロックの平面図であり、(B)は図6(A)に示すブロックのサイプに沿った断面図(6(B)−6(B)線断面図)である。
【図7】(A)は本発明の他の実施形態に係る空気入りタイヤのブロックの平面図であり、(B)は図7(A)に示すブロックのサイプに沿った断面図(7(B)−7(B)線断面図)である。
【図8】(A)は本発明の更に他の実施形態に係る空気入りタイヤのブロックの平面図であり、(B)は図8(A)に示すブロックのサイプに沿った断面図(8(B)−8(B)線断面図)である。
【図9】(A)は従来例に係る空気入りタイヤのブロックの平面図であり、(B)は図9(A)に示すブロックのサイプに沿った断面図(9(B)−9(B)線断面図)である。
【図10】(A)は他の従来例に係る空気入りタイヤのブロックの平面図であり、(B)は図10(A)に示すブロックのサイプに沿った断面図(10(B)−10(B)線断面図)である。
【図11】(A)は更に他の従来例に係る空気入りタイヤのブロックの平面図であり、(B)は図11(A)に示すブロックのサイプに沿った断面図(11(B)−11(B)線断面図)である。
【符号の説明】
10 ブロック
12 サイプ
14 幅狭底上げ部(底上げ部)
Claims (3)
- トレッドパターン内の一つの連続したサイプのなかに、一部の溝深さが浅くなるように設けた底上げ部を複数有する空気入りタイヤであって、
前記サイプは、屈曲部を有し、
前記底上げ部は、幅が1.5mm以下であり、高さが前記サイプの溝深さの80%以上である、ことを特徴とする空気入りタイヤ。 - 前記サイプをタイヤ周方向に沿って複数本形成したブロックを備え、
一つのブロック内において各サイプの底上げ部がタイヤ周方向に一直線に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。 - 前記サイプの総長さのうち、前記底上げ部の総長さが20%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の空気入りタイヤ。
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