JPH09175703A - 被印刷体圧着・移送用ローラ - Google Patents

被印刷体圧着・移送用ローラ

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JPH09175703A
JPH09175703A JP7336801A JP33680195A JPH09175703A JP H09175703 A JPH09175703 A JP H09175703A JP 7336801 A JP7336801 A JP 7336801A JP 33680195 A JP33680195 A JP 33680195A JP H09175703 A JPH09175703 A JP H09175703A
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Kunihiro Umetsu
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 軽量で、インキの付着汚染が少なくかつ洗浄
の容易な耐久性の高い高速印刷機に適した被印刷体圧着
・移送用ローラを提供する。 【解決手段】 繊維強化樹脂製ローラ基材(11)上に、多
孔質のセラミックス溶射層(15)と前記セラミックス溶射
層の表面上および孔部内に形成された低表面エネルギー
性樹脂層(16)とからなる複合被覆皮膜(17)が形成されて
いることを特徴とする被印刷体圧着・移送用ローラ。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術の分野】本発明は、各種印刷装置に
おける被印刷体圧着・移送用ローラの改良に関するもの
であり、特に各種輪転印刷機におけるガイドローラなど
といったローラの改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】印刷技術は、文字その他の図形情報を、
紙その他の被印刷体面上に、同質画像を形成したハード
コピー(印刷物)として大量に複製する技術である。こ
のような印刷技術において、印刷版に色材(インキ)を
付着させ、被印刷体面に圧着転移して印刷物を作成する
のに用いられる印刷装置としては、周知のように、印刷
版の形式および印刷版からの被印刷体面へのインキの転
移形式(直接印刷あるいは間接印刷方式)の相違によっ
て、オフセット印刷機、凸版印刷機、フレキソ印刷機、
グラビア印刷機、スクリーン印刷機等の各種のものがあ
る。
【0003】これらの印刷装置においては、印刷版を直
接に被印刷体に圧着させるか、あるいは印刷版に付着し
たインクをいったん転移したゴムブランケット等の中間
媒体を被印刷体に圧着させるかの相違はあれ、このよう
な印刷要素(印刷版または中間媒体)上のインキを被印
刷体に転移するという大きな概念においては同じであ
り、被印刷体をこれらの印刷要素に圧着しその後移送す
る被印刷体の圧着・移送系の構成としては、共通すると
ころも多い。
【0004】図4は、オフセット印刷機における被印刷
体の印刷および移送機構の概略的な構成を示す図面であ
る。この例は、被印刷体4としてロール状に巻かれた連
続紙を用いる輪転式のものであり、インキが版胴1から
ゴム胴2に転写され、さらにゴム胴2と圧胴3の間に送
入された被印刷体4面上へと圧着転移し、インキ像5が
形成されるが、インキ像5を表面に形成された被印刷体
4は、その後、複数のガイドローラ7によって移送変向
されながら装置内を通過する。
【0005】このようにロール状に巻かれた紙、フィル
ム等の被印刷体に連続的に印刷を行なう輪転機において
は、被印刷体の移送系において多くのガイドローラを備
える。このようなガイドローラを用いた移送系は、上記
したようなオフセット輪転機(新聞輪転機、商業用オフ
セット輪転機、フォーム輪転機)のみならず、グラビア
印刷機、フレキソ印刷機、凸版新聞輪転機等の輪転機も
同様に有するものである。
【0006】輪転機用ガイドローラ7としては、従来、
鉄パイプの表面にクロムメッキを施したもの、あるいは
軽量化のためアルミニウム合金パイプを素材としたもの
が従来多く用いられている。さらに、被印刷体のスリッ
プ防止および点接触効果によるインキ付着防止のため
に、これらのガイドローラ表面に、ローレット加工し
たもの、表面をサンドペーパー状の粗面にしたテープ
を貼付したものセラミックスを溶射したものなどが知
られている。
【0007】しかしながら、アルミニウム合金パイプを
ローレット加工したものは、耐磨耗性が低く短期間でロ
ーレットの凹凸が消失してしまい、スリップを生じやす
くなるものであった。またサンドペーパー状の粗面テー
プをローラ表面に貼付したものにおいても同様に短期間
の使用でサンド・ビーズの脱落、テープの剥離等が生じ
長期の使用に耐えられないものであった。一方、セラミ
ックスの溶射面を形成したものは、耐磨耗性が非常に高
くかつ耐スリップ性の面でも非常に良好な効果があるも
のの、以下のようなインキ付着性の問題が顕著となると
いう欠点が生じるものであった。
【0008】すなわち、従来知られるいずれのガイドロ
ーラの表面も、比較的インキ付着性の高い物性の材質か
らなるものであり、従って、このようなガイドローラ7
は、表面に凹凸加工をされていても、輪転機を長時間運
転すると、被印刷体4表面に印刷されたインキ像5が、
接触するガイドローラ7面上に転写インキ像8として転
写され、更にこの転写インキ像8が後続する被印刷体4
表面に逆転写され印刷物の汚染が生じるという問題が生
じている。このため、輪転機の運転にあっては、定期的
にこのようなガイドローラの洗浄を行なわなければなら
ず、洗浄操作のための印刷作業の中断、洗浄負荷が大き
く、また洗浄をおろそかにすると、印刷物不良品を出す
というトラブルの発生を招くこととなる。
【0009】特に、前記セラミックスの溶射面を形成し
たものにあっては、インキが溶射粗面の凹部に入り込ん
で付着してしまうために、表面を拭うことによっては容
易に除去できず、また溶剤を用いて洗浄を行なうと溶剤
に溶解したインキがセラミックス溶射層の気孔内へと移
行含浸されてしまうために、洗浄操作が困難であった。
【0010】また、最近では、このようなガイドローラ
として、高剛性を有しかつ軽量であるため、印刷機の高
速化に対応できるという理由から、炭素繊維強化樹脂
(CFRP)等の繊維強化樹脂製のロールを使用するこ
とも提案されている。
【0011】さらに、繊維強化樹脂製のロールは、表面
の耐磨耗性が劣り、毛羽立ち等が生ずることがあるた
め、その改善を目的として耐磨耗性に優れたCrメッキ
を施すこと、さらにはメッキ工程の煩雑さを軽減するた
めに比較的簡単な工程で済む金属やセラミックスの溶射
被膜を形成することも提案されている(例えば、実公平
4−7378号公報、特開昭60−214958号公
報、特開昭61−96063号公報、特開昭61−10
4061号公報等)。
【0012】しかしながら、このような繊維強化樹脂製
のロールを基材とするものであっても、その表面にCr
メッキ、金属溶射層、セラミックス溶射層を形成したも
のは、前述したようにインキ付着ないし印刷物の汚染の
問題については依然解決されていないものであった。
【0013】さらに、特開平4−310741号公報、
特開平6−207614号公報には、このような繊維強
化樹脂製ロールにおけるインキ汚れを防止するために、
繊維強化樹脂製ロール表面にフッ素樹脂、シリコン樹脂
ないしはフッ素・シリコン含有樹脂をコーティングして
なるものが提案されている。
【0014】しかしながら、このような樹脂コーティン
グのみを施してなるものは、表面被覆層の耐磨耗性が著
しく乏しく、磨耗接触により極めて短期間で離型効果を
失うため磨耗作用下で使用されるガイドローラ等の部材
への適用は実用性がない。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】従って本発明は、各種
印刷装置において使用される改良された被印刷体圧着・
移送用ローラを提供することを目的とするものである。
本発明は、また高速回転が可能で、高速回転時の追従性
が良く、しかもインキの付着汚染が少なくかつ洗浄の容
易な耐久性の高い被印刷体圧着・移送用ローラを提供す
ることを目的とするものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】上記諸目的を達成するた
めに、本発明の被印刷体圧着・移送用ローラは、繊維強
化樹脂製ロール基材上に、多孔質のセラミックス溶射層
と前記セラミックス溶射層の表面上および孔部内に形成
された低表面エネルギー性樹脂層とからなる複合被覆皮
膜を形成してなるものである。
【0017】本発明の上記被印刷体圧着・移送用ローラ
において、前記繊維強化樹脂としては、炭素繊維強化樹
脂が好ましい。
【0018】本発明の上記被印刷体圧着・移送用ローラ
においては、前記繊維強化樹脂製ロール基材上には、こ
の繊維強化樹脂のマトリックスを構成する合成樹脂と同
種の有機高分子材料からなる膜厚30〜300μmの基
層被膜と、この基層被膜の表面に同じく繊維強化樹脂の
マトリックスを構成する合成樹脂と同種の有機高分子材
料からなる膜厚50〜300μmであってかつ表面粗さ
(Rz)が40〜130μmの粗面化被膜とからなる下
地層が形成され、この下地層上部に前記多孔質のセラミ
ックス溶射層が形成されているものであることが望まし
い。
【0019】さらにこの被印刷体圧着・移送用ローラの
表面性状は、代表的には、表面粗さ(Rz)15〜40
μmであることが望ましく、滑らかな凹凸を有するもの
である。
【0020】また、この被印刷体圧着・移送用ローラ
は、特に輪転印刷機用のガイドローラとして好適に使用
され得るものである。
【0021】本発明はまた、粘着移行性物質が表面に付
与されたフィルム状体の処理用ローラであって、繊維強
化樹脂製ロール基材上に、多孔質のセラミックス溶射層
と前記セラミックス溶射層の表面上および孔部内に形成
された低表面エネルギー性樹脂層とからなる複合被覆皮
膜が形成されていることを特徴とするローラである。
【0022】
【作用】このように本発明に係る被印刷体圧着・移送用
ローラは、繊維強化樹脂製ロール基材表面上に、多孔質
のセラミックス溶射層と前記セラミックス溶射層の表面
上および孔部内に形成された低表面エネルギー性樹脂層
とからなる複合被覆皮膜を形成してなるものである。図
1は、このような本発明に係る被印刷体圧着・移送用ロ
ーラの一実施態様における断面構造を模式的に示す図、
図2は、本発明に係る被印刷体圧着・移送用ローラの断
面構造をさらに拡大して模式的に示す図、また図3は、
本発明に係る被印刷体圧着・移送用ローラの製造過程に
おける断面構造を模式的に示す図である。なお、これら
の図において縦横の縮尺比は誇張して描かれている。
【0023】本発明の被印刷体圧着・移送用ローラを得
るには、まず図3に示すように繊維強化樹脂製ロール基
材10表面上に、セラミックス溶射層15を形成する。
なお、この図に示す例においては、ロール基材10表面
上には、セラミックス溶射層15の密着性を向上させる
ために、後述するような基層11と粗面化層12とから
なる下地層14が形成され、その上にセラミック溶射層
15が形成されている。なお、図中、符号13は粗面化
層12中に配合された粒状固形有機高分子材料を示すも
のである。
【0024】このようにして形成されたセラミックス溶
射層15表面は、図示するように非常にシャープな突起
を形成する短周期的な凹凸(ピッチ波状凹凸)と、さら
により長周期的な凹凸(うねり状凹凸)とが複合して形
成した粗面、代表的に好ましくは、Rz20〜50μm
程度の粗面であり、かつセラミックス溶射層15は多孔
質、好ましくは0.1μm〜数十μmの微細な気孔を気
孔率5〜20%で有するものである。
【0025】ここで、このセラミックス溶射層15の上
部から、例えばシリコーン系樹脂等の低表面エネルギー
性樹脂を含浸コーティングして乾燥固化させると、図1
および2に示すように、セラミックス溶射層の表面上お
よび孔部内に低表面エネルギー性樹脂層16が形成され
る。低表面エネルギー性樹脂16は、前記したようにセ
ラミックス溶射層15がピッチ波状凹凸を有することお
よび多孔質であることから、これらの部位に入り込むこ
とによるアンカー効果によってセラミックス溶射層15
との密着性がよく複合皮膜化し、セラミックス溶射層1
5と低表面エネルギー性樹脂層16とで複合被覆皮膜1
7を構成する。
【0026】さらに低表面エネルギー性樹脂16は、セ
ラミックス溶射層15の表面を実質的に全面的に覆う
が、そのピッチ波状凹部には厚く一方ピッチ波状凸部に
は薄く付着する。このため、セラミックス溶射層12の
みを形成した状態と比較すると滑らかな表面性状となる
が、セラミックス溶射層15に起因する凹凸が完全に埋
没してしまうものではなく、前記うねり状凹凸は概ね維
持され、滑らかな凹凸を有する粗面が形成できるもので
ある。なお、最終的な表面粗度Rz は代表的には15〜
40μm程度とすることが望ましい。また最終的な滑ら
かな凹凸における凸部(前記うねりの凸部)は、例えば
30μm×30μm平方〜60μm×60μm平方当り
に1ケ程度の割合で均一に分散して存在することが望ま
しい。なお、ここで言う凸部は、被測定物表面を長さ2
0mm×幅20mmにわたり2次元的に走査して測定
し、この測定領域内における最高凸部の高さの70%以
上の高さを有する凸部を指すものである。
【0027】このため、本発明に係る被印刷体圧着・移
送用ローラが、被印刷体と接触する際には、ローラ表面
全体で接触することなく前記したような滑らかな突起に
おいてのみ接触し、かつその表面には低表面エネルギー
性樹脂が存在するために、被印刷体からのインキの移行
は起りにくく、かつ移行したインキも、表面が低表面エ
ネルギー性樹脂によるものであることと滑らかな凹凸の
プロフィールを有することが相俟って、乾燥した布材等
で軽く触れるだけで容易に除去できるものである。
【0028】また、前記したように低表面エネルギー性
樹脂層16はセラミックス溶射層15と複合化されて表
面に付与されているために、極めて長期間使用されたと
しても全体的に磨耗剥離してしまうといったことは生じ
ず、前記うねり状凹凸の凸部という極めて小さな部位で
磨耗が生じるのみである。このため長期間にわたってロ
ール表面の低表面エネルギーが維持され、特性の劣化が
生じにくいものである。なお、このうねり状凹凸は、よ
り微細なピッチの凹凸との比較のために「うねり」と表
現したが、目視的には全くわからない程度のものであ
り、従ってその凸部の表面の樹脂層16が磨耗してセラ
ミックス溶射層15が露出し、この部位でインキの付
着、逆転移が生じたとしても、印刷品質上全く問題とな
らないものである。
【0029】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施態様に基づき
より詳細に説明する。
【0030】本発明の被印刷体圧着・移送用ローラにお
けるロール基材としては、繊維強化樹脂が用いられる。
【0031】繊維強化樹脂のマトリックスを構成する合
成樹脂としては、エポキシ樹脂;不飽和ポリエステル樹
脂;フェノール樹脂;アルキッド樹脂等の熱硬化性樹
脂、あるいは各種ナイロンなどのアミド樹脂;ポリカー
ボネート;ウレタン樹脂;ポリアセタール;ポリエーテ
ルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルイミドなどの
非晶質系ポリエーテル樹脂;ポリエチレンテレフタレー
ト、ポリブチレンテレフタレートなどの飽和ポリエステ
ル樹脂等の熱可塑性樹脂が用いられ得る。このうち好ま
しくは、熱硬化性樹脂であり、特にエポキシ樹脂であ
る。
【0032】一方、繊維強化樹脂の補強繊維としては、
炭素繊維、シリコンカーバイド繊維、硼素繊維、チタン
酸カリ繊維、ガラス繊維などが例示でき、これらを単独
あるいは複数組合せて用いることができるが、特に炭素
繊維単独あるいは炭素繊維を主体としてその他の繊維を
若干配合したものを使用することが望ましい。なお、本
明細書において、「炭素繊維強化樹脂」とは、補強繊維
として炭素繊維のみを用いたもののみならず、炭素繊維
を主体とし(具体的には50%以上)、これに他の繊維
を配合したものを用いたものを包含するものである。
【0033】炭素繊維の種類としては特に限定されるも
のではなく、PAN系、ピッチ系あるいはこれらの混合
物などといったものから、ローラに対し求められる特性
等に応じて適宜選択され、例えば、より高い弾性率が求
められる場合にはピッチ系のものを、またそれほど高い
弾性率が必要でなくより経済性を優先する場合にはPA
N系のものを用いることなどが適当である。また短フィ
ラメントであるか長フィラメントであるかは、主に以下
に述べるような成形方法により決定されてくるものであ
り、特に限定されるものではない。例えば、より高い弾
性率が求められる場合には、長フィラメントを用いるこ
とが好ましい。
【0034】このような繊維強化樹脂によるロール基材
の成形方法としては、シートラッピング法、フィラメン
トワインディング法、引抜成形法、レジントランスファ
ーモールディング法等種々の方法があり特に限定される
ものではない。シートラッピング法およびフィラメント
ワインディング法で成形されるものは、金属製マンドレ
ルにラッピングあるいはフィラメンドワインドした後加
熱硬化あるいは加熱溶融して素管を形成する。引抜法に
より成形されるものはパイプ形状のダイスにて引抜成形
し、素管を形成する。レジントランスファーモールディ
ング法によって成形されるものは金属型あるいは樹脂型
等によって成形される。
【0035】このようにして成形された素管は、一般に
ロールの長さを決めるために丈決を行い、その後ヘッダ
ないしジャーナルを取り付ける。ヘッダないしジャーナ
ルの接合は機械的接合、接着接合あるいはこれらの組合
せによって行なうことができる。その後ロール外周部の
研磨、研削等および必要に応じてベアリング嵌合部、軸
受部などの仕上げを行なう。あるいはまた、あるいはヘ
ッダないしジャーナルの接合に先立ち、ロールの外周部
の研磨を行い、その後にヘッダないしジャーナルを接合
し、ベアリング嵌合部、軸受部の仕上を行ってもよい。
なお、ロール基材は、研磨等により所定の径精度を有す
るものとされる必要がある。すなわち、本発明に係る被
印刷体圧着・移送用ローラは、最終仕上としてこのよう
な切削研磨が行なえないためである。
【0036】このようにして、ロール外周部の研磨等に
より外径寸法の調整を行なった後、セラミックス溶射層
を形成するが、繊維強化樹脂製ロール基材とセラミック
ス溶射層との密着強度を高めるために、セラミックス溶
射に先立ち、前処理としてロール基材に下地層を形成す
ることが望ましい。
【0037】セラミックス溶射の前処理として、繊維強
化樹脂製ロール基材表面をサンディング、リン酸亜鉛処
理、ブラスト処理等により表面を粗面化する表面処理も
考えられるが、このような粗面化は、処理基材が繊維質
であるため表層部の繊維の切断と破壊が起り、繊維の毛
羽立ちが助長されて、その表面への溶射に当って均質な
被膜が形成されず、またその被膜形成作業に際しては、
ブラスト材、被処理基材の微粉末が飛散して空気中に浮
遊するという環境の悪化といった問題が生じるためあま
り好ましくない。
【0038】下地層としては、特に限定されるものでは
ないが、ロール基材の繊維強化樹脂におけるマトリック
スを構成する合成樹脂と同種の有機高分子材料からなる
基層被膜と、この基層被膜の表面に同じく炭素繊維強化
樹脂のマトリックスを構成する合成樹脂と同種の有機高
分子材料からなる粗面化被膜とからなる構成とすること
が望ましい。特に前記基層被膜の膜厚が30〜300μ
mで、また前記粗面化被膜の膜厚が50〜300μmで
あってかつ表面粗さ(Rz)が40〜130μmとする
ことが最も望ましい。
【0039】なお、ここで粗面化被膜は、後述するよう
にマトリックスを構成する前記有機高分子材料と骨剤と
なる粒状固形有機高分子材料とから構成されるものであ
るが、粗面化層は、そのマトリックスを構成する前記有
機高分子材料が、ロール基材の繊維強化樹脂におけるマ
トリックスを構成する合成樹脂と同種のものであれば、
粗面化層に含まれる固形有機高分子材料までもロール基
材の繊維強化樹脂におけるマトリックスを構成する合成
樹脂と同種のものとする必要は必ずしもなく、当該マト
リックス中に安定に分散され得る硬質のものであれば特
に限定されない。もちろん、粗面化層のマトリックスを
構成する有機高分子材料と熱膨脹率等の物性が近似する
もの、さらには該有機高分子材料と同種のものとするこ
とが好ましいものであることは確かである。
【0040】このような構成において、基層被膜は、ロ
ール基材表面の毛羽立ちや微細ボイドなどの欠陥を埋め
てロール基材表面を補正して平滑性を付与し、また粗面
化被膜はセラミックス溶射被膜との密着性の向上に寄与
するように機能する。
【0041】このような下地層は、例えば、繊維強化樹
脂製ロール基材表面に、有機高分子材料に希釈剤5〜1
5重量%を配合した溶液を前記ロール基材の周面に略直
交する方向からスプレー塗布し、乾燥して基層被膜を形
成し、この基層被膜表面に、有機高分子材料に粒状、好
ましくは粒径10〜45μmの固形有機高分子材料60
〜80重量%と希釈剤30〜120重量%を配合した組
成物をこのロールの周面に対し90°未満の方向からス
プレー塗布し、乾燥して粗面化被膜を形成することによ
り行ない得る。
【0042】上記手法における基層被膜の形成におい
て、希釈剤が5重量%未満ではエアースプレー塗布した
際に形成された基層内にエアーの巻き込みが生じ易くな
り、一方15重量%を越えると平滑な被膜形成が困難と
なる。また基層被膜が30μm未満では繊維強化樹脂製
ロール基材表面の補正被膜として不十分であり、そのた
め基材欠陥を解消し得ず、また300μmを越えるもの
であるとロールの最終寸法精度が不安定となる虞れがあ
る。
【0043】また粗面化層の形成において、粒状固形有
機高分子材料の粒径が10μm未満では骨材としての機
能が発揮されず、粒径が45μmを越えるものであると
エアースプレーノズルをロール基材の周面接線に対し9
0°未満となるよう対向配置しているため、形成される
粗面化層に過剰な粒子の遮蔽現象が生じて、次工程で形
成されるセラミックス溶射被膜との密着力を向上し得な
い虞れが生じる。また粒状固形有機高分子材料の配合量
が60重量%未満では樹脂分への食い込み、衝突等によ
る粗面断面形状に対する複雑化の集積されず、80重量
%を越えるものであると樹脂分による支持力が不足し、
次工程で形成されるセラミックス溶射被膜との密着力を
向上し得ない虞れが生じる。さらに希釈剤が30重量%
未満では、樹脂分の粘度により、配合されている粒状固
形有機高分子材料のエアースプレー塗布時の移動量が減
少して複雑な断面形状の粗面を形成できず、120重量
%を越えるものであると樹脂分が不足し、十分なアンカ
ー効果を発揮し得ない。また、膜厚が50μm未満では
適正な粗面粗さを有していても基層との密着力に乏し
く、次工程で形成されるセラミックス溶射被膜の密着力
が低下し、一方、300μmを越えるものであると平板
な断面形状の粗面となって、次工程でのセラミックス溶
射被膜との密着力が低下する虞れがある。
【0044】さらに上記手法においては、下地層の上層
である粗面化層は、ロール基材の周面接線に対し90°
未満の方向からエアースプレー塗布しているが、これは
円筒状物の周面接線に直交方向からエアースプレー塗布
した際、霧状溶液は直交部で2分割され、周曲面に沿っ
て流れ、直交部より漸次薄くなり、該円筒状物が1回転
することで所要の厚みの塗布層が形成されるが、周面接
線に対し90°未満の方向からエアースプレー塗布する
と、直交部で2分割される際、周曲面の一方向側に沿っ
て他方向側より多く流れ、これにより霧状溶液中の粒状
固形有機高分子材料は粒子による遮蔽現象とともに塗布
層形成途中の樹脂分に食い込んだり、擦過したり、相互
の衝突、弾発等を生じて複雑な断面形状を有する粗面を
形成し得るためである。
【0045】なお、本発明に係る被印刷体圧着・移送用
ローラにおいて、セラミックス溶射被膜形成のための下
地処理方法としては、上記したような基層と粗面化層と
をロール基材の繊維強化樹脂のマトリックスを構成する
合成樹脂と同種の有機高分子材料により形成する手法が
最も望ましいが、これ以外の公知の方法、例えば、実公
平4−7378号公報などに記載されるように、有機質
材料と無機質材料とからなる下地層を形成することも、
可能である。しかしながら、下地層としてこのように有
機質材料と骨材となる無機質材料とからなる下地層を形
成した場合、セラミックス溶射時の熱による下地層や繊
維強化樹脂製ロール基材とセラミックス溶射被膜との熱
膨脹差に起因するセラミックス溶射層の剥離の可能性が
あり、製品歩留りおよび製品耐久性などといった面か
ら、上記したような基層と粗面化層とをロール基材の繊
維強化樹脂のマトリックスを構成する合成樹脂と同種の
有機高分子材料により形成する手法を用いた場合と比較
して、劣るものとなる可能性が大きい。
【0046】そして、上記したような繊維強化樹脂製ロ
ール基材表面または下地層表面上に、例えばプラズマジ
ェット溶射法等の公知のセラミックス溶射法を用いるこ
とにより、セラミックス溶射層を形成する。セラミック
ス材料としては、Al2 3、TiO2 、Al2 3
TiO2 、Cr2 3 、ZrO2 、WC、WC−Co、
Cr3 2 、TiC等あるいはこれらの混合物、さらに
は導電性をもたすためにセラミックスと金属を同時溶射
した複合皮膜、サーメット類等が例示されるが、これら
に限定されるものではない。セラミックス材料の選択
は、ロール基材または下地層との密着強度、耐磨耗性、
ならびに得られるセラミックス溶射層が数μm〜数十μ
mの微細な気孔(連続気孔)を気孔率5〜20%にて有
しかつその表面粗度がRz20〜50μm程度となるこ
と等の点に、経済性を考慮して行なえば良い。一般的に
は、ホワイトアルミナ(W−Al2 3 )およびグレー
アルミナ(G−Al2 3 )(Al2 3 −Ti
2 )、クロミア(Cr2 3 )などが望ましい。
【0047】なお、セラミックス溶射層が数μm〜数十
μmの微細な気孔(連続気孔)を気孔率5〜20%で有
することが望まれるのは、セラミックス溶射層に後述す
る低表面エネルギー性樹脂層を安定して複合形成可能と
するためであり、気孔率が5%未満では表面活性樹脂が
セラミックス溶射層内部に十分に入り込めず剥離性が高
まる虞れがあり、一方気孔率が20%を越えるものであ
ると複合皮膜の骨格構造となるセラミックス溶射層の強
度が低下する虞れがあるためである。またその表面粗度
がRz20〜50μm程度を有することが望まれるの
は、セラミックス溶射層表面上に後述するような低表面
エネルギー性樹脂を堆積した際に、該体表面エネルギー
性樹脂が安定に付着しかつ最終的に必要かつ十分な大き
さの滑らかな凹凸が形成され易い範囲であるからであ
る。
【0048】さらにこのセラミックス溶射層の厚さとし
ては、平均膜厚30〜200μm、より好ましくは40
〜80μm程度であることが望まれる。すなわち、平均
膜厚が30μm未満では均一でかつ密着性、強度および
耐磨耗性等の特性が十分な溶射層を得ることができない
虞れがあり、一方平均膜厚が200μmを越えるもので
あるとコスト面で不利となるからである。更に、ロール
が圧胴の場合におけるように高い径精度を必要とされる
態様においては、膜厚は150μm以下であることが望
ましい。すなわち、圧胴の場合、最終的な仕上げ径をD
±0.02mm以下、円筒度0.020以下に抑える必
要があるためである。
【0049】また、セラミックス溶射層の表面粗度は、
前記したように一般にRz20〜50μm程度であるこ
とが望まれるが、最終製品として必要とされる最適な表
面粗度は、ローラの種類によって異なり、例えばグラビ
ア印刷機等の薄いフィルムを印刷する機械におけるガイ
ドローラ等は、代表的なRz15〜40μm程度よりも
より細かい最終表面粗度が望ましいものであるので、こ
のような最終的な粗度が得られるように、必要に応じて
セラミック溶射後に軽く表面研磨を行なうことも可能で
ある。
【0050】このようにしてセラミックス溶射層が形成
されたら、その上部から低表面エネルギー性樹脂を例え
ば、スプレー、ディッピング、ハケ塗り、ローラ塗布等
の方法で含浸、コーティングし、所定の温度で乾燥固化
させ、セラミックス溶射層の表面上および孔部内に低表
面エネルギー性樹脂層を形成する。低表面エネルギー性
樹脂としては、使用されるインキに対する濡れ性が低く
かつインキ組成中等に使用される薬剤に対し安定な皮
膜、望ましくは高硬度皮膜を形成できるものであれば特
に限定されるものではないが、通常、シリコーン系樹脂
およびフッ素原子含有樹脂が望ましく、さらにその硬
度、施工性、化学的安定性等の面からシリコーン系樹脂
が望ましい。
【0051】シリコーン系樹脂としては、施工後に、高
分子化、三次元化してSi−O−Si結合と有機基、望
ましくはメチル基および/またはフェニル基、より望ま
しくはメチル基を主体とする骨格構造を有し、安定な硬
化皮膜を形成できるものであればよい。側鎖としてのメ
チル基が多くなるほど、インキに対する濡れ性は低いも
のとなるが、その硬度の向上面からはフェニル基、ある
いはビニル基などの官能基に起因する架橋構造の含有割
合を高めることが望まれる。
【0052】なお施工時の形態は特に限定されるもので
はなく、例えば、オリゴマー、モノマー等の液状のも
の、あるいは樹脂状のものを適当な溶媒に溶解した溶液
状のものなど、例えば、シリコーンワニス、シリコーン
ゴム等に分類され市販される公知の各種の組成のものを
適宜選択して使用することができるが、例えば、ワニス
系シリコーン離型剤として市販されている組成物、ない
しこれに類似する組成物が、施工性および得られる皮膜
特性の面から好ましいものが多い。シリコーン離型剤と
しては、例えば、一般式(I)で示されるような構造を
有するシリコーンポリマーないしコポリマーを主成分と
するものが市販品として入手できる。
【0053】
【化1】
【0054】(但し、式中、Rはそれぞれ独立に水酸
基、アルキル、アリール、アルケニル、ハロゲン置換ア
ルキル、ハロゲン置換アリール、ハロゲン置換アルケニ
ル、好ましくはメチル基を表し、nは1〜30000で
ある。) しかしながら、もちろん使用されるシリコーン系樹脂組
成物としては、このようなシリコーン離型剤に何ら限定
されるものではない。
【0055】またこのようなシリコーン系樹脂組成物中
には、必要に応じて、皮膜硬度を高めるためのシリカ微
粒子等の充填剤を配合することも可能であるが、セラミ
ックス溶射層の空孔部および凹部に十分侵入し得る程度
の粒径のものである必要がある。
【0056】またフッ素原子含有樹脂としては、ポリク
ロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポ
リフッ化ビニル等といった熱可塑性フッ素原子含有樹脂
を用い、適当な溶剤に懸濁ないし膨潤させて塗布し、溶
融温度以上に加熱して成膜するといったディスパージョ
ン加工法を用いることも可能であるが、セラミックス溶
射層の表面上および孔部内により確実に皮膜を形成する
ためには、分子鎖内に少量の水酸基、カルボン酸基等の
官能基を有し、液状にて塗布可能でかつ常温または加熱
して架橋硬化する熱硬化性フッ素原子含有樹脂の方が望
ましく、例えば、フルオロエチレンとアクリル酸、メタ
アクリル酸との共重合体などが例示される。
【0057】形成される低表面エネルギー性樹脂層のセ
ラミックス溶射層表面上における厚さは、前記したよう
にセラミックス溶射層のピッチ波状凹部には厚く一方ピ
ッチ波状凸部には薄く付着するため、平均膜厚として規
定することは困難である。しかしながら、溶射層の表面
を実質的に全面的に覆い、かつセラミックス溶射層のう
ねり状凹凸を維持したものとなるように、全体を通じて
0.5〜20μm程度の厚さにおいて付着することが望
ましい。
【0058】このようにして得られる本発明の被印刷体
圧着・移送用ローラは、最終的な表面性状が滑らかな凹
凸を有するものとなり、代表的にはその表面粗度Rz
が、15〜40μm程度であることが望ましく、また最
終的な表面における滑らかな凹凸の凸部は、例えば20
μm×20μm平方〜100μm×100μm平方当り
に1ケ程度、より好ましくは30μm×30μm平方〜
60μm×60μm平方当りに1ケ程度の割合で均一に
分散して存在するものことが望ましい。そしてその全表
面は、複合被覆皮膜として前記セラミック溶射層に保持
された緻密な低表面エネルギー性樹脂層よって形成され
ており、使用されるインキに対する濡れ性の低いもので
ある。
【0059】このため本発明のローラは、各種の印刷機
における被印刷体圧着・移送系に配される各種のローラ
として好適に使用でき、具体的には例えば、オフセット
印刷機における圧胴、あるいはオフセット輪転機(新聞
輪転機、商業用オフセット輪転機、フォーム輪転機)、
グラビア印刷機、フレキソ印刷機、凸版新聞輪転機等の
各種輪転機におけるガイドローラとして好適に使用でき
るものである。
【0060】上記したような本発明のローラは、印刷機
の分野のみならず、前記したような印刷物におけるイン
キと同様に、粘着移行性物質が表面に付与されたフィル
ム状体を処理するローラとして、同様にこれらの粘着移
行性物質によるローラの汚染が生じにくくかつ耐久性の
高いものとして好適に使用できることは明らかである。
印刷機における被印刷体圧着・移送用ローラ以外の適用
例としては、例えば、各種複写機における被印写体の圧
着・移送系におけるローラ等が例示されるが、もちろん
これらに限定されるものではない。
【0061】
【実施例】以下、本発明を実施例によりさらに具体的に
説明する。 参考例1 フィラメントワインディング法により作成された炭素繊
維強化エポキシ樹脂(CFRP)製の中空円筒状物の両
端にローラの回転軸となる構成のフランジ軸を接着して
取付けた後、研削等により外径寸法の調整、表面平滑化
を行ないCFRP製ローラの素管(直径99.5mm×
長さ1730mm)を製作した。
【0062】このCFRP製ロール基材の表面をシンナ
ーで洗浄した後、このCFRP製ロール基材のマトリッ
クスと同種の有機高分子材料であるエポキシ樹脂(大日
本塗料(株)製:商品名エポニックス#10)の主剤/
硬化剤が100/100(重量比)に希釈剤であるシン
ナー10重量%を配合した溶液をこのCFRP製ロール
の基材周面に直交方向からエアスプレー塗布し、80℃
で3時間乾燥して膜厚60μmの基層を形成した。
【0063】次いで、この基層を形成したCFRP製ロ
ール基材の周面に、前記と同じエポキシ樹脂(エポニッ
クス#10)に、粒度が45μm未満の粒状固形有機高
分子材料((株)USテクロノジー・ファーイースト
製:商品名ポリプラス)を80重量%とシンナー100
重量%を配合した組成物を、前記CFRP製ロール基材
の周面接線直交方向に対して30°傾けた方向からエア
スプレー塗布し、80℃で3時間乾燥硬化させて、膜厚
100μm、表面粗度Rz 80μmの粗面化層を形成し
た。
【0064】その後、この粗面化層を形成したCFRP
製ロール基材の周面に、プラズマ溶射機(メテコ(株)
製:METECO 10MB)を用いて、続いて粉末粒
径10〜44μmのG−Al2 3 (Al2 3 −2.
3%TiO2 )をプラズマ溶射して膜厚100μm、表
面粗度Rz50μmのセラミックス溶射層を形成した。
最後にこのセラミック溶射層表面を、サンドペーパー
(#120)にて軽く表面研磨を行い、表面粗度Rz 4
0μmに仕上げた。
【0065】このセラミックス溶射層の表面は、図3に
図示するようにシャープな突起を有しながらうねる粗面
であった。またセラミックス溶射層は0.1〜数十μm
の大きさの空孔を有しており、空孔率は約16%であっ
た。このようにして得られたガイドローラを以下のよう
な印刷試験に供した。
【0066】実施例1 上記参考例1と同様の手順でCFRP製ロール上に基
層、粗面化層およびセラミックス溶射層を形成した後、
セラミックス溶射層の上から、シリコーン系樹脂離型剤
(信越化学工業(株)製 KE1310−S)100
部、トルエン400部および硬化触媒(信越化学工業
(株)製 CAT−1310)10部、硬化触媒(信越
化学工業(株)製 X93−405)1部を混合攪拌し
た溶液を、スプレー方式で含浸塗布した後、110℃の
乾燥炉で30分間乾燥固化させてセラミックス溶射層の
表面にシリコーン系樹脂皮膜を形成した。このシリコー
ン系樹脂皮膜は、セラミックス溶射層の連通空孔部を完
全に閉塞し、かつ溶射層の表面において、ピッチ波状凹
凸の凹部には厚くかつ凸部には薄く付着しその全面を完
全に覆っているものであり、その膜厚は各部位によって
相違するが2〜20μmの範囲にあった。そしてこのシ
リコーン系樹脂皮膜形成後における表面粗度Rz は約3
0μmであり、図1に図示するように滑らかな凹凸を有
する粗面であった。このようにして得られたガイドロー
ラを参考例1と同様に以下のような印刷試験にに供し
た。
【0067】印刷試験 上記参考例1および実施例1において作成したガイドロ
ーラを、それぞれ新聞輪転機(東京機械製B−Bタイ
プ)の印刷部直後の位置に取付け印刷試験を行った。
【0068】その結果、参考例1は、ローラ表面のプロ
フィールが凹凸構造となっているものの、2時間程度の
運転で凸部のみならず凹部にもインキが付着堆積し、一
般に使用されているクロムメッキローラに比べ、インク
付着防止効果が見られなかった。また石油系溶剤による
洗浄でも凹部に入り込んだインキが落ちづらく、かえっ
てクロムメッキ後、鏡面研磨したローラより作業性が悪
いという結果となった。
【0069】一方、実施例1のガイドローラの場合、朝
刊、夕刊の印刷を毎日繰返しても表面の微細な凸部にわ
ずかなインキが付着しているのみであり、しかもこのイ
ンキ付着量は1ケ月経過してもほどんど堆積せず、この
間、途中でガイドローラを清掃することなく、良好な印
刷品質の印刷物を得ることができた。
【0070】なお1年間の長期間試験においても凸部の
シリコーン離型剤が部分的に磨耗しているのみで凹部の
離型剤はしっかり残っており、インキ付着防止効果は十
分に維持されるものであった。
【0071】実施例1のガイドローラを新聞輪転機のラ
イン全体のガイドローラとして採用することにより、C
FRP製ローラ使用による軽量化効果(鉄母材の約1/
3)で、スピードへの追従性が良好なことから、微妙な
張力コントロールを可能にするという本来のCFRP製
ローラの使用目的を維持しつつ極めて優れたインキ離型
性と耐久性が得られることができた。
【0072】
【発明の効果】以上述べたように、本発明の被印刷体圧
着・移送用ローラは、その表面性状が微細で比較的滑ら
かな凹凸を有するものであり、耐磨耗性に優れたセラミ
ックス溶射層ないしは無機微粒子層と表面エネルギーの
低いシリコーン系樹脂等の低表面エネルギー性樹脂層と
からなる複合皮膜で基材表面を被覆しているものである
ため、表面にインキが付着し難いものである。またロー
ル基材として炭素繊維強化樹脂等の繊維強化樹脂を使用
しているため軽量で剛性が高く、高速回転のもとでも、
振動、騒音等の発生がなく、被印刷物に対する微妙な張
力コントロールも可能である。このため各種の印刷機に
おける被印刷体圧着・移送系に配される各種のローラ、
例えば、オフセット輪転機(新聞輪転機、商業用オフセ
ット輪転機、フォーム輪転機)、グラビア印刷機、フレ
キソ印刷機等の各種輪転機におけるガイドローラ、ある
いはオフセット印刷機における圧胴などとして好適に使
用でき、特に高速印刷機への適用が可能となるものであ
り、連続して多量ないし長持間の印刷操作を行なう場合
に、洗浄操作を施す必要もなく、汚れのない良好な印刷
品質の印刷物を提供できるものとなり、かつその耐久性
も優れたものである。さらに、表面に付着したインキも
乾式にてまたは石油系溶剤等にて容易に除去できるもの
であることから、従来、非常に危険でかつ重労働であっ
たローラの洗浄操作も極めて容易なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る被印刷体圧着・移送用ローラの
一実施態様における断面構造を模式的に示す図、
【図2】 本発明に係る被印刷体圧着・移送用ローラの
断面構造をさらに拡大して模式的に示す図、
【図3】 本発明に係る被印刷体圧着・移送用ローラの
製造過程における断面構造を模式的に示す図、
【図4】 オフセット印刷機(輪転機)における被印刷
体の印刷および移送機構の概略的な構成を示す図。
【符号の説明】
1…版胴、 2…ゴム胴、3…圧胴、
4…被印刷体、5…インキ像、 6,
8…転写インキ像、7…ガイドローラ、10…繊維強化
樹脂製ローラ基材、11…基層、12…粗面化層、13
…粒状固形有機物材料、14…下地層、15…セラミッ
クス溶射層、16…低表面エネルギー性樹脂層、17…
複合被覆皮膜。
フロントページの続き (72)発明者 大坪 文明 兵庫県姫路市網干区興浜2113番23 吉川工 業株式会社溶射事業所内 (72)発明者 梅津 邦裕 兵庫県姫路市網干区興浜2113番23 吉川工 業株式会社溶射事業所内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 印刷装置において、印刷要素に対して被
    印刷体を圧着し、その後移送する被印刷体圧着・移送系
    に配される被印刷体圧着・移送用ローラであって、 繊維強化樹脂製ロール基材上に、多孔質のセラミックス
    溶射層と前記セラミックス溶射層の表面上および孔部内
    に形成された低表面エネルギー性樹脂層とからなる複合
    被覆皮膜が形成されていることを特徴とする被印刷体圧
    着・移送用ローラ。
  2. 【請求項2】 前記繊維強化樹脂製ロール基材が炭素繊
    維強化樹脂製ロールである請求項1に記載の被印刷体圧
    着・移送用ローラ。
  3. 【請求項3】 前記繊維強化樹脂製ロール基材上には、
    この繊維強化樹脂のマトリックスを構成する合成樹脂と
    同種の有機高分子材料からなる膜厚30〜300μmの
    基層被膜と、この基層被膜の表面に同じく繊維強化樹脂
    のマトリックスを構成する合成樹脂と同種の有機高分子
    材料からなる膜厚50〜300μmであってかつ表面粗
    さ(Rz)が40〜130μmの粗面化被膜とからなる
    下地層が形成され、この下地層上部に前記多孔質のセラ
    ミックス溶射層が形成されているものである請求項1ま
    たは2に記載の被印刷体圧着・移送用ローラ。
  4. 【請求項4】 前記ローラの表面性状が、表面粗さ(R
    z)15〜40μmで、滑らかな凹凸を有するものであ
    る請求項1〜3のいずれかに記載の被印刷体圧着・移送
    用ローラ。
  5. 【請求項5】 ローラが輪転印刷機用のガイドローラで
    ある請求項1〜4のいずれかに記載の被印刷体圧着・移
    送用ローラ。
  6. 【請求項6】 粘着移行性物質が表面に付与されたフィ
    ルム状体の処理用ローラであって、繊維強化樹脂製ロー
    ル基材上に、多孔質のセラミックス溶射層と前記セラミ
    ックス溶射層の表面上および孔部内に形成された低表面
    エネルギー性樹脂層とからなる複合被覆皮膜が形成され
    ていることを特徴とするローラ。
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