JP4982922B2 - γ−アミノ酪酸含量を高めた食品素材の製造方法 - Google Patents

γ−アミノ酪酸含量を高めた食品素材の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は新規な食品素材の製造方法、詳細には、γ−アミノ酪酸含量を高めた食品素材の新規な製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
γ−アミノ酪酸は、化学式H2NCH2CH2CH2COOHで表される動植物の生体内に存在するアミノ酸の一種である。γ−アミノ酪酸は抑制性神経伝達物質のひとつとして1950年代に同定され、その後、その薬理的効果に対する関心が高まり、広く研究が展開された。その結果、モリ、『ジャーナル・オブ・バイオケミストリー』、第45巻、第12号、985頁(1958年)、高橋ら、『臨内小』、第14巻、第4号、527乃至532頁(1959年)、勝木ら、『総合医学』、第16巻、第3号、349乃至359頁(1959年)、柴田、『脳と神経』、第19巻、第3号、231頁(1967年)などに見られるとおり、γ−アミノ酪酸は、血圧上昇抑制作用、脳代謝促進作用、脳血管障害の諸症状の改善作用、頭部外傷に伴う諸症状の改善作用、筋萎縮性疾患の改善作用等の諸種の作用を示すことが明かとなっている。また、塚田、『日本医師会雑誌』、第42巻、第8号、571乃至579頁に記載されているとおり、γ−アミノ酪酸は安全性の点においても問題のないことが確認されている。
【0003】
以上のような作用故に、諸種の疾患、とりわけ、生活習慣病と深く関わりのある高血圧症に対するγ−アミノ酪酸の治療・予防効果に注目が集まり、十分量のγ−アミノ酪酸の摂取に対する要望が斯界では高まっている。そして、この要望に応えるための方策が現在までに広く検討されている。例えば、特開平7−213252号公報には、米又は小麦の胚芽や麸(ふすま)を所定の条件下で水に浸漬する工程を経て得られた、γ−アミノ酪酸含量を高めた食品素材が開示されている。また、特開平9−238650号公報には、グルタミン酸及び/又はグルタミン酸ナトリウムに酵母を作用させることを特徴とするγ−アミノ酪酸含量を高めた食品素材の製造方法が開示されている。
【0004】
以上のような従来の技術による食品素材は、一般的な食品においては通常は主原料としては用いられないものを始発材料としていることから、これを食品に配合して利用する場合には、その食品の風味や食感に影響を与えない範囲で少量を添加するに留めざるを得ない。したがって、従来の技術による食品素材を、日常食と同様に違和感なく利用でき、かつ、十分量のγ−アミノ酪酸を摂取できる食品に加工することは必ずしも容易ではない。また、従来の技術による食品素材を、例えば、錠剤などの形態でγ−アミノ酪酸補給用剤として利用することも考えられるけれども、このような利用方法は、医薬品を服用するような煩雑さを利用者に強いることとなる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者等は、上記のような従来の技術の現状を踏まえると、十分量のγ−アミノ酪酸を日常生活を送る上で無理なく摂取できるようにする方策の確立が急務であると考えた。しかしながら、そのような方策の確立を目指した研究はこれまで一切為されていない。
【0006】
日常的に十分量のγ−アミノ酪酸を無理なく摂取するための方策としては、例えば、工業的に製造され、食品級に精製されたγ−アミノ酪酸を所望量添加して製造した日常食の提供が考えられる。しかしながら、このような精製されたγ−アミノ酪酸の添加は最終製品の高コスト化を招き、結果として、日常的なγ−アミノ酪酸の摂取の機会が制限されることになる。
【0007】
斯かる状況に鑑み、本発明の課題は、最終製品の高コスト化を招くことなく日常的な諸種の食品の主原料として広く利用することができ、かつ、十分量のγ−アミノ酪酸の摂取を可能とする、γ−アミノ酪酸含量を高めた食品素材の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記の課題を解決する手段を検討するにあたって、穀類が数多くの食品において主原料のひとつとして広く利用されていることに着目した。そして、穀類から、上記の課題を解決しうる食品素材を得るための製造方法の確立を目指して鋭意研究した。具体的には、諸種の条件下で穀類を加工し、得られた加工物のγ−アミノ酪酸含量を求めるとともに、得られた加工物を食品に配合した際の、その風味、食感について詳細に検討した。その結果、穀類の破砕物に、別途調製された蛋白質分解酵素を共存させ、該酵素が活性を発揮する条件下で該破砕物を保持するという比較的単純な工程によって、γ−アミノ酪酸が顕著に生成することが確認された。しかも、この工程を経て得られた穀類の加工物は、小麦粉や米粉などといった従来からの一般的な方法で調製された穀類の加工物と同様に、諸種の食品の主原料のひとつとして広く利用することができ、これを主原料のひとつとして製造した食品は、風味、食感ともに良好であり、日常食として全く違和感なく利用できることも確認された。本発明は、以上の本発明者等による独自の研究成果によって完成されたものである。
【0009】
すなわち、本発明は、穀類の破砕物の1種又は2種以上に、別途調製された蛋白質分解酵素を共存させ、該酵素が活性を発揮する条件下で該破砕物を保持する工程を含んでなる、γ−アミノ酪酸含量を高めた食品素材の製造方法を提供することによって上記の課題を解決するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明は、γ−アミノ酪酸含量を高めた食品素材の製造方法に関するものである。本発明によるγ−アミノ酪酸含量を高めた食品素材の製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」又は「当該製造方法」という場合がある。)は、穀類から選ばれる1種又は2種以上の破砕物を始発材料として用いて、これを、別途調製された蛋白質分解酵素の共存下、該酵素が活性を発揮する条件下で保持する工程を含むことを特徴とする。本発明でいうγ−アミノ酪酸とは、化学式H2NCH2CH2CH2COOHで表される化合物ならびにその塩を意味する。
【0011】
本発明でいう穀類について以下述べると、『丸善食品総合辞典』(丸善株式会社、平成10年3月25日発行)、393頁、右欄では、穀類を「食糧・飼料として利用されるイネ科作物の種子」であると定義した上で、「イネ科作物の種子を禾穀(かこく)類、マメ科作物の種子を菽穀(しゅこく)類とよび、両者を穀類とする場合もある」と記載されている。本発明でいう穀類とは、上記の辞典でいう後者の定義にしたがって、食糧・飼料として利用される禾穀類又は菽穀類に属する種子全般を意味するものとする。因みに、禾穀類の具体例としては、米、小麦、大麦、ライ麦、とうもろこしなどが挙げられ、菽穀類の具体例としては、大豆、いんげん豆、落花生、小豆などが挙げられる。
【0012】
また、本発明でいう穀類とは、上記の「食糧・飼料として利用される」との定義にしたがって、その可食部を含んでいる限り、未精穀の種子ならびに精穀された種子を包含するものとする。禾穀類は一般に有胚乳種子であり、その主たる可食部は胚乳である。菽穀類は一般に無胚乳種子であり、その主たる可食部は子葉である。したがって、本発明でいう穀類とは、禾穀類においては、胚乳を含んでいる精穀された種子をも包含し、菽穀類においては、子葉を含んでいる精穀された種子をも包含する。また、本発明において穀類の名称の後に「全粒」を付した用語(「小麦全粒」等)は、米を除いて、植物体から単離されたままの状態の種子を意味する。米については、一般に、その精穀の度合いに応じて分類して名称が付されており、本発明においてもその一般的な分類にしたがうものとする。因みに本発明でいう玄米とは、稲の籾から単離されたままの状態の米、胚芽米とは、実質的に胚芽と胚乳からなる米、精白米とは、実質的に胚乳のみからなる米をそれぞれ意味する。
【0013】
本発明の製造方法においては、上記のような穀類から適宜選ばれる1種又は2種以上の破砕物を始発材料として用いる。斯かる破砕物は、目的とする穀類を、ロール機を用いるなど通常の製粉の方法にしたがうか、必要に応じて、目的とする穀類に加水した条件下で、これを適宜の方法により破砕することにより得ることができる。また、米粉、小麦粉、大麦粉、ライ麦粉、コーングリッツ(とうもろこし胚乳の破砕物)、大豆粉など一般に入手可能な穀粉を始発材料として利用することもできる。
【0014】
また、穀類の破砕物の調製に先立って、植物体から単離されたままの状態の種子を水中で保持することも有利に実施できる。この工程を追加することにより、本発明による製造方法におけるγ−アミノ酪酸の生成量が向上する場合がある。ただし、穀類の水中での保持は、穀類の発芽を促し、その結果、青臭みが生じるなど製品の風味に悪影響を及ぼしたり、製品への雑菌汚染を招く場合もある。また、γ−アミノ酪酸含量の必要以上の上昇は、穀類が本来有している蛋白質の過度の分解につながり、結果として、製品の食感に関わる物理的性状に悪影響を及ぼす場合もある。したがって、穀類の水中での保持を行う場合には、比較的低温で、通常、0℃を超え、かつ、30℃以下、望ましくは、25℃以下で、比較的短時間、通常、30分乃至24時間、望ましくは、1時間乃至16時間程度の範囲で、最終製品の利用形態・利用分野など目的に応じて行うのが望ましい。
【0015】
以上のような穀類の破砕物は、いずれも本発明の実施において始発材料として利用することができるけれども、以下に詳述する、個々の穀類の破砕物の特性を踏まえた上で、本発明の製造方法による食品素材の利用分野・利用形態など目的に応じて適宜選択される1種又は2種以上の穀類の破砕物を用いるのが望ましい。
【0016】
禾穀類の胚乳は植物にとっての貯蔵成分、例えば、澱粉や貯蔵蛋白質などを比較的多く含む。これに対して、その胚芽は植物の発芽に必要な成分、例えば、酵素類が比較的多く含まれ、この中には、本発明の製造方法におけるγ−アミノ酪酸の生成に関わる酵素類も通常は含まれる。本発明の製造方法における禾穀類の胚乳の破砕物を始発材料として利用することは、本発明の製造方法による食品素材が、風味、食感の点で、本発明の課題を解決する特性を満足する上で不可欠である。一方、胚芽を含んでいる禾穀類の破砕物を始発材料として利用することは、本発明による食品素材のγ−アミノ酪酸含量を高める上で有利である。したがって、禾穀類のみを利用する場合には、胚芽を含んでいる種子の破砕物、例えば、玄米、胚芽米、小麦全粒、大麦全粒、ライ麦全粒、とうもろこし全粒などの破砕物の使用を基本とし、これに、必要に応じて、胚乳の破砕物、例えば、米粉、小麦粉、大麦粉、ライ麦粉、コーングリッツなどを適宜組み合わせるのが望ましい。
【0017】
菽穀類のほとんどの部分を占める子葉には、通常、貯蔵物質と酵素類とが含まれているので、菽穀類の破砕物を始発材料とする場合、通常、最終製品の風味、食感ならびにγ−アミノ酪酸含量の点で共に良好な食品素材が得られる。また、菽穀類の破砕物を、禾穀類の胚乳の破砕物と組み合わせて始発材料とすることは、禾穀類の胚乳に由来する風味、食感を生かすとともに、γ−アミノ酪酸含量の向上につながるので、目的に応じて有利に実施できる。さらに、菽穀類、胚芽を含んでいる禾穀類、及び禾穀類の胚乳を組み合わせて利用することも、目的に応じて有利に実施できる。
【0018】
以上のとおり、本発明の実施においては、上述したような穀類の破砕物から目的に応じて適宜選ばれる1種又は2種以上が利用できるけれども、米、小麦、大豆の破砕物は、従来の食品における使用頻度が比較的高いので、本発明の製造方法による食品素材を違和感なく食するという観点からは、米、小麦又は大豆の破砕物を用いるのが比較的望ましい。また、下記の実施例に示すとおり、穀類の種類によって、本発明の製造方法に供したときのγ−アミノ酪酸の生成量は異なり、小麦や大豆の破砕物からのγ−アミノ酪酸の生成量は、他の穀類からの場合に比べて比較的高いので、より高含量でγ−アミノ酪酸が含まれる食品素材の製造が望まれる場合には、小麦及び/又は大豆の破砕物を始発材料とするのが特に望ましい。
【0019】
本発明でいう、別途調製された蛋白質分解酵素(一般に、蛋白質分解酵素は、プロテアーゼ、ペプチダーゼ又はプロテイナーゼとも呼ばれる。)とは、始発材料としての穀類の破砕物とは別に準備された、微生物、植物又は動物起源の蛋白質分解酵素の調製品であって、該酵素を産生している微生物、植物又は動物の細胞ないしは組織を破砕し、必要に応じて、抽出、分画等の酵素を精製するための慣用の方法に供して、給源から部分精製もしくは完全精製された状態にある該酵素の調製品を意味する。蛋白質分解酵素には、種々の反応様式を示すものがあるけれども、本発明で用いる該酵素は、本発明の製造方法で利用したときγ−アミノ酪酸含量の上昇を達成するものである限り、特定の反応様式のものに限定されない。蛋白質分解酵素は一般に、その反応様式により、蛋白質の末端ないしはその近傍のペプチド結合に作用するエキソ型プロテアーゼと、蛋白質の内部のペプチド結合に作用するエンド型プロテアーゼに分類され、これらはいずれも本発明に有利に利用でき、両者を組み合わせて利用するのが特に望ましい。本発明で利用できる、蛋白質分解酵素の具体例としては、例えば、麹、枯草菌、黴、酵母などの微生物や、パパイアなどの植物などから調製されたエンド型ならびにエキソ型の該酵素が挙げられ、これらは、食品製造用酵素製剤として種々市販もされているので(ノボザイムズ・ジャパン株式会社販売等)、これらを適宜利用することも随意である。さらにまた、蛋白質分解酵素としては植物組織や微生物の破砕物や、該破砕物からの該酵素の部分精製品もしくは完全精製品を利用することもできる。例えば、大麦・小麦・米などの穀類の胚芽や、穀類の幼植物体ないしはその一部分、さらには、麹、乳酸菌、酵母、黴などの微生物などから破砕、抽出、分画等の適宜の処理により調製された蛋白質分解酵素含有画分を利用することもできる。以上のような酵素のうち、本発明の実施において特に有用なもののひとつは、麹から調製された蛋白質分解酵素である。以上のような部分精製もしくは完全精製された蛋白質分解酵素を用いることは、γ−アミノ酪酸含量の高い食品素材が得られるのみならず、精製されていない酵素、例えば、微生物の生菌や細胞形態を維持している植物組織などを用いる場合と比べると目的とする反応以外の反応の進行が弱いために、風味や食感の点で本発明の目的によりよく合致した食品素材が得られるという特徴がある。
【0020】
以上のような蛋白質分解酵素を穀類の破砕物に共存させ、これを該酵素が活性を発揮する条件下で保持する工程により、γ−アミノ酪酸の生成反応を進行させることができる。ここでいう、「蛋白質分解酵素を穀類の破砕物に共存させる」とは、蛋白質分解酵素が穀類の破砕物中の蛋白質に作用するように両者を混合することを意味する。蛋白質分解酵素の共存下で穀類の破砕物を保持する条件は、該酵素が活性を発揮するとともに、目的に応じて添加される他の酵素(後述)による反応の進行を妨げないものである限り特に制限はないけれども、効率的なγ−アミノ酪酸の生成とともに、呈味・食感の良好な食品素材の製造を両立させるという観点からは、固形物含量を、通常、30%(w/w)乃至90%(w/w)、望ましくは、35%(w/w)乃至80%(w/w)とした水系で、温度を、通常、20℃乃至60℃の範囲、望ましくは、30℃乃至50℃の範囲とし、pHを、通常、弱酸性域乃至弱アルカリ性域、望ましくは、pH4乃至pH9、より望ましくは、pH5乃至pH8の範囲とし、時間は、通常、2時間乃至24時間の範囲、望ましくは、4時間乃至12時間の範囲で、必要に応じて適宜撹拌しながら行うのが望ましい。
【0021】
なお、上記の工程における反応は、穀類由来の他の成分、例えば、セルロース、ヘミセルロース、ペクチンなどの多糖類や油脂などにより阻害をうけ、γ−アミノ酪酸の生成量に悪影響を及ぼす場合がある。このような問題はセルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼなどの多糖分解酵素や乳化剤をさらに併用することにより回避し得る。市販の食品製造用酵素剤には、蛋白質分解酵素と多糖分解酵素とを配合した酵素剤もある(長瀬産業販売等)ので、原料や製品の用途に応じて該酵素剤を本発明の実施に利用することも随意である。また、グルタミンをグルタミン酸に変換する酵素であるグルタミナーゼを上記の工程においてさらに添加することによりγ−アミノ酪酸の生成量のさらなる上昇が達成される場合がある。ただし、蛋白質分解酵素以外の以上のような酵素や乳化剤の併用は、場合によっては、製品の風味や食感に悪い影響を与える可能性もあるので、これらの併用は製品の利用分野や利用形態など目的に応じて実施するのが望ましい。
【0022】
上記の工程による産物中には、上記の工程を経ていない穀類もしくはその加工物と比べると、γ−アミノ酪酸が顕著に多量に含まれている。斯かる産物は、そのままの状態でγ−アミノ酪酸含量が高められた食品素材として利用することが可能である。一方、上記の工程による産物は、必要に応じて、加熱、加圧、脱水、濾過、乾燥、粉砕、成型等の適宜の処理を施した上で、ペースト、粉末、ブロック、ペレット等の所望の形態で製品とすることも随意である。本発明の製造方法によって得ることができる食品素材のγ−アミノ酪酸含量は、その始発材料として用いる穀類の種類や組合わせなどにもよるけれども、例えば、小麦全粒から得られる当該食品素材の場合、固形物100g当たり、通常、100mg以上、好適な場合には、160mg以上、大豆全粒から得られる当該食品素材の場合、固形物100g当たり、通常、240mg以上、好適な場合には、260mg以上、玄米から得られる当該食品素材の場合、固形物100g当たり、通常、30mg以上、好適な場合には、33mg以上である。以上のような本発明による食品素材は、これを配合して諸種の食品に加工することにより、十分量のγ−アミノ酪酸を日常的に無理なく摂取することが可能となる。
【0023】
以上のようにして得られる本発明による食品素材は、それ自体で業務用又は家庭用の食品素材として、また、家畜、家禽、愛玩動物などの動物用の飼料や該飼料に配合する素材として利用することができる。また、当該食品素材を主原料のひとつとして用いて食品を製造することも有利に実施できる。本発明は、当該食品素材を含有する食品を提供するものでもある。当該食品素材を含有させて良好な風味、食感を得ることができる食品としては、例えば、うどん、そうめん、冷や麦、きしめん、中華麺、そば、ビーフン、はるさめ、即席麺などの麺類、スパゲティ、マカロニ、バーミセリなどのパスタ類、食パン、ロールパン、硬焼きパン、菓子パン、調理パン、揚げパン、蒸しパン、フランスパン、ドイツパン、イタリアパン、平焼きパン(非膨化パン)などのパン類、ハードビスケット、ソフトビスケット、ファンシービスケット、スコーン、クッキーなどのビスケットもしくはクッキー類、コーンフレーク、オートミールなどのシリアル食品類、ポテトチップ、プレッツェル、コーンチップなどのスナック菓子類、スポンジケーキ、バターケーキ、シュー菓子、パイ、クリームゼリーケーキ、プディングなどのケーキ類、落雁、あられ、煎餅、かりんとうなどの干菓子類、餅、饅頭、蒸し羊羹、カステラ、どら焼、きんつば、牛皮などの生菓子類、最中、羊羹などの半生菓子類などの穀類加工食品が挙げられる。以上のような穀類加工食品は、従来の穀類加工食品における原料の穀類粉末の少なくとも一部、通常、固形物重量換算で、5%乃至100%、望ましくは、10%乃至80%、より望ましくは、20%乃至60%相当を、これに対応する穀類から得られた本発明による食品素材で置き換えて製造することにより得ることができる。また、従来の穀類加工食品に利用される以外の穀類から得た本発明による食品素材を、斯かる従来の加工食品に配合することによって、従来のものとは異なる風味、食感の食品を製造することもできる。さらに、本発明による食品素材の用途は、これを主原料とする食品に限定されず、例えば、目的とする食品の風味に影響を及ぼさない範囲で当該食品素材を添加して、食品へのγ−アミノ酪酸の強化用剤として利用することも随意である。さらにまた、当該食品素材に適宜の添加物や他の食品素材を加えた上で、発酵食品の製造に通常利用される乳酸菌、麹、酵母、黴などの微生物を接種し、本発明による食品素材に含まれているγ−アミノ酪酸を消費させない範囲で発酵させて発酵食品を得ることもできるので、本発明による食品素材は、γ−アミノ酪酸含量を高めたヨーグルト等の発酵食品ならびに発酵飲料の原料あるいは添加物としても有用である。本発明による食品素材を含む以上のような食品は、従来の食品と違和感のない、あるいは、従来の食品とは異なる良好な風味、食感を示すので、γ−アミノ酪酸に感受性を示す、例えば、高血圧症をはじめとする生活習慣病を予防もしくは改善するための食品として有用である。
【0024】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。
【0025】
【実施例1】
〈γ−アミノ酪酸含量を高めた食品素材の小麦粒からの製造〉100重量部の日本産小麦全粒(「規格外内麦小麦A」)に水を加えながら破砕し、170重量部の小麦ペーストを得た。このペーストを3N酢酸を用いてpH5.5に調整し、蛋白質分解酵素剤(ノボザイムズ・ジャパン株式会社販売、商品名『フレーバーザイム 1000L』。アペルギルス・オリゼ由来のエンド型プロテアーゼ及びエキソ型プロテアーゼの混合酵素剤。製剤1g当たり1000ロイシンアミノペプチダーゼ単位。なお、1ロイシンアミノペプチダーゼ単位は1分間に1μmolのL−ロイシン−P−ニトロアニリドを生成する酵素量を意味する。)を0.6重量部加え、混合物を随時撹拌しながら40℃で8時間保持した。この反応混合物を急速凍結(−50℃)させた後、これを凍結乾燥した。この凍結乾燥物を粉砕機にかけて、粉末状の本発明による食品素材を得た。
【0026】
上記の食品素材の一部を採取し、0.02N塩酸中でホモジナイズしてアミノ酸類を抽出し、その上澄液をアミノ酸分析計(日立製作所製、『日立835型高速アミノ分析計』及び『日立D−7000型インテグレーション』)により分析しγ−アミノ酪酸含量を求めた。また、第一法規出版発行、『第十三改正日本薬局方』(1996年)、34頁に記載の乾燥減量試験法にしたがって、上記の食品素材の水分含量を求めた。上記の食品素材は、γ−アミノ酪酸を固形物100g当たり約160mg含有するものであった。
【0027】
対照として、蛋白質分解酵素剤の添加を省略した以外は上記と同じ操作を行い、得られた粉末を、上記と同様に分析した。斯くして得た対照の粉末は、γ−アミノ酪酸を固形物100g当たり約75mg含有するものであった。以上の結果は、本発明の製造方法によれば、γ−アミノ酪酸含量が顕著に高められた食品素材が、複雑な工程を経ることなく穀類から製造できることを示している。本実施例による食品素材は、麺類、パスタ類、パン類、クッキー類をはじめとする諸種の食品の主原料のひとつとして利用でき、本実施例による食品素材を含有する食品は、風味、食感ともに良好な日常食として利用でき、斯かる食品の利用によって、十分量のγ−アミノ酪酸を無理なく摂取することができる。
【0028】
【実施例2】
〈γ−アミノ酪酸含量を高めた食品素材の大豆からの製造〉
100重量部の日本産大豆全粒(「タマホマレ」)に水を加えながら破砕し、250重量部の大豆ペーストを得た。このペーストを3N酢酸を用いてpH5.5に調整し、蛋白質分解酵素剤(ノボザイムズ・ジャパン株式会社販売、商品名『フレーバーザイム 1000L』)を1.8重量部加え、混合物を随時撹拌しながら40℃で8時間保持した。この反応混合物を急速凍結(−50℃)させた後、これを凍結乾燥した。この凍結乾燥物を粉砕機にかけて、粉末状の本発明による食品素材を得た。
【0029】
上記の食品素材の一部を採取し、実施例1と同様にγ−アミノ酪酸及び水分の含量を求めた。上記の食品素材は、上記の食品素材はγ−アミノ酪酸を固形物100g当たり約260mg含有するものであった。
【0030】
対照として、蛋白質分解酵素剤の添加を省略した以外は上記と同じ操作を行い、得られた粉末を、実施例1と同様に分析した。斯くして得た対照の粉末は、γ−アミノ酪酸を固形物100g当たり約220mg含有するものであった。以上の結果は、本発明の製造方法によれば、γ−アミノ酪酸含量が顕著に高められた食品素材が、複雑な工程を経ることなく穀類から製造できることを示している。本実施例による食品素材は、麺類、パスタ類、パン類、クッキー類をはじめとする諸種の食品の主原料のひとつとして利用でき、本実施例による食品素材を含有する食品は、風味、食感ともに良好な日常食として利用でき、斯かる食品の利用によって、十分量のγ−アミノ酪酸を無理なく摂取することができる。
【0031】
【実施例3】
〈γ−アミノ酪酸含量を高めた食品素材の米からの製造〉
100重量部の日本産玄米(「アケボノ」)を、流水に浸漬し、15℃で4時間保持した。水浸漬後の玄米を回収し、これに水を加えながら破砕し、200重量部の米ペーストを得た。このペーストを3N酢酸を用いてpH5.5に調整し、蛋白質分解酵素剤(ノボザイムズ・ジャパン株式会社販売、商品名『フレーバーザイム 1000L』)を0.4重量部加え、混合物を随時撹拌しながら40℃で8時間保持した。この反応混合物を急速凍結(−50℃)させた後、これを凍結乾燥した。この凍結乾燥物を粉砕機にかけて、粉末状の本発明による食品素材を得た。
【0032】
上記の食品素材の一部を採取し、実施例1と同様にγ−アミノ酪酸及び水分の含量を求めた。上記の食品素材は、上記の食品素材はγ−アミノ酪酸を固形物100g当たり約33mg含有するものであった。
【0033】
対照として、蛋白質分解酵素剤の添加を省略した以外は上記と同じ操作を行い、得られた粉末を、実施例1と同様に分析した。斯くして得た対照の粉末は、γ−アミノ酪酸を固形物100g当たり約28mg含有するものであった。以上の結果は、本発明の製造方法によれば、γ−アミノ酪酸含量が顕著に高められた食品素材が、複雑な工程を経ることなく穀類から製造できることを示している。本実施例による食品素材は、麺類、パスタ類、パン類、クッキー類をはじめとする諸種の食品の主原料のひとつとして利用でき、本実施例による食品素材を含有する食品は、風味、食感ともに良好な日常食として利用でき、斯かる食品の利用によって、十分量のγ−アミノ酪酸を無理なく摂取することができる。
【0034】
【実施例4】
〈γ−アミノ酪酸含量を高めた食品素材の小麦、大豆及び米からの製造〉
100重量部の日本産小麦全粒(「規格外内麦小麦A」)、100重量部の日本産大豆全粒(「タマホマレ」)、及び100重量部の日本産玄米(「アケボノ」)を混合し、この混合物を水を加えながら破砕し、600重量部の穀類ペーストを得た。このペーストを3N酢酸を用いてpH5.5に調整し、蛋白質分解酵素剤(ノボザイムズ・ジャパン株式会社販売、商品名『フレーバーザイム 1000L』)を3重量部加え、混合物を随時撹拌しながら40℃で8時間保持した。この反応混合物を急速凍結(−50℃)させた後、これを凍結乾燥した。この凍結乾燥物を粉砕機にかけて、粉末状の本発明による食品素材を得た。
【0035】
上記の食品素材の一部を採取し、実施例1と同様にγ−アミノ酪酸及び水分の含量を求めた。上記の食品素材は、上記の食品素材はγ−アミノ酪酸を固形物100g当たり約120mg含有するものであった。本実施例による食品素材は、麺類、パスタ類、パン類、クッキー類をはじめとする諸種の食品の主原料のひとつとして利用でき、本実施例による食品素材を含有する食品は、風味、食感ともに良好な日常食として利用でき、斯かる食品の利用によって、十分量のγ−アミノ酪酸を無理なく摂取することができる。
【0036】
【実施例5】
〈γ−アミノ酪酸含量を高めた食品素材を含有する食品〉
70重量部の小麦粉(強力粉)、20重量部の実施例1による食品素材、5重量部の実施例2による食品素材、5重量部の実施例3による食品素材、2重量部のパン酵母、1.5重量部の食塩1.5、5重量部の砂糖、5重量部のショートニング、及び60重量部の水を、温度27℃の環境下で均一に混合し、十分に捏ね上げて生地を得た。この生地を、温度27℃、相対湿度70%の環境下で、常法により、第一膨張、ガスぬき、第二膨張の工程に供して発酵させた後、仕上げとして、常法により、生地の分割、ねかし、整形・型詰め、ほいろの工程に供し、さらに、仕上げ後の生地を温度約220℃のオーブンで約30分間焼成し、室温にまで放冷して、本発明による食品素材を含有するパンを得た。
【0037】
本品は、γ−アミノ酪酸を豊富に含む上に、風味、食感ともに良好で、日常食として全く無理なく利用することができる。本品は、通常のパンと同程度の量を日常的に食して利用する、γ−アミノ酪酸に感受性を示す、高血圧症などの生活習慣病に関連する諸症状の予防・改善用の食品として有用である。
【0038】
【実施例6】
〈γ−アミノ酪酸含量を高めた食品素材を含有する食品〉
60重量部の小麦粉(中力粉)、10重量部の小麦粉(強力粉)、25重量部の実施例1による食品素材、5重量部の実施例3による食品素材、及び37.5重量部の12%(w/w)食塩水を、温度20℃の環境下で、捏機を用いて均一に混合した後、製麺機を用いて製麺した。得られた麺を常法により加熱乾燥し、一定の長さに切りそろえて、本発明による食品素材を含有する乾麺としてのうどんを得た。
【0039】
本品は、γ−アミノ酪酸を豊富に含む上に、風味、食感ともに良好で、日常食として全く無理なく利用することができる。本品は、通常のうどんと同程度の量を食して利用する、γ−アミノ酪酸に感受性を示す、高血圧症などの生活習慣病に関連する諸症状の予防・改善用の食品として有用である。
【0040】
【実施例7】
〈γ−アミノ酪酸含量を高めた食品素材を含有する食品〉
300重量部の実施例4による食品素材、2.5重量部の食塩、23重量部のトレハロース、1.5重量部の炭酸水素ナトリウム、及び100重量部の水を均一に混合した後、十分に捏ね上げて生地を得た。この生地を通常のパンの製法に準じてねかせた後、直径約5mm、長さ約6cmの円柱状に整形し、約160℃に加熱した食用油で揚げて、本発明による食品素材を含有するかりんとうを得た。
【0041】
本品は、γ−アミノ酪酸を豊富に含む上に、風味、食感ともに良好で、おやつなどとして日常的に無理なく利用することができる。本品は、γ−アミノ酪酸に感受性を示す、高血圧症などの生活習慣病に関連する諸症状の予防・改善用の食品として有用である。
【0042】
【実施例8】
〈γ−アミノ酪酸含量を高めた食品素材を含有する食品〉
100重量部の実施例2による食品素材、50重量部の実施例3による食品素材、及び300重量部の牛乳を均一に混合し、80℃で5分間保持した後、30重量部のマルトースをこれに添加し、さらに混合してマルトースを溶解させた。この混合物を室温にまで冷却した後、これに24重量部のプレーンヨーグルトを添加し、混合した後、37℃で6時間保持して発酵させた。さらに適量の麦芽糖水飴を加えて甘味を調整した後、180ml容の容器に充填し、凍結させて、本発明の食品素材を含有するフローズンヨーグルトを得た。
【0043】
本品は、γ−アミノ酪酸を豊富に含む上に、風味、食感ともに良好で、デザートなどとして日常的に無理なく利用することができる。本品は、γ−アミノ酪酸に感受性を示す、高血圧症などの生活習慣病に関連する諸症状の予防・改善用の食品として有用である。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明は、穀類の破砕物を、別途調製された蛋白質分解酵素の共存下で、該酵素が活性を発揮する条件下で保持することにより、多くの食品の主原料として利用できる風味、食感を示し、かつ、γ−アミノ酪酸含量が顕著に高められた食品素材が得られるという本発明者等による独自の発見に基づくものである。本発明の製造方法による食品素材は、高血圧症をはじめとする諸種の症状の予防・改善用の食品の主原料として、また、動物の健康を維持するための飼料ないしはその主原料として有用である。
【0045】
本発明は、斯くも有用な効果を発揮する、斯界に貢献すること誠に多大な意義のある発明である。

Claims (4)

  1. 小麦全粒を、水を加えながら破砕する工程と、得られた破砕物にアスペルギルス・オリゼ由来の蛋白質分解酵素を共存させ、当該蛋白質分解酵素が作用する条件下で、2時間乃至24時間保持する工程とを含んでなるγ−アミノ酪酸を固形分100g当たり100mg以上含有する食品素材の製造方法。
  2. 麦粉をさらに用いる請求項1記載のγ−アミノ酪酸含量を高めた食品素材の製造方法。
  3. 蛋白質分解酵素として、エンド型プロテアーゼ及び/又はエキソ型プロテアーゼを用いる請求項1又は2記載のγ−アミノ酪酸含量を高めた食品素材の製造方法。
  4. 蛋白質分解酵素が作用する条件が、pH4乃至10、温度20℃乃至60℃の条件下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のγ−アミノ酪酸含有を高めた食品素材の製造方法。
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