JP3848459B2 - ヘモグロビン類の測定方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体クロマトグラフィーによるヘモグロビン類の測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
糖化ヘモグロビン、特に糖化ヘモグロビンA1c(以下、HbA1cという)が糖尿病診断の指標として広く測定されている。糖化ヘモグロビンとは血液中の糖がその濃度に比例して赤血球に入った後に、ヘモグロビンと結合して生成したものである。溶血血液試料中の糖化ヘモグロビンは、過去1〜2カ月間の血液中の平均的な糖濃度を反映するので溶血血液中の糖化ヘモグロビンは、糖尿病の診断の指標とされ、通常、糖化ヘモグロビンのうち、糖化ヘモグロビンA1c(以下、HbA1cという)を用いたHbA1c値〔糖化ヘモグロビンと非糖化ヘモグロビンの合計に対するHbA1cの割合(%)〕が、糖尿病の診断の最適な指標として広く使用されている。
【0003】
このHbA1cの測定方法としては、一般に液体クロマトグラフィー法や免疫法が用いられているが、液体クロマトグラフィー法はその高精度性により最も汎用されている。
【0004】
このHbA1cの液体クロマトグラフィー法による測定は、主にカチオン交換液体クロマトグラフィー法により行われている(特公平8−7198号公報など)。溶血血液試料をカチオン交換液体クロマトグラフィーにより分離すると、通常、ヘモグロビンA1a(以下、HbA1aという)及びヘモグロビンA1b(以下、HbA1bという)、ヘモグロビンF(以下、HbFという)、不安定型HbA1c、安定型HbA1c並びにヘモグロビンA0(以下、HbA0という。なお、HbA0は非糖化ヘモグロビンなどである)などのピークが出現する。なお、糖尿病の診断の指標として使用されているHbA1cは、上記のうちの安定型HbA1cであり、全ヘモグロビンピークの面積に対する安定型HbA1cピークの面積の比率(%)として求められている。
【0005】
しかしながら安定型HbA1cピークと不安定型HbA1cピークの分離が困難であるため、通常、精度良く安定型HbA1cピークのみを測定することが困難であった。そこで、不安定型HbA1cピークの影響をなくす方法が以下のように種々考えられ、実施されているがそれぞれまだ欠点がある。すなわち、例えば、特開昭63−298063号公報に記載の試薬を添加することにより不安定型HbA1cを除く方法があるが、この方法は除去のための前処理操作が煩雑となる点が問題となる。また、例えば、特公平8−7197号公報に記載のような充填剤を用いることにより、比較的長時間を要してクロマトグラム上でピークとして分離する方法も考えられるが測定時間が長くなる点が問題となる。
【0006】
この液体クロマトグラフィー法には、上記のように、充填剤としてはカチオン交換樹脂が一般的に用いられており、そのイオン交換基としてはカルボキシル基及びスルホン酸基が用いられている。また、溶離液としては、殆どがリン酸緩衝液が用いられている。
【0007】
この液体クロマトグラフィー法は測定時間の短縮化が進み、1検体あたり数分間で測定が可能となっているが、各ピークの分離は未だ不十分である。
【0008】
また、液体クロマトグラフィー法での測定においては、アセチル化ヘモグロビン(以下、AHbという)やカルバミル化ヘモグロビン(以下、CHbという)などの修飾ヘモグロビンの影響を受けるといわれる。更に、AHbやCHbのピークも安定型HbA1cピーク付近に溶出するため、短時間での分離が困難である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来法の欠点がなく、従来より短時間で、精度良く、ヘモグロビン類を測定する方法を提供することである。
【0010】
請求項1記載の発明及び請求項2記載の発明(以下、本発明1という)は、液体クロマトグラフィーによるヘモグロビン類の測定方法であって、充填剤のイオン交換基と同種のイオン種を含む緩衝液を溶離液として用いることを特徴とするヘモグロビン類の測定方法である。
【0011】
請求項3記載の発明(以下、本発明2という)は、充填剤がカルボキシル基を有する充填剤であり、溶離液がカルボキシル基を有するグッド(Good)の緩衝液であることを特徴とするヘモグロビン類の測定方法である。
【0013】
以下、本発明1の詳細を説明する。
本発明1で用いられる充填剤は、少なくとも1種以上のイオン交換基を有している粒子よりなる充填剤である。上記のイオン交換基含有充填剤は、後に詳細に説明するように、高分子粒子にイオン交換基を導入することなどにより製造される。上記イオン交換基は、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基などのカチオン性官能基及び第3級アミンや第4級アンモニウム基などのアニオン性官能基である。また、複数の官能基が混在されていても良い。上記混在とは、一つの粒子が複数の官能基を有している場合だけでなく、一つの官能基を有する粒子を複数混合して用いる場合も含むものとする。これらのイオン交換基の導入量は特に制限されないが、好ましくは、充填剤の乾燥重量1g当たり0.1μeq〜100meqである。充填剤粒子の直径は、好ましくは0.5〜20μm、より好ましくは1〜10μmである。充填剤の粒度分布は、変動係数値(CV値)(粒径の標準偏差÷平均粒径×100)として、好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下である。
【0014】
本発明1で用いられる充填剤を製造する方法は、特に限定されないが、例えば、(a)高分子粒子にイオン交換基を導入する方法、(b)イオン交換基を有する単量体を重合して高分子粒子とする方法、(c)重合性のイオン交換基含有エステル((メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなど)を架橋性単量体などと混合し、重合開始剤存在下で重合した後、得られた粒子を加水分解処理し、エステルをイオン交換基に変換させる方法などが挙げられる。
【0015】
上記(a)高分子粒子にイオン交換基を導入する方法、について以下説明する。
上記高分子粒子としては、例えば、シリカ、ジルコニアなどの無機系粒子;セルロース、ポリアミノ酸、キトサンなどの天然高分子粒子;ポリスチレン、ポリアクリル酸エステルなどの合成高分子粒子などが挙げられる。
【0016】
上記高分子粒子としては、導入されるイオン交換基以外の構成成分は、より親水性であることが好ましく、また、耐圧性・耐膨潤性の点から架橋度の高いものが好ましい。
【0017】
高分子粒子がシリカ粒子の場合、該シリカ粒子は、例えばアルコキシラン誘導体をアルコール/水の混合溶媒に添加し、触媒存在下に重合することにより得ることができる。さらに必要に応じて、官能基含有シランカップリング剤を反応させることにより、適当な官能基を導入することもできる。
【0018】
高分子粒子がセルロース粒子の場合、該セルロース粒子は、例えば、三酢酸セルロースを有機溶媒に溶解し、さらにゼラチン水溶液を添加して有機溶媒を除去後、アルカリ性下で加水分解することにより得ることができる。
【0019】
高分子粒子がポリアミノ酸粒子の場合、該ポリアミノ酸粒子は、例えば、N−カルボン酸無水物を重合することにより得ることができる。
【0020】
高分子粒子が合成高分子粒子の場合、該合成高分子粒子は、例えば、スチレン、ジビルベンゼン、ジビニルトルエン;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの単量体を、重合開始剤存在下で重合することにより得ることができる。
【0021】
高分子粒子にイオン交換基を導入する方法は、該高分子粒子が反応性の官能基(例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基など。以下、反応性基という)を有する場合であれば、該反応性基に反応性を有する官能基及びイオン交換基の両者を有する化合物と上記高分子粒子とを化学結合させればよい。上記反応性基を有する高分子粒子を調製するには、例えば、水酸基含有単量体(2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレートなど);アミノ基含有単量体((メタ)アクリルアミド、2−アミノエチル(メタ)アクリレート、2−アミノメチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アリルアミンなど);カルボキシル基含有単量体((メタ)アクリル酸、イタコン酸など);又はエポキシ基含有単量体(グリシジル(メタ)アクリレートなど)を、架橋性単量体などと混合し、重合開始剤の存在下に重合すればよい。
【0022】
上記反応性基を有さない高分子粒子の場合であれば、種々の公知の化学反応を用いて、高分子粒子に反応性基を導入すればよい。
【0023】
高分子粒子に導入されるイオン交換基は、公知のものでよく特に制限はない。例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基などのカチオン交換基;第3級アミノ基、第4級アンモニウム基などのアニオン交換基が挙げられる。
【0024】
上記(b)イオン交換基を有する単量体を重合して高分子粒子とする方法、について以下説明する。
上記イオン交換基を有する単量体としては、イオン交換基がカルボキシル基の場合であれば、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸などが挙げられ、スルホン酸基の場合であれば、例えば、スチレンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリル酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、3−スルホプロピルイタコレート、N−(3−スルホプロピル)−N−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アリルスルホン酸などが挙げられ、リン酸基の場合であれば、例えば、((メタ)アクリロイルオキシメチル)アシッドホスフェート、(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、(2−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)アシッドホスフェート、(3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)アシッドホスフェートなどが挙げられ、例えば、第3級アミノ基、第4級アンモニウム基の場合であれば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレートヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリレートジメチルアミノエチルトリメチルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。
【0025】
上記の重合方法は、上記単量体と架橋性単量体等とを混合し、重合開始剤の存在下に重合する方法などが挙げられる。
【0026】
本発明1の測定方法の実施に際して、充填剤はカラムに充填されて液体クロマトグラフィー測定に用いられる。上記カラムは公知のステンレス製、ガラス製、樹脂製など、特に限定されない。カラムサイズとしては、内径0.5〜10mm、長さ5〜300mmのものが好ましい。充填剤のカラムへの充填方法は、公知の任意の方法が使用できるがスラリー充填法がより好ましい。具体的には、例えば、充填剤粒子を溶離液などの緩衝液に分散させたスラリーを送液ポンプなどによりカラムに圧入することにより行う。
【0027】
上記測定に使用される液体クロマトグラフは、公知のものでよく、例えば、送液ポンプ、試料注入装置(サンプラ)、カラム、検出器などから構成される。また、他の付属装置(カラム恒温槽や溶離液の脱気装置など)が適宜付属されてもよい。
【0028】
本発明1の測定方法に用いる溶離液は、使用する充填剤が有するイオン交換基と同種のイオン種(以下、同種イオンという)を含む緩衝液からなる。例えば、充填剤としてカルボキシル基を有する充填剤を用いる場合には、カルボキシル基を有する化合物〔具体的には、例えば、グリシン等のアミノ酸;酢酸、クエン酸、フタル酸等の酸類;N−(アセトアミド)−2−イミノ2酢酸(以下、ADAという)、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチルグリシン(以下、TRICINEという)等のGoodの緩衝液組成物など〕を含む緩衝液;充填剤としてスルホン酸基を有する充填剤を用いる場合には、スルホン酸基を有する化合物〔具体的には、例えば、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(以下、HEPESという)、2−(N−モリホリノ)エタンスルホン酸(以下、MESという)、3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(以下、MOPSという)、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−3−アミノプロパンスルホン酸(以下、TESという)、N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(以下、BESという)など〕を含む緩衝液;充填剤としてリン酸基を有する充填剤を用いる場合には、リン酸基を有する化合物〔具体的には、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸リチウム、リン酸マグネシウムなど〕を含む緩衝液を用いる。
【0029】
溶離液の濃度は、充填剤や測定対象試料、その他の測定条件により異なるが、好ましくは1〜1000mM、より好ましくは5〜800mMである。また、上記の同種イオン緩衝液同士を、複数混合して用いてもよい。
【0030】
本発明1の測定方法では、上記同種イオン緩衝液は、ヘモグロビン類の分析時における糖化ヘモグロビン類の溶出時の溶離液に必ず含有される。しかしながら同種イオンのみで構成される必要はなく、異種イオン(充填剤のイオン交換基と異種のイオン種)が混合されていてもよい。この場合も同種イオンは、好ましくは1〜1000mM、より好ましくは5〜800mM含まれている必要がある。
【0031】
また充填剤として2種以上の異なるイオン交換基を有する充填剤を使用した場合には、溶離液としてどちらか一方のイオン交換基種との同種イオンを用いればよい。例えば、カルボキシル基及びスルホン酸基の両者を有する充填剤を使用した場合、カルボキシル基を有する緩衝液でもよいし、スルホン酸基を有する緩衝液でもよいし、両者の混合緩衝液でもよい。
【0032】
また以下の化合物を同種イオン緩衝液に添加してもよい。
(1)無機塩類(塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウムなど)を添加してもよい。これらの塩類の濃度は、特に限定されないが、好ましくは1〜1500mMである。
(2)塩酸などの無機酸類、酢酸などの有機酸類を添加してもよい。これらの無機酸類、有機酸類の濃度は、特に限定されないが、好ましくは0.001〜100mMである。
(3)水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの塩基類を添加してもよい。これらの塩基類の濃度は、特に限定されないが、好ましくは0.001〜100mMである。
(4)メタノール、エタノール、アセトニトリルなどの水溶性有機溶媒と混合してもよい。これらの有機溶媒の濃度は、特に限定されないが、好ましくは0〜80%(V/V)である。
【0033】
また溶離液を測定途中で切り替えたり、グラディエント溶出を行ってもよい。この場合、上記のように、糖化ヘモグロビン類の溶出時には上記同種イオン緩衝液を含む溶離液で分離を行う必要があるが、他の分画(例えば、HbA0分画)の溶出時には、必ずしも同種イオン緩衝液成分を含む必要はない。上記の「糖化ヘモグロビン類の溶出時」とは、HbA1a及びHbA1b、HbF、不安定型HbA1c、安定型HbA1cの分画を、この順序に含む、いわゆるfirstfractionの溶出時のことを指す。ただし、この場合、他の物質がピークとして混在している場合も含む。
【0034】
本発明1の測定方法において、他の測定条件としては、公知の条件でよく、溶離液の流速は、好ましくは0.05〜5ml/分、より好ましくは0.1〜3ml/分である。ヘモグロビン類の検出は、415nmの可視光が好ましい。測定試料は、界面活性剤など溶血活性を有する物質を含む溶液により溶血された溶血液を希釈したものを用いる。液体クロマトグラフへの試料注入量は、希釈倍率により異なるが、好ましくは1〜50μl程度である。
【0035】
以下、本発明2の詳細を説明する。
本発明2で用いられる充填剤は、本発明1で用いられる充填剤のうちのカチオン交換樹脂に相当するものであることの他は本発明1で用いられる充填剤と同様であり、その製造方法も本発明1の説明と同様である。
【0036】
本発明2の測定方法の実施に際して、上記充填剤がカラムに充填されて液体クロマトグラフィー測定に用いられること、及び上記測定に使用される液体クロマトグラフなどは本発明1と同様である。
【0037】
本発明2の測定方法に用いる溶離液は、一般にグッド(Good)の緩衝液といわれるものの中から選択される。具体的には、例えば、ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス−(ヒドロキシメチル)メタン(以下、Bis−Trisという)、HEPES、MES、MOPS、TESなどが挙げられる。
【0038】
溶離液の濃度は、他の測定条件により異なるが、好ましくは1〜1000mM、より好ましくは5〜800mMである。また、上記の緩衝液を複数混合して用いてもよい。また他の緩衝液(リン酸塩、ホウ酸塩などを含む無機系緩衝液、クエン酸、コハク酸などを含む有機酸系緩衝液など);塩類(塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウムなど);塩酸などの無機酸;酢酸などの有機酸;水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの塩基;メタノール、エタノール、アセトニトリルなどの水溶性有機溶媒と混合して用いても良い。
【0039】
また溶離液を測定途中で切り替えたり、グラディエント溶出を行ってもよい。この際、糖化ヘモグロビン類の溶出は、上記Goodの緩衝液を含む溶離液で行う必要があるが、他の分画(例えばHbA0分画)の溶出時には、必ずしもGoodの緩衝液成分を含む必要はない。
【0040】
本発明2の測定方法において、他の測定条件としては、公知の条件でよく、溶離液の流速は、好ましくは0.05〜5ml/分、より好ましくは0.1〜3ml/分である。ヘモグロビン類の検出は、415nmの可視光が好ましい。測定試料は、界面活性剤など溶血活性を有する物質を含む溶液により溶血された溶血液を希釈したものを用いる。液体クロマトグラフへの試料注入量は、希釈倍率により異なるが、好ましくは1〜50μl程度である。
【0057】
(作用)
本発明1の測定方法は、充填剤のイオン交換基と同種のイオン種を含む緩衝液を溶離液として用いるので、従来のヘモグロビン類の測定法における問題点であった測定時間の延長や、分離性能が解決され、短時間内に、かつ高精度にヘモグロビン類を分離できる。
【0058】
本発明2の測定方法は、充填剤がカチオン交換樹脂であり、溶離液がGoodの緩衝液であることを特徴とする本発明1のヘモグロビン類の測定方法であるので、従来分離が困難であった安定型HbA1cの短時間での高精度測定、及びAHb、CHbの分離定量が可能となった。
【0060】
【実施例】
以下、本発明の非限定的な実施例を挙げることにより、本発明を更に明らかにする。
【0061】
参考例1)カルボキシル基を有する充填剤を用いるもの
充填剤の調製
テトラエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学社製)400g及びメタクリル酸(和光純薬社製)150gの混合物に過酸化ベンゾイル(和光純薬社製)1.5gを溶解した。これを4重量%ポリビニルアルコール(日本合成化学社製)水溶液2500mlに分散させ、撹拌しながら窒素雰囲気下で75℃に昇温し、8時間重合した。重合後、洗浄し乾燥した後、分級して平均粒径6μmの粒子(以下、充填剤1という)を得た。
【0062】
カラムの充填
得られた充填剤1をカラムに以下のようにして充填した。粒子0.7gを、50mMリン酸緩衝液(pH6.0)30mlに分散し、5分間超音波処理した後、よく撹拌した。全量をステンレス製の空カラム(4.6φ×35mm)を接続したパッカー(梅谷精機社製)に注入した。パッカーに送液ポンプ(サヌキ工業社製)を接続し、圧力300kg/cm2 で定圧充填した。
【0063】
ヘモグロビン類の測定
得られたカラムを用いて、以下の測定条件でヘモグロビン類の測定を行った。測定条件
Figure 0003848459
【0064】
測定試料
健常人血をフッ化ナトリウム採血し、以下の試料を調製した。
試料a(糖負荷血):健常人血に、500mg/dlとなるようグルコース水溶液を添加し、37℃で3時間反応させたもの。
試料b(カルバミル化ヘモグロビン(CHb)含有試料):健常人血10mlに、0.3重量%のシアン酸ナトリウムの生理食塩水溶液1mlを添加し、37℃で1時間反応させたもの。
試料c(アセチル化ヘモグロビン(AHb)含有試料):健常人血10mlに、0.3重量%のアセトアルデヒドの生理食塩水溶液1mlを添加し、室温で3時間反応させたもの。
試料d:上記試料bと試料cを等量混合したもの。
【0065】
次いで、上記試料aと試料dをそれぞれ以下のように処理して試料Aと試料Dを作製し測定試料とした。
試料A:上記試料aを、溶血希釈液X(0.1重量%トリトンX−100のリン酸緩衝液溶液(pH7.0))で溶血し、150倍に希釈して試料Aとした。
試料D:上記試料dを、溶血希釈液Y(溶血希釈液Xにポリリン酸ナトリウム(太平化学社製)を0.05重量%となるよう添加したもの)で150倍に溶血希釈し、35℃で2分間加温して試料Dとした。
【0066】
測定結果
上記測定条件により、試料Aを測定して得られたクロマトグラムを図1に、試料Dを測定して得られたクロマトグラムを図2に示す。ピーク1はHbA1a及びHbA1b、ピーク2はHbF、ピーク3は不安定型HbA1c、ピーク4は安定型HbA1c、ピーク5はHbA0、ピーク6はAHb、ピーク7はCHbを示す。
図1では、ピーク3及び4が良好に分離されている。また、図2ではAHbやCHbのような修飾ヘモグロビンも良好に分離されていることがわかる。
【0067】
(実施例2)リン酸基を有する充填剤を用いるもの
テトラエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学社製)400g及び(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート(共栄社化学社製)100gの混合物に、過酸化ベンゾイル(和光純薬社製)1.5gを溶解した。これを4重量%ポリビニルアルコール水溶液2500mlに分散した。撹拌しながら窒素雰囲気下で80℃に昇温し、80℃で8時間重合した。重合後、洗浄し乾燥した後、分級して平均粒径6μmの粒子(以下、充填剤2という)を得た。
参考例1と同様にして、充填剤2をカラムに充填し、ヘモグロビン類の測定を行った。
溶離液Aとして100mMリン酸緩衝液(pH5.8)、溶離液Bとして300mMリン酸緩衝液(pH7.0)を用い参考例1に準じて測定を行ったところ、得られたクロマトグラムは図1及び図2と同様、良好であった。
【0068】
(実施例3)スルホン酸基を有する充填剤を用いるもの
特公平8−7197号公報に記載の方法により、充填剤を調製した。
テトラエチレングリコールジメタクリレート300g、グリセロールジメタクリレート(新中村化学社製)100gに過酸化ベンゾイル1.5gを溶解し、4重量%ポリビニルアルコール水溶液2500mlに分散した。撹拌しながら窒素雰囲気下で昇温し、80℃で1時間重合した。1時間後、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸100gを添加し、さらに65℃で3時間重合した。重合後、洗浄し乾燥した後、分級して平均粒径6μmの粒子(以下、充填剤3という)を得た。イオン交換容量を測定したところ、乾燥粒子1g当たり11.3μeqであった。参考例1と同様にして充填剤3をカラムに充填し、ヘモグロビン類の測定を行った。溶離液AとしてMESを100mM濃度で、食塩を100mM濃度で含む水溶液(pH5.7)、溶離液Bとして300mMリン酸緩衝液(pH7.0)を用い参考例1に準じて測定を行ったところ、得られたクロマトグラムは図1及び図2と同様、良好であった。
【0069】
(比較例1)
参考例1と同様にして充填剤1をカラムに充填し、溶離液Aとして100mMリン酸緩衝液(pH6.0)及び溶離液Bとして300mMリン酸緩衝液(pH7.0)を用いて、参考例1に準じて(溶離液A及びBの通流時間は、実用的な測定時間の範囲内で、できるだけ良好な分離ができるように変えた)、ヘモグロビン類の測定を行った。得られたクロマトグラムを図3(試料A)及び図4(試料D)に示す。
図1及び図2に比較して、測定時間が長いにもかかわらず、分離能が悪いことが分かる。
【0070】
(比較例2)
参考例1と同様にして充填剤2をカラムに充填し、溶離液AとしてMESを100mM濃度で、食塩を100mM濃度で含む水溶液(pH5.9)、溶離液BとしてMESを100mM濃度で、食塩を500mM濃度で含む水溶液(pH5.9)を用いて、参考例1に準じて(溶離液A及びBの通流時間は、実用的な測定時間の範囲内で、できるだけ良好な分離ができるように変えた)、ヘモグロビン類の測定を行ったところ、得られたクロマトグラムは図3及び図4と同様であった。
【0071】
(比較例3)
参考例1と同様にして充填剤3をカラムに充填し、溶離液Aとして20mMクエン酸ナトリウム(和光純薬社製)水溶液(pH6.0)及び溶離液Bとして300mMリン酸緩衝液(pH7.0)を用いて、参考例1に準じて(溶離液A及びBの通流時間は、実用的な測定時間の範囲内で、できるだけ良好な分離ができるように変えた)、ヘモグロビン類の測定を行った。得られたクロマトグラムは、図3及び図4と同様であった。
【0072】
(実施例4)
テトラエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学社製)400g及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(東京化成社製)100gの混合物に過酸化ベンゾイル(和光純薬社製)1.5gを溶解した。これを4重量%ポリビニルアルコール(日本合成化学製)水溶液2500mlに分散させ、撹拌しながら窒素雰囲気下で80℃に昇温し、80℃で8時間重合した。重合後、洗浄し乾燥した後、分級して平均粒径6μm(以下、充填剤4という)の粒子を得た。
【0073】
参考例1と同様にして充填剤4をカラムに充填し、溶離液AとしてMESを10mM濃度で、食塩を100mM濃度で含む水溶液(pH5.7)、溶離液Bとして300mMリン酸緩衝液(pH7.2)を用いて、参考例1に準じて(但し、流速は1.5ml/分とした)ヘモグロビン類の測定を行った。試料Aを用いて得られたクロマトグラムを図5に、試料Dを用いて得られたクロマトグラムを図6に示した。図5では、ピーク3及び4が良好に分離されている。また、図6ではAHbやCHbのような修飾ヘモグロビンも良好に分離されていることがわかる。
【0074】
(実施例5)
特公平8−7197号公報に記載の方法により、充填剤を調製した。
トリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学社製)400gに過酸化ベンゾイル1.5gを溶解し、4重量%ポリビニルアルコール水溶液2500mlに分散した。撹拌しながら窒素雰囲気下で昇温し、80℃で1時間重合した。1時間後メタクリル酸150gを添加し、さらに1時間80℃で重合した。重合後、洗浄し乾燥した後、分級して平均粒径6μmの粒子(以下、充填剤5という)を得た。
参考例1と同様にして充填剤5をカラムに充填し、溶離液Aとして20mM濃度でBis−Tris(和光純薬社製)を含む110mM食塩水溶液(pH6.0)及び溶離液Bとして300mMリン酸緩衝液(pH7.0)を用いて、実施例4に準じてヘモグロビン類の測定を行った。得られたクロマトグラムは、図5及び図6と同様であった。
【0075】
(比較例4)
実施例4と同様にして充填剤4をカラムに充填し、溶離液Aとして100mMリン酸緩衝液(pH5.5)及び溶離液Bとして300mMリン酸緩衝液(pH7.0)を用いて、実施例4に準じて(溶離液A及びBの通流時間は、実用的な測定時間の範囲内で、できるだけ良好な分離ができるように変えた)、ヘモグロビン類の測定を行った。得られたクロマトグラムを図7(試料A)及び図8(試料D)に示す。
図5及び図6に比較して、測定時間が長いにもかかわらず、分離能が悪いことが分かる。
【0076】
(比較例5)
実施例5と同様にして充填剤5をカラムに充填し、溶離液Aとして100mMリン酸緩衝液(pH5.9)及び溶離液Bとして300mMリン酸緩衝液(pH7.0)を用いて、実施例4に準じて(溶離液A及びBの通流時間は、実用的な測定時間の範囲内で、できるだけ良好な分離ができるように変えた)、ヘモグロビン類の測定を行った。得られたクロマトグラムは図7及び図8と同様であった。
【0077】
参考例6)
実施例4と同様にして充填剤4をカラムに充填し、溶離液Aとして10mMの濃度でコハク酸を含む100mM食塩水溶液(pH5.3)、溶離液Bとして10mMの濃度でコハク酸を含む200mM食塩水溶液(pH5.3)、溶離液Cとして10mMの濃度でコハク酸を含む400mM食塩水溶液(pH5.8)を用いて、測定開始より0〜0.3分の間は溶離液Aを流し、0.3〜1.0分の間は溶離液Bを流し、1.0〜1.2分の間は溶離液Cを流し、1.2〜2.0分の間は溶離液Aを再び流したことの他は、実施例4に準じて(但し、試料注入量は10μl)ヘモグロビン類の測定を行った。試料Aを用いて得られたクロマトグラムを図9に、試料Dを用いて得られたクロマトグラムを図10に示した。図9では、ピーク3及び4が良好に分離されている。また、図10ではAHbやCHbのような修飾ヘモグロビンも良好に分離されていることがわかる。
【0078】
(比較例6)
参考例6と同様にして充填剤4をカラムに充填し、溶離液Aとして100mMリン酸緩衝液(pH5.3)、溶離液Bとして120mMリン酸緩衝液(pH5.3)及び溶離液Cとして400mMリン酸緩衝液(pH5.9)を用いて、参考例6に準じて(溶離液A、B及びCの通流時間は、実用的な測定時間の範囲内で、できるだけ良好な分離ができるように変えた)、ヘモグロビン類の測定を行った。試料Aを用いて得られたクロマトグラムを図11に、試料Dを用いて得られたクロマトグラムを図12に示した。図9及び図10に比較して、測定時間が長いにもかかわらず、分離能が悪いことが分かる。
【0079】
【発明の効果】
本発明1の測定方法によれば、従来のヘモグロビン類の測定法における問題点であった測定時間の延長や、分離性能が解決され、短時間内に、かつ高精度にヘモグロビン類を分離できる。
【0080】
本発明2の測定方法によれば、従来短時間では分離が困難であった不安定型HbA1cを安定型HbA1cから分離できるため、従来より短時間で、精度良く、ヘモグロビン類を測定できる。また、AHb、CHbのような修飾ヘモグロビンも安定型HbA1cより分離でき、またAHbとCHbも分離できるため、それぞれを定量することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 参考例1の測定条件により、試料Aのヘモグロビン類の測定を行った際に得られたクロマトグラムを示す図。
【図2】 参考例1の測定条件により、試料Dのヘモグロビン類の測定を行った際に得られたクロマトグラムを示す図。
【図3】比較例1の測定条件により、試料Aのヘモグロビン類の測定を行った際に得られたクロマトグラムを示す図。
【図4】比較例1の測定条件により、試料Dのヘモグロビン類の測定を行った際に得られたクロマトグラムを示す図。
【図5】実施例4の測定条件により、試料Aのヘモグロビン類の測定を行った際に得られたクロマトグラムを示す図。
【図6】実施例4の測定条件により、試料Dのヘモグロビン類の測定を行った際に得られたクロマトグラムを示す図。
【図7】比較例4の測定条件により、試料Aのヘモグロビン類の測定を行った際に得られたクロマトグラムを示す図。
【図8】比較例4の測定条件により、試料Dのヘモグロビン類の測定を行った際に得られたクロマトグラムを示す図。
【図9】 参考例6の測定条件により、試料Aのヘモグロビン類の測定を行った際に得られたクロマトグラムを示す図。
【図10】 参考例6の測定条件により、試料Dのヘモグロビン類の測定を行った際に得られたクロマトグラムを示す図。
【図11】比較例6の測定条件により、試料Aのヘモグロビン類の測定を行った際に得られたクロマトグラムを示す図。
【図12】比較例6の測定条件により、試料Dのヘモグロビン類の測定を行った際に得られたクロマトグラムを示す図。
【符号の説明】
1 HbA1a及びHbA1bのピーク
2 HbFのピーク
3 不安定型HbA1cのピーク
4 安定型HbA1cのピーク
5 HbA0のピーク
6 AHbのピーク
7 CHbのピーク

Claims (3)

  1. 液体クロマトグラフィーによるヘモグロビン類の測定方法であって、スルホン酸基を有する充填剤を用い、かつ、スルホン酸基を有する化合物を含む緩衝液を溶離液として用いることを特徴とするヘモグロビン類の測定方法。
  2. 液体クロマトグラフィーによるヘモグロビン類の測定方法であって、リン酸基を有する充填剤を用い、かつ、リン酸基を有する化合物を含む緩衝液を溶離液として用いることを特徴とするヘモグロビン類の測定方法。
  3. 液体クロマトグラフィーによるヘモグロビン類の測定方法であって、カルボキシル基を有する充填剤を用い、かつ、カルボキシル基を有するグッド(Good)の緩衝液を溶離液として用いることを特徴とするヘモグロビン類の測定方法。
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