JP2957246B2 - 微生物起源カルボキシペプチダーゼb様酵素 - Google Patents

微生物起源カルボキシペプチダーゼb様酵素

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JP2957246B2 JP24478090A JP24478090A JP2957246B2 JP 2957246 B2 JP2957246 B2 JP 2957246B2 JP 24478090 A JP24478090 A JP 24478090A JP 24478090 A JP24478090 A JP 24478090A JP 2957246 B2 JP2957246 B2 JP 2957246B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は新規な微生物起源カルボキシペプチダーゼB
様酵素に関する。
(従来の技術) カルボキシペプチダーゼB(以下、CPase Bとする)
はすでに知られており〔J.E.Folk,The Enzymes(3rd e
d.)3 57〜79(1971)〕、このCPase Bは、ペプチドの
C末端のアルギニンまたはリシンを切断するため、タン
パクの一次構造解析用の生化学試薬として汎用されてい
る。さらに、このCPase Bは、例えばキニン(Kinin)の
不活化作用を有するため、医薬品としての用途などが期
待される。
CPase Bはヒト、ウシ、ブタ、ラットの膵臓、サメ、
ヒトデなどに存在し、ブタ膵臓抽出物を原料としたもの
が市販されている。しかし膵臓抽出物は他の酵素、例え
ば、カクレインおよびトリプシンを含んでいるため、工
業的なスケールでこの両方の酵素とCPase Bとを分離す
るには、非常に大きな経費を必要とする。さらに、動物
臓器は酸素製造原料として資源的に工業規模の生産には
適していないという欠点がある。
(発明が解決しようとする課題) 本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、そ
の目的とするところは、動物臓器由来のCPase Bにかわ
る微生物起源のCPase B様酵素を提供することにある。
(課題を解決するための手段) 本発明者らは、上記の目的を達成すべく、種々の微生
物を検索した結果、大阪府富田林市の土壌中から採取さ
れたChaetomium(ケトミウム)に属するChaetomium sp.
F−33が目的とするカルボキシペプチダーゼの性質を有
する酸素を生産することを見い出した。そして、この酵
素を精製し、その性質を詳細に検討した結果、新しいタ
イプのCPase B様酵素であることを確認し、本発明を完
成するに至った。
本発明のCPase B様酵素は、次の性質を有する。
(1)作用:C末端がアルギニンまたはリシンであるペプ
チドの該末端のアルギニンまたはリシンを、加水分解に
より遊離させる。
(2)基質特異性:グリシル−グリシル−チロシル−ア
ルギニン、ブラジキニン、ニューロテンシン断片1−8
に作用し、C末端のアルギニンを加水分解により遊離さ
せる。
(3)至適pH:約8.5(トリス−塩酸緩衝液中)。
(4)至適温度:55℃ (5)pH安定性:25℃にて9時間保持した場合に、pH7〜
10において安定である。
(6)熱安定性:4℃、pH7.5にて保持すると、少なくと
も1年間は100%の活性を示す。
55℃で5時間加熱した場合に、90%の残存活性を示
す。
(7)分子量:ゲル濾過法により測定した場合の分子量
は約45万である。
(8)等電点:5.49 本発明のCPase B様酵素はChaetomium属菌、特にChaet
omium sp.F−33株により生産される。この菌株は、発明
者らにより大阪府富田林市より採取された土壌中から単
離された新菌株である。この菌株の菌学的性質を次に示
す。
(A)培地における生育状態 肉汁寒天培地 肉汁寒天倍値での生育は5%では全く起こらない。30
℃では7日間でコロニーの直径が4.7〜5.7cmに達する。
性状は白い綿状である。14日間の培養でコロニーの直径
は7〜8cmに達する。21日間の溶媒で表面は密になり湿
った状態の羊毛状となるが、着色は見られず子のう殻も
形成されない。37℃では生育が悪く熟練に至らない。
ツァペック寒天培地 ツァペック寒天培地での生育は5℃では全く起こらな
い。30℃では7日間でコロニーの直径が4〜5cmに達す
る。性状は白い綿状であり、肉汁寒天培地上のコロニー
に比べて湿状態となる。14日間の培養ではコロニーの直
径が7〜8cmに達し、部分的に黒緑色となる。30日の培
養でほぼ全体的に黒緑色となる。子のう殻の形成は見ら
れない。
オートミール寒天培地 オートミール寒天培地での生育は5℃では起こらな
い。30℃では7日間でコロニーの直径は5〜6cmに達
し、性状は羊毛状となる。14日間でコロニーの直径は7
〜8cmに達し裏面が暗オリーブ緑色〜緑黄色となる。
ポテト・グルコース寒天培地 ポテト・グルコース寒天培地での生育は5℃では起こ
らない。23℃では9日間でコロニーの直径は4〜5cmに
達し、性状は白い綿状である。14日間ではコロニーの直
径は6.5〜7.5cmに達する。中心部と円周部を残し、中間
部の内部は黒緑色となり、中心部の裏面は黒かっ色とな
る。それにともなって全体が湿った状態となり、着色部
に油球を生じる。子のうは多く認められるが子のう胞子
は少ない。黒緑色の部分に子のう殻の形成が認められ
る。
(B)生理的、生態的性質 最適生育条件 pH 5〜7 温度 23℃〜27℃ 生育の範囲 pH 4〜8 温度 15℃〜37℃ その他の顕著な特徴 ポテト・グルコース培地での培養により、カルボキシ
ペプチダーゼB様酵素を菌体内に生産する。
(C)顕微鏡的所見 子のう殻:若いうちは透明であり、成熟すると黒緑色
となる。卵形〜亜球形で大きさは200〜240×150〜200μ
mである。
頂毛:暗オリーブかっ色〜ほとんど黒色で隔壁があ
り、直毛である。ほぼ直角に分枝し、複雑な網目を形成
する。先細にならずぶっつりした先端におわる。基部で
の幅7〜7.5μm。
側毛:頂毛に類似するが幅は狭い。基部での幅5〜6
μm。
子のう:こん棒形 8胞子 子のう胞子:最初は無色で、後に暗オリーブかっ色と
なる。幅広いだ円形〜円形。6〜7×4〜6μm。
上記菌学的性質に基づいて、「ア・モノグラフ・オブ
・ケトミウム(A monograph of the genus chaetomiu
m)」(1970)〔セス(H.K.Seth)〕、「ケトミアシエ
(Chaetomiaceae)」(1963)〔アメス(L.M.Ame
s)〕、および「菌類図鑑(下)」(1978)〔椿 啓介
他〕を参照し、これを検索したところ本菌株はケトミウ
ムに属すると判断された。本菌株はケトミウム・スピノ
スムに類似するがケトミウム・スピノスムは子のう胞子
が卵形であり(上記文献に記載)、本菌株では幅広いだ
円形〜円形であることが異なる。さらに、ケトミウム・
スピノスムは37℃では生育せず、オートミール寒天培地
上で灰黄かっ色になる(上記文献に記載)のに対して、
本菌株では裏面が暗オリーブ緑色〜緑黄色となり、37℃
で生育は悪いが生育可能である点で異なる。
従って、本発明者は本菌株をChaetomium(ケトミウ
ム)sp.F−33と命名した。本菌株は、工業技術院微生物
工業技術研究所に、微工研菌寄第11717号(FERM P−117
17)として寄託されている。
本明細書においてアミノ酸、ペプチド、保護基等の略
号による表示は当該分野における慣用記号に従うものと
する。
培養条件 本発明のCPase B様酵素を製造するために生産菌株を
培養するための培地は格別である必要はなく、通常の培
地が用いられる。炭素源としてグルコース、シュークロ
ース、グリセロール、デンプンなどが用いられる。窒素
源として肉エキス、酵母エキス、麦芽エキス、ポリペプ
トン、カザミノ酸、各種アミノ酸、総合アミノ酸、ダイ
ズタンパク、魚粉などが用いられる。塩類としては、Na
Cl、KCl、酒石酸カリウム、硝酸ナトリウム、リン酸一
カリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウムなどが用
いられる。その他、ふすま、米糠、菜種粕、糖密、コー
ンスティープリカー、ポテトエキス、ビタミン類なども
有用である。
特に、本カルボキシペプチダーゼB様酵素(以下、CP
ase B様酵素とする)生産菌の培養(種培養および生産
用培養を含む)の培地として好適に用いられる培地とし
ては、ポテトエキス・シュークロース培地が好適である
(実施例で詳述する)。培養はpH5〜7、好ましくはpH6
付近で、25℃〜37℃、好ましくは30℃にて、振とうまた
は通気攪拌下にて行われる。培養時間は、例えば坂口フ
ラスコを用いた場合には、40〜100時間が適当であり、
ファーメンターを用いた場合には45〜50時間が適当であ
る。
酵素の採取法 本CPase B様酵素は主に菌体内に存在するので、培養
終了後、ろ過あるいは遠心分離などにより集菌した後、
菌体を破砕して酵素の抽出を行う。例えば、ガラスビー
ズ、海砂などの共存下で、菌体を乳鉢、ボールミルなど
を用いて磨砕する方法(市販装置としてダイノミルA,Ba
chofen社がある)、凍結融解法、酵素処理法などがあげ
られる。菌体の破砕法は特に限定されないが回収率の高
い方法が好ましい。菌体破砕後は緩衝液を加えた後ろ過
し、あるいは遠心分離を行うことにより粗酵素液が得ら
れる。
この粗酵素液から精製酵素を得るには、通常、酵素の
精製に用いられている方法が単独で、もしくは組合わせ
て用いられ得る。それには例えば、塩析、溶媒沈澱、各
種イオン交換カラムクロマトグラフィー、疎水クロマト
グラフィー、ゲル濾過法、アフィニティークロマトグラ
フィー、遠心分離、電気泳動法などが挙げられる。例え
ば、粗酵素液を硫安分画し、次いで、エタノール分画を
行い、クロマトグラフィーにかけ、そしてゲル濾過を行
うことにより精製酵素が得られる。上記クロマトグラフ
ィー処理としては、例えば、まず、イオン交換カラム
(Q−セファロース、DEAEトーヨーパールなど)にか
け、次いで、疎水カラム(ブチルトーヨーパールなど)
にかける方法が挙げられる。上記ゲル濾過担体としては
トーヨーパールHW55Sなどがある。
活性測定法 30mM Bz−Gly−Arg 0.1mlと100mMトリス−塩酸(pH8.
5)0.85mlの混液に酵素液0.05mlを加え、55℃で反応を
開始させる。15分間反応後、これを速やかに氷冷したの
ち、200mMクエン酸緩衝液(pH5.0)を1mlとニンヒドリ
ン試薬1mlとを順次加えて、すばやく攪拌し、反応を停
止させる。得られた反応液を沸騰水中で5分間加熱した
後、氷冷する。これに60%(v/v)エタノール2mlを加
え、十分に混合した後、570nmにおける吸収を測定す
る。本酵素の1単位(U)は、55℃で1分間当り1モル
の基質を分解する(1モルのArgを遊離する)ことので
きる酵素量とする。
本測定に用いるニンヒドリン試薬は、ニンヒドリン15
gをメチルセロソルブ300mlで溶解したA液、0.01M KCN
5mlにメチルセロソルブ250mlを溶解させたB液とを1:5
の比で混合して調製する。
酸素の性質 以下の酵素の性質のうち、基質特異性、阻害、各種イ
オンの影響、分子量、等電点、およびKm値については後
述の実施例により得られる精製標品を用いて測定を行っ
た。至適pH及び安定pH範囲、至適温度および熱安定性に
ついては、次のようにして得られる部分精製標品を用い
た。まず、菌体抽出液に硫安を80%飽和で加え、得られ
た沈澱を、100mMトリス−塩酸(pH7.5)に対し透析し
た。この透析内液を同緩衝液で平衡化したQ−セファロ
ースに吸着させた後、溶出液のNaCl濃度を0〜1Mに直線
的に高めて溶出させ、部分精製標品を得た。
作用 C末端がアルギニンまたはリシンであるペプチドの該
末端のアルギニンまたはリシンを、加水分解により遊離
させる。末端がアルギニンのペプチドに最もよく作用す
る。
基質特異性 表1に示す合成ペプチドの分解性を調べた。まず、5
%エタノールを含む100mMトリス−塩酸(pH8.5)に各基
質(合成ペプチド)を1mMの割合で加え、55℃において
所定の時間反応させた。ニンヒドリン法(活性測定法に
準ずる)により生成した遊離アミノ酸を定量することに
より、基質分解速度を算出した。その結果を表1に示
す。
表1から、本発明CPase B様酵素は、C末端がArgのペ
プチドを最もよく分解することがわかる。Argと同様に
塩基性アミノ酸であるLysをC末端に有するペプチドも
比較的よく分解するが、その速度はArgの場合の約1/9で
あった。この点で、本酵素は、CPase B、例えば、The E
nzyme,3rd ed.,3,57−79(1971)に記載のCPase B(こ
の酵素は、末端がArgのペプチドおよび末端がLysのペプ
チドを同程度の割合で分解する)と異なる。C末端から
2番目のアミノ酸残基がPhe(芳香族アミノ酸)である
ペプチドの場合には、同程度の分解能が認められるが、
Gly,Ala,Ile,Leuなどの脂肪族アミノ酸の場合にはC末
端のアミノ酸の種類によりそれぞれ分解能が異なること
がわかる。
次に、本酵素による各種天然ペプチドの分解を調べ
た。1mMの基質を含む10mMリン酸緩衝液(pH7.5)中、55
℃において所定の時間酵素を反応させた。遊離したアミ
ノ酸をアミノ酸分析計(日立高速アミノ酸分析計835
形)で測定した。その結果を表2に示す。
表1の結果と同様、C末端から2番目のアミノ酸残基
がTyr,Pheなど芳香族アミノ酸の場合には高い分解活性
が示された。これに対し、Alaでは1/3〜1/4に活性が低
下し、Leuではまったく分解が行こらなかった。さら
に、本CPase B様酵素はC末端から2番目のアミノ酸残
基がProの場合にも比較的良好に分解が行われた。これ
は、上記The Enzymeに記載のCPase Bが、C末端から2
番目がProであるペプチドをほとんど分解しないのとは
大きく異なる点である。
このように、本発明のCPase B様酵素は、Arg、Lysな
どの塩基性アミノ酸をC末端に有するペプチドをよく分
解するという点では従来のCPase Bと同様であるが、次
の点において異なることが明らかである。
(i)ArgをC末端に有するペプチドの方がLysをC末端
に有するペプチドの場合より10倍近く分解が速い。
(ii)C末端から2番目のアミノ酸がProであるペプチ
ドについても比較的良好に分解が行なわれる。
(iii)C末端から2番目のアミノ酸が芳香族アミノ酸
の場合には、比較的良好に分解が行われる。
至適pHおよび安定pH 本酵素を用い、pH6〜10の範囲のpH条件下で活性測定
法に準じて酵素反応を行った。各pHにおける酵素の相対
活性を第1図に示す。第1図において、●はトリス−塩
酸、△はKH2PO4−Na2HPO4、□はホウ酸・KCl−Na2CO3、
そして○はNa2HPO4−クエン酸の各緩衝液を用いた結果
を示す。第1図から、至適pHは55℃において約8.5であ
ることがわかる。
本酵素を所定のpHのBritton−Robinson緩衝液に2.76
×10-7U/mlの割合に溶解し、25℃で9時間保持した後に
残存活性を測定した。その結果を第2図に示す。第2図
から安定pH範囲は、pH7.0から10.0であることがわか
る。
作用適温の範囲 本酵素を用いBz−Gly−Argを基質とし、30〜70℃の範
囲の温度条件下で、活性測定法に準じて酵素反応を行っ
た。その相対活性を第3図に示す。第3図から本酵素の
至適温度は約55℃であることがわかる。
熱安定性 本酵素をpH7.5、4℃にて保持したところ少なくとも
1年間は失活しなかった。pH7.5、55℃にて4時間保持
した後にも90%の残存活性を示した。
本酵素を2.76×10-7U/mlの濃度でpH7.5において、第
4図に示す温度(55℃〜100℃)にて15分間保持し、そ
の残存活性を求めた。その結果を第4図に示す。第4図
から本酵素は、pH7.5で15分間保持したときに55℃まで
安定であり、80℃以上において完全に失活することがわ
かる。
阻害 表3に示す化合物を0.7mMの割合で含む100mMトリス−
塩酸(pH8.5)中で、本酵素(3.8×10-9U/ml)を10分間
インキュベートした後、残存活性を測定した。その結果
を表3に示す。
表3に示すように、本酵素はCPase Bと同様にEDTA,o
−フェナンスロリンなどの金属キレート剤で強く阻害さ
れた。このことから、本酵素はメタル酵素であることが
明らかである。しかし、本酵素はDTT,PCMBによっても阻
害されることから−S−S結合、−SH基も活性の発現に
必要であると考えられる。従って、同じくメタル酵素で
あるCPase Bとは異なる酵素であると考えられる。
各種イオンの影響 次に、本酵素の活性に与える各種イオンの影響につい
て検討した。まず、1mM EDTAを含む100mMトリス−塩酸
(pH7.5)に対し、酵素液を4℃で12時間透析し、次い
で再度100mMトリス−塩酸(pH7.5)に対し透析を行って
EDTAを除去した。これに表4に示す化合物を、所望のイ
オンが1mMとなるような濃度で添加し、該酵素の活性を
測定した。
表4に示すように、試験した範囲内のイオン種では活
性化は認められず、むしろ阻害された。特にCoCl2を添
加した場合には活性化が著しく低下した。これは従来の
CPase Bと大きく異なる特徴である。
分子量 トーヨーパールHW55Sを用いた、ゲルろ過による分子
量は約45万である。
等電点 ファストゲルIEF3−9を用いたファストシステム(フ
ァルマシア社製)を用い、pIカブリレションキットpH2.
5〜6.5をスタンダードとして本酵素の等電点を測定し
た。その結果、本酵素の等電点は5.49であった。
Bz−Gly−Argに対するKm値 Bz−Gly−Argを基質として100mMトリス−塩酸(pH8.
5)中で反応を行ない、Km値を算出した。その結果、Km
値は0.59mMであった。
既知酵素との比較 本酵素と、これまでに報告されているCPase Bとの比
較を行なった結果、次の相違が明らかとなった。
両酵素とも、塩基性アミノ酸であるArgまたはLysをC
末端に対するペプチドの該末端のArgまたはLysを加水分
解により特異的に遊離させる。本発明のCPase B様酵素
は、Argを有する基質に対して、より遊離に働き、その
分解速度は、Argを有する基質に対する方がLysを有する
基質に対するよりも約10倍速い。これに対して、従来の
CPase Bは、ArgをC末端に有する基質およびLysをC末
端に有する基質に同程度に作用する。
本酵素は、C末端から2番目のアミノ酸残基がPheで
あるペプチド、およびProであるペプチドに作用して、
比較的良好にこれを分解する。これに対して、従来のCP
ase Bはこれらの分解性が低い。
両酵素とも金属酵素であるが、本酵素の場合にはCoCl
2またはZnSO4による活性化が認められない。さらにDTT
またはPCMBによっても阻害を受ける。これに対して、従
来のCPase Bは、CoCl2またはZnSO4による活性化が認め
られ、かつ、DTTまたはPCMBにより阻害を受けにくい。
このように、本発明の酵素はペプチドのC末端のArg
またはLysを特異的に遊離するという性質については、
従来のCPase Bと同じである。しかしながら、基質特異
性、阻害剤に対する感受性およびイオンの影響という点
で全く異なる新規酵素である。従って、本酵素はCPase
B様酵素と命名された。
(実施例) 以下に本発明を実施例につき説明する。
(A)菌体の培養 皮をむいて1cm角に切ったじゃがいも200gに対し水を5
00ml加え、加熱・沸騰させて1時間抽出を行った。冷却
後、さらしで濾過を行い、最後に、1000mlになるように
蒸留水を加えた。このようにして得られたポテトエキス
に2%(w/v)のシュークロースを添加し、ポテトエキ
ス・シュークロース培地とした。
このポテトエキス・シュークロース培地を滅菌し、Ch
aetomium sp.F−33株を植菌し、30℃にて3日間種培養
を行った。別に、上記ポテトエキス・シュークロース培
地3.5を5容のファーメンターに入れ、120℃にて15
分間殺菌を行った。これに上記種培養した培養物300ml
を加え、30℃、攪拌数100rpm、通気量1/minの条件下
で培養を行った。酵素活性が最大となる培養45時間後
に、さらしとろ紙を用いた吸引ろ過により集菌を行い、
菌体70gを得た。
(B)酵素の単離および精製 この菌体70gに対しほぼ同量の海砂を加え乳鉢中で菌
体を破砕した。これに、100mMトリス−塩酸(pH7.5)20
0mlを加えて、しばらく放置し、さらしとろ紙を用いた
吸引ろ過を行い、ろ液(粗酵素抽出液)200ml(全活性
7.73×10-4U、比活性0.0232)を得た。以上の抽出操作
は氷冷下で行った。
この粗酵素抽出液を用い、以下に述べるように精製を
行った。まず、粗酵素抽出液を、40〜60%飽和で硫安分
画し、酵素を沈澱物として回収した。この沈澱物を100m
Mトリス−塩酸(pH7.5)に溶解した後、4℃で一晩透析
を行い、ひき続き、エタノール分画(40〜60%v/v)を
行い、再び酵素を沈澱物として回収した(全活性4.18×
10-4U、比活性7.64;収率54%)。
この沈澱物を100mMトリス−塩酸(pH6.0)に溶解した
後、同緩衝液に対し透析した。透析内液を、あらかじめ
同緩衝液で平衡化しておいたQ−セファロース(1.6×1
3cm;ファルマシア社製)に吸着させた後、100mMトリス
−塩酸(pH6.0;0.1M NaClを含む)で、充分にカラムを
洗浄し、NaCl濃度を0.1Mから0.4Mに直線的に高めること
により酵素を溶出させた。本酵素は溶離液のNaCL濃度が
0.3M付近から溶出された(全活性3.39×10-4U、比活性4
0.8;収率44%)。
次に、活性画分を100mMトリス−塩酸(pH7.5)に対し
て透析した後、あらかじめ同緩衝液で平衡化したDEAEト
ーヨーパール650M(1×9cm;東ソー社製)カラムに吸着
させた。0.1m NaClを含む100mMトリス−塩酸(pH7.5)
で充分に洗浄した後、0.1M〜0.15M NaClの直線濃度勾配
により、フラクション当り2mlずつの溶出を行った。本C
Pase B様酵素はNaCl濃度が0.12M付近から溶出された
(全活性2.60×10-4U、比活性144;収率34%)。
溶出された活性画分を100mMトリス−塩酸(pH7.5、3M
NaClを含む)に対して透析した後、あらかじめ同緩衝
液で平衡化しておいたブチルトーヨーパール650(1×9
cm;東ソー社製)に吸着させ,同緩衝液で洗浄した後、3
Mから0MにNaCl濃度を直線的に減少させることにより酵
素の溶出を行った。本CPase B様酵素は、NaCl濃度が約1
M付近で溶出された(全活性1.78×10-4U、比活性278,収
率23%)。
溶出された活性画分を100mMトリス−塩酸(pH7.5)に
対して充分に透析し、その内液を、あらかじめ同緩衝液
で平衡化したQ−セファロース(1×9cm;ファルマシア
社製)に吸着させた。これを、0.23MのNaClを含む同緩
衝液で洗浄した後、NaCl濃度を0.23Mから0.4Mに直線的
に高めた溶離液を用いて酵素の溶出を行った。酵素活性
はNaCl濃度が約0.4Mのときに完全に溶出された(全活性
0.618×10-4U;比活性170,収率8.0%)。
さらに、溶出された活性画分を100mMトリス−塩酸(p
H9.0)に対して透析した後、この透析内液を同緩衝液で
平衡化したDEAEトーヨーパール650M(0.5×5cm、東ソー
社製)に吸着させ、0.18M NaClを含む同緩衝液で充分に
洗浄した。酵素の溶出は0.18Mから0.25MのNaClの直線濃
度勾配により行った。酵素活性はNaCl濃度が約0.2M付近
に溶出された(全活性0.274×10-4U;比活性106;収率3.5
%)。
最後に、活性画分12mlを限外濾過(アミコン8050型)
を用いて2mlに濃縮した。この濃縮酵素液を、あらかじ
め100mMトリス−塩酸(pH7.5)で平衡化しておいたトー
ヨーパールHW55Sカラム(2.6×90cm、東ソー社製)にか
け、流速45.6ml/時間でフラクション当り2mlづつを分取
した(全活性0.027×10-4U;比活性34.2;収率0.35%)。
以上の一連の操作により、収率0.35%で比活性が1470
の精製酵素が得られた。この精製標品の純度をpH7.5フ
ァストゲル(ファルマシア社製)を用い検討した結果、
単一であることが明らかとなった。
上記精製酵素、および部分精製酵素の性質を調べたと
ころ、「酵素の性質」の項に記載した各性質が確認され
た。
(発明の効果) 本発明によれば、このような、新規なカルボキシペプ
チダーゼB様酵素が得られる。この酵素は微生物起源で
あるため生産が容易である。さらに、既知のカルボキシ
ペプチダーゼとは基質特異性が異なるため、このような
性質のちがいを利用して、蛋白の一次構造決定用試薬な
ど、種々の用途に利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明酵素の至適pHを示すグラフ;第2図は該
酵素の安定pH範囲を示すグラフ;第3図は該酵素至適温
度を示すグラフ;そして第4図は該酵素の安定性に及ぼ
す温度の影響を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 村尾 澤夫 大阪府堺市堀上緑町2丁8番12号 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C12N 9/00 - 9/99 BIOSIS(DIALOG) WPI(DIALOG)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】以下の理化学的性質を有するカルボキシペ
    プチダーゼB様酵素。 (1)作用:C末端がアルギニンまたはリシンであるペプ
    チドの該末端のアルギニンまたはリシンを、加水分解に
    より遊離させる。 (2)基質特異性:グリシル−グリシル−チロシル−ア
    ルギニン、ブラジキニン、ニューロテンシン断片1−8
    に作用し、C末端のアルギニンを加水分解により遊離さ
    せる。 (3)至適pH:約8.5(トリス−塩酸緩衝液中)。 (4)至適温度:55℃ (5)pH安定性:25℃にて9時間保持した場合に、pH7〜
    10において安定である。 (6)熱安定性:4℃、pH7.5にて保持すると、少なくと
    も1年間は100%の活性を示す。 55℃で5時間加熱した場合に、90%の残存活性を示す。 (7)分子量:ゲル濾過法により測定した場合の分子量
    は約45万である。 (8)等電点:5.49
  2. 【請求項2】Chaetomium属由来である、請求項1に記載
    の酵素。
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