JPH11171902A - ホウ素の含有量を低減したデキストラン、その製造方法および溶液状で容器に充填してなるデキストラン - Google Patents

ホウ素の含有量を低減したデキストラン、その製造方法および溶液状で容器に充填してなるデキストラン

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Abstract

(57)【要約】 【課題】結晶の析出が低減したデキストラン、その製造
方法および液状で容器に充填してなるデキストランを提
供することである。 【解決手段】ホウ素の含有量をホウ素原子換算で0.3
0μg/g未満(乾物基準)に低減したデキストランで
ある。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ホウ素の含有量を
低減したデキストラン、その製造方法および溶液状で容
器に充填してなるデキストランに関する。
【0002】
【従来の技術】デキストランは、ショ糖をデキストラン
産生菌(Leuconostoc mesenteroides,L. dextranicum
等)で発酵させて生産される多糖類である。生成される
デキストランのうち適当な分子量を有するものは、従来
より生理食塩水に溶解して、これを急性出血時等の治療
における代用血漿、外傷、出血等に基づく外科的ショッ
クの予防剤および治療剤、または手術時等における体外
循灌流液として用いられている。また、デキストランの
誘導体として、鉄との複合体は鉄欠乏性貧血に対する注
射液として用いられる。また、デキストランの硫酸エス
テルは血液凝固防止剤としてヘパリンの代用になる。そ
の他にも、デキストランは食品工業等の種々の工業分野
においても使用されている。
【0003】デキストランの製造は、一般に図2に示す
ような製造工程を経て行われる。すなわち、まず、原料
であるショ糖と、リン酸二カリウム等の無機塩と、ビタ
ミン類とを水と共に原料溶解槽1に加えて溶解させたの
ち、原料液を発酵槽2に送り、デキストラン産生菌を加
えて発酵させる。発酵後、発酵液を沈殿槽3に送り、メ
タノールを加えてデキストランを沈澱分離する。
【0004】ついで、加水分解槽4にて、塩酸を加えて
加水分解を行った後、濾過器5にて不純物を除去する。
ついで、分別沈殿槽6にて一定のメタノール濃度で沈殿
するデキストラン区分を集め、これを溶解槽7にて溶解
させたのち、イオン交換塔8にて塩類を除去する。再び
溶解槽9にてデキストランを溶解させたのち、濾過器1
0、蒸発缶11および調整タンク12を経て噴霧乾燥器
13に送って噴霧乾燥してデキストラン粉末を得る。
【0005】このようにして得られたデキストラン粉末
は、前述のように、生理食塩水に溶解し、容器内に充填
密封されて、注射液等の用途に使用される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】容器内に充填密封され
たデキストラン溶液は、貯蔵中や運搬中の温度変化によ
ってデキストランの結晶が析出するおそれがあるという
問題がある。
【0007】一方、デキストラン溶液を代用血漿や体外
灌流液として使用するには、デキストラン溶液中にデキ
ストランの結晶が析出していないことが必要である。
【0008】しかしながら、一旦析出したデキストラン
の結晶は、加温、振盪等の手段を用いても再び溶解させ
るのが困難であるため、結晶が析出したデキストラン溶
液の入った注射液容器は廃棄しなければならない。
【0009】そこで、本発明の目的は、溶液で使用して
も結晶を析出しにくいデキストラン、その製造方法、お
よび液状で容器に充填してなるデキストランを提供する
ことである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、デキストラン中に
含まれる不純物に着目し、かかる不純物がデキストラン
の結晶が析出するのに影響を及ぼしているのではないか
と考え、さらに研究を重ねたところ、驚くべきことに、
デキストラン中に含有されるホウ素がデキストランの析
出を促進させる機能を有するという新たな知見を得た。
【0011】このような知見に基づき、本発明者らはさ
らなる検討を重ねた結果、ホウ素の含有量を、デキスト
ランの乾物を基準としてホウ素原子換算で0.30μg
/g未満とすることにより、デキストラン結晶の析出を
抑制あるいは著しく低減させるとの事実を見出し、本発
明を完成するに到った。
【0012】すなわち、本発明のデキストランは、ホウ
素の含有量が、ホウ素原子換算で0.30μg/g未満
(乾物基準)であることを特徴とする。
【0013】なお、本発明でいうホウ素の含有量とは、
本発明のデキストランの粉末または溶液中に含まれる該
デキストランの乾物重量(g)に対するホウ素量を、ホ
ウ素原子換算で表した値(μg)をいう。
【0014】本発明のデキストランは、原料となるホウ
素含有のデキストランを低級アルコールで処理すること
により得られる。上記処理により、原料デキストラン中
に含まれるホウ素を低級アルコールに溶解後、必要に応
じて乾燥することによって製造することができる。
【0015】すなわち、本発明のデキストランの製造方
法は、ホウ素含有デキストランを低級アルコールで処理
し、ホウ素の含有量をホウ素原子換算で0.30μg/
g未満(乾物基準)に低減させることを特徴とする。
【0016】ここで、出発原料となる前記ホウ素含有の
デキストランは粉末または水溶液のいずれの形態であっ
てもよい。
【0017】本発明のデキストランは、前記のようにデ
キストラン結晶の析出が抑制またはその析出速度が著し
く低減されているため、これを溶解した溶液をデキスト
ラン注射液容器等の容器に充填して実用上、有効に使用
することができる。
【0018】なお、本発明において、原料のデキストラ
ン中に含有されるホウ素とは、ホウ素原子あるいはホウ
素原子を含む化合物のいずれの形態をも包含する。
【0019】
【発明の実施の形態】デキストランへのホウ素の混入に
は、いろいろの原因が考えられ、例えばデキストラン製
造時における装置や容器からのホウ素の漏出およびデキ
ストランを産出する発酵用培地からのホウ素の混入等が
挙げられる。
【0020】すなわち、図2に示す製造工程で使用され
る原料溶解槽1、発酵槽1、沈殿槽3、濾過器5に使用
するフィルターなどの容器や装置の壁面、特にガラス製
の壁面とデキストラン液とが接触する際に、ホウ素がデ
キストラン液中に漏出すると考えられる。また、培地に
は、微量成分としてホウ素が含まれている場合があり、
これが発酵生成物であるデキストランに混入することは
避けられない状況になっている。
【0021】このようにして製造されたデキストランの
ホウ素含有量は、ホウ素原子換算で通常、0.30〜
1.20μg/g程度(乾物基準)である。
【0022】なお、図2に示す製造工程でデキストラン
を分別沈殿させるためメタノールを使用しているが、こ
の製造工程におけるメタノール処理程度では、本発明の
デキストラン、すなわちホウ素含有量がホウ素原子換算
で0.30μg/g未満(乾物基準)のデキストランを
得ることができない。
【0023】つぎに、本発明のデキストランの製造方法
を説明する。
【0024】ホウ素を含有したデキストラン粉末(原
料)からのホウ素の除去は、該デキストラン粉末を低級
アルコールに溶解して、ホウ素をホウ酸トリアルキルB
(OR 3 3 (式中、Rは炭素数1〜4の低級アルキル
基を示す)に変換し、ついで低級アルコールからデキス
トランを例えば濾過にて分離し、乾燥すればよい。これ
により、原料デキストラン粉末中に混入されているホウ
素は、低級アルコールに溶解してデキストランと分離さ
れる。
【0025】上記低級アルコールとしては、例えばメタ
ノール、エタノール等の炭素数が1〜4のアルコールが
あげられる。
【0026】このような低級アルコールによるデキスト
ラン粉末の洗浄は1回のみでもよいが、複数回繰り返す
のが、本発明で目的とするホウ素含有量(デキストラン
乾物重量当りホウ素原子換算で0.30μg/g未満)
に低減させるうえで好ましい。また、使用する低級アル
コール量は、デキストランに対して過剰量であるのがよ
く、特に制限されるものではない。
【0027】なお、デキストラン粉末の低級アルコール
への溶解は攪拌しながら室温下で行ってもよく、あるい
は適宜加温ないし加熱下で行ってもよい。
【0028】また、デキストラン粉末に代えて、デキス
トランの水溶液を用いてもよい。この場合には、デキス
トラン水溶液に低級アルコールを加え、以下、前記と同
様にして処理すればよい。その際、水溶液中のデキスト
ランの濃度は約20〜30重量%であるのがよい。ま
た、低級アルコールの添加量はデキストラン水溶液に対
して体積比で約1/2〜1/3であるのがよい。
【0029】上記の製造方法により、ホウ素含有量が、
デキストランの乾物を基準としてホウ素原子換算で0.
30μg/g未満、好ましくは0.25μg/g以下、
より好ましくは0.20μg/g以下に低減されたデキ
ストランが得られ、中でも、注射液などの用途として使
用する場合には、ホウ素の含有量がホウ素原子換算で
0.20μg/g以下に低減されたものが好適である。
【0030】このデキストランの粉末は、他の成分と共
に精製水に溶解し、プラスチックバッグ、ガラスバイア
ル等の容器に充填密封され、加熱殺菌して注射液等のデ
キストラン溶液として利用できる。
【0031】本発明における、溶液状で容器に充填して
なるデキストランは、貯蔵中や運搬中の温度変化等によ
ってデキストランの結晶が容器内壁に析出するのを抑制
あるいは析出する速度を著しく低減させたものである。
デキストラン結晶の析出とホウ素との関係は必ずしも明
確ではないが、図1に模式的に示すように、デキストラ
ンの分子鎖10は、該分子鎖10が有する水酸基中の非
共有電子対に基づき、ホウ素11を介して架橋構造を形
成し、その結果、デキストランが析出しやすくなるため
ではないかと推測される。
【0032】
【実施例】以下、実施例および試験例を挙げて本発明を
具体的に説明する。
【0033】実施例1 デキストラン粉末(名糖産業(株)製、数平均分子量4
0,000、α−1,6結合してなるグルカン)200
gを1000mlの水に溶解し、これにメタノール30
0mlを加え、室温下で10分間攪拌した。攪拌後、処
理液を減圧乾固した。
【0034】かかるメタノール処理前および処理後のデ
キストラン粉末中のホウ素含有量をそれぞれ下記のよう
に測定した(繰り返し数n=2)。 (測定方法)試料0.04gを超純水に溶解し、硝酸を
0.04ml添加した後、超純水で4mlに調整した。
この溶液について、ICP質量分析装置(セイコー電子
工業(株)製の「SPQ9000型」)によりホウ素含
有量の測定を行った。
【0035】その結果を表1に示す。
【0036】
【表1】 表1から、メタノール処理によりホウ素含有量は大幅に
低減していることがわかる。
【0037】実施例2 デキストラン粉末200gをメタノール200mlに加
えたほかは、実施例1と同様にして、メタノール処理し
たデキストラン粉末を得た。
【0038】つぎに、本発明のデキストランを製剤形態
(注射液)とし、以下に示す各試験を行った。
【0039】試験例1 上記実施例1と同様にしてメタノール処理したデキスト
ランを超純水に溶解して10w/v%デキストラン水溶
液を作製した。ついで、その50mlを100mlガラ
スバイアルに充填し密封し、デキストラン溶液を充填し
た容器(試料1)を作製した。
【0040】一方、メタノール処理前のデキストラン
(前述の名糖産業(株)製、数平均分子量40,000
のデキストラン)を用いて上記と同様にしてデキストラ
ン溶液を充填した容器(試料2)を作製した。
【0041】得られた各試料(n=5)を日光の当たる
室外に放置し(平均気温約28℃)、デキストラン結晶
の沈殿が発生するか否かを試験開始から1日後および4
日後にそれぞれ目視にて観察した。その結果を表2に示
す。なお、表中、分数の分母は試験に供した試料数を、
分子は沈殿が発生した試料の個数をそれぞれ示してい
る。
【0042】
【表2】 表2から、直射日光、高温下という、厳しい保存条件下
においては、ホウ素含有量を低減していないデキストラ
ンを用いた試料2では、試験開始後1日目からデキスト
ランの沈殿が発生した。
【0043】一方、メタノール処理によってホウ素含有
量を低減したデキストランを用いた試料1では、試験開
始4日経過後においても、デキストランの沈殿は全試験
試料に認められなかった。
【0044】試験例2 試験例1で使用した試料2について、出発原料となる元
のデキストラン粉末中および沈殿物中にそれぞれ含まれ
る微量成分を分析した。
【0045】測定は、実施例1の分析方法と同様にし
て、試料を硝酸で溶解した後、ICP質量分析装置(前
出)により各微量成分を測定した。ただし、カルシウム
は黒鉛炉加熱−原子吸光分析法により測定した。
【0046】測定結果を表3に示す。
【0047】
【表3】 + 0.1〜1μg/g ++ 1〜10μg/g +++ 10〜100μg/g 表3から、ホウ素を除く他の元素は元のデキストラン粉
末および沈殿物ともに含有量は殆ど変わらないのに対し
て、ホウ素では元のデキストラン粉末に対して沈殿物の
含有量は10倍以上にも増大していた。このことから、
ホウ素の存在がデキストランの析出に関与していること
がわかる。
【0048】試験例3 以上の試験例の結果から、ホウ素の含有量を低減したデ
キストラン粉末により作製したデキストラン溶液を充填
した容器(試料1)は、ホウ素を全く低減していないデ
キストラン粉末により作製したデキストラン溶液を充填
した容器(試料2,従来品)よりも、不良品の発生が少
ないことが明らかとなった。
【0049】次に、実際にデキストラン中のホウ素含有
量が、どの程度まで低減されていれば、該デキストラン
の溶液を充填した容器内で沈殿物の発生が低減され、不
良品の発生を有効に防止することができるかを検討し
た。
【0050】試験方法としては、デキストラン溶液中の
ホウ素含有量に対する不良品の発生個数を調べる、以下
の定量試験を行った。
【0051】なお、保存条件としては、上記デキストラ
ン充填容器を商品化した場合を想定し、医薬製剤の保存
条件に近い温度(平均気温約22℃)を採択した。 (試料の作製)上記試験例1と同様にしてメタノール処
理したデキストランを超純水に溶解して10w/v%デ
キストラン水溶液を作製した。ついで、この溶液を20
0mlずつ8個のプラスチック容器に加え、それぞれに
80.08ppmのホウ酸水溶液を0.29ml、0.
36ml、0.39ml、0.42ml、0.43m
l、0.50mlを添加した。このとき各プラスチック
容器中のホウ素量は、溶解しているデキストラン(乾
物)の重量に対して0.20ppm、0.25ppm、
0.275ppm、0.295ppm、0.30pp
m、0.35ppmである。
【0052】ついで、これらの各容器中からそれぞれ2
0mlを取り出し、100mlポリエチレン製バックに
充填し密封し、デキストラン溶液を充填した容器を作製
した。
【0053】なお、対照として、デキストラン粉末(前
述の名糖産業(株)製,数平均分子量40,000のデ
キストラン,従来品)を用いて上記と同様にしてデキス
トラン溶液を充填した容器を作製した。この対照の容器
中のホウ素含有量は、溶解しているデキストラン(乾
物)の重量に対して1.20ppmである。 (試験方法)得られた各試料(n=5)を日光の当たる
室外に放置し(平均気温約22℃)、デキストラン結晶
の沈殿が発生するか否かを試験開始から1日後、4日
後、6日後、10日後および21日後にそれぞれ目視に
て観察した。その結果を表4に示す。なお、表中、分数
の分母は試験に供した試料数を、分子は沈殿が発生した
試料の個数をそれぞれ示している。
【0054】
【表4】 表4から、ホウ素の含有量が、溶解しているデキストラ
ン(乾物)の重量に対して0.30ppm未満である
と、試験開始から21日経過後においても沈殿の発生を
抑制していることがわかる。
【0055】
【発明の効果】本発明によれば、デキストランの析出が
抑制もしくは析出速度が著しく低減されるため、デキス
トラン注射液容器などにおいてデキストランの析出によ
る不良品の発生を低減できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】デキストランに対するホウ素の作用を示す模式
図である。
【図2】デキストランの製造工程を示すフローシートで
ある。
【符号の説明】
10 デキストランの分子鎖 11 ホウ素
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 青木 光夫 徳島県鳴門市鳴門町高島字中島161の4 (72)発明者 小畠 秀樹 徳島県鳴門市瀬戸町明神字下本城208−16

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ホウ素の含有量が、ホウ素原子換算で0.
    30μg/g未満(乾物基準)である、ホウ素の含有量
    を低減したデキストラン。
  2. 【請求項2】ホウ素の含有量が、ホウ素原子換算で0.
    20μg/g以下(乾物基準)である、請求項1記載の
    デキストラン。
  3. 【請求項3】溶液状で容器に充填してなる、請求項1ま
    たは2記載のデキストラン。
  4. 【請求項4】ホウ素含有デキストランを低級アルコール
    で処理し、ホウ素含有量をホウ素原子換算で0.30μ
    g/g未満(乾物基準)に低減させることを特徴とす
    る、ホウ素含有量の低減されたデキストランの製造方
    法。
  5. 【請求項5】出発原料となる前記ホウ素含有デキストラ
    ンが粉末または水溶液の形態であり、これを低級アルコ
    ールで処理する請求項4記載の製造方法。
JP17909698A 1997-10-09 1998-06-25 ホウ素の含有量が低減されたデキストランの製造方法 Expired - Lifetime JP4042813B2 (ja)

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DE69838032T DE69838032T2 (de) 1997-10-09 1998-10-07 Dextran mit geringem borgehalt, verfahren zu deren herstellung und dextran in form einer lösung verpackt in einem behälter
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