【特許請求の範囲】
1 乾式成型用マツトを熱圧成型して絞りの深い
成形体を得る熱圧プレス装置の金型において、
雄金型の深絞り部に、圧締時には先端が雄金型
面まで引込む構造のマツト仮押し用突出部を設
け、
前記マツト仮押し用突出部は軸部の先端部に基
部より大径のパツドを備え、
また前記雄金型は前記圧締時に前記パツドが嵌
入されるパツド収納部を有し、
前記パツドが前記パツド収部に嵌入した時に前
記雄金型面と前記パツド表面とで形成される面
を、前記圧締時に対向する雌金型表面と同じ形状
としたことを特徴とする深絞り成型用金型。
【特許請求の範囲】
1 本発明は、乾式成型用マツトを深絞り成型す
るのに使用する熱圧プレス装置用の金型に関する
ものである。
木質パルプを主原料とする乾式成型用マツトを
用いた深絞り成型体は従来公知であり、例えば自
動車用内装材、各種音響機器のケース、その他家
具等に利用されている。
乾式成型用マツトは、一般に、木質パルプや繊
維物質及び熱硬化性樹脂等を混合し、乾式マツト
フオーマーにより最終成型体の板厚に応じた厚さ
のフエルト状マツトにフオーミングされたもので
ある。このようなフエルト状の嵩高マツトは、ハ
ンドリング適性を向上させるため、予め熱風通気
により内部の樹脂を半硬化させたり、あるいはニ
ードルパンチ法でマツト内繊維を三次元的にから
み合わせて機械的に結合させておいてから、所定
の寸法に裁断し、成型金型にて熱圧されていた。
この場合、熱圧プレス装置用の金型は、所望形状
の凹陥部を有し下側に位置する雌金型と、その反
対型である雄金型とからなり、単に成型用マツト
を雌金型上に載置し、雄金型との間で加熱圧締し
て成型するものが一般的である。
絞りが浅い場合にはあまり問題ないが、絞りの
深い成型体を得ようとすると、単に前記のように
金型間にマツトを載せて加圧したのでは、マツト
の流動性が乏しいため、深絞り部でマツト切れに
よる割れが多発し、成型ができない。そのため繊
維物質の素材や配合量を変えることによつてマツ
トに柔軟性や流動性を付与するような試みも多く
なされているが、必ずしも満足しうるものは得ら
れず、そのためやむを得ず熱硬化性樹脂や熱可塑
性樹脂を多量に配合せざるを得ないのが現状であ
る。しかし、樹脂量が多くなると、マツトがコス
ト高となるし、成型体が重くなるほか、熱風通気
による半硬化工程をはじめとして製造工程の管理
がかなり難しくなつてしまう。
そこで、マツトを雌金型上に載置したとき、予
めマツトを雌金型内の深絞り部に沿たせるよう
に、作業者が手でマツトを叩いて押込んでから熱
圧締することが行なわれていた。しかし、かかる
作業は危険であり、かつ非能率的であるし、マツ
トの自動供給などラインの自動化を行なうことが
できない等の欠点があつた。
本発明の目的は、上記のような従来技術の欠点
を解決し、従来生じがちであつた深絞り部でのマ
ツトの過大な伸長によるマツト切れや表面荒れ、
局部的な厚みむら、密度むら等が発生するのを防
ぎ、むらのない均質な成型が可能で、しかも危険
な、かつ非能率的な手作業が不要で、ラインの自
動化に適した新しい構造の深絞り成型用金型を提
供することにある。
すなわち本発明は、乾式成型用マツトを熱圧成
型して絞りの深い成形体を得る熱圧プレス装置の
金型において、雄金型の深絞り部に、圧締時には
先端が雄金型面まで引込む構造のマツト仮押し用
突出部が設け、前記マツト仮押し用突出部は軸部
の先端部に基部より大径のパツドを備え、また前
記雄金型は前記圧締時に前記パツドが嵌入される
パツド収納部を有し、前記パツドが前記パツド収
納部に嵌入した時に前記雄金型面と前記パツド表
面とで形成される面を、前記圧締時に対向する雌
金型表面と同じ形状としたことを特徴とする深絞
り成型用金型である。
以下、図面に基づき本発明について詳述する。
第1図は本発明に係る深絞り成型用金型の側面
図、第2図A,B,Cはその動作説明図である。
この金型は、乾式成型用マツト10を雌金型12
と雄金型14との間で熱圧成型して絞りの深い成
型体を得る熱圧プレス装置の金型であつて、雄金
型14の深絞り部16に、圧締時に先端が雄金型
下面16aまで引込む構造のマツト仮押し用突出
部18が設けられている。図示されていないが、
金型には加熱オイルや蒸気の流通する流路を有す
る加熱手段、あるいは電気ヒータが設けられてい
る。マツト仮押し用突出部18は、雄金型内部の
スリーブ20に対して摺動自在の軸部22と、そ
の下端部に取付けられているパツド24とを有
し、他方、雄金型14の深絞り部16の下面16
aには、前記パツド24が丁度嵌入するパツド収
容部26が形成されている。また、パツド仮押し
用突出部18の軸部22の上端にはストツパ28
が取付けられており、このストツパ28と雄金型
14の下部との間にコイルスプリング30が組込
まれ、マツト仮押し用突出部18の自重とコイル
スプリング30の引張力により該マツト仮押し用
突出部18が下方へ突出する如き力が働くように
なつており、この力で成型用マツト10を押すの
である。
本装置の動作について説明する。まず本発明で
使用する乾式成型用マツトは、例えば次のように
して得ることができる。木材チツプを130℃以上
で蒸煮解繊した木質パルプにフエノール樹脂のよ
うな熱硬化性樹脂を散布混合し乾燥装置を通して
熱硬化性樹脂を木質パルプに付着させるとともに
含水率を10〜30%に調整した木質パルプ55〜110
重量部(そのうち熱硬化性樹脂5〜10重量部)
と、これらとは別に予め、繊維長が10mm以上で太
さが10デニール以上の例えば麻のような天然植物
繊維10〜30重量部と繊維長が3mm以上で太さが5
デニール以下の例えばポリエステルやレーヨンの
如き化学合成繊維5〜10重量部とを混合解繊し調
整した混合繊維とを合わせて、混合機で混合した
後、乾式マツトフオーマーを通してフエルト状の
嵩高マツトを作る。この後、マツトハンドリング
性を向上させるため、この嵩高マツトの片面もし
くは両面からニードルが該マツトを貫通しないよ
うにニードルパンチングし、繊維同士が三次元的
にからみ合うようにして機械的に結合させるので
ある。ニードルパンチ法に代えて熱風通気による
樹脂の半硬化処理を行なつてもよいが、ニードル
パンチ法の方が樹脂量を少なくできるとともに、
工程管理が容易となり好ましい。
さて、このような成型用マツト10を雌金型1
2上に載置し、雄金型14を下ろす。すると、第
2図Bに示すように、マツト仮押し用突出部18
のパツド24が、この成型用マツト10に当た
り、それを雌金型12の深絞り部内に押下げる。
これによつて、深絞り部の外側のマツト部分は内
方へと寄せ集められ、その後、第2図Cに示すよ
うに雄金型14を完全に押下げ、一定時間そのま
ま保持してマツト内の樹脂を熱硬化させる。この
とき、パツド24は雄金型14内のパツド収容部
26内に納まり、成型用マツト10は雌金型12
と雄金型14との間で所定の形状に成型されるの
である。このように、マツト仮押し用突出部18
による成型用マツト10の押下げという予備的な
過程を経ることで深絞り部分のマツト量を増や
し、従来おこりがちであつた引張られることによ
るマツト切れや表面荒れ、成型品に生じる局部的
な厚みむら(比重むら)を回避できるのである。
第1図、第2図は最も単純な深絞り成型用金型
の場合であるが、実際には、例えば自動車ドア内
張り材のような、かなり広面積の複雑な凹凸形状
のものが成型される。マツト仮押し用突出部は雄
金型の全ての突出部分に設ける必要はなく、特に
絞りの深い箇所に設ければよい。パツドは深絞り
部より小面積の相似形の形状のものでもよいが、
一つの深絞り部に複数個のパツドを並設するよう
な構成でもよい。
第3図は、本発明の他の実施例を示す説明図で
ある。絞りの浅い部分には、マツト仮押し用突出
部を設けずとも充分である。同図に示されている
ように、まず絞りの最も深い部分でマツト仮押し
用突出部18aがマツト10を押下げ、周囲のマ
ツト量をその深絞り部に充分なだけ集め、次に二
番目に深い絞り部においてマツト仮押し用突出部
18bがマツト10を押下げ、その周囲のマツト
量を集める。かくして、従来ならマツト量が欠乏
し、割れが避けられないような形状でも追従でき
る。
第4図は、本発明の他の実施例を示す説明図で
ある。この実施例は、雌金型12と雄金型14と
の間にマツトの仮置き枠32を設けたものであ
る。成型用マツト10を、先ずこの仮置き枠32
上に載せ、雄金型14に組込まれたマツト仮押し
用突出部18で雌金型12の深絞り部にマツトを
押込むものである。このような仮置き枠32を設
けることにより、一層充分なマツト量の寄せ集め
(ギヤザー)ができ、より深い絞り成型も可能と
なる。これは、仮置き枠32を設けることによ
り、成型用マツト10の雌金型上面部分における
接触面積を少なくすることができて、マツトが滑
りやすくなること、及びマツトへの熱伝達が阻止
され、仮押しのときマツトの流動性が低下しない
からである。なお、この仮置き枠32を、熱圧時
もプレス内に放置しておくことも可能だが、上下
金型(雄金型と雌金型)内にこの枠32がかかる
場合には、圧締に入る直前に、白抜き矢印にて示
される方向に撤去する機構とする。
マツト仮押し用突出部は、自重およびスプリン
グ力によつて突出するように構成されているが、
それにかぎらず、任意の構成であつてよい。例え
ば、流体シリンダを用いてもよいし、マツト仮押
し用突出部の自重のみによつて突出するような構
成でもよい。あるいは、金型の動きと連動させて
ラチエツト機構をかけたりはずしたりするような
構成でもよい。いずれにしても、当初はマツト方
向に突出しており、圧締時に引込みうる構成なら
ば如何なるものであつてもよい。
本発明は上記のように構成された深絞り成型用
金型であるから、従来生じがちであつた深絞り部
でのマツトの過大な伸長によるマツト切れや表面
荒れ、局部的な厚みむら、密度むら等が発生する
のを妨ぎ、むらのない均一な成型品を得ることが
可能で、しかも危険な、かつ非能率的な手作業が
不要となり、マツトの自動供給、自動成型等、ラ
インの自動化にも適合するなど、数々のすぐれた
効果を奏しうるものである。
また、雄金型の深絞り部に設けるマツト仮押し
用突出部を軸部の先端部に基部より大径のパツド
を備えたものとしたので、雄金型内におけるマツ
ト仮押し用突出部の設置容積を必要最小限とでき
る。この結果、熱圧成型に必要な金型強度を雄金
型に持たせることができ、また加熱オイルや蒸気
の流通する流路を有する加熱手段や電気ヒータな
どを雄金型内に内蔵することが容易に行える。