JPH0768146B2 - 抗血清及びその製造法 - Google Patents

抗血清及びその製造法

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JPH0768146B2
JPH0768146B2 JP30114587A JP30114587A JPH0768146B2 JP H0768146 B2 JPH0768146 B2 JP H0768146B2 JP 30114587 A JP30114587 A JP 30114587A JP 30114587 A JP30114587 A JP 30114587A JP H0768146 B2 JPH0768146 B2 JP H0768146B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は抗血清及びその製造法に関し、さらに詳しく
は、がん組織に注入された特定のマスタード化合物と特
異的に反応してがん組織を破壊することができる抗血清
及びその製造法に関する。
〔従来の技術〕
癌に対する特異的な抗体を用いるならば、癌の治療や診
断が可能であるかも知れないと言うアイデイアは癌の免
疫学的な研究を発展させた原動力であり、更にこの分野
の研究によつて積み上げられた知識は免疫学,生物学,
バイオエンジニアリング等の発展を大きな貢献をもたら
してきた。
今日、実験的動物癌においてはヒト癌とは異なつて特異
抗原が存在することが良く証明されており、このため癌
に対する特異抗体を用いて癌を治療しようという動物実
験あるいは臨床試験は、数多く試みられて来ている。し
かし、それらの抗原性はいずれも微弱であるため、癌特
異抗原の決定や精製、更にはその抗原に対する特異抗体
の生産が非常に困難であり、予期した成果が得られてい
ない。過去に行なわれた治療実験を検討してみると、こ
れらの過去の実験に使用された抗体が果たして確実に目
標癌に対する免疫特異性を持つていたか否かについては
多分に疑問が残る。更にまた、もしこれらの使用された
抗体が癌に特異的であつたと仮定しても、その抗体が目
標癌と十分な反応を起こし得るだけの強い免疫親和性を
持つていたのであろうかと言う点も疑問となつてくる。
これらの抗体側の問題に加えて、目標癌の抗原性が微弱
であると言う事実は、その投与された抗体を引きつける
だけの十分な強さを癌が持つていないと言うことでもあ
り、癌側の問題も加算されることになる。
上記の説明が示すように、癌の抗原性が微弱であると言
う事実は癌の免疫療法を困難なものにする基本的な問題
であり、過去の試みの不成功の原因に大きな部分を占め
ていると考えて間違いないであろう。
事実、最近のモノクローナル抗体を用いた動物実験の結
果では、癌あるいは癌関連抗原に対して確実な特異性を
持つ抗体を用いるならば目標癌の退行を起こし得ること
が証明されている。そしてこれらのモノクローナル抗体
で得られた結果は特異抗体をよる癌治療の可能性につい
て再認識をもたらしたばかりでなく、更にモノクローナ
ル抗体を用いるならばヒト癌の受動免疫も可能であるか
も知れないという期待をももたらすことになつた。
しかしながら、癌特異性モノクローナル抗体を臨床に応
用する場合を想定してみると、新たな問題に遭遇する。
まず第一に、一体人間の癌に特異抗原が存在するのであ
ろうかという点である。ヒト癌のうちでも、ある種の
癌、例えばメラノーマやウイルス性癌はそれぞれ特異抗
原を持つていることが知られている。しかし、全てのヒ
ト癌がそれぞれ特異抗原を持つているか否かについては
未だに明らかではない。更に、ある一定の範ちゆうに属
する癌(例えば同一の組織像を示す癌、または同一臓器
から発生した癌)の間に共通な抗原性があるのか否かも
また不明である。それゆえに、一つのヒト癌を材料とし
て癌特異的モノクローナル抗体を誘導したとしても、そ
の抗体が他の患者の癌に対しても免疫特異性を示す可能
性はほとんど期待し得ないわけである。
この問題を克服するため患者自身の癌(自家癌)を用い
てもモノクローナル抗体を誘導するという方法も考えら
れるが、患者自身から得た癌の特異抗原を決定すること
およびその抗原に対するモノクローナル抗体を産生させ
るという操作を長期の時間を要する方法であり、加えて
個々の患者の癌に体してそれぞれモノクローナル抗体を
産生するという方法は臨床的には極めて実行困難なこと
が明らかである。さらに、これに変わる方法として、前
もつて各種のヒト癌に対してそれぞれ特異的なモノクロ
ーナル抗体を作つておき、これらを混合して用いるとい
う方法も考え得るかも知れないが、その混合抗体のうち
のいずれかが目標癌の抗原と免疫的に合致するか否かは
全く保証がない。
モノクローナル抗体を用いて癌の治療を行なう場合、も
う一つ問題がある。過去においては、一つの癌組織を構
成する癌細胞は全て均一な性質を持つと考えられていた
が、最近、同一癌組織を構成する癌細胞ですらいくつか
の亜集団から成り立つていることが明らかになつてきた
ことである。しかも、一つの癌組織の中で大勢を支配し
ている亜集団をなんらかの方法で抑制すると、これまで
抑圧されていた他の亜集団の癌が代わつて台頭して来る
ことも判明している。このため、理論的には、不完全な
治療はその治療に対して感受性のあるいくつかの亜集団
の構成を変えるだけに終わることになるであろう。そし
て、このような経過を通つて生存した亜集団はその用い
られた療法に抵抗性を持ち、しかもその癌組織の大勢を
占める亜集団となる。すなわち、モノクローナル抗体の
特質であるところの極めて明確な免疫特性は、逆に目標
癌組織内の一つの亜集団をしか攻撃できないという不利
をもたらすことになる。もし各種の癌に対する特異モノ
クローナル抗体を作り、これらを混合して用いると仮定
しても目標癌の亜集団の構成が明らかでない以上、多く
は期待し得ないであろう。しかも、同一癌組織内の亜集
団の構成は変異あるいは宿主防御反応による選択等によ
つて動的に変化することも知られており、モノクローナ
ル抗体の特異性の目的をどこに定めるか、あるいはま
た、どのような特異性をもつ抗体を前もつて揃えておけ
ばよいのかを決定することは極めて困難である。
以上の問題を克服するため、その存在が不確かな癌特異
抗原に代えてハプテンを用い、がん組織に選択的にハプ
テンを人工的に結合させ、次いでこのハプテンに対する
特異抗血清を投与することによりがん組織を破壊してが
んを治療する方法が試みられている。この試みにおい
て、用いられたハプテンは、p−ビス(2−クロロエチ
ル)アミノ−フエニルアラニン(以下、フエニルアラニ
ンマスタードという)であり、これに対する特異抗血清
は、フエニルアラニンマスタードと蛋白の結合物を温血
動物に初回免疫し、次いで追加免疫した後、該温血動物
の血液から得られたものであつた〔キヤンサー・リサー
チ(Cancer Research)第26巻1893〜1904頁、1966年発
行、及びキヤンサー・リサーチ(Cancer Research)第3
9巻6〜16頁、1979年発行)。
〔発明が解決しようとする問題点〕
上記キヤンサー・リサーチの二論文に記載の特異抗血清
は、フエニルアラニンマスタードを用いて得たものであ
り、また該抗血清の製法では蛋白に対する抗体が優位に
生成したり、抗体活性が低かつたりして、得られる抗血
清はフエニルアラニンマスタードの抗体が優位に含まれ
るものでなく、従つて、フエニルアラニンマスタードを
用いた上記治療法には、実用上用いることができないも
のであつた。
これに対して、本発明は、上記治療法に使用し得る新規
な抗血清を提供すると共に、上記の問題点を解決しうる
抗血清の製造法をも提供するものである。
〔問題点を解決するための手段〕
第1の発明は、一般式(I) (ただし、式中、Rは、 アルキル基、 −R5−COOR6, を示し、ここで、Zはホルミル基又はアセチル基、R1
R3、R4、R6及びR7は各々独立して水素原子又はアルキル
基、R2はアルキル基、ベンジル基又はアルコキシカルボ
ニル基、R5はアルキレン基、n及びn′は0,1又は2並
びにmは1〜3の整数を示す)で表わされるマスタード
化合物に対する抗体を含有してなる抗血清に関する。
第1の発明に係る抗血清は、第2の発明によつて製造す
ることができる。
第2の発明は、温血動物を一般式(I)で表わされるマ
スタード化合物と蛋白の結合物(以下、単に「結合物」
という)で少なくとも1回免疫したのち、該温血動物か
ら血清を採取することを特徴とする抗血清の製造法に関
する。
この製造法において、結合物で温血動物を免疫する前
に、蛋白で該温血動物を免疫することは、高抗体価の抗
マスタード化合物抗血清を得る上で特に好ましい。
蛋白での免疫において、該蛋白は、温血動物一匹当り、
0.001〜0.1mg用いられるのが好ましい。
蛋白は緩衝液(例えば、リン酸緩衝液、エチレンジアミ
ン四酢酸緩衝液、ホウ酸緩衝液等)に分散させて用いら
れ、必要に応じて免疫賦活剤を添加して、静脈注射,腹
腔内注射,皮下注射等により免疫させる。
蛋白としては、ザルコーマ180、ルイス肺がん,ウオー
カ256,吉田肉腫等の動物がん,胃がん,肺がん,皮膚が
ん等のヒトがん等のがん細胞又はがん組織、牛,馬等の
動物の筋肉,肝,腎,皮膚等の蛋白,牛,馬,ヒト等か
らの各種血清蛋白(例えば、血清アルブミン,血清グロ
ブリン等),卵白アルブミン等が用いられる。
上記で用いられる温血動物としては、ラツト,マウス,
モルモツト,ウサギ,ウマ,ヤギ,ヒツジ等がある。
次に、マスタード化合物と蛋白との結合物(以下、単に
「結合物」という)について説明する。
一般式(I)で表わされるマスタード化合物としては、
N−[3−(p−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]
−フエニル)−N−ホルミル−DL−アラニル]バリン、
N−[3−(p−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]
−フエニル)−N−ホルミル−DL−アラニル]バリンメ
チルエステル、N−[3−(p−[ビス(2−クロロエ
チル)アミノ]−フエニル)−N−ホルミル−DL−アラ
ニル]バリンエチルエステル、N−[3−(p−[ビス
(2−クロロエチル)アミノ]−フエニル)−N−ホル
ミル−DL−アラニル]バリンプロピルエステル、N−
[3−(p−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]−フ
エニル)−N−ホルミル−DL−アラニル]グリシン及び
そのメチルエチル又はプロピルエステル、N−[3−
(p−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]−フエニ
ル)−N−ホルミル−DL−アラニル]−3−フエニル−
DL−アラニン及びそのメチル,エチル又はプロピルエス
テル、N−[3−(p−(ビス(2−クロロエチル)ア
ミノ]−フエニル)−N−アセチル−DL−アラニル]−
3−フエニル−DL−アラニン及びそのメチル、エチル又
はプロピルエステル、N−[3−(p−[ビス(2−ク
ロロエチル)アミノ]−フエニル)−N−ホルミル−DL
−アラニル]−DL−グルタミンのジメチル、ジエチル又
はジプロピルエステル、N,N−ビス(2−クロロエチ
ル)−N−メチル−アミン、ビス(2−クロロエチル)
アミノグリミン、ビス(2−クロロエチル)アミノアラ
ニン、P−〔ジ−(2−クロロエチル)アミノ〕−シン
ナミックアシッド、 等がある。
また、結合物の製造に用いられる蛋白としては、前記に
例示したもの、これらを熱変性又はグアニジン変性した
もの等が使用される。熱変性は、緩衝液等の溶媒中で60
〜90℃に加熱して行なわれ、グアニジン変性は、蛋白と
適当量のグアニジンを緩衝液等の溶媒中で混合すること
により行なうことができる。蛋白としては熱変性物又は
グアニジン変性物を用いるとマスタード化合物に対する
抗体が産生しやすくなり好ましい。
結合物は、前記マスタードと蛋白を好ましくはpH6.4〜
7.2、特に好ましくはpH6.6〜6.8に調整された等張化緩
衝液(例えば、リン酸緩衝液,エチレンジアミン四酢酸
緩衝液,ホウ酸緩衝液等)中、好ましくは80℃以下、特
に好ましくは15〜30℃で混合することにより得ることが
できる。反応時間は、0.5〜24時間であれば十分であ
る。マスタード化合物は蛋白に対して0.7〜30重量%使
用するのが好ましく、特に約1〜10重量%使用するのが
好ましい。マスタード化合物が少なすぎるとこれに対す
る抗体の産生量が少なくなり、多すぎると不要なマスタ
ードがふえるだけで、透析等によるこれの除去操作に時
間がかかるようになる。過剰のマスタードは透析等によ
り除去しておくのが好ましい。
マスタード化合物は、溶解性が劣るため、予め、酸水溶
液に溶解して使用するのが好ましく、また、熱及び酸に
対する安定性が劣るため取扱いに際し、温度及び酸濃度
を十分管理する必要がある。上記酸水溶液としては、塩
酸,硝酸,硫酸,リン酸等の酸の0.2N以下、好ましくは
0.01〜0.2Nの酸水溶液が用いられる。溶解時の温度は60
〜80℃が好ましい。温度が高すぎるとマスタード化合物
が分解しやすくなり、またハプテン活性が消失しやすく
なり、逆に低すぎると溶解しづらくなり、溶解しても緩
衝液と混ぜると結晶が析出することがある。酸水溶液10
mlに対してマスタード化合物は150〜250mg用いられるの
が好ましい。酸水溶液とマスタードを混合してからガラ
ス棒,スパーテル等を用いてマスタードの結晶を砕くよ
うにして早急に、好ましくは5分以内、特に好ましくは
3分以内に溶解させ、この後、直ちに15〜30℃に冷却す
るのが好ましい。マスタード化合物は、このようにして
得られる酸水溶液の形で使用されるのが好ましい。マス
タードの酸水溶液,蛋白、 pH6.4〜7.2の緩衝液及び等張化のための生理食塩水が任
意の順序で混合され、結合物が作製される。
結合物は、上記のようにして得られた混合液の形体のま
ま、温血動物の免疫に使用するのが好ましいが、反応液
から分離して使用することができる。この場合、上記緩
衝液は、必ずしも等張化されている必要はない。分離さ
れた結合物は、上記と同様な等張化緩衝液に分散させて
使用される。
結合物は、温血動物に免疫されるが、この免疫は複数回
行なうのが好ましい。免疫は、上記結合物が分散してい
る等張化緩衝液に、必要に応じて免疫賦活剤を添加し、
これを温血動物に静脈注射,腹腔内注射,皮下注射等に
より行なうことができる。
結合物による免疫は、前もつて蛋白によつて免疫する場
合は、蛋白による免疫から5〜15日後に行なうのが好ま
しく、特に7日前後の後に行なうのが好ましい。また、
結合物による免疫を2回以上行なう場合、その間隔は2
〜4週間とするのが好ましい。
上記の免疫によつて動物の血清内に、上記結合物に対す
る抗体だけでなく、同時に前記フエニルマスタードに対
する抗体及び前記蛋白に対する抗体も産生する。
この後、温血動物から血液を採取し、遠心分離等により
上清を採取する方法などの常法によつて抗血清を得るこ
とができる。
混血動物からの採取は、結合物による最終の免疫から2
〜4週間後に行なうのが好ましく、結合物による免疫を
複数回行なうときは、最終の免疫から2週間前後が好ま
しい。
なお、蛋白による免疫及び結合物による免疫に際し用い
られる免疫賦活剤としては、フロイントの完全アジユバ
ント,カリミヨウバン,アラム等があり、これらは、常
法に従い使用される。これらは高抗体価の血清を得るた
めには使用した方が好ましい。
上記からも明らかなように、上記抗血清中には、前記結
合物に対する抗体及び前記蛋白に対する抗体が含まれる
が、これらはがん治療には不用であるため、また、場合
によつては副作用の原因になることもあるので該血清か
ら除くのが好ましい。このためには、該血清又はこれを
生理食塩水で希釈したものに前記結合物及び蛋白を添加
し、それぞれの抗体と結合させた後、遠心分離,ろ過等
により除くことができる。このような、不用な抗体を除
く場合、これに必要な抗原の最少量は、血清の希釈系列
を作製し、一定量の抗原を添加し、抗原一抗体反応物の
生成の有無を確認する方法等の常法によつて決定するこ
とができる。
このようにして得られた抗血清は、さらに精製して抗マ
スタード化合物抗体を分離することができる。
精製方法としては、上記抗血清にエチレンジアミン−酢
酸緩衝液等の緩衝液を添加して沈澱を生じさせ、これを
採取することにより行なうことができ、さらに該沈殿を
クオータライズドアミノエチル(QAE)−セフアデツク
ス、ジエチルアミノエチル(DEAE)−セファロース、ヒ
ドロキシアパタイト、プロテインA結合セフアロース等
のカラム剤を用いたカラムクロマトによつてさらに精製
を行なうことができる。QAE−セフアデツクスを用いる
場合、溶離液としてカラムクロマトし、抗マスタード化
合物抗体分画を集め、他の吸着型カラム剤の場合は、例
えばpH8.2のトリス緩衝液を溶離液として吸着させたの
ち、pH2〜3のグリシン−塩酸緩衝液を溶離液として抗
マスタード化合物抗体を溶出し、その分画を集める。集
められた抗マスタード化合物抗体は、この後、凍結乾燥
して粉末状にすることができる。これは、水,生理食塩
液,緩衝液等に溶解して使用に供される。このようにし
て得られる抗マスタード化合物抗体はIgG抗体である。
本発明により得られる抗血清又はこれの精製物(IgG抗
体である抗マスタード化合物抗体)を用いたがん治療
は、これらに含まれる抗体に対して抗原となるマスター
ド化合物を、温血動物又はヒトのがん組織又はその近傍
に、注射器等で直接に注入しておき、この後、上記抗血
清又はこれの精製物をがん組織又はその近傍に注射器等
で直接投与する方法、静脈注射する方法等によつて行な
うことができる。
この治療によつて、がん組織に注入されたフエニルマス
タード化合物とこれに対する抗体が特異的に反応し、が
ん組織が破壊される。
この場合、マスタード化合物の注入量は、がん組織の容
積1cm3当り、0.01〜1mgであるのが好ましく、抗血清又
はこれの精製物の注入量は、注入したマスタード化合物
に対応した量であるのが好ましい。
このようながん治療は、皮膚がん,乳がん,胃がん,肝
臓がん等の固形がんの治療に適している。
〔作用〕
本発明によつて得られる抗血清又はこれの精製物は、予
め、がん組織にマスタード化合物を注入しておき、この
後、該マスタード化合物の抗体を含む抗血清又はこれの
精製物を投与することにより、がん組織又はその近傍で
抗原−抗体反応が起こり、補体の関与によるアルサス反
応によつて血管が破壊されると共に、産生される免疫活
性物質の作用によつてがん組織が破壊される。このよう
にマスタード化合物を抗原とすることによつて、従来問
題となつていた患者自身のがんの特異抗原を決定する必
要がないこと、がん細胞の亜集団を考慮する必要がない
こと、流血中のがん抗原の影響を受けることがないこと
等から、がんの種類に関係なく、がん局所で抗原抗体反
応を起こさせ、がんを治療することができる。
〔実施例〕
実施例1 (1)N−[3−(p−[ビス(2−クロロエチル)ア
ミノ]−フエニル)−N−フオルミル−DL−アラニル]
バリンエチルエステル(PAE)水溶液の調製 PAE水溶液は、以下において用時に次のようにして調製
された。ガラスの試験管に精製したPAE200mgを入れ、75
℃に加温した水槽中に置き、75℃に保持した0.1N HCI10
mlを加えた。ガラス棒でPAEを素早くすり潰すようにし
て3分以内に溶解した。溶解後直ちに、25℃の水槽中に
移し、25℃に予め保持した0.15M、pH8.0のリン酸緩衝液
を加えてpH6.6に調製した。次いで、0.15M、pH6.6のリ
ン酸緩衝液で40mlまでメスアツプして、PAE水溶液(PAE
の濃度5mg/ml)を調製した。この調製液は直ちに、次の
キヤリア蛋白との結合に用いられた。
(2)PAEとウサギ血清ガンマグロブリンの結合物の作
成 ウサギ血清ガンマグロブリンの乾燥粉末750mgを0.15M、
pH6.6のリン酸緩衝液210mlで溶解し、次いで80℃、30分
間煮沸して蛋白を変性した後、再び37℃に戻し、これに
前項で調製したPAE水溶液40mlをかきまぜながら滴下し
た。この混合液をかきまぜながら、25℃で12時間保持し
た。続いて、さらに40mlのPAE溶液を滴下して4時間25
℃で保温した。次いで、このPAEとウサギ血清ガンマグ
ロブリンの結合物を含む溶液を透析膜チユーブ(分画分
子量8000)に入れて、0.01M、pH6.6のリン酸緩衝液に対
して4℃で一昼夜透析した。透析後、透析膜内の液を凍
結乾燥して、上記結合物の粉末1120mgを得た。
(3)抗PAE抗血清の作製 ヒト血清ガンマグロブリン0.1mgの1ml生理食塩液溶解液
に1mlのフロイントの完全アヅユバントをよく混合し、
ウサギの両側足しよう及び頸部両側の皮下に1/4ずつ注
射した。ついで、1週間後に前項で調整した結合物30mg
を生理食塩液2mlに溶解して腹腔内に注射したその後、
更に3週間後に同じ結合物15mgを生理食塩液1mlに溶解
して腹腔内に注射した。1週間後に耳動脈から採血し、
遠心分離で血清を分離し、採取した。得られた血清を56
℃で30分間加温して非働化した。
この血清中の抗ヒト血清ガンマグロブリン抗体を除去す
るため、予め一部の血清を取り、その階段希釈液を作つ
て、これとヒド血清ガンマグロブリンとの免疫反応によ
り、抗ヒト血清ガンマグロブリン抗体を完全に吸収する
のに必要なヒト血清ガンマグロブリン量を決定した。こ
の後、上記血清に計算量のヒト血清ガンマグロプリンを
混合して、一晩、40℃に保存した。ついで、連心分離し
て、その上清を取り、ダブルゲルデイフユージヨン(do
uble gel−diffusion)法で抗ヒト血清ガンマグロブリ
ン抗体の有無を調べた。この結果、沈降線は生成せず、
該抗体が完全に除去されていることがわかつた。
このようにして得られた抗PAE抗血清の抗体価は、ダブ
ルゲルデイフユージヨン法による抗体希釈系列で256倍
であった(以下、抗体価は、ダブルゲルディフユージョ
ン法による抗体希釈系列の希釈倍数で示す)。
(4)前記(1)〜(3)の方法と全く同様に行って、
N−[3−(p−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]
−フエニル)N−フオルミル−DL−アラニル]グリシン
エチルエステルから抗体価64倍の抗血清、N−[3−
(p−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]−フエニ
ル)−N−アセチル−DL−アラニル]−3−フエニル−
DL−アラニンエチルエステルから抗体価64倍の抗血清、
N−[3−(p−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]
−フエニル]−N−フオルミル−DL−グルタミン酸]ジ
エチルエステルから抗体価64倍の抗血清を得た。
応用例1 (1)ウオーカ256腫ように対する抗PAE抗血清による治
療 ウオーカ256腫ようの細片(約2mm3)をウイスター系ラ
ツト(体重約250g)の大腿部筋肉内に移植した。8日
後、群間で腫ようの容積を計り、その大きさに差のない
ようにラツトを群分けした(10匹/群)。これらのラツ
トの腫よう内にPAE水溶液(濃度5mg/ml)を腫よう容積1
cm3当たり0.03mlを注入した。その3時間後に尾静脈か
ら実施例1の(3)で得られた抗PAE抗血清を体重1g当
たり0.005mlを注射した。この直後の腫よう容積及び90
日後の腫よう容積を測定し、容積の減少率をがん消失率
として求めた。また、抗血清の注射後90日経過時の平均
生存日数(平均値±標準偏差、90日経過時に存命中のも
のは生存日数90日とした)を調べた。これらの結果を表
1に示す。
なお、腫ようの容積はノギスで縦,横,厚みを計り、そ
の積で表わした(以下も同様にした)。
(2)上記(1)項において、抗PAE抗血清の代わりに
生理食塩液を用いたこと以外は同様に行なつた。この結
果を表1に示す。
(3)上記(1)項において、PAE溶液の代わりに生理
食塩液を用いたこと以外は同様に行なつた。この結果を
表1に示す。
〔発明の効果〕 第1の発明に係る又は第2の発明により得られる抗血清
は新規であり、がんの治療に有用である。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式(I) (ただし、式中、Rは、 アルキル基、 _R5_COOR6 を示し、ここで、Zはホルミル基又はアセチル基、R1
    R3、R4、R6及びR7は各々独立して水素原子又はアルキル
    基、R2はアルキル基、ベンジル基又はアルコキシカルボ
    ニル基、R5はアルキレン基、n及びn′は0,1又は2並
    びにmは1〜3の整数を示す)で表わされるマスタード
    化合物に対する抗体を含有してなる抗血清。
  2. 【請求項2】温血動物を一般式(I) (ただし、式中、Rは、 アルキル基、 _R5_COOR6 を示し、ここで、Zはホルミル基又はアセチル基、R1
    R3、R4、R6及びR7は各々独立して水素原子又はアルキル
    基、R2はアルキル基、ベンジル基又はアルコキシカルボ
    ニル基、R5はアルキレン基、n及びn′は0,1又は2並
    びにmは1〜3の整数を示す)で表わされるマスタード
    化合物と蛋白の結合物で少なくとも1回免疫したのち、
    該温血動物から血清を採取することを特徴とする抗血清
    の製造法。
  3. 【請求項3】一般式(I)で表わされるマスタード化合
    物と蛋白の結合物で温血動物を免疫する前に、蛋白で該
    温血動物を免疫する特許請求の範囲第2項記載の抗血清
    の製造法。
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