JPH0811074B2 - プレアルブミンをコードする遺伝子を組込んだ組換えプラスミドおよびこれを用いたプレアルブミンの製法 - Google Patents

プレアルブミンをコードする遺伝子を組込んだ組換えプラスミドおよびこれを用いたプレアルブミンの製法

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JPH0811074B2
JPH0811074B2 JP62276598A JP27659887A JPH0811074B2 JP H0811074 B2 JPH0811074 B2 JP H0811074B2 JP 62276598 A JP62276598 A JP 62276598A JP 27659887 A JP27659887 A JP 27659887A JP H0811074 B2 JPH0811074 B2 JP H0811074B2
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Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、ヒトのプレアルブミンをコードするcDNAを
組込んだ組換えプラスミド、およびこれを酵母に導入し
て得られた形質転換酵母によるプレアルブミンの製法に
関する。すなわち、ヒトの正常プレアルブミン、更に
は、FAP患者の持つ異型プレアルブミンをコードするcDN
A断片を大腸菌および酵母の両方で増殖しうるシャトル
ベクターに担われた形質発現調節領域(プロモーター)
の下流に組込んだ組換えプラスミドを得、これを酵母に
与えて形質転換を起こさせて形質転換酵母とし、これを
培養させて産生されるプレアルブミン(正常プレアルブ
ミンもしくは異型プレアルブミン)を得る方法に関す
る。
プレアルブミンは血液中に、約300μg/ml程度存在す
る血清蛋白のひとつであり、血中ではこれが4分子集合
し分子量55,000の複合体として存在している。この複合
体は甲状腺ホルモンとの結合部位を2ケ所持ち、同ホル
モンの輸送に関与している。さらに、この複合体はビタ
ミンA結合蛋白の結合部位を4ケ所持ち同ビタミンの輸
送にも関与している。その他、プレアルブミンの詳細な
機能に関してはまだ正確には解明されておらず、今後の
研究成果が期待されている。
最近、N末端より30番目のバリンがメチオニンに変異
した異型プレアルブミンが遺伝病家族性アミロイドニュ
ーロパチー(FAP)の病因と深くかかわっていることが
明らかにされ、そのDNAを解析することで遺伝子診断も
可能となっている。
この中で、特にFAPの病因と考えられる異型プレアル
ブミンはFAP患者の血液を原材料とせざるを得ず、その
機能と病因との関連を解明する上で大きな制約がある。
このような状況において、プレアルブミン特に異型プ
レアルブミンの原材料の入手における制約を解決できる
有力な手がかりとなるのは、遺伝子組換えを応用し量産
を可能にする技術の開発であろう。しかしながら、これ
までに遺伝子組換え等の技術を用いてプレアルブミンも
しくは異型プレアルブミンの発現を試みたような報告は
まだ見あたらず、勿論発現に成功した報告もない。
このような事情のもとに、本発明者らは、先に熊本大
学医学部の前田らがクローニングに成功したヒト由来の
プレアルブミン遺伝子、異型プレアルブミン遺伝子(Mi
ta et al,Biochem.Biophys.Res.Commun.124,558-564 1
984)を用い、最初に大腸菌を宿主としてプレアルブミ
ンの発現を試みた。しかしながらその結果としては、好
ましい成果は得られず、大腸菌を宿主とした発現の試み
は失敗に終った。その後さらに本発明者らは酵母を宿主
として用いたプレアルブミンの量産について検討を重ね
た結果、酵母の遺伝子と大腸菌の遺伝子とを含みかつ酵
母のプロモーターの制御下にプレアルブミン遺伝子を組
込んだ新しい組換えDNAを調製し、それによって酵母を
形質転換させ、かかる形質転換酵母を用いてヒト由来の
プレアルブミンと同じ分子量、免疫学的性質を有するプ
レアルブミンを量産させることに成功し、本発明を完成
するに至った。
すなわち、本発明は、プレアルブミン遺伝子を組込ん
だ新規な組換えプラスミド、それによる形質転換酵母お
よび該酵母によるプレアルブミンの生産方法を提供する
ものである。また、本発明はこれまでヒト血液からの分
離が難しく、試料の入手に問題があった異型プレアルブ
ミンに関してもこれを限界なく大量に供給することを可
能にするものである。
本発明のプレアルブミンの製法においては、大腸菌お
よび酵母の両方の遺伝子を備え、それらのいずれでも増
殖しうるシャトルベクターを用い、そのベクターに担わ
れた酵母のプロモーターの下流にプレアルブミン遺伝子
を組込むことによりプレアルブミン遺伝子発現ベクター
を得る。このようにして得られるプレアルブミン遺伝子
発現プラスミドを常法により酵母に作用させて形質転換
を起こさせることにより所望の形質転換酵母が得られ
る。この形質転換酵母を、使用した発現用プロモーター
が効率よく働く条件下に培養することにより所望のプレ
アルブミンが量産される。
本発明の完成によって、in vitroで人為的に任意の部
位のアミノ酸を変異させたプレアルブミンが容易にかつ
量的に入手し得る手段が解決されたもので、本新技術は
きわめて興味ある知見を今後生み出す可能性を提供する
ものである。
本技術は、ヒト血液を原材料とせず、ヒトプレアルブ
ミンを容易に入手し得る手段も同時に与えるものであ
り、今後の該蛋白の医薬品化において、従来の方法でヒ
ト血液から精製した場合のようにヒト血液に由来する未
知の感染性因子の混入を考慮することのない極めて安全
かつ低コストでのプレアルブミン製剤を供給することを
可能にするものである。さらには、試料の入手に関して
制約があった、異型プレアルブミンについても、本発明
によりその制約が解決され、これを容易にしかも無限に
提供することが可能となり、今後のFAPに関する研究に
大きく貢献するものと考えられる。
以下に本発明の組換えプラスミド、形質転換酵母、お
よびそれによるプレアルブミンの生産についてさらに詳
細に説明する。
(1)プレアルブミン遺伝子 本発明で用いられるプレアルブミンをコードするcDNA
は、ヒトの肝臓より調製したmRNAを出発材料として、常
法に従い逆転写酵素により二本鎖cDNAを合成し、これを
大腸菌によりクローニングしたものである。クローニン
グされたプレアルブミン遺伝子はプレアルブミン蛋白を
コードする全領域を含み、第2図に示す塩基配列を有す
る。
本発明において調製されたプレアルブミンcDNAは、66
9塩基対からなり、アミノ酸をコードする領域の完全な
配列を含む。さらに、プレアルブミンcDNAは5′−非翻
訳領域に26、3′−非翻訳領域に161の塩基対を含む。
第1図の制限酵素図および第2図に示す塩基配列を有
するDNA断片が大腸菌プラスミドOkayama-Beryベクター
にオリゴdG、dC法により挿入されたものを、通常はPstI
-PyuIIで処理してプレアルブミン遺伝子断片を得、後述
のプラスミド構築に供する。必要に応じ、成熟プレアル
ブミンを直接組換え酵母に発現させるために、翻訳され
る第1番目から20番目までのアミノ酸、すなわちシグナ
ルペプチドの部分をコードする遺伝子を予め除去してお
くこともできる。この場合には、開始コドンのATGも同
時に除去されるため、後に述べるシャトルベクターにプ
レアルブミン遺伝子を組み込む際に開始コドンとなるAT
Gを付け加える工夫が必要となる。
なお、本発明で述べるプレアルブミン遺伝子は、第2
図に示す塩基配列を有するものに限定されるものではな
い。
また、異型プレアルブミンをコードする遺伝子も、FA
P患者の肝臓より調製したmRNAより同様にして異型プレ
アルブミンをコードするcDNAを調製することができる。
このようにして得られた異型プレアルブミン遺伝子は、
正常のプレアルブミン遺伝子配列と比較して、1塩基の
違いしかなく、プレアルブミン遺伝子の翻訳開始コドン
を+1とした場合に第149番目(+149)のシトシンがア
デニンに変異しているだけである。また、異型プレアル
ブミンの遺伝子は、正常プレアルブミン遺伝子を用い、
この遺伝子にポイントミューテーションを起こさせ必要
な箇所のみ塩基を変換することによっても調製すること
ができる。
(2)シャトルベクター 本発明で用いられるシャトルベクターは、酵母の遺伝
子と大腸菌の遺伝子とを含みかつ酵母の形質発現調節領
域を担ったプラスミドベクターである。
この酵母の遺伝子としては、一般に、プラスミドが酵
母中で染色体と独立して増殖するのに必要なDNA配列、
例えば酵母染色体の複製に必要なDNA配列(ars1)、2
μmDNAの複製に必要なDNA配列(2μori)があり、所望
により、さらに形質転換酵母の選択マーカーとなる遺伝
子が含まれる。この選択マーカーとしては、ロイシン産
生遺伝子、ヒスチジン産生遺伝子、トリプトファン産生
遺伝子、ウラシル産生遺伝子、アデニン産生遺伝子など
が含まれ、これらの1種または2種以上が用いられる。
大腸菌側の遺伝子としては大腸菌体内においてプラス
ミドが増殖するために必要なDNA配列、例えばColEl系の
プラスミドの複製起点のDNA配列(ori)を有し、好まし
くはさらに形質転換大腸菌の選択マーカーとなる遺伝子
を含む。この選択マーカーの遺伝子としてはアンピシリ
ン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、テトラサイク
リン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子など
が挙げられ、これらの遺伝子の1種または2種以上が用
いられる。このような大腸菌DNAとしてアンピシリン耐
性遺伝子とテトラサイクリン耐性遺伝子を有するpBR322
が一般に汎用されている。
組換え酵母によりプレアルブミンを産生させるために
必要な形質発現調節領域(プロモーター)には酵母由来
のものが用いられる。好ましいプロモーターの例として
は、酸性フォスファターゼプロモーターやグルタルアル
デハイドデヒドロゲナーゼプロモーターのように本来酵
母に必要な酵素等の形質発現を行うプロモーター等が挙
げられる。具体的な一例として酵母の抑制性酸性ホスフ
ァターゼプロモーターが挙げられるが、酸性ホスファタ
ーゼプロモーターは通常ホスファターゼを構成する60,0
00ダルトンのポリペプチド(p60)のプロモーターであ
り、そのプロモーター活性もかなり強力で、且つ培地中
のリン酸濃度をコントロールすることによってプロモー
ター活性を制御できることに大きなメリットがある。
このようなシャトルベクターの代表的な例は、本発明
者らにより調製された。酵母側の遺伝子としてars1、2
μoriおよびロイシン耐性遺伝子(Leu2)を有する酵母D
NAと大腸菌プラスミドpBR322とを組み合わせたシャトル
ベクターPAM82(特開昭59-36699)であり、これはつぎ
のようにして構築される。
酵母S288G DNAバンクより得られた抑制性酸性ホスフ
ァターゼを構成する60,000ダルトンのポリベプチド(p6
0)の遺伝子を含む約8000塩基対(8Kb)の制限酵素EcoR
I断片[PNAS,77巻、6541〜6545頁、(1980)およびPNA
S,79巻、2157〜2161頁、(1982)を参照]を公知の大腸
菌プラスミドpBR322[Sutcliffe,J.G.,Cold Spring Har
bor Symposium,43巻、77〜90頁、(1979)を参照]のEc
oRI部位に挿入して得られるプラスミドを出発材料とす
る。なおこの8KbDNA断片は制限酵素SalIの認識部位を約
2.8Kbと約5.2Kbに分ける位置に1個所有し、2.8Kb側がp
BR322のアンピシリン耐性遺伝子側になるように挿入さ
れている。
このプラスミドを制限酵素SalIで切断し、さらにT4DN
Aリガーゼにより再アニールさせてpBR322のSalI部位か
ら酸性ホスファターゼ遺伝子断片の5.2Kb側を失ったプ
ラスミドを得、これをpAT25と称する。このpAT25はpBR3
22のアンピシリン耐性遺伝子を含むEcoRI部位からSalI
部位までの約3.7Kbの断片と酵母の酸性ホスファターゼ
遺伝子のEcoRI部位からSalI部位までの約2.8Kbの断片が
それぞれ対応する末端同志で結合したプラスミドであ
る。つぎに、上記pAT25のEcoRI部位に、酵母の自律増殖
に必要なDNA配列(ars1)および酵母のTrp1遺伝子を含
む1.4KbのEcoRI断片[Pro.NAS,76巻、1035〜1039頁、
(1979)を参照]を挿入する。得られたプラスミドをpA
T26と称する。なおこのars1-Trp1を含む断片は、そのTr
p1遺伝子内に制限酵素HindIIIの認識部位を1個所有す
る。
上記pAT26のHindIII部位に酵母のロイシン産生遺伝子
(Leu2)と2μmDNAの複製に必要なDNA配列(2μori)
を含むHindIII断片(Tohe,A.,Guerry,P.,Wichener,R.
B.;J.Bachteriol,141,413〜416,1980を参照)を挿入す
る。このようにして得られるプラスミドがシャトルベク
ターpAT77(特開昭59-36699を参照)である。
このpAT77は、大腸菌の遺伝子としてpBR322のアンピ
シリン耐性遺伝子(Apr)を含むEcoRI部位からSalI部位
までを有し、一方酵母の遺伝子として、pBR322と結合し
たEcoRI部位よりars1、2μori、Leu2遺伝子の順に位置
し、さらにそのつぎに酸性ホスファターゼ遺伝子の上流
からSalI部位までを有する。そしてそのEcoRIおよびSal
I部位でこれら大腸菌遺伝子と酵母遺伝子が結合した構
造となっている。このpAT77は大腸菌内においてはpBR32
2の複製起点DNA配列(ori)により増殖し、また酵母内
においてはars1および2μoriにより増殖可能となる。
さらにこのプラスミドは、選択マーカーとしてアンピシ
リン耐性遺伝子(Apr)およびロイシン産生遺伝子(Leu
2)を有しており、大腸菌、酵母菌のいずれの細胞内で
も増殖でき、シャトルベクターとしての条件を充分に満
たしている。
なお、このシャトルベクターを用いるのは、後記組換
えプラスミドを大腸菌を用いて調製するためであり、該
組換えプラスミドで酵母を形質転換する段階に至って
は、大腸菌の遺伝子は除去されても問題はない。
このようなシャトルベクターpAT77を制限酵素SalIで
処理して開裂させ、ついでこれをエキソヌクレアーゼBA
L31で処理することにより酸性ホスファターゼ構造遺伝
子の一部または全部と、所望によりさらにその上流の種
々の部分まで除去する。この除去は酸性ホスファターゼ
構造遺伝子の上流−50bpの前までの適当な部位まで行わ
れ、エキソヌクレアーゼ処理条件により適宜調節され
る。
上記のようにして酸性ホスファターゼ構造遺伝子全部
もしくはさらにその上流部分を除去したのち、この部位
に合成または天然のリンカー、例えばSalIリンカーまた
はXhoIリンカーを組込み再び環状プラスミドに戻すこと
により、酸性ホスファターゼプロモーターの制御下に外
来性遺伝子を純粋な形で発現させ得るシャトルベクター
が得られる。このようにして酸性フォスファターゼ構造
遺伝子の上流−33bpまで除去したシャトルベクターが、
pAM82である。
このシャトルベクターは、通常の制限酵素SalIまたは
XhoIで処理することにより容易にその組込み部位を開裂
させることができるため、所望の遺伝子を組込むのに好
適である。このようなシャトルベクターpAM82に関して
は本発明者らにより特開昭59-36699として特許出願され
ており、なお、このpAM82をサッカロミセス・セレビシ
ェAH22に組込んだもの(サッカロミセス・セレビシェAH
22/pAM82)は微工研条寄第313号として寄託されてい
る。
(3)プレアルブミン遺伝子発現プラスミドの構築 本発明の組換えプラスミド、すなわちプレアルブミン
遺伝子を組込んだプラスミドの調製は、まず前記シャト
ルベクターを使用したリンカーに対応する制限酵素、例
えばSalIまたはXhoIにて処理して開裂させ、これに上記
プレアルブミンDNAを作用させて連結させる。これを大
腸菌にて増幅し、各種制限酵素分析によって正しい配位
に組込まれたもののみを選択し、目的とする組換えプラ
スミドを得る。
(4)酵母の形質転換 形質転換されるべき酵母としては、プラスミドで担わ
れた形質転換酵母の選択マーカー遺伝子によって相補さ
れる変異を持った変異株、例えばロイシン要求性変異株
であるサッカロミセス・セレビシェ(Saccharomyces ce
revisiae) AH22〔a leu2 his4 Can1(Cir+)〕、サッ
カロミセス・セレビシェ(Saccharomyces cerevisiae)
AH22 pho80〔a leu2 his4 Can1(Cir+)pho80〕などを
用いる。上記組換えプラスミドを大腸菌にて増殖させた
のち、該酵母変異株に常法により作用させ、例えばスフ
ェロプラスト化したのちカルシウム処理した菌体とプラ
スミドDNAを混合して形質転換を起こさせる。このよう
に処理された酵母をベクター上に担われている宿主酵母
の変異を相補する遺伝子、例えばロイシン産生遺伝子の
発現を指標として形質転換酵母を選択し、分離する。
なお、酵母としてはロイシン要求性変異株のほかに、
ヒスチジン要求性変異株、トリプトファン要求性変異
株、ウラシル要求性変異株、アデニン要求性変異株など
が挙げられる。
(5)形質転換酵母の培養およびプレアルブミンの生産 上記の方法で得られた形質転換酵母を培養し目的のプ
レアルブミンを得る。この場合、用いたプロモーターに
応じて培養条件を工夫することが好ましい。例えば、酸
性ホスファターゼプロモーターを使用した場合には、得
られた形質転換酵母をリン酸を含む培地にて通常の培養
条件下に前培養し、対数増殖期にある菌体をリン酸を含
まない培地に移しかえて酸性ホスファターゼプロモータ
ーが抑制されない条件下に培養する。培養後、シグナル
ペプチド領域を除去したプレアルブミン遺伝子を用いた
場合には菌体内に、またシグナルペプチド領域を含む全
プレアルブミン遺伝子を用いた場合には、その培養液中
および菌体膜表面に分泌されたプレアルブミンが多量に
集積される。なお、用いる酵母の種類により、例えばPh
o80変異株を用いた場合には、酸性ホスファターゼプロ
モーターを抑制しない条件をとくに採用する必要はな
く、該形質転換酵母を直接培養して所望のプレアルブミ
ンを大量に産生させることができる。
上記方法で得られるプレアルブミンは免疫学的にヒト
の血中に存在するものと区別し難く、また、プレアルブ
ミンが培地中に分泌、放出されることから、酵母におる
蛋白質分泌研究のモデルとしても有用である。
つぎに実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明す
る。
実施例1:プレアルブミンの発現 (1)プレアルブミン遺伝子の調製 (I)mRNAの精製 ヒト肝臓は手術時に摘出し、液体窒素中にて直ちに凍
結し、これを用いて、チャーウィンら(Chirgwin et a
l,Biochemistry,24 5294-5299,1979)の方法に従って、
mRNAを調製した。
(II)cDNAの合成および大腸菌HB101の形質転換ヒト肝
臓より得たmRNAをもとにOkayama−Berg法(Okavama,H.a
nd Berg,P.,Mol.Cell Biol.2,161-170,1982)により、c
DNAを含むプラスミドを作製し、これを大腸菌HB101に形
質転換し、cDNAライブラリーを調製した。
(III)プレアルブミンcDNAの同定 Kandaら(Kanda,Y.et al,J.Biol.Chem.,249,6796-680
5,1974)によって明らかにされているプレアルブミンの
アミノ酸配列をもとにAsp58‐Gln62に相当する部分の合
成DNA16種を合成し、これをWallaceら(Wallace,R.B.et
al,Nucleic Acids Res.,6,3543-3557,1979)の方法に
より(r-32P)ATPでラベルし、これをプローブとしてc
DNAライブラリーのスクリーニングを行い、プレアルブ
ミン遺伝子を含む大腸菌を選び出した。
(IV)プラスミドDNAの調製 プレアルブミン遺伝子を含む大腸菌より松原ら(Mats
ubara et al,J.Virol.,16,479-485,1975)の方法により
プラスミドを調製した。
このプラスミドはOkayama-Bergベクターにプレアルブ
ミンをコードする全領域のcDNAがクローニングされたも
のであり、これをpPA1とした。
(2)シャトルベクターpAM82の調製 酵母S288GDNAバンクより得られた抑制性酸性ホスファ
ターゼを構成する60000ダルトンのポリペプチド(p60)
の遺伝子を含む約8000塩基対(8Kb)の制限酵素EcoRI断
片を大腸菌プラスミドpBR322のEcoRI部位に挿入して得
られるプラスミドを出発材料とし、これを制限酵素SalI
で切断し、さらにT4DNAリガーゼにより再アニールさせ
てpBR322のSalI部位から酸性ホスファターゼ遺伝子断片
の5.2Kb側を失ったプラスミドpAT25(これはpBR322のア
ンピシリン耐性遺伝子を含むEcoRI部位からSalI部位ま
での約3.7Kbの断片と酵母菌の酸性ホスファターゼ遺伝
子のEcoRI部位からSalI部位までの約2.8Kbの断片がそれ
ぞれ対応する末端同士で結合したプラスミドである)を
得る。
つぎに、このpAT25のEcoRI部位に、プラスミドYRP7を
EcoRI処理することによって得られるars1およびTrp1遺
伝子を含む1.4KbのEcoRI断片を挿入してプラスミドPAT2
6を得る(このars1-Trp1を含む断片は、そのTrp1遺伝子
内に制限酵素HindIIIの認識部位を1固有する)。
上記pAT26のHindIIIに、プラスミドpSLE1をHindIIIで
処理して得られる酵母のLeu2および2μoriを含むHindI
II断片を挿入してシャトルベクターpAT77を得る。このp
AT77をサッカロミセス・セレビシェAH22に組込んだもの
(サッカロミセス・セレビシェAH22/pAT77)は微工研条
寄第324号として寄託されている。
上記の方法で得られたpAT77(1μg)をSalIで開裂
したのち、20mMトリス−HCl(pH8.2)、12mM CaCl2、12
mM MgCl2、0.2M NaCl、1mM EDTA溶液50μl中で0.1Uの
エキソヌクレアーゼBAL31を30秒〜1分間作用させる。
ついでフェノール抽出、エタノール沈澱を行ったのち、
XhoIリンカー1pmolとT4DNAリガーゼの反応条件下で12時
間結合を行う。この反応溶液で大腸菌x1776を形質転換
し、得られたアンピシリン耐性の形質転換体よりプラス
ミドDNAを調製し、各DNAについてマキサムーギルバート
の方法(Maxam,A,& Gilbert,W.;Pro.N.A.S.,74,560〜5
64を参照)に従い、塩基配列を調べ、BAL31処理により
除去された酸性ホスファターゼ遺伝子領域を決定する。
これら中からホスファターゼ構造遺伝子領域が完全に除
去されたプラスミドpAM82(第3図)を得る。
ホスファターゼ構造遺伝子の産物p60の最初のアミノ
酸であるメチオニンをコードするコドンATGのAを+1
として、pAM82は−33まで除去されたものである。な
お、このpAM82をサッカロミセス・セレビシェAH22に組
込んだもの(サッカロミセス・セレビシェAH22/pAM82)
は微工研条寄第313号として寄託されている。
(3)プレアルブミン遺伝子発現プラスミド(pNPA1)
の調製 プレアルブミンをコードする全領域(第1図参照)
を含むDNA断片が挿入されているプラスミドpPA1(3μ
g)を制限酵素HaeIII、XbaIで切断処理し、63-108番目
の46bpよりなるDNA断片を精製し、これに、EcoRIの切断
端を持つ合成DNAを結合し、これをさらに、EcoRI、XbaI
で切断処理したプラスミドpUC19のEcoRI-XbaIサイドに
挿入した。ついで、このプラスミドをXbaI、HincII切断
処理し、これに、pPA1をXbaI、PvnII切断処理して得た5
706bpのDNA断片を挿入した。このようにして得たプラス
ミドは、プレアルブミンのシグナル領域が除去され、さ
らに翻訳開始コドンとしてATGが、即ちN末端メチオニ
ンが付加されたプレアルブミンcDNAを持ったことにな
る。つぎに、このプラスミドをEcoRI,HindIIIで切断処
理してプレアルブミンcDNA部分を切り出し、これにXhoI
リンカーを結合した。
このようにして末端がXhoI切断末端となったプレアル
ブミン遺伝子断片を得た。このDNA断片とXhoIで開裂さ
れたシャトルベクターpAM82を、分子比5:1で混ぜT4DNA
により結合させた後、この反応液で大腸菌HB101を形質
転換した。得られたアンピシリン耐性の形質転換体より
プラスミドDNAを調製し、それらについて、EcoRI、Xba
I、XhoIで分析することにより、ベクターへのプレアル
ブミン遺伝子の組込みおよびその方向を確認した。選び
出されたプラスミドはベクターのホスファターゼプロモ
ーターの下流にプレアルブミン遺伝子が正しい向きに挿
入されたものであり、これをプレアルブミン遺伝子発現
プラスミンドpNPA1と称する。プレアルブミン遺伝子発
現プラスミドの構築の流れを示したものを第4図に示し
た。
(4)形質転換酵母の調製 酵母としてサッカロミセス・セレビシエAH22[a leu2
his4 Can1(Cir+)](微工研条寄第312号)を用い、
これをYPD培地(2%ポリペプトン、1%イーストエキ
ス、2%グルコース)100mlに接種し、30℃で一晩培養
したのち、遠心して集菌する。滅菌水20mlにて菌体を洗
浄し、ついで1.2Mソルビトールおよび100μg/mlチモリ
アーゼ60,000(生化学工業製)の溶液5mlに懸濁させ、3
0℃で約30分間保ち、スフェロプラスト化する。つい
で、スフェロプラストを1.2Mソルビトール溶液で3回洗
浄したのち、2Mソルビトール、10mMCaCl2および10mMト
リス−HCl(pH7.5)の溶液0.6mlに懸濁させ、その60μ
lずつを小試験管に分注する。これに前記(3)で調製
した組換えプラスミドpNPA1溶液30μlを加え、充分混
合し、さらに0.1MCaCl2(3μl)加えて最終濃度10mMC
aCl2とし、室温に5〜10分間放置する。ついでこれに、
20%ポリエチレングリコール4000、10mMCaCl2および10m
Mトリス−HCl(pH7.5)溶液1mlずつを加えて混合し、室
温に約20分間放置する。この混合液0.2mlずつを45℃に
保温された再生培地(22%ソルビトール、2%グルコー
ス、0.7%イーストニトロゲンベースアミノ酸、2%YP
D、20μg/mlヒスチジン、3%寒天)10mlに加え、軽く
混合させ、予め準備された1.2Mソルビトール含有最小培
地(0.7%イーストニトロゲンベースアミノ酸、2%グ
ルコース、20μg/mlヒスチジン、2%寒天)プレートに
重層し、固化させたのち、30℃で培養してロイシン非要
求性酵母のコロニーを得る。このコロニーを20μg/mlヒ
スチジンを含むバルクホルダーミニマルメディウム(To
he,A.et al;J.Bachterol.,113,727〜738(1973)を参
照)にて培養して形質転換酵母サッカロミセス・セレビ
シェpNPA1を得る。
(5)形質転換酵母によるプレアルブミンの製法 前記(4)で得られた形質転換酵母の各コロニーをさ
らに20μg/mlヒスチジンを含むバルクホルダーミニマル
メディウムの寒天プレート上に塗布し、30℃にて培養し
てコロニーを形成させる(ロイシン非要求性となった形
質転換体の再確認のため)ついでこのコロニーから菌体
を分離し、20μg/mlヒスチジンを含むバルクホルダーミ
ニマルディウム10mlに接種し、30℃にて培養を行う。約
24時間後、対数増殖期にある菌体を遠心して集菌し、こ
れをリン酸を含まない最小培地(バルクホルダーミニマ
ルメディウムに含まれるKH2POをKClで置換し、さらに20
μg/mlヒスチジンを加えたもの)10mlに菌数約4×106c
ells/mlになるように懸濁し、30℃にて培養を続けた。
このようにして酵母菌体内に産生されたプレアルブミン
を得た。
リン酸濃度を低下させ、プロモーター活性を誘導する
前後でのプレアルブミンの酵素免疫測定による測定値を
後記実施例2の第1表中に示した。
(1)異型プレアルブミン遺伝子の調製 FAP患者の肝臓を手術時に摘出し、実施例1の場合と
同様にして異型プレアルブミンをコードするcDNAを調製
し、これをOkayama-Bergベクターにクローニングし、こ
れをプラスミドpPA3とした。
(2)異型プレアルブミン遺伝子発現プラスミド(pMPA
1)の調製 この異型プレアルブミンをコードする全領域を含むDN
A断片が挿入されているプラスミドpPA3(3μg)を用
い、実施例1と同様にしてシャトルベクターpAM82の酸
性ホスファターゼプロモーター下流に異型プレアルブミ
ン遺伝子が組み込まれている発現プラスミドpMPA1を得
た。
(3)形質転換酵母による異型プレアルブミンの製法 前記のプラスミドpMPA1を実施例1と同様に酵母サッ
カロミセス・セレビジエAH22に導入し、形質転換酵母を
得、これを同様に培養した。第1表にリン酸濃度を低下
させ、プロモーター活性を導入する前後での異型プレア
ルブミンの酵素免疫測定の結果を示した。
実施例3:産生されたプレアルブミンの解析 前記実施例1および実施例2により得られたプレアル
ブミン(正常)および異型プレアルブミンの免疫学的性
状をヒト血液由来のプレアルブミンのそれと比較するこ
とにより調べた。
その結果、正常プレアルブミンを産生している酵母菌
を破砕して得られる粗抽出液の酵素免疫測定における反
応性は、ヒト血液由来のプレアルブミンのそれと同一で
あることが確認された(第5図)。さらに、ウェスタン
ブロットの結果からも、酵母産生正常プレアルブミンは
ヒト血液由来プレアルブミンと同一の分子量を有してい
ることが確認された。(第6図、レーン1:ヒト血清由来
プレアルブミン、レーン2:正常プレアルブミン発現酵母
菌体破砕液、レーン3:異型プレアルブミン産生酵母菌体
破砕液、レーン4:陰性コントロール用宿主酵母菌体破砕
液) また、実施例2における異型プレアルブミンも同様に
FAP患者血液由来の異型プレアルブミンと免疫学的に同
一であることが判明した。(第5図、第6図参照)
【図面の簡単な説明】
第1図は、プレアルブミン遺伝子の制限酵素切断地図、
第2図はプレアルブミン遺伝子の塩素配列とこれから予
想されるアミノ酸配列を示す。 第3図は、シャトルベクターpAM82のプラスミド図を示
す。 第4図はプレアルブミン遺伝子発現プラスミドの構築図
を示す。 第5図は酵母産生正常プレアルブミン、異型プレアルブ
ミンおよびヒト血液由来プレアルブミンの酵素免疫測定
における反応性を示す。 第6図はヒト血液由来プレアルブミン(レーン1)、酵
母産生正常プレアルブミン(レーン2)、酵母産生異型
プレアルブミン(レーン3)および宿主酵母菌粗抽出液
(レーン4)のウェスタンブロット像を示す。

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】酵母の遺伝子と大腸菌の遺伝子を含み、か
    つ酵母の形質発現調節領域を担うシャトルベクターの当
    該形質発現調節領域下流にヒトのプレアルブミンをコー
    ドするcDNAを組み込んだ組換えプラスミドを酵母Saccha
    romyces cerevisiaeに導入することにより形質転換酵母
    を得、この形質転換酵母を培養することを特徴とするヒ
    トプレアルブミンの製法。
  2. 【請求項2】該シャトルベクターにおいて、該酵母の遺
    伝子がars1及び2μoriならびに形質転換酵母の選択マ
    ーカーとなる遺伝子、該大腸菌の遺伝子が大腸菌菌体内
    において増殖するために必要なDNA配列並びに選択マー
    カーとなる遺伝子、並びに該形質発現調節領域が酵母由
    来の酸性ホスファターゼプロモーターである前記第
    (1)項に記載の製法。
  3. 【請求項3】該プレアルブミンがヒトの異型プレアルブ
    ミンである前記第(1)項記載の製法。
  4. 【請求項4】該異型プレアルブミンをコードするcDNAが
    ヒトの異型プレアルブミン遺伝子から翻訳される第1番
    目から第147番目アミノ酸までのペプチドをコードする
    遺伝子を含む前記第(3)項記載の製法。
  5. 【請求項5】該cDNAが下記の遺伝子配列を含む遺伝子断
    片である前記第(4)項記載の製法。
  6. 【請求項6】該異型プレアルブミンをコードするcDNAが
    ヒトの異型プレアルブミン遺伝子から翻訳される第21番
    目から第147番目アミノ酸までのペプチドをコードする
    遺伝子を含む前記第(3)項記載の製法。
  7. 【請求項7】該cDNAが下記の遺伝子配列を含む遺伝子断
    片である前記第(6)項記載の製法。
  8. 【請求項8】該プレアルブミンがヒトの正常プレアルブ
    ミンである前記第(1)項記載の製法。
  9. 【請求項9】該正常プレアルブミンをコードするcDNAが
    ヒトの正常プレアルブミン遺伝子から翻訳される第1番
    目から第147番目アミノ酸までのペプチドをコードする
    遺伝子を含む前記第(8)項記載の製法。
  10. 【請求項10】該cDNAが下記の遺伝子配列を含む遺伝子
    断片である前記第(9)項記載の製法。
  11. 【請求項11】該正常プレアルブミンをコードするcDNA
    がヒトの正常プレアルブミン遺伝子から翻訳される第21
    番目から第147番目アミノ酸までのペプチドをコードす
    る遺伝子を含む前記第(8)項記載の製法。
  12. 【請求項12】該cDNAが下記の遺伝子配列を含む遺伝子
    断片である前記第(11)項記載の製法。
  13. 【請求項13】形質転換される酵母が、シャトルベクタ
    ーで担われた形質転換酵母の選択マーカー遺伝子によっ
    て相補される変異をもった変異株である前記第(1)項
    記載の製法。
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