JPH0816073B2 - シクロオレフインを製造する方法 - Google Patents

シクロオレフインを製造する方法

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JPH0816073B2
JPH0816073B2 JP61233344A JP23334486A JPH0816073B2 JP H0816073 B2 JPH0816073 B2 JP H0816073B2 JP 61233344 A JP61233344 A JP 61233344A JP 23334486 A JP23334486 A JP 23334486A JP H0816073 B2 JPH0816073 B2 JP H0816073B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、単環芳香族炭化水素を部分還元し、高選択
率、高収率で対応するシクロオレフイン類、特にシクロ
ヘキセン類を製造する方法に関するものである。
シクロヘキセン類は有機化学工業製品の中間原料とし
てその価値が高く、特にポリアミド原料、リジン原料な
どとして重要である。
(従来の技術) かかるシクロヘキセン類の製造方法としては、例え
ば、(1)水およびアルカリ剤と周期表第VIII族元素を
含有する触媒組成物を用いる方法(特公昭56−22850号
公報)、(2)ニツケル、コバルト、クロム、チタンま
たはジルコニウムの酸化物に担持したルテニウム触媒を
用い、アルコールまたはエステルを添加剤として用いる
方法(特公昭52−3933号公報)、(3)銅、銀、コバル
ト、またはカリウムを含有するルテニウム触媒と水およ
びリン酸塩化合物を使用する方法(特公昭56−4536号公
報)、(4)ルテニウム触媒ならびに周期表のI A族金
属、II A族金属、およびマンガン、より選ばれた少なく
とも1種の陽イオンの塩を含む中性または酸性水溶液の
存在下に反応する方法(特公昭57−7607号公報)、
(5)ルテニウムおよびロジウムの少なくとも1種を主
成分とする固体触媒を周期表I A族金属、II A族金属、
マンガン、鉄、および亜鉛よりなる群から選ばれた少な
くとも1種の陽イオンの塩を含む水溶液で予め処理した
ものを用い、水の存在下に反応する方法(特開昭51−98
243号公報)、(6)ルテニウム触媒を用い、酸化亜鉛
および水酸化亜鉛の少なくとも1種を反応系に活性化成
分として添加して反応する方法(特開昭59−184138号公
報)、(7)水および少なくとも1種の亜鉛化合物の存
在下に、200Å以下の平均結晶子径を有する金属ルテニ
ウム結晶子および/またはその凝集した粒子を使用する
方法(特開昭61−50930号公報)などが提案されてい
る。
(発明が解決しようとする問題点) しかし、これらの従来公知の方法においては、目的と
するシクロヘキセン類の選択率を高めるために、原料の
転化率を著しく抑える必要があつたり、反応速度が極め
て小さいなど、一般にシクロヘキセン類の収率ならびに
生産性が低く、実用的なシクロヘキセン類の製造方法と
なつていないのが現状である。
また、かかるシクロヘキセン類の製造方法が実用的な
ものとなるためには、反応に用いられる触媒が、継続的
に安定な活性もしくは選択性を維持できるものであるこ
とが必要かつ重要であるが、従来の技術においては、こ
の点において必ずしも充分とはいえない。
また、本発明者らの検討によれば、例えば、特開昭61
−50930号公報で提案されている金属ルテニウム粒子を
単独に触媒として用いた場合には、比較的高収率でシク
ロオレフインが得られる場合もあるが、反応器と反応液
の接液部などに該触媒が付着、堆積したり、触媒自身が
変化するなど、安定な反応系を維持することが困難であ
る場合が少なからず発生することが判つた。
(問題点を解決するための手段) 本発明者らは、かかる問題点を解決するため、シクロ
ヘキセン類の収率向上、および工業的に有利な安定した
触媒系を得るため、単環芳香族炭化水素の部分還元法に
おける触媒系、すなわち、主触媒のその他の成分からな
る系について鋭意検討し、本発明に到達したものであ
る。
すなわち、本発明は、単環芳香族炭化水素を水の共存
下、水素により部分還元するに際し、200Å以下の平均
結晶子径を有する金属ルテニウムを主成分とする水素化
触媒粒子を用い、該触媒粒子とは別に、Ti,Zr,Hf,Nb,T
a,Cr,Fe,Co,Al,Ga,Siより選ばれた少なくとも1種の金
属の水酸化物を添加し、さらに、少なくとも1種の固体
塩基性亜鉛塩の共存下、中性または酸性の条件下に反応
を行うことにより、従来にない良好な収率でシクロオレ
フイン類得、しかも驚くほど安定した触媒系として使用
できるシクロオレフインを製造する方法である。本発明
方法によれば、シクロオレフイン類の収率を40%以上と
することが可能であると同時に、本発明の如き組合わせ
によつて初めて、水素化触媒の様々な変質、例えば、経
時的な凝集の進行、平均結晶子径の変化などによる反応
成績の変化を著しく抑制することができ、実用的な見地
から極めて有用な方法である。
以下、本発明の具体的な実施態様を説明する。
本発明の原料となる単環芳香族炭化水素とは、ベンゼ
ン、トルエン、キシレン類、炭素数4以下のアルキル基
を有する低級アルキルベンゼン類をいう。
本発明においては、200Å以下の平均結晶子径を有す
る金属ルテニウムを主成分とする水素化触媒粒子を用い
る。この触媒は、種々のルテニウム化合物を還元して得
られるもの、またはその調製段階もしくは調製後におい
て他の金属、例えば、亜鉛もしくはクロム、モリブデ
ン、タングステン、マンガン、コバルト、ニツケル、
鉄、銅などを加えたルテニウムを主成分とするものであ
る。種々のルテニウム化合物としては特に制限はない
が、例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸温、硫酸
塩、水酸化物、酸化物、ルテニウムレツド、あるいは各
種のルテニウムを含む錯体などを用いることができ、還
元法としては、水素ガスによる還元あるいはホルマリ
ン、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン等による化学
還元法によつて行うことができる。特にルテニウムの塩
を加水分解して水酸化物とし、これを還元する方法は好
ましく用いられる。
また、本発明方法においては、あらかじめ亜鉛を含有
せしめたルテニウムの還元物を使用すると、シクロオレ
フインの収率をさらに高めることができ、有効に使用さ
れる。かかる触媒は、あらかじめ有価のルテニウム化合
物に亜鉛化合物を含有せしめた後、還元して得られる還
元物であり、ルテニウムは金属状態まで還元されたもの
である。使用できる有価のルテニウム化合物は、例え
ば、塩化物、硝酸塩、硫酸塩などの塩、アンミン錯塩な
どの錯体、水酸化物、酸化物などであるが、特に3価も
しくは4価のルテニウムの化合物が入手もしやすく、ま
た取扱い上も容易であるので好ましい。また、使用でき
る亜鉛化合物は、塩化物、硝酸塩、硫酸塩などの塩、ア
ンミン錯塩などの錯体、水酸化物、酸化物など巾広いも
のが使用可能である。
かかる触媒中の亜鉛含有量は、ルテニウムに対し0.1
〜50重量%、好ましくは2〜20重量%に調整される。し
たがって、触媒の主構成要素は、あくまでルテニウムで
あり、亜鉛は担体ではない。
このような亜鉛を含有する有価のルテニウム化合物
は、亜鉛およびルテニウムの化合物の混合溶液を用い
て、一般的な共沈法などによつて固体として得てもよい
し、あるいは均一溶液の状態で得てもよい。
かかる亜鉛を含有する有価のルテニウム化合物の還元
方法としては、一般的なルテニウムの還元方法を応用す
ることができる。例えば、気相において水素で還元する
方法、液相において水素もしくは適当な化学還元剤、例
えば、NaBH4やホルマリンなどを用いて還元する方法が
好ましく応用され、水素により気相もしくは液相で還元
する方法は特に好ましい。
気相において水素で還元する場合は、結晶子径の増加
を避ける意味で、極度の高温を避けたり、あるいは水素
を他の不活性気体で希釈するなどの工夫をするとよい。
また、液相で還元する場合には、水やアルコール類に、
亜鉛を含有する有価のルテニウム化合物の固体を分散さ
せて行なつてもよいし、もしくは均一溶液の状態で行な
つてもよい。この際、還元をよりよく進行させるため
に、撹拌、加熱などを適当に行なうとよい。また、水の
かわりにアルカリ水溶液や適当な金属塩水溶液、例え
ば、アルカリ金属塩水溶液などを用いてもよい。
以上の如き水素化触媒粒子は、主にルテニウムよりな
る結晶子および/またはその凝集した粒子として反応系
に存在するが、シクロオレフイン類の選択率や収率、さ
らには反応速度を高めるためには、該結晶子の平均結晶
子径は200Å以下であることが必要であり、150Å以下で
あることが好ましく、100Å以下であることがさらに好
ましい。ここで、平均結晶子径は一般的方法、すなわ
ち、X線回折法によつて得られる回折線巾の拡がりか
ら、Scherrerの式により算出されるものである。具体的
には、CuKα線をX線源として用いた場合は、回折角
(2θ)で44゜付近に極大をもつ回折線の拡がりから算
出されるものである。
本発明においては、上記の如き水素化触媒粒子とは別
に、Ti,Zr,Hf,Nb,Ta,Cr,Fe,Co,Al,Ga,Siより選ばれた少
なくとも1種の金属の水酸化物を添加して反応が行なわ
れるが、ZrおよびHfの水酸化物が好ましく、さらには、
Zrの水酸化物が好ましい。
添加される金属の水酸化物の量は水に対して、前記金
属のみの量に換算して1×10-4〜0.3重量倍、好ましく
は1×10-3〜0.1重量倍である。
かかる金属の水酸化物は、一般的に該金属の塩水溶液
の加水分解あるいは、アルカリないしアンモニア等の添
加で得られるものである。金属塩としては、例えば、塩
化物、臭化物、ヨウ化物、オキシ塩化物、硝酸塩、硫酸
塩、あるいは該金属を含む錯体など巾広いものを用いる
ことができる。
かかる水酸化物を添加することによつて得られる効果
は、反応器表面への水素化触媒の付着や、水素化触媒の
凝集などによる反応系の変動を抑制し、安定な反応系を
維持することであつて、特に長い期間に亘つて連続的に
シクロオレフインを製造するに際しては、大きな効果を
発揮する。また、水素化触媒を含むスラリーの取扱いを
容易にすること、例えば、水素化触媒をみかけ上、希
釈、増量し、触媒の仕込みや、回収を容易にするなどの
効果もある。
一方、明記されるべきことは、かかる水酸化物に浸漬
法、乾固法、沈殿法等の通常の方法によりルテニウムを
担持し、還元して調製したルテニウム担持触媒を水素化
触媒として用いた場合、シクロオレフイン類の選択率
は、本発明方法と比較して極めて低いものであり、本発
明方法における水酸化物の添加は、ルテニウム担持触媒
とは本質的に異なるものである。
本発明において反応系に共存する固体塩基性亜鉛塩と
は各種の酸の共役塩基残基とこれとは別の陰性成分とみ
なされる水酸基または酸素原子を併含する亜鉛の塩を指
す。具体的には例えばZnSO4・1/2ZnO,ZnSO4・ZnO・H2O,
ZnSO4・3ZnO・nH2O(nは0≦n≦8なる数),ZnSO4・4
ZnO・4H2Oなどに代表れる塩基性硫酸亜鉛、ZnF2・4Zn
(OH)2,ZnO・3ZnCl2・H2O,ZnO・ZnCl2・H2Oおよび1.5H
2O,3ZnO・2ZnCl2・11H2O,2ZnO・ZnCl2・11H2O,2ZnO・Zn
Cl2・4H2O,5ZnO・2ZnCl2・26H2O,5ZnO・5ZnCl2・8H2O,3
ZnO・ZnCl3・nH2O(nは2,3,4,5,又は8),4ZnO・ZnCl2
・nH2O(nは4,6又は11),5ZnO・ZnCl2・nH2O(nは6,8
又は29),11ZnO・2ZnCl2,6ZnO・ZnCl2・6H2Oおよび10H2
O,8ZnO・ZnCl2・10H2O,9ZnO・ZnCl2・3H2Oおよび14H2O,
ZnBr2・4ZnO・nH2O(nは10,13又は29),ZnBr2・5ZnO・
6H2O,ZnBr2・6ZnO・35H2O,ZnI2・4Zn(OH)2,ZnI2・5Zn
O・11H2O,ZnI2・9ZnO・24H2Oなどに代表される塩基性ハ
ロゲン化亜鉛、8ZnO・N2O5・4H2O,4ZnO・N2O5・4H2O,5Z
nO・N2O5・5H2Oおよび6H2O,5ZnO・N2O5・5H2Oなどで代
表される塩基性硝酸亜鉛、4ZnO・P2O5・H2Oに代表され
る塩基性正リン酸亜鉛さらには塩基性酢酸亜鉛などがあ
り、特に塩基性硫酸亜鉛、塩基性塩化亜鉛は好ましい結
果を与える。
これらの塩基性亜鉛塩は、一般的には亜鉛の塩の水溶
液を適当に処理することによつて得ることができる。例
えば、亜鉛の塩の水溶液を母液として適当なアルカリ剤
を作用させたり、更には熱したりすることにより、固体
として得ることができる。また、亜鉛の強酸塩の水溶液
に水酸化亜鉛あるいは酸化亜鉛を加えて煮沸するなどし
ても種々の塩基性亜鉛塩の混合物として得られる場合も
ある。又、金属亜鉛を適当に処理して得られる場合もあ
る。
これらを反応系において固体として共存させるには、
これらの1種もしくは混合物を粉末の形でルテニウム触
媒と混合し、もしくは別個に反応系へ添加することが好
ましい。
本発明方法においてはこれら塩基性亜鉛塩が不溶の状
態で共存する必要がある。塩基性亜鉛塩の水溶液に対す
る溶解度は一般的に水溶液が中性の場合にはほぼ無視し
得る量であるが、水溶液のpHが低くなると増加するの
で、反応系への添加量は水溶液のpHを考慮に入れて決め
ることが好ましい。但し、本発明に用いるルテニウム触
媒がもつ吸着力によつて、塩基性亜鉛塩の反応系内にお
ける飽和溶解度以下の添加量であつても触媒上に固体と
して共存できる場合が多い。
この様な固体塩基性亜鉛塩は、反応系から水素化触媒
と共に分離して、X線回折、螢光X線、X線光電子分光
などにより直接固体のまま確認することができる。また
この固体塩基性亜鉛塩の共存量を定量する方法としては
水素化触媒と共に分離された固体を溶解し、測定する方
法が好ましく用いられる。
具体的には反応液中より触媒スラリーを沈降せしめた
後、上澄み液を除去し、残存するスラリーに、もしくは
反応液中のスラリーより過して得られる固体物に不溶
塩基性亜鉛塩を溶解し得る液、例えば濃塩酸などを加え
て、通常行なわれる亜鉛イオンの分析一定量によつて知
ることができる。又反応系に共存するイオンによる分析
への影響を除去する等の目的で、場合によつては不溶塩
基性亜鉛塩の溶解量が無視出来る程度の水で、これらス
ラリーもしくは過した固形物を洗浄した後、濃塩酸等
を加えて、亜鉛イオンの定量を行つても良い。
本発明においては、かかる固体塩基性亜鉛塩を、水素
化触媒に対し、亜鉛のみの量に換算して1×10-4〜1重
量倍、好ましくは1×10-3〜0.5重量倍共存させて反応
を行なう。共存量が少なすぎるとシクロオレフインの選
択率、収率の向上に対する効果が希薄であり、多すぎる
と反応速度が低下して、結果的に多量の水素化触媒が必
要となるため、工業的に有利な反応系となり難い。
このように、固体塩基性亜鉛塩を共存させることによ
り、シクロオレフインの選択率、収率を高めることがで
きる。さらには、同等の高選択率、高収率が維持できる
反応温度範囲が拡大し、比較的低温においてもシクロオ
レフインを収率良く得ることができるので、反応条件選
定の自由度が拡大し、工業的に極めて価値の高いものと
なる。
このように、塩基性亜鉛塩を共存させることによつて
何故シクロオレフインの選択率、収率が向上するかは必
ずしも定かではないが、共存する不溶塩基性亜鉛塩が水
素化触媒上に吸着し、シクロオレフインの生成に有利な
活性点を現出していると考えられる。
一方、本発明における金属の水酸化物の添加および固
体塩基性亜鉛の共存は、下記の如く触媒の安定性に対し
て驚くべき効果を発揮する。
一般に、微粒の金属触媒を用いることは、その金属が
担体上に担持された触媒と異なり、反応系においてしば
しば2次凝集やシンタリングなどが進行し、安定な触媒
系としての持続性に難点がある。このことは本発明方法
に使用する金属ルテニウム触媒についても同様であり、
実用性の観点に立つた場合、2次凝集やシンタリングな
どの進行を回避することは、是非とも必要な技術とな
る。本発明における固体塩基性亜鉛塩の共存は、驚くべ
きことに、かかる2次凝集やシンタリングなどによる触
媒の変化を抑制する効果も併せもつことが明らかとなつ
た。
Ti,Zr,Hf,Nb,Ta,Cr,Fe,Co,Al,Ga,Siより選ばれた金属
の水酸化物の添加も同様の効果を併せ持ち、これら金属
の水酸化物と固体塩基性亜鉛塩の併用により相乗効果に
より、触媒や反応系を極めて安定なものとすることがで
きる。
固体塩基性亜鉛塩および上記金属の水酸化物の非存在
下で、本発明で使用する水素化触媒を反応条件下で保持
した場合、触媒の2次凝集がさらに進行する。
このような2次凝集がさらに進行した触媒は、水相中
での触媒粒子の分散性が著しく悪くなる。このような状
態になつた凝集体では、その凝集体の中の金属ルテニウ
ムへの水素およびベンゼンの拡散、特に水素の拡散が困
難となり、反応に必要な十分な量を触媒上へ供給するこ
とができず、満足する反応の状態を得ることができな
い。特に水素の触媒上への供給が不足すると、反応速度
の低下および副反応の増加が著しくなる。また、反応に
より生成したシクロオレフインの反応の場の外への拡散
または既凝集体の外への拡散がおそくなり、さらに水添
反応が進行し、シクロアルカンへの副反応が増加する。
このような凝集状態の変化は、直接電子顕微鏡により観
察することもできる。
また、同様に、本発明で使用する水素化触媒を固体塩
基性亜鉛塩および前記金属の水酸化物の非存在下で、反
応条件下に長時間保持すると、X線回折法で求められる
金属ルテニウムの平均結晶子径が増大することが判つ
た。かかる平均結晶子径の経時的増大は、触媒の表面積
の減少をもたらし、特に反応速度が経時的に低下し、長
期にわたつて安定な反応を制御することが難しくなる。
この傾向は、水素化触媒濃度や反応温度を高くすると、
さらに顕著になり、例えば、反応器体積当りのシクロオ
レフインの生産性を高めて、本反応を行なおうとすると
きにおいては、その反応の安定性の維持がより難しくな
ることを意味し、実用上好ましくない。このような触媒
の変化は、できるだけ小さいことが望ましいことは明白
である。本発明において使用される水酸化物および塩基
性亜鉛塩の併用によつて初めて、上記の如き金属ルテニ
ウムの平均結晶子径の経時的増大を実質的に無視できる
状況が得られることが判つた。
さらに、本発明においては、水酸化物としてZrおよび
Hfの水酸化物を用い、塩基性亜鉛塩として、塩基性硫酸
亜鉛を用いると、上記の如き水素化触媒に対する安定化
の効果が特に高いことが判つた。
このような本発明による反応系の安定化が発現する機
構については必ずしも定かではないが、固体塩基性亜鉛
塩が水素化触媒や水酸化物の表面上に存在し、その表面
の性質を変えているものと考えられる。Ti,Zr,Hf,Nb,T
a,Cr,Fe,Co,Al,Ga,Siより選ばれた少なくとも1種の水
酸化物の共存は、水素化触媒どうしの衝突を大きく抑制
し、表面積の低下や、結晶子径の増大を引き起こす間接
的な原因となる触媒の2次凝集を、さらに抑制している
ものと考えられる。
以上のように、本発明方法の如き組合せによつて初め
て達成された極めて安定な反応系は、実用的、工業的見
地からみて非常に価値の高いものということができる。
本発明においては、水の存在が必要である。水の量と
しては、反応形式によつて異なるが、一般的に用いる単
環芳香族炭化水素に対して0.01〜100重量倍共存させる
ことができるが、反応条件下において、原料および生成
物を主成分とする有機液相と、水を含む液相とが2相を
形成することが必要であり、反応条件下において均一相
となるような極く微量の水の共存、もしくは極く多量の
水の存在は効果を減少させ、また、水の量が多すぎると
反応器を大きくする必要性も生ずるので、実用的には0.
5〜20重量倍共存させることが望ましい。
また、本発明においては、水のかわりに、従来知られ
た方法の如く金属の塩の水溶液を用いることにより、さ
らに、好ましいシクロオレフインの選択率、収率を得る
ことができる。金属の塩としては、周期表I A族金属、I
I A族金属、II B族金属、マンガン(例えば、特公昭57
−7607号公報)、コバルトなどの硝酸塩、塩化物、硫酸
塩、酢酸塩、リン酸塩などが使用されるが、I A族金
属、II A族金属および亜鉛の塩が好ましく、さらには、
塩化物、硫酸塩の如き強酸塩が好ましい。
さらに、本発明においては、水のかわりに亜鉛の強酸
塩、特に硫酸亜鉛の水溶液を用いると、好ましい結果を
得ることができる。
かかる硫酸亜鉛水溶液は、0.01重量%から飽和溶解度
までの濃度で用いることができるが、好ましくは0.1〜3
0重量%で用いるとよい。
また、本発明の反応系では、水溶液は中性または酸性
の状態で反応が行なわれることが必要である。水相をア
ルカリ性とすると、反応速度は著しく低下し、現実的な
シクロオレフイン類の製造方法とはなり難い。また、酸
性にするために、通常の酸、例えば、塩酸、硝酸、硫
酸、酢酸、リン酸などを加えてさしつかえない。このよ
うにして反応系へ導入される水溶液のpHは0.5〜7以
下、好ましくは2〜6.5である。
本発明の反応系では、反応液中に不溶塩基性硫酸亜鉛
が存在しなければならない。そのためその不溶塩基性硫
酸亜鉛の共存する量および水溶液の量によつても異なる
が、反応系が微アルカリ性から酸性の状態で行われるの
が好ましい。さらに好ましくは中性から酸性の状態で行
われる。
本発明方法における部分還元反応は、通常、液相懸濁
法にて連続的または回分的に行なわれるが、固定相式で
も行なうことができる。反応条件は、使用する触媒や添
加物の種類や量によつて適宜選択されるが、通常、水素
圧は1〜200Kg/cm2G、好ましくは10〜100Kg/cm2Gの範囲
であり、反応温度は室温〜250℃、好ましくは100〜200
℃の範囲である。また、反応時間は、目的とするシクロ
ヘキセン類の選択率や収率の実質的な目標値を決め、適
宜選択すればよく、特に制限はないが、通常、数秒ない
し数時間である。
(発明の効果) 本発明によれば、シクロオレフインを従来にない高い
選択率、収率で得ることができ、さらに、安定した触媒
系となり、工業的に極めて価値の高いものである。
(実施例) 次に、実施例をもつて本発明をさらに詳細に説明する
が、本発明は、これらの実施例に限定されるものではな
い。
実施例1〜3 オキシ塩化ジルコニウム水溶液に苛性ソーダ水溶液を
加え、得られた白色固体をろ過し、ろ液中にクロルイオ
ンが検出されなくなるまで水洗、ろ過を繰り返して水酸
化ジルコニウムを得た。
この水酸化ジルコニウムをジルコニウムとして2.0g,R
u(OH)を水中において加圧水素により還元して得た
金属ルテニウム触媒(平均結晶子径50Å)0.5g、表1に
示す塩基性亜鉛塩を亜鉛として100mg、および水280ml
を、チタン製の内容積1のオートクレーブに仕込み、
撹拌下水素で置換して150℃まで昇温後、ベンゼン140ml
を圧入し、全圧50Kg/cm2Gに保つように水素を保給し、1
50℃、所定時間水素化反応を行なつた。反応後、急冷し
て有機物層をガスクロマトグラフイーで分析した結果を
表1に示す。副生物はシクロヘキサンであつた。
また実施例1〜3において、反応終了後、反応器を開
放し、観察したところ、いずれの場合も触媒および水酸
化ジルコニウムはよく分散しており、凝集もみられず、
チタン壁面への触媒の付着もなかつた。
比較例1 金属ルテニウム触媒(平均結晶子径50Å)0.05gを用
い、水酸化ジルコニウムおよび塩基性亜鉛塩を用いない
他は実施例1と同様にして、30分間反応させた。ベンゼ
ンの転化率は、66.1%、シクロヘキセンの選択率は、2.
3%、シクロヘキセン収率1.5%であつた。
また、反応終了後、反応器を開放し、観察したとこ
ろ、触媒の凝集がみられ、チタン壁面に触媒の付着が発
生していた。
実施例4〜13 表2に示す水酸化物を金属として2.0g、金属ルテニウ
ム触媒(平均結晶子径50Å)0.5g、塩基性亜鉛塩として
ZnSO4・3Zn(OH)を亜鉛として30mgおよび10%硫酸亜
鉛水溶液280mlをチタン製の内容積1のオートクレー
ブに仕込み、実施例1と同様にして60分間反応させた。
結果を表2に示す。
但し、水酸化ハフニウムの場合は、オキシ塩化ハフニ
ウムから、また他の水酸化物の場合は塩化物から、加水
分解と水洗により、各水酸化物を調製した。
比較例2,3 表3に示す水酸化物にRuCl3をRuとして1%担持し、
水素化ホウ素ナトリウムで還元処理した水素化触媒をRu
として0.05g、10%硫酸亜鉛水溶液280mlをチタン製の内
容積1のオートクレーブに仕込み実施例1と同様にし
て30分間反応させた。結果を表3に示す。
実施例14 触媒としてあらかじめ亜鉛を含有させたルテニウムの
還元物(亜鉛含有量5.6%、平均結晶子径65Å)0.5gを
用いた他は実施例4と同様の操作を行ない、60分間反応
させた。ベンゼンの転化率は、57.2%で、シクロヘキセ
ンの選択率は81.8%、シクロヘキセン収率46.8%であつ
た。
実施例15 実施例1と同じ触媒(平均結晶子径50Å)1.5g、水酸
物を金属として7.0g、ZnSO4・3Zn(OH)を亜鉛として
0.6g、および10%硫酸亜鉛水溶液150mlを、内面にテフ
ロンコーテイングを施した内容積400mlのオートクレー
ブに仕込み、水素で全圧を50Kg/cm2Gとし、160℃におい
て高速で撹拌しながら200時間保持した。スラリーを回
収、洗浄後、X線回折法により触媒金属ルテニウムの平
均結晶子径を測定したところ、いずれの水酸化物を用い
た場合も55Å以下であり、ほとんど変化がなかつた。
次に水酸化物として水酸化ジルコニウムを添加したス
ラリー回収物の1/3を用いて、実施例4と同条件となる
ように添加物など液組成を調整して反応を行なつたとこ
ろ、反応速度、選択率ともほとんど変化はなかつた。
比較例4 水酸化物およびZnSO4・3Zn(OH)を使用しなかつた
他の実施例15と同様の操作を行なつたところ、回収した
触媒金属ルテニウムの平均結晶子径は、91Åであつた。
また回収物の1/3を用いて実施例4と同条件になるよ
うに添加物など液組成を調整して反応を行なつたとこ
ろ、反応速度が実施例の約半分に低下した。
実施例15および比較例4より本発明方法における触媒
系が極めて安定なものであることが明らかである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C07B 61/00 300

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】単環芳香族炭化水素を水の共存下、水素に
    より部分還元するに際し、200Å以下の平均結晶子径を
    有する金属ルテニウムを主成分とする水素化触媒粒子を
    用い、該触媒粒子とは別にTi,Zr,Hf,Nb,Ta,Cr,Fe,Co,A
    l,Ga,Siより選ばれた少なくとも1種の金属の水酸化物
    を添加し、さらに少なくとも1種の固体塩基性亜鉛塩の
    共存下、中性または酸性の条件下に反応を行うことを特
    徴とするシクロオレフィンを製造する方法。
  2. 【請求項2】水素化触媒があらかじめ亜鉛を含有せしめ
    たルテニウムの還元物である特許請求の範囲第1項記載
    のシクロオレフィンを製造する方法。
  3. 【請求項3】水素化触媒中の亜鉛含有量が主成分である
    ルテニウムに対し0.1〜50重量%である特許請求の範囲
    第2項記載のシクロオレフィンを製造する方法。
  4. 【請求項4】添加する金属の水酸化物の量が水に対し
    て、前記金属のみの量に換算して1×10-4〜0.3重量倍
    である特許請求の範囲第1項記載のシクロオレフィンを
    製造する方法。
  5. 【請求項5】共存する固体塩基性亜鉛塩の量が水素化触
    媒に対し、亜鉛のみの量に換算して1×10-4〜I重量倍
    である特許請求の範囲第1項記載のシクロオレフィンを
    製造する方法。
  6. 【請求項6】硫酸亜鉛水溶液の共存下に反応を行う特許
    請求の範囲第1項記載のシクロオレフィンを製造する方
    法。
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