JPS6249912B2 - - Google Patents
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- JPS6249912B2 JPS6249912B2 JP55162972A JP16297280A JPS6249912B2 JP S6249912 B2 JPS6249912 B2 JP S6249912B2 JP 55162972 A JP55162972 A JP 55162972A JP 16297280 A JP16297280 A JP 16297280A JP S6249912 B2 JPS6249912 B2 JP S6249912B2
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- C10C—WORKING-UP PITCH, ASPHALT, BITUMEN, TAR; PYROLIGNEOUS ACID
- C10C3/00—Working-up pitch, asphalt, bitumen
-
- D—TEXTILES; PAPER
- D01—NATURAL OR MAN-MADE THREADS OR FIBRES; SPINNING
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- D01F9/08—Artificial filaments or the like of other substances; Manufacture thereof; Apparatus specially adapted for the manufacture of carbon filaments of inorganic material
- D01F9/12—Carbon filaments; Apparatus specially adapted for the manufacture thereof
- D01F9/14—Carbon filaments; Apparatus specially adapted for the manufacture thereof by decomposition of organic filaments
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Description
本発明は、高強度及び高弾性率を有する炭素繊
維及びその他の炭素材料を含む炭素材を製造する
ための光学的異方性炭素質ピツチに関するもので
ある。 今後の省エネルギー、省資源時代に航空機、自
動車その他に必要な軽量かつ高強度、高弾性の複
合材料の素材を構成する低コストの高性能炭素繊
維か、又は、加圧成形して種々の用途に使用され
る高強度、高密度の成形炭素材料が強く要望され
ている。 従来、高性能炭素繊維の製造のために適した光
学的異方性ピツチの組成及び構造について十分な
開示はなく、炭素質ピツチ物質の物性とその組成
及び概略の構造との関係については不明瞭であつ
てこれを工業的規模で安定に制御して得られる技
術は未だ完成されていない。 従来、開示されている光学的異方性ピツチ、例
えば、特開昭49―19127号、特開昭50―89635号公
報に記載されている光学的異方性ピツチは、光学
的異方性相部分が、ほぼ、キノリン不溶分(また
はピリジン不溶分)に相当し、光学的異方性相部
分を100%に近づけると、軟化点が著しく上昇
し、紡糸温度が400℃の近傍又はそれ以上とな
り、紡糸時にピツチの分解ガスの発生及び重合が
惹起することから、従来の炭素繊維紡糸法は、光
学的異方性相部分の含有量を90%以下、好ましく
は、50%〜65%の範囲に抑えて紡糸温度を熱分解
及び熱重合が顕著に生じない温度に抑える方法を
採用している。 しかしながら、このようなピツチ組成物は、光
学的異方性相と相当量の光学的等方性相との混合
物であるため不均質なピツチであり、紡糸時に糸
切れが多いこと、繊維の太さが不均一になるこ
と、又は繊維の強度が低いという難点を包蔵する
ものである。 又、特公昭49―8634号公報で開示されているピ
ツチ物質は、光学的異方性相が実質的に100%よ
うにも見うけられるが、ピツチ分子の化学構造を
特定化した特殊のピツチであつて、クリセン、フ
エナンスレン、テトラベンゾフエナジン等の高価
な純物質の熱重合で製造されたものであり、構造
及び分子量が比較的整つたピツチであつて、一般
的な混合原料で製造した場合は軟化点が非常に高
い。一方、特公昭53―7533号公報に記載されてい
る炭素繊維製造用原料としてのピツチは、軟化
点、紡糸温度が低く、紡糸は容易であるが、光学
的異方性相の含有率が開示されていない。又、原
料炭化水素を塩化アルミニウム等のルイス酸触媒
を使用して重縮合しており、ピツチの組成と構造
は特殊であり、そのピツチから製造された炭素繊
維の強度及び弾性率は小さい。又、触媒の完全な
除去も困難であるという問題も包含されている。 更に、特開昭54―55625号公報で開示されてい
るピツチ物質は、実質上100%の光学的異方性相
から成る均質ピツチであるが、分子量分布がかな
り狭く、後で更に詳しく説明されるが本発明の光
学的異方性ピツチの重要な組成分であるn―ヘプ
タン可溶の成分(以下「O成分」という)と、n
―ヘプタン不溶且つベンゼン可溶の成分(以下
「A成分」という)の含有量が少なく、更に他の
残余のベンゼン不溶成分中のキノリン可溶の成分
(以下「B成分」という)及びキノリン不溶の成
分(以下「C成分」という)の含有量が比較的多
いため、その総合的な結果として該従来のピツチ
物質の軟化点は、約380℃以上であり、紡糸温度
は、380℃〜400℃以上に達することになり、この
温度範囲では、工業的に安定してピツチを紡糸す
ることは依然困難を伴うものである。 以上述べた如く、従来知られている光学的異方
性相が100%に近い均質な光学的異方性ピツチ
は、いずれも軟化点が高く、安定した紡糸が困難
であり、一方、軟化点の低いピツチは、特殊な出
発原料から製造した特殊な組成構造を有するもの
以外は、不均質であり、同様に紡糸が困難であつ
て、この結果、品質の優れた炭素繊維を製造する
ことは難事である。 又、従来、一般に、光学的異方性ピツチを部分
的な化学構造又は平均分子量又はキノリン不溶分
(若しくはピリジン不溶分)含有量で規定してい
るが、これらの規定の方法では、高性能炭素繊維
その他の炭素材料を製造するために適した均質且
つ低軟化点の光学的異方性ピツチ組成物を特定す
ることができず、適確ではない。即ち、光学的異
方性ピツチと呼ばれる組成物は、極めて多種で複
雑な広範囲の化学構造、分子量の化合物の混合物
であり、単純に一部分の、又は全体の平均的な化
学構造の特徴のみで規定できるものではなく、又
数百から数万、場合によつてはコークスに近い分
子量まで含むような幅広い分子量の組成物を平均
分子量で規定してもピツチの品質を適確に特定す
ることができない。 本発明者等は、高性能炭素繊維を製造するため
に適した光学的異方性ピツチ組成物について種々
検討したところ、光学的異方性ピツチは、縮合多
環芳香族の積層構造の発達した分子配向性の良い
ピツチであるが、実際には種々のものが混在し、
そのうち、軟化点が低く、均質な炭素繊維の製造
に適したものは特定の化学構造と組成を有するこ
と、即ち、光学的異方性ピツチにおいて、前記し
たB成分及びC成分に加えてO成分即ちn―ヘプ
タン不溶の成分、及びA成分即ちn―ヘプタン不
溶且つベンゼン可溶の成分の組成、構造、分子量
が極めて重要であることを見出したのである。更
に詳しく言えば、O成分、A成分及び残余のベン
ゼン不溶成分であるキノリン可溶の成分(B成
分)とキノリン不溶の成分(C成分)が各々に、
特定量含有するピツチ組成物が完全な光学的異方
性ピツチとして存在し得ること及びその構成バラ
ンスを適切に調整することが高性能炭素材料を実
用的に製造するための光学的異方性ピツチ組成物
の必須の条件であることを見出し、本発明を完成
したものである。 本発明は上記の発見に基づくものであり、本発
明の主たる目的は、O成分、A成分、B成分及び
C成分の構成バランスを特定することによつて高
強度、高弾性率の炭素材、特に、炭素繊維を製造
するための光学的異方性相ピツチであつて、且
つ、低軟化点を有する光学的異方性炭素質ピツチ
を提供することである。 本発明の他の目的は、高強度、高弾性率の炭素
材、特に炭素繊維を製造するための光学的異方性
ピツチであつて、高配向性で均質な光学的異方性
炭素質ピツチを提供することである。 本発明の他の目的は、高強度、高弾性率の炭素
繊維を製造するために熱分解重縮合の顕著な温度
より十分低い温度で紡糸することができる紡糸性
の良好な光学的異方性炭素質ピツチを提供するこ
とである。 本発明について以下に更に詳しく説明する。 即ち、本発明は、必須成分としてO成分を約2
重量%〜約20重量%、A成分を約15重量%〜約45
重量%、B成分を約5重量%〜約55重量%、C成
分を約20重量%〜約70重量%含有し、光学的異方
性相の体積含有率が約90%以上であり、約320℃
以下の軟化点を有することを特徴とする炭素材
料、特に炭素繊維の製造用炭素質ピツチに関する
ものである。 本発明者等の知見によると、従来技術により熱
製造された光学的異方性ピツチにおいてはキノリ
ン不溶の成分(又はピリジン不溶の成分)のみが
主要成分であるか、又はベンゼン不溶の成分(B
成分及びC成分)までが特に重要な成分であつ
て、O成分、A成分の含有量が少ないために、又
はそれらの特性が不適性なために妥当でなく、更
に究明した結果前如の如く特定の特性を有するB
成分及びC成分に加えて特定の特性を有するO成
分及びA成分が特定量存在することが当該ピツチ
組成にとつて不可欠であることが明らかとなり、
前述の発明の完成をもたらしたのである。 本発明は、種々の光学的異方性ピツチを調製
し、溶剤分離によりこれら炭素質ピツチよりO成
分、A成分、B成分及びC成分を分別し、各成分
の個々の特性及び当該特性を有する各成分の含有
量とピツチ全体の物性、均質性、配向性等との関
係について詳しく検討した結果に基き完成したも
のであり、これは、各成分が従来技術では認めら
れなかつた範囲の特定量含有され、且つ、各成分
が特定の性状を有するものであることが重要であ
ることを見出したことに基因するものである。即
ち、高性能炭素繊維の製造に必要な高配向性、均
質性及び低軟化点を有し、低温で安定した溶融紡
糸の可能な光学的異方性ピツチの構成成分の性状
としてはC/H原子比、fa(芳香族構造に属する
炭素原子の数の全炭素原子の数に対する比率)、
数平均分子量、最高分子量(分子量分布を測定し
低分子量側から99重量%積算した点の分子量)及
び最低分子量(分子量分布を測定し高分子量側か
ら99重量%積算した点の分子量)が以下に述べる
如き範囲に特定されたものである。 O成分は、一般的には広範囲の特性のものがあ
るが、本発明においては、約1.3以上のC/H原
子比、約0.80以上のfa及び約1000以下の数平均分
子量及び約150以上の最低分子量を有するもので
あり、好ましいC/H原子比は約1.3〜1.6、faは
約0.80〜約0.95であり、数平均分子量は約250〜
約700、最低分子量は約150以上である。 又、A成分は、一般的には広範囲の特性のもの
があるが、本発明においては約1.4以上のC/H
原子比、約0.80以上のfa、約2000以下の数平均分
子量及び約10000以下の最高分子量を有するもの
であり、好ましいC/H原子比は約1.4〜約1.7、
faは約0.80〜約0.95、数平均分子量は約400〜約
1000、最高分子量は約5000以下である。 更に、各成分の好適な含有量は、O成分につい
て約2重量%〜約20重量%であり、A成分につい
て約15重量%〜約45重量%である。更に最適範囲
については、O成分は約5重量%〜約15重量%で
あり、A成分は約15重量%〜約35重量%である。 即ち、O成分のC/H原子比及びfaが前述の範
囲より小さい場合と含有量が前述の範囲より大き
い場合は、ピツチは全体として等方性の部分をか
なり含有する不均質なものとなりやすく、一方、
C/H原子比又はfaが前述の範囲より大きい場合
はO成分の化学構造が影響を受け、所定のピツチ
組成を維持することができず好ましくない。又、
平均分子量が700より大きいか又は含有量が前述
の範囲よりも小さい場合は、低軟化点のピツチを
得ることができない。又、A成分のC/H原子比
又はfaが前述の範囲より小さい場合、数平均分子
量が前述の範囲より小さいか又は含有量が前述範
囲を越える場合には、ピツチ全体は、等方性と異
方性部分の混合した不均質なピツチとなつてしま
うことが多い。又、C/H原子比又はfaが大きい
場合は、A成分の化学構造が変化し、所定のピツ
チ組成を維持することが困難となり、A成分の特
性を発揮することができない。数平均分子量又は
最高分子量が上述の範囲よりも大きい場合、又は
A成分の構成比率が上述の範囲よりも小さい場合
は、ピツチは均質な光学的異方性であるが低軟化
点とはならない。 本発明者等が更に検討したところ、前記O成分
及びA成分は光学的異方性ピツチ中において積層
構造中に取り込まれ、溶媒的又は可塑剤的な作用
をし、主にピツチの溶融性、流動性に関与し、そ
れ自体単独では積層構造を発現しにくく光学的異
方性を示さない成分であるが、それ自体単独では
溶融せず積層容易な成分であるベンゼン不溶のB
成分及びC成分を前記O成分及びA成分に対しそ
の構成成分が特定の範囲内の構成比率でバランス
よく含有され、更に、各構成成分の化学構造特性
分子量が特定の範囲内に存在するならば一層、優
れた均質で低軟化点の高性能炭素繊維を製造する
ために必要な光学的異方性ピツチが得られること
を見出した。 即ち、O成分を約2重量%〜約20重量%及びA
成分を約15重量%〜約45重量%を含有し、B成分
(ベンゼン不溶且つキノリン可溶の成分)を約5
重量%〜約55重量%及びC成分(ベンゼン不溶且
つキノリン不溶の成分)を約20重量%〜約70重量
%含有し、その光学的異方性相の含有率が体積で
約90%以上であり、軟化点が約320℃以下の光学
的異方性炭素質ピツチは、後述の如き一層安定し
た高性能の炭素繊維を提供することができる。 上記B成分及びC成分に関し、高性能炭素繊維
の製造に必要な高配向性、均質性及び低軟化点を
有し、低温で安定した溶融紡糸の可能な光学的異
方性ピツチの構成成分の性状としてC/H原子
比、fa、数平均分子量、最高分子量(分子量分布
を測定し低分子量側から99重量%積算した点の分
子量)が以下に述べる如き範囲に特定されたもの
である。 即ち、B成分(ベンゼン不溶且つキノリン可溶
の成分)は、一般的には非常に広範囲の特性のも
のがあるが、本発明においては、約1.5以上の
C/H原子比、約0.80以上のfa、約2000以下の数
平均分子量及び約10000以下の最高分子量を有す
るものであり、好ましいC/H原子比は約1.5〜
約1.9、faは約0.80〜約0.95及び数平均分子量は約
800〜約2000であり、C成分(ベンゼン不溶キノ
リン不溶分)は、これも一般的には非常に広範囲
の特性のものがあるが本発明においては、約2.3
以下のC/H原子比、約0.85以上のfa、約3000以
下の数平均分子量及び約30000以下の最高分子量
を有するものであり、好ましいC/H原子比は、
約1.8〜約2.3であり、faは約0.85〜約0.95であ
り、数平均分子量は約1500〜約3000のものであ
る。 両成分の含有量については、B成分は約5重量
%〜約55重量%であり、好ましい含有量は約5重
量%〜約40重量%である。C成分の含有量は約20
重量%〜約70重量%であり、好ましい含有量は約
25重量%〜約65重量%である。 本発明の特徴とするところは、前述の如く、炭
素質ピツチの構成成分たる4成分が特定の特性値
を有し、特定の組成比で含有することである。以
下、本発明の詳細について便宜上まとめて説明す
る。 本明細書で使用される「光学的異方性相」とい
う語句の意味は、必ずしも学界又は種々の技術文
献において統一して用いられているとは言い難い
ので、本明細書では、「光学的異方性相」とは、
ピツチ構成成分の一つであり、常温近くで固化し
たピツチ塊の断面を研摩し、反射型偏光顕微鏡で
直交ニコル下で観察したとき、試料又は直交ニコ
ルを回転して光輝が認められる。即ち光学的異方
性である部分を意味し、これに対し、光輝が認め
られない、即ち光学的等方性相である部分は光学
的等方性と呼ぶ。 光学的異方性相は、光学的等方性相に比べて多
環芳香族の縮合環の平面性がより発達した化学構
造の分子が主成分で、平面を積層したかたちで凝
集、会合しており、溶融温度では一種の液晶状態
であると考えられる。従つてこれを細い口金から
押し出して紡糸するときは分子の平面が繊維軸の
方向に平行に近い配列をするために、この光学的
異方性ピツチから作つた炭素繊維は高弾性を示す
ことになる。又、光学的異方性相の定量は偏光顕
微鏡直交ニコル下で観察、写真撮影して光学的異
方性部分の占める面積率を測定して行うので、こ
れは実質的に体積%を表わす。 ピツチの均質性に関して、本発明では上述の光
学的異方性相の測定結果が体積含有率90%〜100
%の間にあり、反射型顕微鏡観察でピツチ断面の
固形粒子(粒径1μm以上)を実質上検出せず、
溶融紡糸温度で揮発物による発泡が実質上ないも
のが、実際の溶融紡糸において良好な均質性を示
すのでこのようなものを実質上均質な光学的異方
性ピツチと呼ぶ。 光学的等方性相を10%以上含有する実質的に不
均質な光学的異方性ピツチの場合、高粘度の光学
的異方性相と低粘度の光学的等方性相との明らか
な二相の混合物であるため粘度の著しく異なるピ
ツチ混合物を紡糸することになり、糸切れ頻度が
多く、高速紡糸がし難く、十分細い繊維太さのも
のが得られず、又、繊維太さにもバラツキがあ
り、結果として高性能の炭素繊維が得られない。
又、溶融紡糸のとき、ピツチ中に不融性の固体微
粒子や低分子量の揮発性物質を含有すると、紡糸
性が阻害されることはいうまでもなく、紡糸した
ピツチ繊維に気泡や固形異物を含有し欠陥の原因
となる。 本発明でいうピツチの軟化点とは、ピツチが固
体から液体の間を転移する温度をいうが、差動走
査型熱量計を用いてピツチの融解又は凝固する潜
熱の吸放出のピーク温度で測定する。この温度は
ピツチ試料について他のリングアンドボール法、
微量融点法などで測定したものと±10℃の範囲で
一致する。本発明でいう低軟化点とは、230℃〜
320℃の範囲の軟化点を意味する。軟化点はピツ
チの溶融紡糸温度と密接な関係があり、ピツチに
よる違いはあるが通常の紡糸法で紡糸する場合、
一般に軟化点より60℃〜100℃高い温度が紡糸に
適した流動性を示す温度である。従つて、320℃
より高い軟化点の場合、熱分解重縮合が起こる
380℃より高い温度となるため、分解ガスの発生
及び不融物の生成により紡糸性が阻害されること
はいうまでもなく、紡糸したピツチ繊維に気泡や
固形異物を含有し欠陥の原因となる。一方230℃
以下の低い軟化点の場合、不融化処理工程におい
て低温で長時間処理が必要になるとか複雑で高価
な処理が必要となり好ましくない。 本発明でいうピツチ構成成分であるO成分、A
成分、B成分、C成分とは、粉末ピツチを1μm
の平均孔径を有する円筒フイルターに入れ、ソツ
クスレー抽出器を用いてn―ヘプタンで20時間熱
抽出して得られるn―ヘプタン可溶の成分をO成
分、ひきつづきベンゼンで20時間熱抽出して得ら
れるn―ヘプタン不溶でベンゼン可溶の成分をA
成分、ベンゼン不溶成分をキノリンを溶剤として
遠心分離法(JIS K―2425)により分離して得ら
れるベンゼン不溶でキノリン可溶の成分いわゆる
β―レジンをB成分、キノリン不溶成分をC成分
と呼ぶ。このような構成成分の分別は、例えば石
油学界誌20巻(1)、第45頁(1977年)に記載の方法
により行なうことができる。或る出発原料から製
造したピツチ構成成分であるO成分、A成分、B
成分、C成分ではピツチの特性値であるC/H原
子比、fa、数平均分子量、最低及び最高分子量は
いずれもO成分<A成分<B成分<C成分の順に
大きくなるのが一般的である。 本発明者等の研究によれば、O成分は、ピツチ
構成成分中で最も分子の平面構造性が小さく、即
ち、縮合芳香族環が小さく側鎖の数が多く長さが
長いものであり、又分子の巨大さ(平均分子量、
最高分子量)の小さい成分で、それ自体単独では
積層構造を発現し難く、光学的異方性を示さない
が、A成分、その他の重質部分(B成分、C成
分)と相溶し溶媒的に作用する性質を有し、高配
向性を損なわないで、主にピツチの流動性及び溶
融性に関与する成分である。 A成分は、O成分とB成分の間の分子の平面構
造性と分子巨大さを有する成分であつてO成分と
同じくそれ自体単独では積層構造を発現し難く、
光学的異方性を示さないが、O成分及び重質部分
と相溶し、重質部分に対して溶媒的に作用する性
質を有し、高配向性を損なわないで重質部分と共
存して配向性を表わす特性を有するが、主にピツ
チの可塑性及び溶融性に関与する成分である。 B成分は、A成分とC成分の間の分子の平面構
造性と分子の巨大さを有する成分で、それ自体単
独では縮合多環芳香族の積層構造の形成や光学的
異方性は小さく軟化点も400℃以上にあるので、
それ自体単独では高温に加熱しても溶融しないで
炭化するが、O成分及びA成分と相溶することに
より、溶融性をもちそれが更にC成分に対して溶
媒的に作用する性質を有しC成分と共存して主に
ピツチの高配向性に関与する成分である。 C成分は、ピツチ構成成分中で最も大きい分子
平面構造性と分子量の巨大さを有する成分で、光
学的異方性ピツチの骨格となる縮合多環芳香族の
積層構造を形成し光学的異方性を発現し易いが、
B成分と同じく軟化点が400℃以上にあるのでそ
れ自体単独では高温で加熱しても溶融しないで炭
化するが、O成分、A成分及びB成分と相溶する
ことより溶融性可塑性をもち、ピツチの高配向性
に関与する成分である。 このように光学的異方性ピツチは、他の成分と
相溶し、主にピツチの配向性に関与する成分と他
の成分に対して溶媒的に作用し、配向性を損なわ
ずに主にピツチの溶融性に関与する成分から成り
立つており、いずれの成分も重要であり、とりわ
け高性能炭素繊維製造用の高配向性で、均質な、
低い軟化点を有する光学的異方性ピツチにおいて
は、構成成分の構造特性とそのような特性を有す
る構成成分の含有量のバランスが重要である。即
ち、あまりにもB成分とC成分が多量に含有され
相対的にA成分とO成分の含有が少ないピツチは
確かに分子配向性が発現し、全体が光学的異方性
となつても、軟化点が高く紡糸が困難となり、極
端な場合は全く溶融しない。他方、O成分、A成
分を多く、相対的にC成分、B成分を少なくする
と、軟化点が低くなり、350℃付近で紡糸を行な
うために十分な液体流動性を得ることは容易であ
るが、分子配向性の優れたピツチ部分、即ち光学
的異方性ピツチ部分と分子配向性の小さい等方性
ピツチ部分とが二層に分れた不均質なピツチとな
り、これも前述の如く紡糸が困難である。 このように、従来から光学的異方性ピツチの主
要構成成分として認められていたC成分の他に、
B成分、特に従来ほとんど認識されていなかつた
O成分とA成分の存在が、高性能炭素繊維用ピツ
チの構成成分としては重要であり、その組成範囲
を規定していることが本発明の大きな特徴のひと
つである。 又、みかけ上構成成分の比率が同じであつても
それぞれの成分の構造特性によつてピツチの特性
が影響されることはいうまでもなく、例えばあま
りにも分子量の大きいか又は分子平面構造性の劣
るB成分やC成分を含有する場合は、極めて軟化
点の高いピツチとなるし、他方、あまりにも分子
量の小さいO成分を含有するときは、ピツチの軟
化点は低くなつても、全体の均質性が失なわれ
る。 次に、高性能炭素繊維を製造するために有効な
ピツチの分子配向性、均質性又は相溶性及び軟化
点とピツチの構成成分の特性値との関係を詳しく
説明する。いうまでもなく、ピツチの如き複雑な
混合物については厳密には個々の構成成分分子の
構造は、検出も、考察もできないので構造特性に
ついては前述のように分別した構成成分それぞれ
の平均分子量、分子量分布、fa、C/H原子比が
最も適切な指標となる。 先ず、ピツチの分子配向性即ち光学的異方性の
発現傾向は、ピツチ構成成分の分子の平面構造性
及びある温度での液体流動性と相関がある。即
ち、ピツチ分子の平面構造部分である縮合多環芳
香族構造がより発達し、分子量が適度の大きさで
あるとき、平面状分子が相互に積層会合しやす
く、同時に溶融状態で分子の再配列が十分よく行
なわれ、光学的異方性ピツチが得られる。 ここで、ピツチ分子の平面構造性は、多環芳香
族の縮合環の大きさ、ナフテン環含有の数、側鎖
の数と長さにより決まるから、分子の平面構造性
は、C/H原子比、及び、芳香族構造炭素分率fa
(芳香族構造に属する炭素原子の前炭素原子に対
する比率)でほぼ表わすことができる。即ち、縮
合多環芳香族構造部分が大きいほど、又その中の
ナフテン環構造が少ないほど、又側鎖の数と長さ
が小さいほど、ピツチ分子の平面構造性は良く、
又一般にその傾向に従つてC/H原子比は大き
く、faも大きくなる。分子の平面構造性を大きく
する観点だけからいえば分子量は大きくてもよ
い。又、ピツチのある温度での液体流動性は、分
子量の相互運動の自由さによつて決ると考えられ
るから、それは、ピツチ分子の巨大さ、即ち数平
均分子量と分子量分布(特に最高分子量の大き
さ)と、分子の平面構造性とを指標として判断す
ることができる。即ち、数平均分子量が小さく、
最高分子量も十分小さく、分子の平面構造性、従
つてC/H原子比やfaが適度に大きいことが、ピ
ツチの液体流動性が大きいために必要である。 次に、光学的異方性ピツチの均質性は、ピツチ
構成成分の相溶性ともいえるが、それは、ピツチ
構成成分分子の化学構造の類似性及びある温度で
の液体流動性と相関があると推定される。即ち、
ピツチ構成成分分子が相互に化学構造形態及び分
子量分布の点であまりかけ離れたものでないとき
相互に親和性、溶解性があり、それぞれがある温
度で十分な液体流動性を有するとき、相互に流動
混溶して熱力学的に安定的に均質なピツチとな
る。従つて、光学的異方性ピツチの均質性は、構
成成分それぞれのC/H原子比、faが十分大きく
極度に小さい分子量のものを含まず、数平均分子
量、最高分子量が十分小さく、且つ、それらが相
互にあまりかけ離れていないことによつて実現さ
れると考えられる。 次に、光学的異方性ピツチの軟化点はピツチが
固体から液体の間を転移する温度を意味すること
から、これは、前述のある温度のピツチの液体流
動性と良い相関がある。従つて、光学的異方性ピ
ツチの軟化点は、構成成分それぞれのC/H原子
比、faが適度に大きく、平均分子量が十分小さ
く、特に最高分子量が小さいことによつて低くな
るものである。 以上を総合すると、分子配向性の優れた、均質
な、低軟化点の、光学的異方性ピツチを得るため
には、C/H原子比とfaが十分大きく、且つ、そ
れらが構成成分間で類似していて、平均分子量は
平面分子の配向性を発現するよう十分に大きい
が、低軟化点のためには、それがあまり大きすぎ
ないこと、特に最高分子量があまり大きなものを
含まないこと、又、ピツチの均質性の観点から、
極度に低分子量の成分を含まないことも要件であ
ることが理解されよう。このようなピツチは、大
量安価に入手できる石油や石炭工業から産出され
る重質油やタール物質を出発原料にする場合は、
出発原料の分子構造が多様であり、分子量分布も
広いために完全に、理想的に化学構造と分子量の
分布を狭く制御することはできないが、本発明に
よれば完全に理想的に狭い化学構造と分子量の制
御をせずとも、ピツチの構成成分それぞれ化学構
造特性と分子量が、ある好ましい範囲内に存在
し、且つそのような構成成分がある好ましい範囲
内の構成比率でバランスよく含有されてピツチを
構成するとき、十分満足される分子配向性、均質
性及び軟化点の光学的異方性ピツチが得られる。 次に、このようなピツチ構成成分の化学構造特
性と分子量の好ましい範囲、及び構成成分の構成
比率の好ましい範囲について詳しく具体的に説明
する。 先ず、O成分は、まだ分子量もあまり大きくは
なく、芳香族構造も、他の成分ほど十分に発達し
ていない、一般にC/H原子比が約1.6以下、fa
が約0.95以下、数平均分子量が約1000以下の油状
物質であるが、光学的異方性ピツチの中に含有さ
れて、その分子配向性を損なわず、全成分に対し
て溶媒ないし可塑剤的役割をする重要な成分であ
る。 A成分は、構造特性及び分子量としては、一般
にO成分とB成分の中間に位置するものであり、
O成分よりもやや分子配向性への寄与が大きいと
推定され、且つO成分と共に相溶して、B成分、
C成分に対する溶剤又は可塑剤的な役割をすると
考えられ、これも、低軟化点の均質な光学的異方
性ピツチの形成に不可欠な構成成分である。 B成分は、構造特性値及び分子量が一般にA成
分とC成分の中間に位置するものであり、O成
分、A成分に比べれば縮合多環芳香族の平面構造
がかなり発達し、その積層会合によつて分子配向
を作りやすい成分であり、C成分と相溶して、光
学的異方性、即ち分子配向の骨格を形成する成分
であり、又同時にO成分、A成分とも相溶して、
可塑剤的作用も果たしこのB成分がさらに重縮合
が進むとC成分に変化すると推定されている。 本発明によれば、B成分の特性として好ましい
ものは、C/H原子比が約1.5〜約1.9、faが約
0.80〜約0.95で、後述の水素添加反応処理によつ
て、クロロホルムに100%可溶化し数平均分量が
約800〜約2000、最高分子量が約10000以下であ
り、又、B成分の構成比率として好ましい範囲は
主としてC成分の含有率とのかね合いで決まり、
ピツチ全体の約5重量%〜約40重量%である。即
ち、この成分においてC/H原子比又はfaが上述
の範囲より小さい場合、あるいはこの成分の構成
比率が上述範囲より小さい場合は、ピツチの分子
配向性が不十分となつて均質な光学的異方性ピツ
チとはならないことが多く、この場合、共存する
C成分の構成比率が十分に大きいときは、光学的
異方性の均質ピツチとなるが、軟化点が高い。
又、C/H原子比又はfaが上述の範囲より大きい
場合は、B成分としての化学構造を維持すること
ができずピツチ組成に変化をきたすことになる。
数平均分子量或いは最高分子量が上述の範囲より
大きい場合、又は、B成分の構成比率が上述の範
囲より大きい場合は、均質な光学的異方性ピツチ
となるとしても、軟化点が高くなりすぎて、紡糸
が困難であり、これは本発明の目的とするピツチ
ではない。 C成分は、ピツチ構成成分中で最も分子平面構
造性が発達し、分子量の大きい成分であり、容易
にその平面分子が積層状に会合し、光学的異方性
を発現するので、ピツチ中にあつて、他の成分と
相溶して、光学的異方性を示す構造の骨格になる
役割を果すものである。 本発明によれば、C成分の特性として好ましい
ものはC/H原子比が約1.8以上で、faが約0.85
以上であり、後述の水素添加反応処理によつてク
ロロホルムに実質的に全て可溶化され、数平均分
量が約1500〜約3000で、最高分子量が約30000以
下であり、又C成分の構成比率として好ましい範
囲は、主としてB成分とのかね合いでピツチ全体
の約25重量%〜約65重量%である。即ち、C成分
のC/H原子、或いはfaが上述の範囲よりも小さ
い場合、又は、構成比率が上述の範囲より小さい
場合は、ピツチ全体の分子配向性が不十分となつ
て、等方性部分をかなり含む不均質ピツチとなる
か、他の成分とのバランスによつては軟化点が高
いものとなる。C/H原子比あるいはfaが上述の
範囲より大きい場合は、C成分の化学構造に影響
を与え、その結果、数平均分子量及び最高分子量
を増加させ、ピツチの軟化点を上昇させるという
難点が生ずる。又、後述の水素添加反応によつて
もクロロホルムに完全には可溶化されないような
C成分もあるが、このようなものは、分子量の測
定が不可能なほど非常に高分子量の縮合多環芳香
族化合物を含むか、又はカーボン等の不融物を含
むので不適当である。更に、この水素添加反応を
加えてクロロホルムに可溶化した後、測定したC
成分の数平均分子量又は最高分子量が上述の範囲
より大きいような場合と、C成分の構成比率が上
述の範囲を越える場合は、ピツチ全体が光学的異
方性となるとしても軟化点が高く、従つて高い紡
糸温度を要するか、紡糸が不可能なことが多い。 本発明の中でいうfa(芳香族構造炭素分率;芳
香族構造に属する炭素原子の数の全炭素原子の数
に対する比率)は、ピツチ成分試料の炭素と水素
の含有分析値と、赤外線吸収分光分析により加藤
らの方法(燃料協会誌55 244、(1976))に従つ
て、次式によつて計算されたものを用いる。 H/C:水素と炭素の原子数比 D3030/D2920:3030cm-1の吸収度と2920cm-1の
吸収度の比 又、本発明でいう数平均分子量は、クロロホル
ムを溶媒として一般的な手法である蒸気圧平衡法
を用いて測定する。又、分子量分布は、ピツチ試
料を、クロロホルムを溶媒としてゲルパーミエー
シヨンクロマトグラフイで10ケの分子量区分に分
取し、分取したそれぞれの区分の数平均分子量を
前述の蒸気圧平衡法で測定し、各区分の溶出容量
と数平均分子量の関係で、このゲルパーミエーシ
ヨンクロマトグラフイーの検量線を作成し、これ
を用いて各ピツチの各構成成分の分子量分布を測
定した。この場合、溶出液の屈折率の変化がその
重量濃度の変化にほぼ比例する。 B成分とC成分はクロロホルム不溶分を含むの
で、そのままでは上述の分子量測定が不可能であ
るが、これらも炭素・炭素結合を破壊しないで、
芳香族構造の一部に水素を付加するような温和な
水素添加反応を加えると分子の炭素骨格はほとん
ど変化せず、ベンゼンやクロロホルムなどに溶解
する分子構造となることが知られている。 本発明においては、B成分とC成分は、予め金
属リチウムとエチレンジアミンを用いる温和な水
添反応によつてクロロホルム可溶化処理を行ない
(この方法は、文献:Fuel41、67〜69(1962)に
従つた)、その後、上述の分子量測定方法を用い
て数平均分子量、最高分子量、最低分子量を求め
る。 本発明の炭素質ピツチは、如何なる方法で製造
したものでも差し支えないが、特に、次に述べる
方法により製造される。即ち、重質炭化水素油、
タール又はピツチを出発原料として、その熱分解
重縮合により部分的に光学的異方性相を生成せし
めた後、光学的異方性相をそれ以上分子量を増大
させることの少ない温度で沈積せしめて分離し、
光学的異方性相が濃縮されたピツチを得て、その
後これを短時間熱処理して光学的異方性相を90%
以上含有するピツチを製造する方法が好適であ
る。 即ち、出発原料として、いわゆる重質炭化水素
油、タール又はピツチを使用し、これを約380℃
以上の温度、好ましくは400℃〜440℃で熱分解重
縮合反応に供し、これにより重縮合物中の光学的
異方性相が20%〜80%、好ましくは30%〜60%生
成したとき、当該重縮合物を約400℃以下、好ま
しくは360℃〜380℃に保持しつつ5分間〜1時間
程度静置し、又は極めてゆつくり撹拌しつつ下層
に密度の大きい光学的異方性相ピツチ部分を濃度
高く沈積せしめ、しかる後、光学的異方性相の濃
度の大きい下層を光学的異方性相の濃度の小さい
上層とおよそ分離して抜き出し、分離された下層
の光学的異方性相含有率が70%〜90%であるピツ
チを、次に約380℃以上、好ましくは390℃〜440
℃で更に短時間熱処理し、光学的異方性相含有率
が90%以上の所望ピツチとする方法が、本発明の
炭素質ピツチを得るためには好適である。 又、本発明による光学的異方性ピツチは、上述
の如きピツチ構成成分が各々特定の特性値を有
し、且つ、当該構成成分が各々特定の割合で含有
することを特徴とするものであるから、製造法の
如何により、製造されたピツチの構成成分の組成
及び特性値が、一連の工程の後、本発明の範囲内
に含まれなくとも、別途の製法又は工程条件で製
造した所望の構成成分の組成と特性値を有するピ
ツチを複数種、所望の割合で混合することによつ
て、本発明の範囲内のピツチ組成及び特性値を満
たし所望の物性を有する本発明の光学的異方性ピ
ツチを製造することができる。 例えば、出発原料の重質炭化水素油、タール又
はピツチを380℃以上、好ましくは410℃〜440℃
の温度で比較的長時間にわたり熱分解重縮合し、
C成分とB成分の多い、O成分、A成分の少ない
従つて軟化点の高い光学的異方性ピツチを得て、
他方上述の出発原料を使用し、上述の温度で比較
的短時間熱分解重縮合せしめたC成分、B成分の
少ない、A成分、O成分の多い等方性ピツチを得
て、この両者を適切な混合比となるように混合す
ることによつて、本発明の光学的異方性炭素質ピ
ツチを得ることができる。又、出発原料を厳選す
れば、380℃以上、好ましくは410℃〜440℃の温
度の一段の熱分解重縮合反応だけで本発明の光学
的異方性炭素質ピツチを作ることもできる。又、
別の方法として、重質炭化水素油、タール又はピ
ツチを熱分解重縮合して製造した、又は市販され
ているピツチをn―ヘプタン、又はトルエン、ベ
ンゼン等の溶剤で抽出して可溶部分と不溶部分に
分離し、O,A,B,C成分の組成が既知でしか
もそれらが濃縮されたピツチ素材を製造してお
き、これを所望の混合比に混合して、本発明の光
学的異方性ピツチを製造することもできる。 次に、本発明の光学的異方性ピツチを溶融紡糸
して得られたピツチ繊維及び紡糸方法について説
明する。紡糸方法は、従来、使用されている方法
を採用することができ、例えば、下方に直径0.1
mm〜0.5mmの紡糸口金を有する金属製紡糸容器に
ピツチを張り込み、不活性ガス雰囲気下で、280
℃〜370℃の間の一定温度にピツチを保持して溶
融状態に保つて、不活性ガスの圧力を数100mmH
gに上げると、口金より溶融ピツチが押出され流
下するので、その流下部の温度、雰囲気を制御し
つつ、流下したピツチ繊維を高速で回転するボビ
ンに巻取るか又は集束させて、気流で引取りつつ
下方の集積槽の中へ集積する。この際、紡糸容器
へのピツチの供給を、予め溶融したピツチをギヤ
ポンプなどで加圧供給することにより行なうと連
続的に紡糸することが可能である。更に上述の方
法で、口金の近傍で、一定に温度制御された高速
で下降するガスでピツチ繊維を延糸しつつ引取
り、下方のベルトコンベア上に長繊維又は短繊
維、或いは相互に交絡したマツト状のピツチ繊維
不織布を作る方法も用いることができる。又、周
壁に紡糸口金を有する円筒状の紡糸容器を高速で
回転させ、これに溶融ピツチを連続的に供給し、
円筒紡糸器の周壁より遠心力で押し出され、回転
の作用で延糸されるピツチ繊維を集積するような
紡糸方法も用いられる。いずれの方法において
も、本発明のピツチを用いるときは溶融状態であ
り紡糸をするのに好適な温度(紡糸機中での最高
温度)が280℃〜370℃の範囲と、従来よりも低い
ことが特徴であり、従つて紡糸工程での熱分解や
熱重合が極めて少なく、その結果紡糸後のピツチ
繊維は、紡糸前のピツチ組成物とほとんど同じ組
成物であることが特徴である。 即ち、このようにして得られた炭素質ピツチ繊
維は、その繊維軸方向の断面を研摩して偏光顕微
鏡で観察すると、全面が光学的異方性であり、し
かも、繊維軸方向へ配向していること及び繊維軸
と直角方向の断面をみると、ほとんど等方性ない
しは極めて微細な異方性部分がモザイク状にラン
ダムに集合していることが認められる。この現象
は、恐らくは、本発明のピツチがO成分、A成分
という流動性の大きな成分をバランスよく含有す
ることによつて紡糸過程で繊維軸方向にはよく分
子配向し、繊維軸に直角方向には比較的自由に柔
軟に分子配向しうることが起因していると思われ
る。又、当該ピツチ繊維を粉砕して有機溶剤を使
用してO成分、A成分、B成分及びC成分に分別
して分析すると、紡糸前のピツチの組成及び特性
とほぼ同一の値が得られ、前述の本発明の範囲内
に存するものである。 従来の光学的異方性ピツチの場合、少なくとも
紡糸機中のある部分で380℃〜430℃といつた高温
で溶融状態を保ち紡糸を行なうことが実体であ
り、この場合熱分解や熱重合が顕著に起こること
から紡糸後のピツチ繊維の組成構造は、紡糸前の
ピツチより炭化の進んだものとなることが多い。 ピツチ繊維の場合は、紡糸前のピツチと物質組
成としてはほとんど変らないので、もし紡糸工程
で何らかの故障があつてピツチ繊維として品質管
理限界以下のものが製造された場合、これを再溶
融して用いることができるという利点がある。 以上の説明により明らかなように光学的異方性
ピツチを適確に規定するためには、ピツチの構成
成分の特性及び当該構成成分の含有量が重要であ
り、高性能炭素繊維製造用の高配向性で均質な低
軟化点を有するピツチとしてはピツチ構成成分、
特に、O成分、A成分、B成分及びC成分の特性
とその含有量がいずれも上記の範囲内に存するこ
とが必要である。 このような特性の構成成分と組成を有する光学
的異方性ピツチは、光学的異方性相を90%〜100
%含有する実質上均質なピツチであるにも拘ら
ず、極めて低い軟化点(320℃以下)を有するか
ら、十分に低い溶融紡糸温度(380℃以下、普通
実施態様としては300℃〜360℃)で紡糸すること
ができる。従つて、次の利点が得られる。即ち、
熱分解重縮合の顕著な温度より十分低い温度で
紡糸することができ、又、均質なピツチであるか
らピツチの紡糸性(糸切れ、糸の細さ、糸径の均
一さ)が良好であり、紡糸工程の生産性が向上す
る。更に、紡糸中のピツチの変質が生じないた
め、製品炭素繊維の品質が安定であること、紡
糸中の分解ガスの発生及び不融物の発生が極めて
少ないから、紡糸されたピツチ繊維の欠陥(気泡
又は固形異物粒子の含有)が少なく、製造した炭
素繊維の強度が大きくなること、本発明の炭素
質ピツチは、実質上、ほとんど全体が分子配向性
の優れた液晶状であるから、これを紡糸して通常
の方法で不融化処理を行ない製造した炭素繊維は
繊維軸方向の黒鉛構造の配向性がよく発達し、弾
性率が大きいこと、及び製造した炭素繊維は、
繊維軸に直角方向の断面の構造が緻密で且つフイ
ブリルの断面方向の配向が小さく、同心円状とか
放射状にならないために繊維軸方向に割れ目のな
いものとなること等の予期する以上の効果を奏す
るものである。 実施例 1 石油の接触分解で副生するタール状物質を常圧
に換算して450℃まで減圧蒸留して得た炭素含有
率90.0wt%、水素含有率7.8wt%、比重1.07、キ
ノリン不溶の成分0%のタールを出発原料とし
た。原料1000grを内容積1.45のステンレス製
反応装置に張込み、窒素ガス気流下で十分撹拌し
ながら415℃に保つて2.5時間熱分解重縮合反応に
供し、残留ピツチとして軟化点187℃、比重
1.32、キノリン不溶の成分7.9wt%で、偏光顕微
鏡で観察すると光学的等方性の母相中に直径が
100μm以下の真球状の光学的異方性球体を約40
%含むピツチが、原料に対して17.0wt%の収率で
得られた。次にこのピツチ100grを約300mlの円
筒型ガラス製容器にとり、窒素雰囲気下360℃で
30分間、撹拌せずに保持し、次にこれを放冷し、
ガラス製容器を破壊してピツチをとり出した。こ
のピツチは肉眼でも上層と下層が分離しているこ
とが、その光沢のちがいから認められ、上層のピ
ツチ塊と下層のピツチ塊を剥離して分別すること
ができ、下層ピツチは約32gr得られた。偏光顕
微鏡で観察すると上層ピツチは直径が50μm以下
の光学的異方性球を約15%含む大部分が光学的等
方性のピツチであり、下層ピツチは、50μm程度
の直径の光学的等方性の球を約20%含む大部分が
光学的異方性のピツチ、即ち約80%の光学的異方
性の含有率を示すピツチであつた。次にこの下層
ピツチを50mlのガラス製容器に入れ撹拌しつつ
400℃で30分間熱処理して約30grのピツチを得
た。このピツチの軟化点を測定すると、257℃で
ありその光学的異方性相の含有率は約95%以上で
あつた。次にこのピツチのn―ヘプタン可溶の成
分(O成分)、n―ヘプタン不溶でベンゼン可溶
の成分(A成分)、ベンゼン不溶でキノリン可溶
の成分(B成分)及びキノリン不溶の成分(C成
分)を定量すると、O成分が10.1wt%、A成分が
29.6wt%、B成分が24.2wt%、C成分が36.1wt%
含有されることが認められた。 次に、このピツチを、直径0.5mmのノズルを有
する紡糸器に充填し、340℃で溶融し、100mmHg
の窒素圧で押出し、高速で回転するボビンに巻取
つて紡糸したところ500m/分の引取り速度では
ほとんど糸切れなく、繊維径8μm〜12μmのピ
ツチ繊維が得られた。このピツチ繊維の一部を酸
素雰囲気中230℃で1時間保持し、次に窒素ガス
中で30℃/分の昇温速度で1500℃迄加熱して、す
ぐ放冷し、炭素繊維を得たところこの炭素繊維の
引張り強度は約3GPa、引張り弾性率は約2.2×
102GPaを示した。 又、ピツチ繊維の残部より1grをとり、n―
ヘプタン可溶の成分(O成分)、n―ヘプタン不
溶でベンゼン可溶の成分(A成分)、ベンゼン不
溶でキノリン可溶の成分(B成分)及びキノリン
不溶の成分(C成分)を定量したところ、O成分
は8.9wt%、A成分は29.8wt%、B成分は24.8wt
%、C成分は36.5wt%であつた。 比較例 1 実施例1と同じタールを出発原料として、その
1000grを内容積1.45のステンレス製反応装置
に張り込み、窒素ガス気流下で十分撹拌しながら
415℃に保つて5時間、熱分解重縮合反応に供
し、残留ピツチとして軟化点312℃、比重1.36、
キノリン不溶の成分60%のピツチを110gr得
た。このピツチを偏光顕微鏡で観察すると直径が
約50μm以下の光学的等方性の球体をところどこ
ろに含む、ほとんど全体が光学的異方性のピツ
チ、即ち光学的異方性相が約95%以上のピツチで
あつた。 このピツチを実施例1と同じ紡糸器で紡糸する
と380℃以下の温度では非常に紡糸が困難であ
り、390℃〜410℃で一応紡糸が可能であつたが、
紡糸口付近から白煙を生じやすく、又300m/sec
の引取り速度でも1分間に1回以上の糸切れを生
じ、又繊維径は15μm〜18μmとなつた。ここで
得られたピツチ繊維の一部を実施例1と同じ方法
を用いて、不融化、次いで炭化し、炭素繊維とし
てその引張り強度、引張り弾性率を測定したとこ
ろ前者は約1.2GPa、後者は約2×102GPaであつ
た。このピツチのn―ヘプタン可溶の成分(O成
分)、n―ヘプタン不溶でベンゼン可溶の成分
(A成分)、ベンゼン不溶でキノリン不溶の成分
(B成分)及びキノリン不溶の成分(C成分)を
定量すると、O成分が1.3wt%、A成分が14.2wt
%、B成分が29.3wt%、C成分が55.2wt%であつ
た。又、ピツチ繊維のO成分、A成分、B成分及
びC成分の含有量は各々0.9wt%、11.8wt%、
29.3wt%及び58.0wt%であつた。 実施例 2 石油の接触分解で副生するタール状物質も常圧
に換算して450℃まで減圧蒸留して得た炭素含有
率89.4wt%、水素含有率8.9wt%、比重1.06、キ
ノリン不溶の成分0%の常温で粘稠なタールを出
発原料とした。原料1000grを内容積1.45のス
テンレス製反応装置に張込み、窒声ガス気流下
で、十分撹拌しながら、440℃に保つて1時間熱
分解重縮合反応に供し、残留ピツチとして、軟化
点220℃、比重1.33、キノリン不溶の成分(C成
分)14wt%で、偏光顕微鏡で観察すると、光学
的等方性の母相中に、直径が200μm以下の真球
状の光学的異方性球体を約60%含むピツチが、原
料に対して22wt%の収率で得られた。次にこの
ピツチを下部に抜き出し用バルブを備えた内径4
cm、長さ70cmの円筒形容器にとり、窒素雰囲気下
で毎分15回転で撹拌しつつ、380℃で30分間保持
した後、窒素加圧下100mmHgで容器の下部バル
ブを開き、やや粘稠な下層のピツチを静かに流下
させ、窒素ガスを流通してある容器に捕集した。
このようにして流下するピツチの粘度が顕著に低
下するまで抜き取つたピツチを下層ピツチと呼
び、その収率は張込量に対し約38wt%であつ
た。更に容器に残つた上層のピツチを流出させ、
別に捕集したピツチを上層ピツチと呼び、その収
率は、張込量に対して約61wt%であつた。上層
ピツチは、主として直径が20μm以下の真球状の
光学的異方性相小球体を約20%含む大部分は光学
的等方性相のピツチであり、軟化点195℃、比重
1.31、C成分4wt%、B成分約38wt%、A成分約
36wt%、O成分約22wt%のピツチであつた。一
方、下層ピツチは、等方性相を15%〜20%包含す
る大部分は大きな流れ模様をもつた光学的異方性
相から成り、その軟化点は252℃、比重1.35、C
成分約21wt%、B成分約37wt%、A成分約33wt
%、O成分約9wt%のピツチであつた。次に、こ
の下層ピツチを更に250mlの反応容器中で窒素雰
囲気下で十分撹拌しつつ390℃で約30分間熱処理
して得られたピツチを試料2、約50分間熱処理し
て得られたピツチを試料1とすると、試料1は偏
光顕微鏡の観察によつて、全て光学的異方性相で
あり、約260℃の軟化点を有し、試料2は又約5
%の光学的等方性相を微小球状に包含する大部分
が光学的等方性相のピツチで、軟化点は257℃で
あつた。次にこれら試料1と2を溶剤分離分析に
よつてO成分、A成分、B成分、C成分に分離し
その組成比と、各成分のC/H原子比、fa、数平
均分子量、最低分子量及び最高分子量を測定し
た。その結果を第1表に示した。 又、試料1及び2のピツチを、直径0.5mmのノ
ズルを有する紡糸器に充填し、350℃近傍の温度
で溶融し、200mmHg以下の窒素圧で押出し、高
速で回転するボビンに巻取つて紡糸したところ、
いずれのピツチも500m/分の高速で、糸切れも
少なく繊維径の5μm〜10μmのピツチ繊維を長
時間にわたつて紡糸することができた。その結果
を第2表に示した。なお試料1及び2から紡糸し
たピツチ繊維は、酸素雰囲気中240℃で30分間不
融化処理を施し、次に窒素ガス中で30℃/分の速
度で1500℃まで昇温後冷却して炭素繊維を得た。
この炭素繊維の特性評価結果を第10表に示した。 比較例 2 実施例2と同じタールを出発原料とした。原料
1000grを内容積1.45の熱処理装置に張込み、
窒素ガス気流下で十分撹拌しながら430℃で1.5時
間熱処理し、軟化点217℃、比重1.33、キノリン
不溶の成分(C成分)13wt%で、偏光顕微鏡で
観察すると、光学的等方性の母相中に直径が200
μm以下の真球状の光学的異方性小球体を約60%
含むピツチが原料に対し19.6wt%の収率で得られ
た。これを、試料3とする。 次に、この試料を実施例2と同様の操作で溶剤
分離し、各成分の含有量及び特性値を求め、その
結果を第1表に示した。更に、この試料を実施例
2と同様に紡糸したところ、500m/分では紡糸
不可能であり、300m/分でも糸切れ頻度が多
く、又、繊維太さの細いピツチ繊維は得られなか
つた。結果を第2表に示した。又、この試料3を
実施例2と同様にして紡糸し炭素繊維を得た。こ
の炭素繊維の特性評価結果を第10表に示した。
維及びその他の炭素材料を含む炭素材を製造する
ための光学的異方性炭素質ピツチに関するもので
ある。 今後の省エネルギー、省資源時代に航空機、自
動車その他に必要な軽量かつ高強度、高弾性の複
合材料の素材を構成する低コストの高性能炭素繊
維か、又は、加圧成形して種々の用途に使用され
る高強度、高密度の成形炭素材料が強く要望され
ている。 従来、高性能炭素繊維の製造のために適した光
学的異方性ピツチの組成及び構造について十分な
開示はなく、炭素質ピツチ物質の物性とその組成
及び概略の構造との関係については不明瞭であつ
てこれを工業的規模で安定に制御して得られる技
術は未だ完成されていない。 従来、開示されている光学的異方性ピツチ、例
えば、特開昭49―19127号、特開昭50―89635号公
報に記載されている光学的異方性ピツチは、光学
的異方性相部分が、ほぼ、キノリン不溶分(また
はピリジン不溶分)に相当し、光学的異方性相部
分を100%に近づけると、軟化点が著しく上昇
し、紡糸温度が400℃の近傍又はそれ以上とな
り、紡糸時にピツチの分解ガスの発生及び重合が
惹起することから、従来の炭素繊維紡糸法は、光
学的異方性相部分の含有量を90%以下、好ましく
は、50%〜65%の範囲に抑えて紡糸温度を熱分解
及び熱重合が顕著に生じない温度に抑える方法を
採用している。 しかしながら、このようなピツチ組成物は、光
学的異方性相と相当量の光学的等方性相との混合
物であるため不均質なピツチであり、紡糸時に糸
切れが多いこと、繊維の太さが不均一になるこ
と、又は繊維の強度が低いという難点を包蔵する
ものである。 又、特公昭49―8634号公報で開示されているピ
ツチ物質は、光学的異方性相が実質的に100%よ
うにも見うけられるが、ピツチ分子の化学構造を
特定化した特殊のピツチであつて、クリセン、フ
エナンスレン、テトラベンゾフエナジン等の高価
な純物質の熱重合で製造されたものであり、構造
及び分子量が比較的整つたピツチであつて、一般
的な混合原料で製造した場合は軟化点が非常に高
い。一方、特公昭53―7533号公報に記載されてい
る炭素繊維製造用原料としてのピツチは、軟化
点、紡糸温度が低く、紡糸は容易であるが、光学
的異方性相の含有率が開示されていない。又、原
料炭化水素を塩化アルミニウム等のルイス酸触媒
を使用して重縮合しており、ピツチの組成と構造
は特殊であり、そのピツチから製造された炭素繊
維の強度及び弾性率は小さい。又、触媒の完全な
除去も困難であるという問題も包含されている。 更に、特開昭54―55625号公報で開示されてい
るピツチ物質は、実質上100%の光学的異方性相
から成る均質ピツチであるが、分子量分布がかな
り狭く、後で更に詳しく説明されるが本発明の光
学的異方性ピツチの重要な組成分であるn―ヘプ
タン可溶の成分(以下「O成分」という)と、n
―ヘプタン不溶且つベンゼン可溶の成分(以下
「A成分」という)の含有量が少なく、更に他の
残余のベンゼン不溶成分中のキノリン可溶の成分
(以下「B成分」という)及びキノリン不溶の成
分(以下「C成分」という)の含有量が比較的多
いため、その総合的な結果として該従来のピツチ
物質の軟化点は、約380℃以上であり、紡糸温度
は、380℃〜400℃以上に達することになり、この
温度範囲では、工業的に安定してピツチを紡糸す
ることは依然困難を伴うものである。 以上述べた如く、従来知られている光学的異方
性相が100%に近い均質な光学的異方性ピツチ
は、いずれも軟化点が高く、安定した紡糸が困難
であり、一方、軟化点の低いピツチは、特殊な出
発原料から製造した特殊な組成構造を有するもの
以外は、不均質であり、同様に紡糸が困難であつ
て、この結果、品質の優れた炭素繊維を製造する
ことは難事である。 又、従来、一般に、光学的異方性ピツチを部分
的な化学構造又は平均分子量又はキノリン不溶分
(若しくはピリジン不溶分)含有量で規定してい
るが、これらの規定の方法では、高性能炭素繊維
その他の炭素材料を製造するために適した均質且
つ低軟化点の光学的異方性ピツチ組成物を特定す
ることができず、適確ではない。即ち、光学的異
方性ピツチと呼ばれる組成物は、極めて多種で複
雑な広範囲の化学構造、分子量の化合物の混合物
であり、単純に一部分の、又は全体の平均的な化
学構造の特徴のみで規定できるものではなく、又
数百から数万、場合によつてはコークスに近い分
子量まで含むような幅広い分子量の組成物を平均
分子量で規定してもピツチの品質を適確に特定す
ることができない。 本発明者等は、高性能炭素繊維を製造するため
に適した光学的異方性ピツチ組成物について種々
検討したところ、光学的異方性ピツチは、縮合多
環芳香族の積層構造の発達した分子配向性の良い
ピツチであるが、実際には種々のものが混在し、
そのうち、軟化点が低く、均質な炭素繊維の製造
に適したものは特定の化学構造と組成を有するこ
と、即ち、光学的異方性ピツチにおいて、前記し
たB成分及びC成分に加えてO成分即ちn―ヘプ
タン不溶の成分、及びA成分即ちn―ヘプタン不
溶且つベンゼン可溶の成分の組成、構造、分子量
が極めて重要であることを見出したのである。更
に詳しく言えば、O成分、A成分及び残余のベン
ゼン不溶成分であるキノリン可溶の成分(B成
分)とキノリン不溶の成分(C成分)が各々に、
特定量含有するピツチ組成物が完全な光学的異方
性ピツチとして存在し得ること及びその構成バラ
ンスを適切に調整することが高性能炭素材料を実
用的に製造するための光学的異方性ピツチ組成物
の必須の条件であることを見出し、本発明を完成
したものである。 本発明は上記の発見に基づくものであり、本発
明の主たる目的は、O成分、A成分、B成分及び
C成分の構成バランスを特定することによつて高
強度、高弾性率の炭素材、特に、炭素繊維を製造
するための光学的異方性相ピツチであつて、且
つ、低軟化点を有する光学的異方性炭素質ピツチ
を提供することである。 本発明の他の目的は、高強度、高弾性率の炭素
材、特に炭素繊維を製造するための光学的異方性
ピツチであつて、高配向性で均質な光学的異方性
炭素質ピツチを提供することである。 本発明の他の目的は、高強度、高弾性率の炭素
繊維を製造するために熱分解重縮合の顕著な温度
より十分低い温度で紡糸することができる紡糸性
の良好な光学的異方性炭素質ピツチを提供するこ
とである。 本発明について以下に更に詳しく説明する。 即ち、本発明は、必須成分としてO成分を約2
重量%〜約20重量%、A成分を約15重量%〜約45
重量%、B成分を約5重量%〜約55重量%、C成
分を約20重量%〜約70重量%含有し、光学的異方
性相の体積含有率が約90%以上であり、約320℃
以下の軟化点を有することを特徴とする炭素材
料、特に炭素繊維の製造用炭素質ピツチに関する
ものである。 本発明者等の知見によると、従来技術により熱
製造された光学的異方性ピツチにおいてはキノリ
ン不溶の成分(又はピリジン不溶の成分)のみが
主要成分であるか、又はベンゼン不溶の成分(B
成分及びC成分)までが特に重要な成分であつ
て、O成分、A成分の含有量が少ないために、又
はそれらの特性が不適性なために妥当でなく、更
に究明した結果前如の如く特定の特性を有するB
成分及びC成分に加えて特定の特性を有するO成
分及びA成分が特定量存在することが当該ピツチ
組成にとつて不可欠であることが明らかとなり、
前述の発明の完成をもたらしたのである。 本発明は、種々の光学的異方性ピツチを調製
し、溶剤分離によりこれら炭素質ピツチよりO成
分、A成分、B成分及びC成分を分別し、各成分
の個々の特性及び当該特性を有する各成分の含有
量とピツチ全体の物性、均質性、配向性等との関
係について詳しく検討した結果に基き完成したも
のであり、これは、各成分が従来技術では認めら
れなかつた範囲の特定量含有され、且つ、各成分
が特定の性状を有するものであることが重要であ
ることを見出したことに基因するものである。即
ち、高性能炭素繊維の製造に必要な高配向性、均
質性及び低軟化点を有し、低温で安定した溶融紡
糸の可能な光学的異方性ピツチの構成成分の性状
としてはC/H原子比、fa(芳香族構造に属する
炭素原子の数の全炭素原子の数に対する比率)、
数平均分子量、最高分子量(分子量分布を測定し
低分子量側から99重量%積算した点の分子量)及
び最低分子量(分子量分布を測定し高分子量側か
ら99重量%積算した点の分子量)が以下に述べる
如き範囲に特定されたものである。 O成分は、一般的には広範囲の特性のものがあ
るが、本発明においては、約1.3以上のC/H原
子比、約0.80以上のfa及び約1000以下の数平均分
子量及び約150以上の最低分子量を有するもので
あり、好ましいC/H原子比は約1.3〜1.6、faは
約0.80〜約0.95であり、数平均分子量は約250〜
約700、最低分子量は約150以上である。 又、A成分は、一般的には広範囲の特性のもの
があるが、本発明においては約1.4以上のC/H
原子比、約0.80以上のfa、約2000以下の数平均分
子量及び約10000以下の最高分子量を有するもの
であり、好ましいC/H原子比は約1.4〜約1.7、
faは約0.80〜約0.95、数平均分子量は約400〜約
1000、最高分子量は約5000以下である。 更に、各成分の好適な含有量は、O成分につい
て約2重量%〜約20重量%であり、A成分につい
て約15重量%〜約45重量%である。更に最適範囲
については、O成分は約5重量%〜約15重量%で
あり、A成分は約15重量%〜約35重量%である。 即ち、O成分のC/H原子比及びfaが前述の範
囲より小さい場合と含有量が前述の範囲より大き
い場合は、ピツチは全体として等方性の部分をか
なり含有する不均質なものとなりやすく、一方、
C/H原子比又はfaが前述の範囲より大きい場合
はO成分の化学構造が影響を受け、所定のピツチ
組成を維持することができず好ましくない。又、
平均分子量が700より大きいか又は含有量が前述
の範囲よりも小さい場合は、低軟化点のピツチを
得ることができない。又、A成分のC/H原子比
又はfaが前述の範囲より小さい場合、数平均分子
量が前述の範囲より小さいか又は含有量が前述範
囲を越える場合には、ピツチ全体は、等方性と異
方性部分の混合した不均質なピツチとなつてしま
うことが多い。又、C/H原子比又はfaが大きい
場合は、A成分の化学構造が変化し、所定のピツ
チ組成を維持することが困難となり、A成分の特
性を発揮することができない。数平均分子量又は
最高分子量が上述の範囲よりも大きい場合、又は
A成分の構成比率が上述の範囲よりも小さい場合
は、ピツチは均質な光学的異方性であるが低軟化
点とはならない。 本発明者等が更に検討したところ、前記O成分
及びA成分は光学的異方性ピツチ中において積層
構造中に取り込まれ、溶媒的又は可塑剤的な作用
をし、主にピツチの溶融性、流動性に関与し、そ
れ自体単独では積層構造を発現しにくく光学的異
方性を示さない成分であるが、それ自体単独では
溶融せず積層容易な成分であるベンゼン不溶のB
成分及びC成分を前記O成分及びA成分に対しそ
の構成成分が特定の範囲内の構成比率でバランス
よく含有され、更に、各構成成分の化学構造特性
分子量が特定の範囲内に存在するならば一層、優
れた均質で低軟化点の高性能炭素繊維を製造する
ために必要な光学的異方性ピツチが得られること
を見出した。 即ち、O成分を約2重量%〜約20重量%及びA
成分を約15重量%〜約45重量%を含有し、B成分
(ベンゼン不溶且つキノリン可溶の成分)を約5
重量%〜約55重量%及びC成分(ベンゼン不溶且
つキノリン不溶の成分)を約20重量%〜約70重量
%含有し、その光学的異方性相の含有率が体積で
約90%以上であり、軟化点が約320℃以下の光学
的異方性炭素質ピツチは、後述の如き一層安定し
た高性能の炭素繊維を提供することができる。 上記B成分及びC成分に関し、高性能炭素繊維
の製造に必要な高配向性、均質性及び低軟化点を
有し、低温で安定した溶融紡糸の可能な光学的異
方性ピツチの構成成分の性状としてC/H原子
比、fa、数平均分子量、最高分子量(分子量分布
を測定し低分子量側から99重量%積算した点の分
子量)が以下に述べる如き範囲に特定されたもの
である。 即ち、B成分(ベンゼン不溶且つキノリン可溶
の成分)は、一般的には非常に広範囲の特性のも
のがあるが、本発明においては、約1.5以上の
C/H原子比、約0.80以上のfa、約2000以下の数
平均分子量及び約10000以下の最高分子量を有す
るものであり、好ましいC/H原子比は約1.5〜
約1.9、faは約0.80〜約0.95及び数平均分子量は約
800〜約2000であり、C成分(ベンゼン不溶キノ
リン不溶分)は、これも一般的には非常に広範囲
の特性のものがあるが本発明においては、約2.3
以下のC/H原子比、約0.85以上のfa、約3000以
下の数平均分子量及び約30000以下の最高分子量
を有するものであり、好ましいC/H原子比は、
約1.8〜約2.3であり、faは約0.85〜約0.95であ
り、数平均分子量は約1500〜約3000のものであ
る。 両成分の含有量については、B成分は約5重量
%〜約55重量%であり、好ましい含有量は約5重
量%〜約40重量%である。C成分の含有量は約20
重量%〜約70重量%であり、好ましい含有量は約
25重量%〜約65重量%である。 本発明の特徴とするところは、前述の如く、炭
素質ピツチの構成成分たる4成分が特定の特性値
を有し、特定の組成比で含有することである。以
下、本発明の詳細について便宜上まとめて説明す
る。 本明細書で使用される「光学的異方性相」とい
う語句の意味は、必ずしも学界又は種々の技術文
献において統一して用いられているとは言い難い
ので、本明細書では、「光学的異方性相」とは、
ピツチ構成成分の一つであり、常温近くで固化し
たピツチ塊の断面を研摩し、反射型偏光顕微鏡で
直交ニコル下で観察したとき、試料又は直交ニコ
ルを回転して光輝が認められる。即ち光学的異方
性である部分を意味し、これに対し、光輝が認め
られない、即ち光学的等方性相である部分は光学
的等方性と呼ぶ。 光学的異方性相は、光学的等方性相に比べて多
環芳香族の縮合環の平面性がより発達した化学構
造の分子が主成分で、平面を積層したかたちで凝
集、会合しており、溶融温度では一種の液晶状態
であると考えられる。従つてこれを細い口金から
押し出して紡糸するときは分子の平面が繊維軸の
方向に平行に近い配列をするために、この光学的
異方性ピツチから作つた炭素繊維は高弾性を示す
ことになる。又、光学的異方性相の定量は偏光顕
微鏡直交ニコル下で観察、写真撮影して光学的異
方性部分の占める面積率を測定して行うので、こ
れは実質的に体積%を表わす。 ピツチの均質性に関して、本発明では上述の光
学的異方性相の測定結果が体積含有率90%〜100
%の間にあり、反射型顕微鏡観察でピツチ断面の
固形粒子(粒径1μm以上)を実質上検出せず、
溶融紡糸温度で揮発物による発泡が実質上ないも
のが、実際の溶融紡糸において良好な均質性を示
すのでこのようなものを実質上均質な光学的異方
性ピツチと呼ぶ。 光学的等方性相を10%以上含有する実質的に不
均質な光学的異方性ピツチの場合、高粘度の光学
的異方性相と低粘度の光学的等方性相との明らか
な二相の混合物であるため粘度の著しく異なるピ
ツチ混合物を紡糸することになり、糸切れ頻度が
多く、高速紡糸がし難く、十分細い繊維太さのも
のが得られず、又、繊維太さにもバラツキがあ
り、結果として高性能の炭素繊維が得られない。
又、溶融紡糸のとき、ピツチ中に不融性の固体微
粒子や低分子量の揮発性物質を含有すると、紡糸
性が阻害されることはいうまでもなく、紡糸した
ピツチ繊維に気泡や固形異物を含有し欠陥の原因
となる。 本発明でいうピツチの軟化点とは、ピツチが固
体から液体の間を転移する温度をいうが、差動走
査型熱量計を用いてピツチの融解又は凝固する潜
熱の吸放出のピーク温度で測定する。この温度は
ピツチ試料について他のリングアンドボール法、
微量融点法などで測定したものと±10℃の範囲で
一致する。本発明でいう低軟化点とは、230℃〜
320℃の範囲の軟化点を意味する。軟化点はピツ
チの溶融紡糸温度と密接な関係があり、ピツチに
よる違いはあるが通常の紡糸法で紡糸する場合、
一般に軟化点より60℃〜100℃高い温度が紡糸に
適した流動性を示す温度である。従つて、320℃
より高い軟化点の場合、熱分解重縮合が起こる
380℃より高い温度となるため、分解ガスの発生
及び不融物の生成により紡糸性が阻害されること
はいうまでもなく、紡糸したピツチ繊維に気泡や
固形異物を含有し欠陥の原因となる。一方230℃
以下の低い軟化点の場合、不融化処理工程におい
て低温で長時間処理が必要になるとか複雑で高価
な処理が必要となり好ましくない。 本発明でいうピツチ構成成分であるO成分、A
成分、B成分、C成分とは、粉末ピツチを1μm
の平均孔径を有する円筒フイルターに入れ、ソツ
クスレー抽出器を用いてn―ヘプタンで20時間熱
抽出して得られるn―ヘプタン可溶の成分をO成
分、ひきつづきベンゼンで20時間熱抽出して得ら
れるn―ヘプタン不溶でベンゼン可溶の成分をA
成分、ベンゼン不溶成分をキノリンを溶剤として
遠心分離法(JIS K―2425)により分離して得ら
れるベンゼン不溶でキノリン可溶の成分いわゆる
β―レジンをB成分、キノリン不溶成分をC成分
と呼ぶ。このような構成成分の分別は、例えば石
油学界誌20巻(1)、第45頁(1977年)に記載の方法
により行なうことができる。或る出発原料から製
造したピツチ構成成分であるO成分、A成分、B
成分、C成分ではピツチの特性値であるC/H原
子比、fa、数平均分子量、最低及び最高分子量は
いずれもO成分<A成分<B成分<C成分の順に
大きくなるのが一般的である。 本発明者等の研究によれば、O成分は、ピツチ
構成成分中で最も分子の平面構造性が小さく、即
ち、縮合芳香族環が小さく側鎖の数が多く長さが
長いものであり、又分子の巨大さ(平均分子量、
最高分子量)の小さい成分で、それ自体単独では
積層構造を発現し難く、光学的異方性を示さない
が、A成分、その他の重質部分(B成分、C成
分)と相溶し溶媒的に作用する性質を有し、高配
向性を損なわないで、主にピツチの流動性及び溶
融性に関与する成分である。 A成分は、O成分とB成分の間の分子の平面構
造性と分子巨大さを有する成分であつてO成分と
同じくそれ自体単独では積層構造を発現し難く、
光学的異方性を示さないが、O成分及び重質部分
と相溶し、重質部分に対して溶媒的に作用する性
質を有し、高配向性を損なわないで重質部分と共
存して配向性を表わす特性を有するが、主にピツ
チの可塑性及び溶融性に関与する成分である。 B成分は、A成分とC成分の間の分子の平面構
造性と分子の巨大さを有する成分で、それ自体単
独では縮合多環芳香族の積層構造の形成や光学的
異方性は小さく軟化点も400℃以上にあるので、
それ自体単独では高温に加熱しても溶融しないで
炭化するが、O成分及びA成分と相溶することに
より、溶融性をもちそれが更にC成分に対して溶
媒的に作用する性質を有しC成分と共存して主に
ピツチの高配向性に関与する成分である。 C成分は、ピツチ構成成分中で最も大きい分子
平面構造性と分子量の巨大さを有する成分で、光
学的異方性ピツチの骨格となる縮合多環芳香族の
積層構造を形成し光学的異方性を発現し易いが、
B成分と同じく軟化点が400℃以上にあるのでそ
れ自体単独では高温で加熱しても溶融しないで炭
化するが、O成分、A成分及びB成分と相溶する
ことより溶融性可塑性をもち、ピツチの高配向性
に関与する成分である。 このように光学的異方性ピツチは、他の成分と
相溶し、主にピツチの配向性に関与する成分と他
の成分に対して溶媒的に作用し、配向性を損なわ
ずに主にピツチの溶融性に関与する成分から成り
立つており、いずれの成分も重要であり、とりわ
け高性能炭素繊維製造用の高配向性で、均質な、
低い軟化点を有する光学的異方性ピツチにおいて
は、構成成分の構造特性とそのような特性を有す
る構成成分の含有量のバランスが重要である。即
ち、あまりにもB成分とC成分が多量に含有され
相対的にA成分とO成分の含有が少ないピツチは
確かに分子配向性が発現し、全体が光学的異方性
となつても、軟化点が高く紡糸が困難となり、極
端な場合は全く溶融しない。他方、O成分、A成
分を多く、相対的にC成分、B成分を少なくする
と、軟化点が低くなり、350℃付近で紡糸を行な
うために十分な液体流動性を得ることは容易であ
るが、分子配向性の優れたピツチ部分、即ち光学
的異方性ピツチ部分と分子配向性の小さい等方性
ピツチ部分とが二層に分れた不均質なピツチとな
り、これも前述の如く紡糸が困難である。 このように、従来から光学的異方性ピツチの主
要構成成分として認められていたC成分の他に、
B成分、特に従来ほとんど認識されていなかつた
O成分とA成分の存在が、高性能炭素繊維用ピツ
チの構成成分としては重要であり、その組成範囲
を規定していることが本発明の大きな特徴のひと
つである。 又、みかけ上構成成分の比率が同じであつても
それぞれの成分の構造特性によつてピツチの特性
が影響されることはいうまでもなく、例えばあま
りにも分子量の大きいか又は分子平面構造性の劣
るB成分やC成分を含有する場合は、極めて軟化
点の高いピツチとなるし、他方、あまりにも分子
量の小さいO成分を含有するときは、ピツチの軟
化点は低くなつても、全体の均質性が失なわれ
る。 次に、高性能炭素繊維を製造するために有効な
ピツチの分子配向性、均質性又は相溶性及び軟化
点とピツチの構成成分の特性値との関係を詳しく
説明する。いうまでもなく、ピツチの如き複雑な
混合物については厳密には個々の構成成分分子の
構造は、検出も、考察もできないので構造特性に
ついては前述のように分別した構成成分それぞれ
の平均分子量、分子量分布、fa、C/H原子比が
最も適切な指標となる。 先ず、ピツチの分子配向性即ち光学的異方性の
発現傾向は、ピツチ構成成分の分子の平面構造性
及びある温度での液体流動性と相関がある。即
ち、ピツチ分子の平面構造部分である縮合多環芳
香族構造がより発達し、分子量が適度の大きさで
あるとき、平面状分子が相互に積層会合しやす
く、同時に溶融状態で分子の再配列が十分よく行
なわれ、光学的異方性ピツチが得られる。 ここで、ピツチ分子の平面構造性は、多環芳香
族の縮合環の大きさ、ナフテン環含有の数、側鎖
の数と長さにより決まるから、分子の平面構造性
は、C/H原子比、及び、芳香族構造炭素分率fa
(芳香族構造に属する炭素原子の前炭素原子に対
する比率)でほぼ表わすことができる。即ち、縮
合多環芳香族構造部分が大きいほど、又その中の
ナフテン環構造が少ないほど、又側鎖の数と長さ
が小さいほど、ピツチ分子の平面構造性は良く、
又一般にその傾向に従つてC/H原子比は大き
く、faも大きくなる。分子の平面構造性を大きく
する観点だけからいえば分子量は大きくてもよ
い。又、ピツチのある温度での液体流動性は、分
子量の相互運動の自由さによつて決ると考えられ
るから、それは、ピツチ分子の巨大さ、即ち数平
均分子量と分子量分布(特に最高分子量の大き
さ)と、分子の平面構造性とを指標として判断す
ることができる。即ち、数平均分子量が小さく、
最高分子量も十分小さく、分子の平面構造性、従
つてC/H原子比やfaが適度に大きいことが、ピ
ツチの液体流動性が大きいために必要である。 次に、光学的異方性ピツチの均質性は、ピツチ
構成成分の相溶性ともいえるが、それは、ピツチ
構成成分分子の化学構造の類似性及びある温度で
の液体流動性と相関があると推定される。即ち、
ピツチ構成成分分子が相互に化学構造形態及び分
子量分布の点であまりかけ離れたものでないとき
相互に親和性、溶解性があり、それぞれがある温
度で十分な液体流動性を有するとき、相互に流動
混溶して熱力学的に安定的に均質なピツチとな
る。従つて、光学的異方性ピツチの均質性は、構
成成分それぞれのC/H原子比、faが十分大きく
極度に小さい分子量のものを含まず、数平均分子
量、最高分子量が十分小さく、且つ、それらが相
互にあまりかけ離れていないことによつて実現さ
れると考えられる。 次に、光学的異方性ピツチの軟化点はピツチが
固体から液体の間を転移する温度を意味すること
から、これは、前述のある温度のピツチの液体流
動性と良い相関がある。従つて、光学的異方性ピ
ツチの軟化点は、構成成分それぞれのC/H原子
比、faが適度に大きく、平均分子量が十分小さ
く、特に最高分子量が小さいことによつて低くな
るものである。 以上を総合すると、分子配向性の優れた、均質
な、低軟化点の、光学的異方性ピツチを得るため
には、C/H原子比とfaが十分大きく、且つ、そ
れらが構成成分間で類似していて、平均分子量は
平面分子の配向性を発現するよう十分に大きい
が、低軟化点のためには、それがあまり大きすぎ
ないこと、特に最高分子量があまり大きなものを
含まないこと、又、ピツチの均質性の観点から、
極度に低分子量の成分を含まないことも要件であ
ることが理解されよう。このようなピツチは、大
量安価に入手できる石油や石炭工業から産出され
る重質油やタール物質を出発原料にする場合は、
出発原料の分子構造が多様であり、分子量分布も
広いために完全に、理想的に化学構造と分子量の
分布を狭く制御することはできないが、本発明に
よれば完全に理想的に狭い化学構造と分子量の制
御をせずとも、ピツチの構成成分それぞれ化学構
造特性と分子量が、ある好ましい範囲内に存在
し、且つそのような構成成分がある好ましい範囲
内の構成比率でバランスよく含有されてピツチを
構成するとき、十分満足される分子配向性、均質
性及び軟化点の光学的異方性ピツチが得られる。 次に、このようなピツチ構成成分の化学構造特
性と分子量の好ましい範囲、及び構成成分の構成
比率の好ましい範囲について詳しく具体的に説明
する。 先ず、O成分は、まだ分子量もあまり大きくは
なく、芳香族構造も、他の成分ほど十分に発達し
ていない、一般にC/H原子比が約1.6以下、fa
が約0.95以下、数平均分子量が約1000以下の油状
物質であるが、光学的異方性ピツチの中に含有さ
れて、その分子配向性を損なわず、全成分に対し
て溶媒ないし可塑剤的役割をする重要な成分であ
る。 A成分は、構造特性及び分子量としては、一般
にO成分とB成分の中間に位置するものであり、
O成分よりもやや分子配向性への寄与が大きいと
推定され、且つO成分と共に相溶して、B成分、
C成分に対する溶剤又は可塑剤的な役割をすると
考えられ、これも、低軟化点の均質な光学的異方
性ピツチの形成に不可欠な構成成分である。 B成分は、構造特性値及び分子量が一般にA成
分とC成分の中間に位置するものであり、O成
分、A成分に比べれば縮合多環芳香族の平面構造
がかなり発達し、その積層会合によつて分子配向
を作りやすい成分であり、C成分と相溶して、光
学的異方性、即ち分子配向の骨格を形成する成分
であり、又同時にO成分、A成分とも相溶して、
可塑剤的作用も果たしこのB成分がさらに重縮合
が進むとC成分に変化すると推定されている。 本発明によれば、B成分の特性として好ましい
ものは、C/H原子比が約1.5〜約1.9、faが約
0.80〜約0.95で、後述の水素添加反応処理によつ
て、クロロホルムに100%可溶化し数平均分量が
約800〜約2000、最高分子量が約10000以下であ
り、又、B成分の構成比率として好ましい範囲は
主としてC成分の含有率とのかね合いで決まり、
ピツチ全体の約5重量%〜約40重量%である。即
ち、この成分においてC/H原子比又はfaが上述
の範囲より小さい場合、あるいはこの成分の構成
比率が上述範囲より小さい場合は、ピツチの分子
配向性が不十分となつて均質な光学的異方性ピツ
チとはならないことが多く、この場合、共存する
C成分の構成比率が十分に大きいときは、光学的
異方性の均質ピツチとなるが、軟化点が高い。
又、C/H原子比又はfaが上述の範囲より大きい
場合は、B成分としての化学構造を維持すること
ができずピツチ組成に変化をきたすことになる。
数平均分子量或いは最高分子量が上述の範囲より
大きい場合、又は、B成分の構成比率が上述の範
囲より大きい場合は、均質な光学的異方性ピツチ
となるとしても、軟化点が高くなりすぎて、紡糸
が困難であり、これは本発明の目的とするピツチ
ではない。 C成分は、ピツチ構成成分中で最も分子平面構
造性が発達し、分子量の大きい成分であり、容易
にその平面分子が積層状に会合し、光学的異方性
を発現するので、ピツチ中にあつて、他の成分と
相溶して、光学的異方性を示す構造の骨格になる
役割を果すものである。 本発明によれば、C成分の特性として好ましい
ものはC/H原子比が約1.8以上で、faが約0.85
以上であり、後述の水素添加反応処理によつてク
ロロホルムに実質的に全て可溶化され、数平均分
量が約1500〜約3000で、最高分子量が約30000以
下であり、又C成分の構成比率として好ましい範
囲は、主としてB成分とのかね合いでピツチ全体
の約25重量%〜約65重量%である。即ち、C成分
のC/H原子、或いはfaが上述の範囲よりも小さ
い場合、又は、構成比率が上述の範囲より小さい
場合は、ピツチ全体の分子配向性が不十分となつ
て、等方性部分をかなり含む不均質ピツチとなる
か、他の成分とのバランスによつては軟化点が高
いものとなる。C/H原子比あるいはfaが上述の
範囲より大きい場合は、C成分の化学構造に影響
を与え、その結果、数平均分子量及び最高分子量
を増加させ、ピツチの軟化点を上昇させるという
難点が生ずる。又、後述の水素添加反応によつて
もクロロホルムに完全には可溶化されないような
C成分もあるが、このようなものは、分子量の測
定が不可能なほど非常に高分子量の縮合多環芳香
族化合物を含むか、又はカーボン等の不融物を含
むので不適当である。更に、この水素添加反応を
加えてクロロホルムに可溶化した後、測定したC
成分の数平均分子量又は最高分子量が上述の範囲
より大きいような場合と、C成分の構成比率が上
述の範囲を越える場合は、ピツチ全体が光学的異
方性となるとしても軟化点が高く、従つて高い紡
糸温度を要するか、紡糸が不可能なことが多い。 本発明の中でいうfa(芳香族構造炭素分率;芳
香族構造に属する炭素原子の数の全炭素原子の数
に対する比率)は、ピツチ成分試料の炭素と水素
の含有分析値と、赤外線吸収分光分析により加藤
らの方法(燃料協会誌55 244、(1976))に従つ
て、次式によつて計算されたものを用いる。 H/C:水素と炭素の原子数比 D3030/D2920:3030cm-1の吸収度と2920cm-1の
吸収度の比 又、本発明でいう数平均分子量は、クロロホル
ムを溶媒として一般的な手法である蒸気圧平衡法
を用いて測定する。又、分子量分布は、ピツチ試
料を、クロロホルムを溶媒としてゲルパーミエー
シヨンクロマトグラフイで10ケの分子量区分に分
取し、分取したそれぞれの区分の数平均分子量を
前述の蒸気圧平衡法で測定し、各区分の溶出容量
と数平均分子量の関係で、このゲルパーミエーシ
ヨンクロマトグラフイーの検量線を作成し、これ
を用いて各ピツチの各構成成分の分子量分布を測
定した。この場合、溶出液の屈折率の変化がその
重量濃度の変化にほぼ比例する。 B成分とC成分はクロロホルム不溶分を含むの
で、そのままでは上述の分子量測定が不可能であ
るが、これらも炭素・炭素結合を破壊しないで、
芳香族構造の一部に水素を付加するような温和な
水素添加反応を加えると分子の炭素骨格はほとん
ど変化せず、ベンゼンやクロロホルムなどに溶解
する分子構造となることが知られている。 本発明においては、B成分とC成分は、予め金
属リチウムとエチレンジアミンを用いる温和な水
添反応によつてクロロホルム可溶化処理を行ない
(この方法は、文献:Fuel41、67〜69(1962)に
従つた)、その後、上述の分子量測定方法を用い
て数平均分子量、最高分子量、最低分子量を求め
る。 本発明の炭素質ピツチは、如何なる方法で製造
したものでも差し支えないが、特に、次に述べる
方法により製造される。即ち、重質炭化水素油、
タール又はピツチを出発原料として、その熱分解
重縮合により部分的に光学的異方性相を生成せし
めた後、光学的異方性相をそれ以上分子量を増大
させることの少ない温度で沈積せしめて分離し、
光学的異方性相が濃縮されたピツチを得て、その
後これを短時間熱処理して光学的異方性相を90%
以上含有するピツチを製造する方法が好適であ
る。 即ち、出発原料として、いわゆる重質炭化水素
油、タール又はピツチを使用し、これを約380℃
以上の温度、好ましくは400℃〜440℃で熱分解重
縮合反応に供し、これにより重縮合物中の光学的
異方性相が20%〜80%、好ましくは30%〜60%生
成したとき、当該重縮合物を約400℃以下、好ま
しくは360℃〜380℃に保持しつつ5分間〜1時間
程度静置し、又は極めてゆつくり撹拌しつつ下層
に密度の大きい光学的異方性相ピツチ部分を濃度
高く沈積せしめ、しかる後、光学的異方性相の濃
度の大きい下層を光学的異方性相の濃度の小さい
上層とおよそ分離して抜き出し、分離された下層
の光学的異方性相含有率が70%〜90%であるピツ
チを、次に約380℃以上、好ましくは390℃〜440
℃で更に短時間熱処理し、光学的異方性相含有率
が90%以上の所望ピツチとする方法が、本発明の
炭素質ピツチを得るためには好適である。 又、本発明による光学的異方性ピツチは、上述
の如きピツチ構成成分が各々特定の特性値を有
し、且つ、当該構成成分が各々特定の割合で含有
することを特徴とするものであるから、製造法の
如何により、製造されたピツチの構成成分の組成
及び特性値が、一連の工程の後、本発明の範囲内
に含まれなくとも、別途の製法又は工程条件で製
造した所望の構成成分の組成と特性値を有するピ
ツチを複数種、所望の割合で混合することによつ
て、本発明の範囲内のピツチ組成及び特性値を満
たし所望の物性を有する本発明の光学的異方性ピ
ツチを製造することができる。 例えば、出発原料の重質炭化水素油、タール又
はピツチを380℃以上、好ましくは410℃〜440℃
の温度で比較的長時間にわたり熱分解重縮合し、
C成分とB成分の多い、O成分、A成分の少ない
従つて軟化点の高い光学的異方性ピツチを得て、
他方上述の出発原料を使用し、上述の温度で比較
的短時間熱分解重縮合せしめたC成分、B成分の
少ない、A成分、O成分の多い等方性ピツチを得
て、この両者を適切な混合比となるように混合す
ることによつて、本発明の光学的異方性炭素質ピ
ツチを得ることができる。又、出発原料を厳選す
れば、380℃以上、好ましくは410℃〜440℃の温
度の一段の熱分解重縮合反応だけで本発明の光学
的異方性炭素質ピツチを作ることもできる。又、
別の方法として、重質炭化水素油、タール又はピ
ツチを熱分解重縮合して製造した、又は市販され
ているピツチをn―ヘプタン、又はトルエン、ベ
ンゼン等の溶剤で抽出して可溶部分と不溶部分に
分離し、O,A,B,C成分の組成が既知でしか
もそれらが濃縮されたピツチ素材を製造してお
き、これを所望の混合比に混合して、本発明の光
学的異方性ピツチを製造することもできる。 次に、本発明の光学的異方性ピツチを溶融紡糸
して得られたピツチ繊維及び紡糸方法について説
明する。紡糸方法は、従来、使用されている方法
を採用することができ、例えば、下方に直径0.1
mm〜0.5mmの紡糸口金を有する金属製紡糸容器に
ピツチを張り込み、不活性ガス雰囲気下で、280
℃〜370℃の間の一定温度にピツチを保持して溶
融状態に保つて、不活性ガスの圧力を数100mmH
gに上げると、口金より溶融ピツチが押出され流
下するので、その流下部の温度、雰囲気を制御し
つつ、流下したピツチ繊維を高速で回転するボビ
ンに巻取るか又は集束させて、気流で引取りつつ
下方の集積槽の中へ集積する。この際、紡糸容器
へのピツチの供給を、予め溶融したピツチをギヤ
ポンプなどで加圧供給することにより行なうと連
続的に紡糸することが可能である。更に上述の方
法で、口金の近傍で、一定に温度制御された高速
で下降するガスでピツチ繊維を延糸しつつ引取
り、下方のベルトコンベア上に長繊維又は短繊
維、或いは相互に交絡したマツト状のピツチ繊維
不織布を作る方法も用いることができる。又、周
壁に紡糸口金を有する円筒状の紡糸容器を高速で
回転させ、これに溶融ピツチを連続的に供給し、
円筒紡糸器の周壁より遠心力で押し出され、回転
の作用で延糸されるピツチ繊維を集積するような
紡糸方法も用いられる。いずれの方法において
も、本発明のピツチを用いるときは溶融状態であ
り紡糸をするのに好適な温度(紡糸機中での最高
温度)が280℃〜370℃の範囲と、従来よりも低い
ことが特徴であり、従つて紡糸工程での熱分解や
熱重合が極めて少なく、その結果紡糸後のピツチ
繊維は、紡糸前のピツチ組成物とほとんど同じ組
成物であることが特徴である。 即ち、このようにして得られた炭素質ピツチ繊
維は、その繊維軸方向の断面を研摩して偏光顕微
鏡で観察すると、全面が光学的異方性であり、し
かも、繊維軸方向へ配向していること及び繊維軸
と直角方向の断面をみると、ほとんど等方性ない
しは極めて微細な異方性部分がモザイク状にラン
ダムに集合していることが認められる。この現象
は、恐らくは、本発明のピツチがO成分、A成分
という流動性の大きな成分をバランスよく含有す
ることによつて紡糸過程で繊維軸方向にはよく分
子配向し、繊維軸に直角方向には比較的自由に柔
軟に分子配向しうることが起因していると思われ
る。又、当該ピツチ繊維を粉砕して有機溶剤を使
用してO成分、A成分、B成分及びC成分に分別
して分析すると、紡糸前のピツチの組成及び特性
とほぼ同一の値が得られ、前述の本発明の範囲内
に存するものである。 従来の光学的異方性ピツチの場合、少なくとも
紡糸機中のある部分で380℃〜430℃といつた高温
で溶融状態を保ち紡糸を行なうことが実体であ
り、この場合熱分解や熱重合が顕著に起こること
から紡糸後のピツチ繊維の組成構造は、紡糸前の
ピツチより炭化の進んだものとなることが多い。 ピツチ繊維の場合は、紡糸前のピツチと物質組
成としてはほとんど変らないので、もし紡糸工程
で何らかの故障があつてピツチ繊維として品質管
理限界以下のものが製造された場合、これを再溶
融して用いることができるという利点がある。 以上の説明により明らかなように光学的異方性
ピツチを適確に規定するためには、ピツチの構成
成分の特性及び当該構成成分の含有量が重要であ
り、高性能炭素繊維製造用の高配向性で均質な低
軟化点を有するピツチとしてはピツチ構成成分、
特に、O成分、A成分、B成分及びC成分の特性
とその含有量がいずれも上記の範囲内に存するこ
とが必要である。 このような特性の構成成分と組成を有する光学
的異方性ピツチは、光学的異方性相を90%〜100
%含有する実質上均質なピツチであるにも拘ら
ず、極めて低い軟化点(320℃以下)を有するか
ら、十分に低い溶融紡糸温度(380℃以下、普通
実施態様としては300℃〜360℃)で紡糸すること
ができる。従つて、次の利点が得られる。即ち、
熱分解重縮合の顕著な温度より十分低い温度で
紡糸することができ、又、均質なピツチであるか
らピツチの紡糸性(糸切れ、糸の細さ、糸径の均
一さ)が良好であり、紡糸工程の生産性が向上す
る。更に、紡糸中のピツチの変質が生じないた
め、製品炭素繊維の品質が安定であること、紡
糸中の分解ガスの発生及び不融物の発生が極めて
少ないから、紡糸されたピツチ繊維の欠陥(気泡
又は固形異物粒子の含有)が少なく、製造した炭
素繊維の強度が大きくなること、本発明の炭素
質ピツチは、実質上、ほとんど全体が分子配向性
の優れた液晶状であるから、これを紡糸して通常
の方法で不融化処理を行ない製造した炭素繊維は
繊維軸方向の黒鉛構造の配向性がよく発達し、弾
性率が大きいこと、及び製造した炭素繊維は、
繊維軸に直角方向の断面の構造が緻密で且つフイ
ブリルの断面方向の配向が小さく、同心円状とか
放射状にならないために繊維軸方向に割れ目のな
いものとなること等の予期する以上の効果を奏す
るものである。 実施例 1 石油の接触分解で副生するタール状物質を常圧
に換算して450℃まで減圧蒸留して得た炭素含有
率90.0wt%、水素含有率7.8wt%、比重1.07、キ
ノリン不溶の成分0%のタールを出発原料とし
た。原料1000grを内容積1.45のステンレス製
反応装置に張込み、窒素ガス気流下で十分撹拌し
ながら415℃に保つて2.5時間熱分解重縮合反応に
供し、残留ピツチとして軟化点187℃、比重
1.32、キノリン不溶の成分7.9wt%で、偏光顕微
鏡で観察すると光学的等方性の母相中に直径が
100μm以下の真球状の光学的異方性球体を約40
%含むピツチが、原料に対して17.0wt%の収率で
得られた。次にこのピツチ100grを約300mlの円
筒型ガラス製容器にとり、窒素雰囲気下360℃で
30分間、撹拌せずに保持し、次にこれを放冷し、
ガラス製容器を破壊してピツチをとり出した。こ
のピツチは肉眼でも上層と下層が分離しているこ
とが、その光沢のちがいから認められ、上層のピ
ツチ塊と下層のピツチ塊を剥離して分別すること
ができ、下層ピツチは約32gr得られた。偏光顕
微鏡で観察すると上層ピツチは直径が50μm以下
の光学的異方性球を約15%含む大部分が光学的等
方性のピツチであり、下層ピツチは、50μm程度
の直径の光学的等方性の球を約20%含む大部分が
光学的異方性のピツチ、即ち約80%の光学的異方
性の含有率を示すピツチであつた。次にこの下層
ピツチを50mlのガラス製容器に入れ撹拌しつつ
400℃で30分間熱処理して約30grのピツチを得
た。このピツチの軟化点を測定すると、257℃で
ありその光学的異方性相の含有率は約95%以上で
あつた。次にこのピツチのn―ヘプタン可溶の成
分(O成分)、n―ヘプタン不溶でベンゼン可溶
の成分(A成分)、ベンゼン不溶でキノリン可溶
の成分(B成分)及びキノリン不溶の成分(C成
分)を定量すると、O成分が10.1wt%、A成分が
29.6wt%、B成分が24.2wt%、C成分が36.1wt%
含有されることが認められた。 次に、このピツチを、直径0.5mmのノズルを有
する紡糸器に充填し、340℃で溶融し、100mmHg
の窒素圧で押出し、高速で回転するボビンに巻取
つて紡糸したところ500m/分の引取り速度では
ほとんど糸切れなく、繊維径8μm〜12μmのピ
ツチ繊維が得られた。このピツチ繊維の一部を酸
素雰囲気中230℃で1時間保持し、次に窒素ガス
中で30℃/分の昇温速度で1500℃迄加熱して、す
ぐ放冷し、炭素繊維を得たところこの炭素繊維の
引張り強度は約3GPa、引張り弾性率は約2.2×
102GPaを示した。 又、ピツチ繊維の残部より1grをとり、n―
ヘプタン可溶の成分(O成分)、n―ヘプタン不
溶でベンゼン可溶の成分(A成分)、ベンゼン不
溶でキノリン可溶の成分(B成分)及びキノリン
不溶の成分(C成分)を定量したところ、O成分
は8.9wt%、A成分は29.8wt%、B成分は24.8wt
%、C成分は36.5wt%であつた。 比較例 1 実施例1と同じタールを出発原料として、その
1000grを内容積1.45のステンレス製反応装置
に張り込み、窒素ガス気流下で十分撹拌しながら
415℃に保つて5時間、熱分解重縮合反応に供
し、残留ピツチとして軟化点312℃、比重1.36、
キノリン不溶の成分60%のピツチを110gr得
た。このピツチを偏光顕微鏡で観察すると直径が
約50μm以下の光学的等方性の球体をところどこ
ろに含む、ほとんど全体が光学的異方性のピツ
チ、即ち光学的異方性相が約95%以上のピツチで
あつた。 このピツチを実施例1と同じ紡糸器で紡糸する
と380℃以下の温度では非常に紡糸が困難であ
り、390℃〜410℃で一応紡糸が可能であつたが、
紡糸口付近から白煙を生じやすく、又300m/sec
の引取り速度でも1分間に1回以上の糸切れを生
じ、又繊維径は15μm〜18μmとなつた。ここで
得られたピツチ繊維の一部を実施例1と同じ方法
を用いて、不融化、次いで炭化し、炭素繊維とし
てその引張り強度、引張り弾性率を測定したとこ
ろ前者は約1.2GPa、後者は約2×102GPaであつ
た。このピツチのn―ヘプタン可溶の成分(O成
分)、n―ヘプタン不溶でベンゼン可溶の成分
(A成分)、ベンゼン不溶でキノリン不溶の成分
(B成分)及びキノリン不溶の成分(C成分)を
定量すると、O成分が1.3wt%、A成分が14.2wt
%、B成分が29.3wt%、C成分が55.2wt%であつ
た。又、ピツチ繊維のO成分、A成分、B成分及
びC成分の含有量は各々0.9wt%、11.8wt%、
29.3wt%及び58.0wt%であつた。 実施例 2 石油の接触分解で副生するタール状物質も常圧
に換算して450℃まで減圧蒸留して得た炭素含有
率89.4wt%、水素含有率8.9wt%、比重1.06、キ
ノリン不溶の成分0%の常温で粘稠なタールを出
発原料とした。原料1000grを内容積1.45のス
テンレス製反応装置に張込み、窒声ガス気流下
で、十分撹拌しながら、440℃に保つて1時間熱
分解重縮合反応に供し、残留ピツチとして、軟化
点220℃、比重1.33、キノリン不溶の成分(C成
分)14wt%で、偏光顕微鏡で観察すると、光学
的等方性の母相中に、直径が200μm以下の真球
状の光学的異方性球体を約60%含むピツチが、原
料に対して22wt%の収率で得られた。次にこの
ピツチを下部に抜き出し用バルブを備えた内径4
cm、長さ70cmの円筒形容器にとり、窒素雰囲気下
で毎分15回転で撹拌しつつ、380℃で30分間保持
した後、窒素加圧下100mmHgで容器の下部バル
ブを開き、やや粘稠な下層のピツチを静かに流下
させ、窒素ガスを流通してある容器に捕集した。
このようにして流下するピツチの粘度が顕著に低
下するまで抜き取つたピツチを下層ピツチと呼
び、その収率は張込量に対し約38wt%であつ
た。更に容器に残つた上層のピツチを流出させ、
別に捕集したピツチを上層ピツチと呼び、その収
率は、張込量に対して約61wt%であつた。上層
ピツチは、主として直径が20μm以下の真球状の
光学的異方性相小球体を約20%含む大部分は光学
的等方性相のピツチであり、軟化点195℃、比重
1.31、C成分4wt%、B成分約38wt%、A成分約
36wt%、O成分約22wt%のピツチであつた。一
方、下層ピツチは、等方性相を15%〜20%包含す
る大部分は大きな流れ模様をもつた光学的異方性
相から成り、その軟化点は252℃、比重1.35、C
成分約21wt%、B成分約37wt%、A成分約33wt
%、O成分約9wt%のピツチであつた。次に、こ
の下層ピツチを更に250mlの反応容器中で窒素雰
囲気下で十分撹拌しつつ390℃で約30分間熱処理
して得られたピツチを試料2、約50分間熱処理し
て得られたピツチを試料1とすると、試料1は偏
光顕微鏡の観察によつて、全て光学的異方性相で
あり、約260℃の軟化点を有し、試料2は又約5
%の光学的等方性相を微小球状に包含する大部分
が光学的等方性相のピツチで、軟化点は257℃で
あつた。次にこれら試料1と2を溶剤分離分析に
よつてO成分、A成分、B成分、C成分に分離し
その組成比と、各成分のC/H原子比、fa、数平
均分子量、最低分子量及び最高分子量を測定し
た。その結果を第1表に示した。 又、試料1及び2のピツチを、直径0.5mmのノ
ズルを有する紡糸器に充填し、350℃近傍の温度
で溶融し、200mmHg以下の窒素圧で押出し、高
速で回転するボビンに巻取つて紡糸したところ、
いずれのピツチも500m/分の高速で、糸切れも
少なく繊維径の5μm〜10μmのピツチ繊維を長
時間にわたつて紡糸することができた。その結果
を第2表に示した。なお試料1及び2から紡糸し
たピツチ繊維は、酸素雰囲気中240℃で30分間不
融化処理を施し、次に窒素ガス中で30℃/分の速
度で1500℃まで昇温後冷却して炭素繊維を得た。
この炭素繊維の特性評価結果を第10表に示した。 比較例 2 実施例2と同じタールを出発原料とした。原料
1000grを内容積1.45の熱処理装置に張込み、
窒素ガス気流下で十分撹拌しながら430℃で1.5時
間熱処理し、軟化点217℃、比重1.33、キノリン
不溶の成分(C成分)13wt%で、偏光顕微鏡で
観察すると、光学的等方性の母相中に直径が200
μm以下の真球状の光学的異方性小球体を約60%
含むピツチが原料に対し19.6wt%の収率で得られ
た。これを、試料3とする。 次に、この試料を実施例2と同様の操作で溶剤
分離し、各成分の含有量及び特性値を求め、その
結果を第1表に示した。更に、この試料を実施例
2と同様に紡糸したところ、500m/分では紡糸
不可能であり、300m/分でも糸切れ頻度が多
く、又、繊維太さの細いピツチ繊維は得られなか
つた。結果を第2表に示した。又、この試料3を
実施例2と同様にして紡糸し炭素繊維を得た。こ
の炭素繊維の特性評価結果を第10表に示した。
【表】
【表】
実施例 3
実施例2と同一の原料タールを用い、反応条件
を変えることによつて第3表に示す特性値を有す
るピツチを得た。これらのピツチを実施例2と同
一の直径0.5mmのノズルをもつ紡糸器で200mmHg
以下の窒素圧下で紡糸した結果をまとめて第4表
に示した。 本発明による試料4〜6の光学的異方性ピツチ
は、いずれも紡糸性が良好であつた。この試料4
〜6を実施例2と同様にして紡糸し炭素繊維を得
た。この炭素繊維の特性評価結果を第10表に示し
た。 比較例 3 実施例2と同一の原料タールを使用して反応条
件を変更することにより本発明の範囲内に包含さ
れないピツチを調整し比較試料7及び8とし、特
性値を第3表に、紡糸特性を第4表に示した。試
料7を実施例2と同様にして紡糸し炭素繊維を得
た。この炭素繊維の特性評価結果を第10表に示し
た。
を変えることによつて第3表に示す特性値を有す
るピツチを得た。これらのピツチを実施例2と同
一の直径0.5mmのノズルをもつ紡糸器で200mmHg
以下の窒素圧下で紡糸した結果をまとめて第4表
に示した。 本発明による試料4〜6の光学的異方性ピツチ
は、いずれも紡糸性が良好であつた。この試料4
〜6を実施例2と同様にして紡糸し炭素繊維を得
た。この炭素繊維の特性評価結果を第10表に示し
た。 比較例 3 実施例2と同一の原料タールを使用して反応条
件を変更することにより本発明の範囲内に包含さ
れないピツチを調整し比較試料7及び8とし、特
性値を第3表に、紡糸特性を第4表に示した。試
料7を実施例2と同様にして紡糸し炭素繊維を得
た。この炭素繊維の特性評価結果を第10表に示し
た。
【表】
【表】
比較例 4
ナフサの熱分解で副生するタール状物質を常圧
に換算して450℃まで減圧蒸留して得た釜底ター
ルを原料とした。原料の特性値は、炭素含有量
93.5wt%、水素含有量7.5wt%、比重1.15、キノ
リン不溶の成分(C成分)0%であつた。この原
料油1000grを実施例2と同じ熱処理装置を用
い、常圧、窒素ガス気流下で、十分撹拌しながら
415℃で4.0時間熱処理して得られたピツチは、偏
光顕微鏡で観察すると光学的等方性の母相中に直
径20μm以下の光学的異方性小球体を約10%含有
するピツチで、軟化点340℃、炭素含有量94.2wt
%、水素含有量5.4wt%で、ピツチの収率は原料
に対し31.3wt%であつた。このピツチを試料9と
した。 この試料9を実施例1と同じく直径0.5mmのノ
ズルをもつ紡糸器で200mmHg以下の窒素圧下で
紡糸したところ、500m/分では紡糸不可能であ
り、300m/分でも糸切れ頻度が多く、又繊維太
さの細いピツチ繊維は得られなかつた。又、紡糸
中の熱分解重縮合によると考えられるピツチの変
化が著しかつた。 又、この試料9を実施例2と同様にして紡糸し
炭素繊維を得た。この炭素繊維の特性評価結果を
第10表に示した。 比較例 5 比較例4の原料タールを実施例2の原料タール
に30wt%添加して、炭素含有量90.8wt%、水素
含有量8.5wt%、比重1.10、キノリン不溶の成分
0%の特性値を有する混合原料を得た。この混合
原料1000grを実施例2と同じ方法で415℃で3.5
時間熱処理し、軟化点236℃、比重1.31、キノリ
ン不溶の成分12wt%で、偏光顕微鏡で観察する
と光学的等方性の母相中に100μm以下の真球状
の光学的異方性小球体と100μm前後の不規則な
楕円状合体物とが混在し、これらの光学的異方性
相をピツチ全体に対し約40%含むピツチが原料に
対し18.8wt%の収率で得られた。このピツチを実
施例2と同じ方法で380℃で2時間保ち、反応容
器の下部コツクを開き、粘稠なピツチを張込み量
に対し27.7wt%抜き出した。この下層ピツチは小
さな流れ構造と大きな流れ構造部分が混在する光
学的異方性相を約95%含有し、この光学的異方性
相中に300μm以下の不規則な楕円状の光学的等
方性相部分が約5%混在するピツチで、軟化点
329℃、比重1.34、炭素含有量94.2wt%、水素含
有量4.8wt%であつた。この下層ピツチを試料10
とした。 これを前述の比較例4と同一の方法でO,A,
B,C成分の4成分に分別し、同様の操作で紡糸
した。各成分の特性値を第5表に、紡糸特性を第
6表に記載した。試料10は、試料9と同様に500
m/分では紡糸不可能であり、300m/分でも糸
切れ頻度が多く、又、繊維太さの細いピツチ繊維
は得られなかつた。 又、この試料10を実施例2と同様にして紡糸し
炭素繊維を得た。この炭素繊維の特性評価結果を
第10表に示した。
に換算して450℃まで減圧蒸留して得た釜底ター
ルを原料とした。原料の特性値は、炭素含有量
93.5wt%、水素含有量7.5wt%、比重1.15、キノ
リン不溶の成分(C成分)0%であつた。この原
料油1000grを実施例2と同じ熱処理装置を用
い、常圧、窒素ガス気流下で、十分撹拌しながら
415℃で4.0時間熱処理して得られたピツチは、偏
光顕微鏡で観察すると光学的等方性の母相中に直
径20μm以下の光学的異方性小球体を約10%含有
するピツチで、軟化点340℃、炭素含有量94.2wt
%、水素含有量5.4wt%で、ピツチの収率は原料
に対し31.3wt%であつた。このピツチを試料9と
した。 この試料9を実施例1と同じく直径0.5mmのノ
ズルをもつ紡糸器で200mmHg以下の窒素圧下で
紡糸したところ、500m/分では紡糸不可能であ
り、300m/分でも糸切れ頻度が多く、又繊維太
さの細いピツチ繊維は得られなかつた。又、紡糸
中の熱分解重縮合によると考えられるピツチの変
化が著しかつた。 又、この試料9を実施例2と同様にして紡糸し
炭素繊維を得た。この炭素繊維の特性評価結果を
第10表に示した。 比較例 5 比較例4の原料タールを実施例2の原料タール
に30wt%添加して、炭素含有量90.8wt%、水素
含有量8.5wt%、比重1.10、キノリン不溶の成分
0%の特性値を有する混合原料を得た。この混合
原料1000grを実施例2と同じ方法で415℃で3.5
時間熱処理し、軟化点236℃、比重1.31、キノリ
ン不溶の成分12wt%で、偏光顕微鏡で観察する
と光学的等方性の母相中に100μm以下の真球状
の光学的異方性小球体と100μm前後の不規則な
楕円状合体物とが混在し、これらの光学的異方性
相をピツチ全体に対し約40%含むピツチが原料に
対し18.8wt%の収率で得られた。このピツチを実
施例2と同じ方法で380℃で2時間保ち、反応容
器の下部コツクを開き、粘稠なピツチを張込み量
に対し27.7wt%抜き出した。この下層ピツチは小
さな流れ構造と大きな流れ構造部分が混在する光
学的異方性相を約95%含有し、この光学的異方性
相中に300μm以下の不規則な楕円状の光学的等
方性相部分が約5%混在するピツチで、軟化点
329℃、比重1.34、炭素含有量94.2wt%、水素含
有量4.8wt%であつた。この下層ピツチを試料10
とした。 これを前述の比較例4と同一の方法でO,A,
B,C成分の4成分に分別し、同様の操作で紡糸
した。各成分の特性値を第5表に、紡糸特性を第
6表に記載した。試料10は、試料9と同様に500
m/分では紡糸不可能であり、300m/分でも糸
切れ頻度が多く、又、繊維太さの細いピツチ繊維
は得られなかつた。 又、この試料10を実施例2と同様にして紡糸し
炭素繊維を得た。この炭素繊維の特性評価結果を
第10表に示した。
【表】
【表】
実施例 4
実施例2で得た試料1のピツチ50grをn―ヘ
プタン、ベンゼン、キノリンを溶媒として溶剤分
離によりO,A,B,C成分の4成分に分別した
各ピツチ構成成分を原料として、本発明の範囲内
のピツチ構成成分の比率で、撹拌翼を備えた内容
積約50mlの小型ガラス製混合容器に合成ピツチの
総重量が50grになるように予め秤量した10wt
%のO成分と30wt%の粉末状のA成分を入れ、
窒素ガス雰囲気下、溶融温度以上の温度からは毎
分60回転で撹拌しながら、5℃/分の昇温速度で
250℃まで昇温し、毎分60回転で撹拌しながら250
℃で30分間混合後放冷し、次いで30wt%の粉末
状のB成分を加え、上述の方法で300℃まで昇温
し、毎分60回転で撹拌しながら300℃で60分間混
合後放冷し、更に30wt%の粉末状のC成分を加
え毎分60回転で撹拌しながら5℃/分の昇温速度
で360℃まで昇温し、毎分60回転で撹拌しながら
360℃で60分間混合後放冷して合成ピツチを得
た。この合成ピツチの軟化点は254℃、比重
1.34、炭素含有量94.0wt%、水素含有量4.6wt%
で偏光顕微鏡で観察すると大きな流れ模様をもつ
た実測上100%光学的異方性ピツチであつた。 次にこの合成ピツチを再度O,A,B,C成分
の4成分に分割し、分析した結果の特性値を第7
表に示した。 又、この合成ピツチを実施例2と同一の直径
0.5mmのノズルをもつ紡糸器で、200mmHg以下の
窒素圧下で紡糸したところ、500m/分の速度で
糸切れ頻度も少なく繊維太さの細いピツチ繊維を
長時間にわたり得られた。この紡糸特性の結果を
第8表に示した。なお、この合成ピツチを試料11
としてこれから紡糸したピツチ繊維は実施例2と
同様にして紡糸し炭素繊維を得た。この炭素繊維
の特性評価結果を第10表に示した。 比較例 6 実施例2の試料1と同様の試料から分別した
O,A,B,C成分の4成分を原料として、O成
分20wt%、A成分10wt%、B成分40wt%、C成
分30wt%の比率で実施例4と同じ混合方法によ
り本発明の範囲内に包含されない合成ピツチを調
製した。この合成ピツチの軟化点は235℃、偏光
顕微鏡で観察すると光学的異方性の母相に約15%
の光学的等方性相が複雑に入り組んで混在するピ
ツチであつた。この合成ピツチを実施例2と同一
の直径0.5mmのノズルをもつ紡糸器で紡糸したと
ころ、300m/分でも糸切れ頻度が多くまた繊維
太さの細いピツチは得られなかつた。紡糸特性を
第9表に示した。なおこの合成ピツチを比較試料
12とし、そのピツチ繊維は実施例2と同様にして
紡糸し炭素繊維を得た。この炭素繊維の特性評価
結果を第10表に示した。
プタン、ベンゼン、キノリンを溶媒として溶剤分
離によりO,A,B,C成分の4成分に分別した
各ピツチ構成成分を原料として、本発明の範囲内
のピツチ構成成分の比率で、撹拌翼を備えた内容
積約50mlの小型ガラス製混合容器に合成ピツチの
総重量が50grになるように予め秤量した10wt
%のO成分と30wt%の粉末状のA成分を入れ、
窒素ガス雰囲気下、溶融温度以上の温度からは毎
分60回転で撹拌しながら、5℃/分の昇温速度で
250℃まで昇温し、毎分60回転で撹拌しながら250
℃で30分間混合後放冷し、次いで30wt%の粉末
状のB成分を加え、上述の方法で300℃まで昇温
し、毎分60回転で撹拌しながら300℃で60分間混
合後放冷し、更に30wt%の粉末状のC成分を加
え毎分60回転で撹拌しながら5℃/分の昇温速度
で360℃まで昇温し、毎分60回転で撹拌しながら
360℃で60分間混合後放冷して合成ピツチを得
た。この合成ピツチの軟化点は254℃、比重
1.34、炭素含有量94.0wt%、水素含有量4.6wt%
で偏光顕微鏡で観察すると大きな流れ模様をもつ
た実測上100%光学的異方性ピツチであつた。 次にこの合成ピツチを再度O,A,B,C成分
の4成分に分割し、分析した結果の特性値を第7
表に示した。 又、この合成ピツチを実施例2と同一の直径
0.5mmのノズルをもつ紡糸器で、200mmHg以下の
窒素圧下で紡糸したところ、500m/分の速度で
糸切れ頻度も少なく繊維太さの細いピツチ繊維を
長時間にわたり得られた。この紡糸特性の結果を
第8表に示した。なお、この合成ピツチを試料11
としてこれから紡糸したピツチ繊維は実施例2と
同様にして紡糸し炭素繊維を得た。この炭素繊維
の特性評価結果を第10表に示した。 比較例 6 実施例2の試料1と同様の試料から分別した
O,A,B,C成分の4成分を原料として、O成
分20wt%、A成分10wt%、B成分40wt%、C成
分30wt%の比率で実施例4と同じ混合方法によ
り本発明の範囲内に包含されない合成ピツチを調
製した。この合成ピツチの軟化点は235℃、偏光
顕微鏡で観察すると光学的異方性の母相に約15%
の光学的等方性相が複雑に入り組んで混在するピ
ツチであつた。この合成ピツチを実施例2と同一
の直径0.5mmのノズルをもつ紡糸器で紡糸したと
ころ、300m/分でも糸切れ頻度が多くまた繊維
太さの細いピツチは得られなかつた。紡糸特性を
第9表に示した。なおこの合成ピツチを比較試料
12とし、そのピツチ繊維は実施例2と同様にして
紡糸し炭素繊維を得た。この炭素繊維の特性評価
結果を第10表に示した。
【表】
【表】
【表】
【表】
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 1 (a) C/H原子比が1.3〜1.6、芳香族構造炭
素分率(fa)が0.80〜0.95、数平均分子量が
250〜700及び最低分子量が約150以上であるn
―ヘプタン可溶の成分(O成分)を2重量%〜
20重量%、 (b) C/H原子比が1.4〜1.7、faが0.80〜0.95、
数平均分子量が400〜1000及び最高分子量が約
5000以下であるn―ヘプタン不溶且つベンゼン
可溶の成分(A成分)を15重量%〜45重量%、 (c) C/H原子比が1.5〜1.9、faが0.80〜0.95、
数平均分子量が800〜2000及び最高分子量が約
10000以下であるベンゼン不溶且つキノリン可
溶の成分(B成分)を5重量%〜55重量%、並
びに (d) C/H原子比が1.8〜2.3、faが0.80〜0.95、
数平均分子量が1500〜3000及び最高分子量が約
30000以下であるキノリン不溶の成分(C成
分)を20重量%〜70重量%含有し、 光学的異方性相の体積含有率が約90%以上を示
し、約320℃以下の軟化点を有することを特徴と
する炭素材用光学的異方性炭素質ピツチ。 2 O成分を5重量%〜15重量%、A成分を15重
量%〜35重量%、B成分を5重量%〜40重量%及
びC成分を25重量%〜65重量%含有する特許請求
の範囲第1項記載の炭素材用光学的異方性炭素質
ピツチ。 3 実質的に全て光学的異方性相である特許請求
の範囲第1項又は第2項記載の炭素材用光学的異
方性炭素質ピツチ。 4 約230℃〜約320℃の軟化点を有する特許請求
の範囲第1項から第3項のいずれかの項に記載の
炭素材用光学的異方性炭素質ピツチ。 5 繊維形態にある特許請求の範囲第1項から第
4項のいずれかの項に記載の炭素材用光学的異方
性炭素質ピツチ。
Priority Applications (5)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP55162972A JPS5788016A (en) | 1980-11-19 | 1980-11-19 | Optically anisotropic carbonaceous pitch for carbon material, its manufacture, and manufacture of carbonaceous pitch fiber and carbon fiber |
| EP81305427A EP0055024B1 (en) | 1980-11-19 | 1981-11-17 | Carbonaceous pitch, production thereof and carbon fibers therefrom |
| DE8181305427T DE3166516D1 (en) | 1980-11-19 | 1981-11-17 | Carbonaceous pitch, production thereof and carbon fibers therefrom |
| AU77602/81A AU551480B2 (en) | 1980-11-19 | 1981-11-18 | Production of anisotropic pitch and pitch fibres |
| US06/487,700 US4534850A (en) | 1980-11-19 | 1983-04-22 | Optically antisotropic carbonaceous pitch |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP55162972A JPS5788016A (en) | 1980-11-19 | 1980-11-19 | Optically anisotropic carbonaceous pitch for carbon material, its manufacture, and manufacture of carbonaceous pitch fiber and carbon fiber |
Related Child Applications (2)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP1668286A Division JPS61215717A (ja) | 1986-01-30 | 1986-01-30 | 炭素繊維の製造法 |
| JP20396786A Division JPS62181391A (ja) | 1986-08-29 | 1986-08-29 | 光学的異方性炭素質ピツチの製造法 |
Publications (2)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JPS5788016A JPS5788016A (en) | 1982-06-01 |
| JPS6249912B2 true JPS6249912B2 (ja) | 1987-10-21 |
Family
ID=15764772
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP55162972A Granted JPS5788016A (en) | 1980-11-19 | 1980-11-19 | Optically anisotropic carbonaceous pitch for carbon material, its manufacture, and manufacture of carbonaceous pitch fiber and carbon fiber |
Country Status (5)
| Country | Link |
|---|---|
| US (1) | US4534850A (ja) |
| EP (1) | EP0055024B1 (ja) |
| JP (1) | JPS5788016A (ja) |
| AU (1) | AU551480B2 (ja) |
| DE (1) | DE3166516D1 (ja) |
Families Citing this family (14)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JPS5829885A (ja) * | 1981-08-18 | 1983-02-22 | Mitsubishi Oil Co Ltd | 炭素繊維原料用ピツチの製造法 |
| JPS58142976A (ja) * | 1982-02-22 | 1983-08-25 | Toa Nenryo Kogyo Kk | 均質低軟化点光学的異方性ピッチの製法 |
| JPS58164687A (ja) * | 1982-03-24 | 1983-09-29 | Toa Nenryo Kogyo Kk | 光学的異方性ピツチの製造方法 |
| US4504454A (en) * | 1983-03-28 | 1985-03-12 | E. I. Du Pont De Nemours And Company | Process of spinning pitch-based carbon fibers |
| JPS6034619A (ja) * | 1983-07-29 | 1985-02-22 | Toa Nenryo Kogyo Kk | 炭素繊維及び黒鉛繊維の製造方法 |
| JPH0670220B2 (ja) * | 1984-12-28 | 1994-09-07 | 日本石油株式会社 | 炭素繊維用ピッチの製造法 |
| AU593326B2 (en) * | 1986-06-09 | 1990-02-08 | Conoco Inc. | Pressure settling of mesophase |
| JPH0791372B2 (ja) * | 1987-07-08 | 1995-10-04 | 呉羽化学工業株式会社 | 炭素材料用原料ピッチの製造方法 |
| US4891126A (en) * | 1987-11-27 | 1990-01-02 | Mitsubishi Gas Chemical Company, Inc. | Mesophase pitch for use in the making of carbon materials and process for producing the same |
| EP0381475B1 (en) * | 1989-02-01 | 1996-11-20 | Kureha Kagaku Kogyo Kabushiki Kaisha | Process for producing formed carbon products |
| JPH0517782A (ja) * | 1991-07-09 | 1993-01-26 | Tonen Corp | 高圧縮強度炭素繊維製造用液晶ピツチ及び高圧縮強度炭素繊維の製造方法 |
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