JPH09194367A - Hsp60ファミリーに属するタンパク質のトコフェロール含有合成抑制剤 - Google Patents

Hsp60ファミリーに属するタンパク質のトコフェロール含有合成抑制剤

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JPH09194367A
JPH09194367A JP2735496A JP2735496A JPH09194367A JP H09194367 A JPH09194367 A JP H09194367A JP 2735496 A JP2735496 A JP 2735496A JP 2735496 A JP2735496 A JP 2735496A JP H09194367 A JPH09194367 A JP H09194367A
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JP
Japan
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tocopherol
family
hsp60
protein
derivative
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JP2735496A
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Toshimi Shiragami
俊美 白神
Yoichi Shobu
洋一 清輔
Masayoshi Morino
眞嘉 森野
Chikao Yoshikumi
親雄 吉汲
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Kureha Corp
Original Assignee
Kureha Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 分子量57キロダルトンから68キロダルト
ンまでの間の熱ショックタンパク質(HSP60ファミ
リー)がその発症に関与する自己免疫疾患(例えば、I
型糖尿病や慢性関節リウマチなど)の患者の生理学的状
態を有効に改善させ、前記病気を効果的に治療すること
ができる、HSP60ファミリーに属するタンパク質の
合成抑制剤を提供する。 【解決手段】 トコフェロール又はその誘導体を有効成
分として含有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、トコフェロール又
はその誘導体、特にα−トコフェロール(すなわち、ビ
タミンE)を有効成分として含有する、分子量が57キ
ロダルトン(kD)から68kDまでの間の熱ショック
タンパク質群(以下、HSP60ファミリーと称する)
に属するタンパク質の合成抑制剤に関する。本発明によ
るHSP60ファミリーに属するタンパク質の合成抑制
剤は、特に、HSP60ファミリーに属するタンパク質
の組織内合成を抑制することにより、HSP60ファミ
リーに属するタンパク質が発症に関与するものと考えら
れている自己免疫疾患、例えばI型糖尿病、慢性関節リ
ウマチなどの病気の患者の生理学的状態を有効に改善さ
せ、I型糖尿病や慢性関節リウマチなどの自己免疫疾患
を効果的に治療することができる。
【0002】
【従来の技術】近年、自己免疫疾患が大きな問題となっ
ている。自己免疫疾患とは、本来ならば自己の身体を構
成する成分に対しては攻撃しないはずの免疫系が、自己
の組織と反応して破壊してしまう病気であり、例えば、
I型糖尿病や慢性関節リウマチなどが含まれる。例え
ば、近年わが国では、経済・社会・文化の発達と、生活
水準の向上や生活様式の変化に伴って、糖尿病患者は著
しく増加し、病態も重症化、複雑化してきた。糖尿病学
の進歩によって、患者の予後は改善したとはいえ、特有
な網膜症、腎症及び神経障害が多発し、加えて動脈硬化
も促進され、健康と社会活動に多大な支障をきたしてい
る。糖尿病のうち、I型糖尿病(インスリン依存性糖尿
病;insulin-dependent diabetes mellitus ;IDD
M)の発生率は、多くの国でこの数十年間に数倍に増加
し、現在生きているヒトの1%は70才になるまでにI
型糖尿病に罹病するものと予想されている。
【0003】I型糖尿病は、インスリン産生細胞である
膵臓ランゲルハンス島のβ細胞だけが自己免疫的に破壊
されるためにインスリン欠乏状態となる疾患で、臓器特
異的な自己免疫疾患である(Atkinson, M. A. et al.:
"Sci. Am.", 263 : 42-49, 1990; Todd JA.: "Immunol.
Today", 11: 122-129, 1990)。I型糖尿病をおこす自
己免疫過程は、非常に厳密に膵臓だけに限られており、
しばしば大人になる前に発症してくることが多い。I型
糖尿病が臨床的に発症するときには、膵島の炎症(膵島
炎)があり、インスリンを産生しているβ細胞の大半が
特異的に失われる(Atkinson, M. A., et al.: "Sci. A
m.", 263 : 62-67, 1990)。糖尿病の臨床症状は、β細
胞の大部分(おそらく90%以上)が再生できない程度
にまで破壊された後に初めて現れ、患者の生存はインス
リンの外的供給に依存することになる。即ち、臨床診断
によって発見することができる時期には、この自己免疫
反応が既に不可逆的な損傷を与えており、しかもその多
くは顕著な自覚症状を示さない等、I型糖尿病は多くの
問題を含んでいる。
【0004】また、慢性関節リウマチは、関節滑膜を病
変の主座とする慢性炎症性疾患である。病変部位はとき
として関節滑膜のみにとどまらず、全身に及ぶこともま
れではない。関節滑膜に初発した炎症は、やがて滑膜増
殖、更に軟骨及び骨の破壊を起こし、関節組織の破壊が
引き起こされる。その結果、患者は社会的にも家庭的に
も著しく制限を受けるのみならず、経済的負担も無視で
きないものとなる。慢性関節リウマチの患者数は人口の
0.1〜0.3%とされる。これは慢性関節リウマチの
確診例であって、疑診例などや慢性関節リウマチの周辺
疾患を含めると患者数はその10倍前後にも増えるもの
と思われる。
【0005】一方、熱ショックタンパク質(heat shock
protein;HSP、ストレスタンパク質ともいう)は、
細胞を何らかのストレス、例えば、熱、重金属、薬剤、
アミノ酸類似体、又は低酸素(低濃度酸素)などで刺激
することにより、細胞に発現される一群のタンパク質で
ある。熱ショックタンパク質は、自然界に普遍的に存在
しており、細菌、酵母、植物、昆虫、及びヒトを含む高
等動物により産生される。
【0006】HSPは、その種類は多種多様であるが、
分子量の大きさからHSP90ファミリー(例えば、9
0kD又は110kDのHSPなど)、HSP70ファ
ミリー(例えば、70〜73kDのHSPなど)、HS
P60ファミリー(例えば、57〜68kDのHSPな
ど)、低分子HSPファミリー(例えば、20kD、2
5〜28kD、又は47kDのHSPなど)の4ファミ
リーに大別することができる。なお、本明細書において
は、特定分子量を有するHSPを、HSPとその直後に
記載する数字とによって示すものとし、例えば、分子量
60kDのHSPを『HSP60』と称するものとす
る。以上のように、HSPには多くの種類が存在する
が、これらは分子量だけでなく、構造、機能、又は性質
などもそれぞれ異なるものである。ストレスへの応答に
加えて、これらのタンパク質の中には構成的に合成され
るものがあり、正常な環境の下で、タンパク質のフォー
ルディング、アンフォールディング、タンパク質サブユ
ニットの会合、タンパク質の膜輸送のような、必須の生
理的な役割を演じていることが示されている。熱ショッ
クタンパク質としてのこれらの機能は、分子シャペロン
と称される。
【0007】自己免疫疾患の病因に関して注目されてい
ることのひとつに、分子相同性(molecular mimicry)が
ある。すなわち、自己抗原が微生物などの外来抗原と共
通抗原性をもっている場合、微生物感染によって生成さ
れる抗体や感作リンパ球が交叉反応によって自己の組織
を攻撃してしまう結果、自己免疫疾患が発症するものと
考えられている(Atkinson, M. A. et al.: "Sci. A
m.", 263 : 42-49, 1990;Shinha, A. A. et al.: "Scie
nce", 248 : 1380-1388, 1990)。例えば、細菌のHSP
60ファミリーに属するタンパク質は、結核、らい病、
梅毒、在郷軍人病、又はライム病などの主たる抗原であ
り(Young, R. A. et al.: "Cell", 59:5-8, 1989)、
かつ、細菌のHSP60ファミリーに属するタンパク質
は強い免疫原性を有し、及び自己の(宿主であるヒト
の)タンパク質との分子相同性を有するために、感染症
がトリガーとなった分子相同性による自己免疫疾患が発
症するものと考えられている。
【0008】例えば、糖尿病の患者やその家族の血中に
検出される64kDタンパク質と反応する抗体(64k
D自己抗体)はβ細胞特異的であるし、また糖尿病と診
断される直前によく出現しやすい。すなわち、I型糖尿
病において発症の原因と考えられている膵島細胞抗原
は、分子量64kDの糖タンパク質(Baekkeskov, S. e
t al.: "Nature", 298 : 167-169, 1982)である。64
kDタンパク質に対する抗体はヒトの糖尿病のみならず
(Atkinson, M. A. et al.: "Lancet", 335 : 1357-136
0, 1990)、BBラット(Baekkeskov, S. et al.: "Scie
nce", 224 : 1348-1350, 1984)やNODマウス(Atkins
on, M. A. et al.: "Diabetes", 37: 1587-1590, 1988)
などのように、自然にI型糖尿病を発症し、ヒトのI型
糖尿病の多くの特徴を示す、I型糖尿病のモデル動物に
おいても検出される。I型糖尿病における膵臓β細胞の
64kDタンパク質は、サイトカインや熱刺激で誘導さ
れるので、熱ショックタンパク質である可能性がある。
【0009】I型糖尿病のモデル動物であるNODマウ
スにおける膵臓ランゲルハンス島β細胞の64kDタン
パク質は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)のH
SP60ファミリーに属するタンパク質に対する抗体と
免疫学的に交叉反応性を示す自己抗原であることが示さ
れている。このように、HSP60ファミリーに属する
タンパク質と64kDタンパク質自己抗原との間に免疫
学的交叉が観察されることにより、膵臓β細胞の64k
Dタンパク質がHSP60ファミリーの一員である可能
性があり、HSP60ファミリーに属するタンパク質の
エピトープと交叉する自己免疫の機序が、I型糖尿病の
発症に関与することが示唆されている。また、結核菌の
HSP60ファミリーに属するタンパク質に特異性を有
するTリンパ球のクローンを移入すると、幼若NODマ
ウスにランゲルハンス島炎と高血糖を引き起こす。ま
た、結核菌のHSP60ファミリーに属するタンパク質
を免疫原性のある投与方法、すなわちアジュバントとと
もにNODマウスに注射すると、糖尿病を早期に発症さ
せ得る(Elias, D. et al.: "Proc. Natl. Acad. Sci.
USA", 87: 1576-1580, 1990)。マイコバクテリアのHS
P60ファミリーに属するタンパク質に対する動物の免
疫反応がI型糖尿病を引き起こすというこれらの事実
は、マイコバクテリアのHSP60ファミリーに属する
タンパク質に対する抗体と交叉反応する抗原に対する免
疫系による攻撃が、β細胞に障害を与えることを示して
いる。
【0010】また、HSP60ファミリーに属するタン
パク質は、慢性関節リウマチの動物モデルであるラット
のアジュバント関節炎や、ヒトのリウマチ関節炎に関連
していることが知られている。例えば、慢性関節リウマ
チの場合、細菌の菌体タンパク質である熱ショックタン
パク質のなかでもHSP60ファミリーに属するタンパ
ク質は、関節軟骨に存在するプロテオグリカンと分子相
同性をもっていることが明らかとなっている。ラットの
アジュバント関節炎ではHSP60ファミリーに属する
タンパク質反応性Tリンパ球の関与が示されている("C
urr. Top. Microbiol. Immunol.", 145 : 27-83, 198
9)。この疾患は、放射線照射を受けた免疫学的に無防備
の(native)ラットに、結核菌のHSP60ファ
ミリーに属するタンパク質に対して反応性のTリンパ球
のクローンを移入することにより、前記ラットに移すこ
とができることが見出された("Science", 219 : 56-5
8, 1983; "Nature", 331: 171-173, 1988)。このTリ
ンパ球は同時に関節のプロテオグリカンとも交叉反応性
を示す("Proc. Natl. Acad. Sci. USA", 82: 5117-512
0, 1985)。このHSP60ファミリーに属するタンパク
質で誘導される調節性Tリンパ球は、溶連菌やプリステ
インによる関節炎でも認められている。従って、アジュ
バント関節炎は、抗HSP60ファミリーに属するタン
パク質Tリンパ球により引き起こされる自己免疫疾患の
ようである。また、ヒトの若年性関節リウマチでもHS
P60ファミリーに属するタンパク質反応性Tリンパ球
の関与が考えられている。
【0011】また、慢性関節リウマチの患者の滑液中か
らマイコバクテリア由来のHSP60ファミリーに属す
るタンパク質に対して、特異的に反応するTリンパ球が
取り出されている("Lancet", II: 478-480, 1988; "Na
ture", 339 : 226, 1989; "Annu. Rev. Immunol.", 1
1: 637, 1993)。このように、マイコバクテリアのHS
P60ファミリーに属するタンパク質と交叉反応性を示
すタンパク質が高濃度に慢性関節リウマチの軟骨/パン
ヌス接合部に認められるのに対し、正常な組織や他の疾
患による慢性の炎症を呈する組織においては認められな
い("Scand. J. Immunol.", 31: 283-288, 1990)。更
に、HSP60ファミリーに属するタンパク質に対する
抗体がヒト及びラットの慢性関節リウマチで検出される
(Kaufmann,S. H. E., et al.: "Immunol. Today", 11:
129-136, 1990)ことからも、慢性関節リウマチの病因
がマイコバクテリアのHSP60ファミリーに属するタ
ンパク質と構造の類似した自己抗原に対する自己免疫で
あるという可能性がある。従ってHSP60ファミリー
に属するタンパク質に対する免疫応答の存在はラット及
びヒトの両方の関節炎に関連している。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、上記事
情に鑑み、I型糖尿病や慢性関節リウマチなどの自己免
疫疾患の患者の生理学的状態を有効に改善することがで
き、それらの自己免疫疾患を効果的に治療することので
きる方法を開発するために、HSP60ファミリーに属
するタンパク質に対して合成抑制作用を示す化合物に関
して種々検討を重ねてきた。その結果、本発明者らは、
意外にも、トコフェロール又はその誘導体、特にα−ト
コフェロール(すなわち、ビタミンE)が、病態を示す
組織の細胞におけるHSP60ファミリーに属するタン
パク質の合成を特異的に抑制することを見出した。すな
わち、トコフェロール又はその誘導体を投与することに
より、細胞内でのHSP60ファミリーに属するタンパ
ク質の合成が抑制され、従って、I型糖尿病や慢性関節
リウマチなどの自己免疫疾患の治療が可能であることを
見出したのである。本発明はこうした知見に基づくもの
であり、I型糖尿病や慢性関節リウマチなどの自己免疫
疾患を効果的に治療することのできる、HSP60ファ
ミリーに属するタンパク質の合成抑制剤を提供すること
を目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】従って、本発明は、トコ
フェロール又はその誘導体、特にα−トコフェロール
(すなわち、ビタミンE)を有効成分として含有するこ
とを特徴とする、分子量57キロダルトンから68キロ
ダルトンまでの間の熱ショックタンパク質(すなわち、
HSP60ファミリーに属するタンパク質)の合成抑制
剤に関する。本明細書において、「HSP60ファミリ
ー」とは、前記のとおり、分子量が57kD〜68kD
の熱ショックタンパク質群を意味する。また、HSP6
0ファミリーに属するタンパク質としては、例えば、H
SP60(すなわち、分子量60kDの熱ショックタン
パク質)、HSP58(すなわち、分子量58kDの熱
ショックタンパク質)、HSP65(すなわち、分子量
65kDの熱ショックタンパク質)、又はGroEL
(すなわち、原核生物、例えば、大腸菌などの分子量約
64kDの熱ショックタンパク質)などを挙げることが
できる。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。本発明の合成抑制剤は、有効成分としてトコフェ
ロール又はその誘導体を含有する。本明細書においてト
コフェロールとは、例えば、α−トコフェロール、β−
トコフェロール、γ−トコフェロール、又はδ−トコフ
ェロールなどを意味し、本発明においては、それらのト
コフェロール同族体を単独で、又はこれらの混合物を用
いることができる。トコフェロールとしては、特にα−
トコフェロール〔3,4−ジヒドロ−2,5,7,8−
テトラメチル−2−(4,8,12−トリメチルトリデ
シル)−2H−1−ベンゾピラン−6−オール〕、すな
わちビタミンEが最も好適である。
【0015】トコフェロール誘導体としては、例えば、
天然物中に本来含有されているトコフェロール誘導体、
抽出又は分画の際の化学的処理によって変換したトコフ
ェロール誘導体、及び化学的修飾を行ったトコフェロー
ル誘導体等を挙げることができる。天然物中に本来含有
されているトコフェロール誘導体としては、例えば、ト
コトリエノール誘導体、すなわちα−トコトリエノー
ル、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノール、又
はδ−トコトリエノール等を挙げることができる。抽出
若しくは分画の際の化学的処理によって変換したトコフ
ェロール誘導体、又は化学的修飾を行ったトコフェロー
ル誘導体としては、例えば、トコフェロールエステル誘
導体又はトコトリエノールエステル誘導体等を挙げるこ
とができる。
【0016】トコフェロールエステル誘導体の具体例と
しては、例えば、直鎖状若しくは分枝状のアルキルモノ
カルボン酸若しくはジカルボン酸(好ましくは炭素数1
〜30の直鎖状若しくは分枝状のアルキルモノカルボン
酸若しくはジカルボン酸)、直鎖状若しくは分枝状のア
ルケニルモノカルボン酸若しくはジカルボン酸(好まし
くは炭素数2〜30の直鎖状若しくは分枝状のアルケニ
ルモノカルボン酸若しくはジカルボン酸)、アリール部
分の炭素数が6〜30のアリールモノカルボン酸若しく
はジカルボン酸(例えば、安息香酸)、又は窒素原子1
若しくは2個を含む5員若しくは6員の複素環式モノカ
ルボン酸若しくはジカルボン酸(例えば、ニコチン酸)
と、トコフェロールとのエステル化合物、例えば、酢酸
トコフェロール、コハク酸トコフェロール、又はニコチ
ン酸トコフェロール等が挙げられる。なお、前記のトコ
フェロール又はその誘導体には、立体異性体が存在し、
本発明では、それらの任意の純粋な立体異性体又はそれ
らの混合物を用いることができる。本発明の合成抑制剤
に含有されるトコフェロール又はその誘導体は、化学合
成によって、又は天然物から抽出して精製することによ
って、調製することができる。あるいは、市販品を用い
てもよい。
【0017】本発明の合成抑制剤は、トコフェロール又
はその誘導体を、それ単独で、又は好ましくは製剤学的
若しくは獣医学的に許容することのできる通常の担体と
共に、動物、好ましくは哺乳動物(特にはヒト)に投与
することができる。投与剤型としては、特に限定がな
く、例えば、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル
剤、懸濁液、エマルジョン剤、シロップ剤、エキス剤、
若しくは丸剤等の経口剤、又は注射剤、外用液剤、軟膏
剤、坐剤、局所投与のクリーム、若しくは点眼薬などの
非経口剤を挙げることができる。これらの経口剤は、例
えば、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、澱粉、コーン
スターチ、白糖、乳糖、ぶどう糖、マンニット、カルボ
キシメチルセルロース、デキストリン、ポリビニルピロ
リドン、結晶セルロース、大豆レシチン、ショ糖、脂肪
酸エステル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリ
エチレングリコール、ケイ酸マグネシウム、無水ケイ
酸、又は合成ケイ酸アルミニウムなどの賦形剤、結合
剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、希釈
剤、保存剤、着色剤、香料、矯味剤、安定化剤、保湿
剤、防腐剤、又は酸化防止剤等を用いて、常法に従って
製造することができる。
【0018】例えば、軟カプセル剤を製造する場合に
は、植物油又は合成油等にビタミンEを、必要に応じて
加温しながら溶解し、常法に従って製造したゼラチン、
グリセリン、及び/又は防バイ剤等を混合・溶融した皮
膜用組成物を用いて、軟カプセル充填機により軟カプセ
ル剤を製造することができる。また、硬カプセル剤を製
造する場合には、例えば、ビタミンEを加温し、軟質無
水ケイ酸等の賦形剤に吸着し、必要であれば更に結晶セ
ルロース及び/又はコーンスターチ等を加えて、混合・
造粒の後に、篩過したものを、カプセル充填機を使用し
て、硬カプセルに充填することによって製造することが
できる。また、内服液剤を製造する場合には、例えば、
ポリエチレン硬化ヒマシ油等の合成界面活性剤、又はレ
シチン等の天然界面活性剤等を用いて、常法により乳化
又は可溶化することによって製造することができる。
【0019】非経口投与方法としては、注射(皮下、静
脈内等)、又は直腸投与等が例示される。これらのなか
で、注射剤が最も好適に用いられる。例えば、注射剤の
調製においては、有効成分としてのトコフェロール又は
その誘導体の他に、例えば生理食塩水、リンゲル液等の
水溶性溶剤、植物油、若しくは脂肪酸エステル等の非水
溶性溶剤、ブドウ糖、若しくは塩化ナトリウム等の等張
化剤、溶解補助剤、安定化剤、防腐剤、懸濁化剤、又は
乳化剤等を任意に用いることができる。また、本発明の
合成抑制剤は、徐放性ポリマーなどを用いた徐放性製剤
の手法を用いて投与してもよい。例えば、本発明の合成
抑制剤をエチレンビニル酢酸ポリマーのペレットに取り
込ませて、このペレットを治療すべき組織中に外科的に
移植することができる。本発明の合成抑制剤は、これに
限定されるものではないが、トコフェロール又はその誘
導体を、0.01〜99重量%、好ましくは0.1〜8
0重量%の量で含有することができる。
【0020】本発明の合成抑制剤を用いる場合の投与量
は、病気の種類、患者の年齢、性別、体重、症状の程
度、又は投与方法などにより異なり、特に制限はない
が、α−トコフェロール量として通常成人1人当り1m
g〜10g程度を、1日1〜4回程度にわけて、経口的
に又は非経口的に投与する。更に、用途も医薬品に限定
されるものではなく、種々の用途、例えば、機能性食品
や健康食品として飲食物の形で与えることも可能であ
る。
【0021】
【作用】上記したように、本発明の合成抑制剤に含有さ
れるトコフェロール又はその誘導体、特にα−トコフェ
ロール(すなわちビタミンE)は、細胞内のHSP60
ファミリーに属するタンパク質の合成を特異的に抑制す
る作用があるので、前記トコフェロール又はその誘導体
を投与すると細胞でのHSP60ファミリーに属するタ
ンパク質の生合成が特異的に減少する。従って、前記ト
コフェロール又はその誘導体は、HSP60ファミリー
に属するタンパク質がその発症に関連する自己免疫疾
患、例えば、I型糖尿病や慢性関節リウマチなどの予防
及び治療に使用することができる。
【0022】
【実施例】以下、実施例によって本発明を具体的に説明
するが、これらは本発明の範囲を限定するものではな
い。実施例1:ヒト培養癌細胞のHSP発現量の測定 (1)ヒト培養癌細胞の培養 乳癌細胞株MCF7(ATCC HTB 22)を、1
0%非働化ウシ胎児血清と10-8Mβ−エストラジオー
ルとを含むRPMI1640培地中で、5%二酸化炭素
条件下で、熱ショック処理時以外は、37℃で培養し
た。
【0023】(2)α−トコフェノール処理及び熱ショ
ック処理 播種2日後の前記乳癌細胞株MCF7の培地中に、最終
濃度20μMになるようにD−α−トコフェロール(フ
ナコシ、カタログ番号ICN 81-1521-47)を添加し、24
時間培養した。その後、45℃にて15分間熱ショック
処理をしてから、37℃にて終夜培養した。対照試験
は、α−トコフェロールを添加しないこと以外は前記と
同様に実施した。
【0024】(3)ヒト培養癌細胞でのHSP発現量の
測定 前項(2)で処理した各細胞を、以下に示す方法により
ホモジナイズし、HSP発現量をウェスタンブロット法
にて測定した。すなわち、前項(2)で処理した細胞
を、リン酸緩衝生理食塩水〔組成:KCl=0.2g/
l,KH2 PO4 =0.2g/l,NaCl=8g/
l,Na2HPO4 (無水)=1.15g/l;以下、
PBS(−)と称する〕で洗浄した後、ライシスバッフ
ァー(lysis buffer)〔1.0%NP−4
0、0.15M塩化ナトリウム、50mMトリス−HC
l(pH8.0)、5mM−EDTA、2mM−N−エ
チルマレイミド、2mMフェニルメチルスルホニルフル
オリド、2μg/mlロイペプチン及び2μg/mlペ
プスタチン〕1mlを加え、氷上で20分間静置した。
その後、4℃で12000rpmにて、20分間、遠心
を行った。遠心後の上清10μlをPBS(−)790
μlに加え、更にプロテインアッセイ染色液(Dye Reag
ent Concentrate : バイオラッド,カタログ番号500-00
06)200μlを加えた。5分間、室温にて静置した
後、595nmで吸光度を測定してタンパク質定量を行
った。
【0025】タンパク質定量を行った試料を用いて、L
aemmliのバッファー系(Laemmli, N. K., "Natur
e", 283 : pp. 249-256, 1970)にて、等量のタンパク質
を含むライセートのSDSポリアクリルアミドゲル電気
泳動を行った。電気泳動後、ブロッティング及びそれに
続くブロッキングを行った。すなわち、タンパク質転写
装置(Trans-Blot Electrophoretic Transfer Cell:バ
イオ・ラッド,カタログ番号170-3946)を用いて、室温
にて100Vにて、0.45μmニトロセルロース膜
(Schleicher & Schuell,カタログ番号401196)にゲル
を密着させ、3時間ブロッティングを行った。ブロッテ
ィングバッファーとしては、0.025Mトリス及び
0.192MグリシンよりなりpH8.5に調整された
トリスグリシンバッファー(Tris Gly Running and Blo
tting Buffer;Enprotech, 米国マサチューセッツ州,
カタログ番号 SA100034)にメチルアルコールを20%に
なるように加えて調製したバッファーを用いた。ブロッ
ティング後、ニトロセルロース膜を10%スキムミルク
(雪印乳業)−PBS(−)溶液に室温にて30分間、
インキュベートし非特異的結合をブロックした。
【0026】ブロッキング後、ニトロセルロース膜の上
で、抗ヒトHSP60マウスモノクローナル抗体(Stre
ssGen, Victoria, B.C., Canada, カタログ番号 SPA-8
06)により、1次抗体反応を行った。この抗ヒトHSP
60マウスモノクローナル抗体は、大腸菌を用いるリコ
ンビナントDNA法により作製したヒトHSP60を免
疫原として作製した抗体であり("J. Exp. Med." 175
, 1805-1810, 1992)、哺乳類HSP60(霊長類HS
P60、マウスHSP60、ラットHSP60、及びハ
ムスターHSP60)と特異的に反応する("J. Exp. M
ed." 175 , 1805-1810, 1992)。この抗ヒトHSP60
マウスモノクローナル抗体が認識するエピトープは、ヒ
トHSP60アミノ酸配列の第383番目〜第447番
目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列中に局在する
("J. Exp. Med." 175 , 1805-1810,1992)。1次抗体
反応後、PBS(−)で5分間ずつ、溶液を取り替えて
2回の洗浄をスロー・ロッキング・シェイカーによって
行い、更にPBS(−)−0.1%Tween20(バ
イオ・ラッド,カタログ番号170-6531)溶液で15分間
ずつ、溶液を取り替えて4回の洗浄を行った。最終的
に、PBS(−)で5分間ずつ、2回の洗浄を行った。
【0027】洗浄終了後、ペルオキシダーゼ標識ヤギ抗
マウスIgG抗体(CAPPEL,カタログ番号55550)を、2
%スキムミルクを含むPBS(−)溶液で5000倍に
希釈して調製した抗体溶液5mlを用いて、2時間、2
次抗体反応を行った。反応終了後、ニトロセルロース膜
に関して、PBS(−)溶液で5分間ずつ溶液を変えて
2回、更にPBS(−)−0.1%Tween20溶液
で15分間ずつ溶液を変えて5回の洗浄をスロー・ロッ
キング・シェイカーにより行った。最後にPBS(−)
溶液で5分間ずつ2回の洗浄を行った。余分なPBS
(−)溶液を除去した後、ウェスタンブロッティング検
出試薬(ECL Western blotting detectionreagent;Ame
rsham,カタログ番号RPN2106)をニトロセルロース膜上
に振りかけ、1分間インキュベートした後、余分な検出
試薬を除去し、ニトロセルロース膜をラップに包み、反
応面をX線フィルム(コダック X-OMAT, AR, カタログ
番号165 1454)に密着させて露光し、現像してHSP6
0の有無の検討を行った。
【0028】対照試験、すなわち、α−トコフェロール
を添加しなかった乳癌細胞株MCF7では、分子量約6
0kDのバンドが一本検出された。なお、分子量は、前
記抗ヒトHSP60マウスモノクローナル抗体との結
合、及び分子量マーカー(卵白オバルブミン及びウシ血
清アルブミン)により決定した。α−トコフェロールを
添加した乳癌細胞株MCF7では、HSP60の発現が
抑制された。すなわち、α−トコフェロールは、HSP
60の発現を抑制する合成抑制剤の活性を有するものと
結論することができる。
【0029】
【発明の効果】以上詳述したように、トコフェロール又
はその誘導体、特にα−トコフェロール(すなわち、ビ
タミンE)は、細胞内のHSP60ファミリーに属する
タンパク質の発現を抑制する合成抑制剤の活性を有す
る。従って、トコフェロール又はその誘導体、特にα−
トコフェロール(すなわち、ビタミンE)を投与するこ
とにより、例えば、HSP60ファミリーに属するタン
パク質が発症に関与する自己免疫疾患(例えば、I型糖
尿病や慢性関節リウマチなど)の患者の生理学的状態を
有効に改善させ、前記病気を効果的に治療することがで
きる。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 トコフェロール又はその誘導体を有効成
    分として含有することを特徴とする、分子量57キロダ
    ルトンから68キロダルトンまでの間の熱ショックタン
    パク質の合成抑制剤。
  2. 【請求項2】 トコフェロールがα−トコフェロールで
    ある、請求項1に記載の分子量57キロダルトンから6
    8キロダルトンまでの間の熱ショックタンパク質の合成
    抑制剤。
JP2735496A 1996-01-22 1996-01-22 Hsp60ファミリーに属するタンパク質のトコフェロール含有合成抑制剤 Pending JPH09194367A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2003007927A1 (fr) * 2001-07-12 2003-01-30 Yamatsu, Isao Inhibiteurs de synthese et de fonction pour proteines de choc thermique

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2003007927A1 (fr) * 2001-07-12 2003-01-30 Yamatsu, Isao Inhibiteurs de synthese et de fonction pour proteines de choc thermique

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