JPH0645569B2 - 2,6−ナフタレンジカルボン酸の製造法 - Google Patents

2,6−ナフタレンジカルボン酸の製造法

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JPH0645569B2
JPH0645569B2 JP61249460A JP24946086A JPH0645569B2 JP H0645569 B2 JPH0645569 B2 JP H0645569B2 JP 61249460 A JP61249460 A JP 61249460A JP 24946086 A JP24946086 A JP 24946086A JP H0645569 B2 JPH0645569 B2 JP H0645569B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (a)産業上の利用分野 本発明は、2,6−ジイソプロピルナフタレン又はその酸
化誘導対を分子状酸素により酸化して、2,6−ナフタレ
ンジカルボン酸を製造する方法に関するものである。更
に詳しくは、該酸化を脂肪族モノカルボン酸含有溶媒中
重金属及び臭素を含む触媒の存在下に行つて目的とする
2,6−ナフタレンジカルボン酸を極めて高い収率で得る
方法に関するものである。
(b)従来技術 2,6−ナフタレンジカルボン酸(以下これを“2,6−ND
A”と略称することがある。)あるいはそのエステル、
酸クロライドの如き誘導体は、種々ポリエステル,ポリ
アミドなどの二塩基成分として価値ある化合物である。
殊に、2,6−NDAとエチレングリコールとから形成さ
れるポリエチレン2,6−ナフタレートは、ポリエチレン
テレフタレートと比べて耐熱性,機械的特性がより優れ
ており、フイルムや繊維製品を与える重合体として有用
である。
従来、2,6−NDAの製造法としては、2,6−ジメチルナ
フタレンの酸化反応、例えば2,6−ジメチルナフタレン
を酢酸溶媒中コバルト,マンガン及び臭素よりなる触媒
の存在下に分子状酸素と接触酸化せしめる方法が知られ
ている。この方法によれば、2,6−ジメチルナフタレン
から2,6−NDAへの酸化自体は比較的容易であり、目
的とする2,6−NDAを比較的高純度且つ高収率で得る
ことができる。
しかし、この方法における原料である2,6−ジメチルナ
フタレンはその製造法が煩雑であり、高純度あるいは高
品質の該化合物を大量且つ安価に得ることは困難であ
る。従来2,6−ジメチルナフタレンの製造法としては、
たとえば、ナフタレンのメチル化,ジメチルナフタレン
の異性化,モノメチルナフタレンの不均化,その他トラ
ンス・アルキル化法などが知られている。これらの方法
はいずれも2,6−ジメチルナフタレン以外の他の異性
体、殊に2,7−ジメチルナフタレンの生成を避けること
ができず、混合ジメチルナフタレンからの2,6−ジメチ
ルナフタレンの単離は2,7−ジメチルナフタレンと融
点,沸点,溶解特性が極めて近似乃至類似しているため
極めて困難であつた。
2,7−ジメチルナフタレンを含む2,6−ジメチルナフタレ
ンを酸化して得られる2,7−NDAを含む2,6−NDA
は、高純度の2,6−NDAを利用して得られた重合体よ
りも例えば耐熱性や機械的性質の低下した例えばポリエ
チレンナフタレート等の重合体を与えることになる。
一方、これに比べてジイソプロピルナフタレンは、ナフ
タレンとプロピレンとのアルキル化(イソプロピル化)
によつて容易に合成することができる。このアルキル化
反応は極めて容易であり、得られたアルキル化生成物を
必要に応じ不均化,異性化あるいはトランスアルキル化
して、2,6−ジイソプロピルナフタレン含量の高い反応
生成物を得ることも極めて容易である。得られた反応生
成物から2,6−ジイソプロピルナフタレンの分離もまた
極めて容易である。
しかしながら、本発明者らの研究によれば、2,6−ジイ
ソプロピルナフタレン(以下これを“2,6−DIPN”
と略称することがある)の酸化反応を、p−キシレンや
2,6−ジメチルナフタレンを酸化するに適した公知の反
応条件下では、2,6−NDAの収率は高々50%と極め
て低くまた、多量の副生成物が生成するために得られる
2,6−NDAの純度も低く、従つて上記公知方法によつ
て工業的に2,6−DIPNから2,6−NDAを得ることは
到底不可能であり、従つてこれまで2,6−DIPNを原
料として用いる2,6−NDAの製造は工業的に全く顧み
られることがなかつた。
このように前記2,6−DIPNの既知の反応条件下での
酸化が満足すべき結果が得られなかつた理由は、明確に
は判らないが本発明者は多くの実験から、その他のアル
キル置換芳香族炭化水素の酸化の場合と異なり、活性が
高く対酸化安定性の低いイソプロピル基とナフタレン核
とを有する2,6−DIPNの酸化においては反応初期の
イソプロピル基の水素引抜きに伴うラジカルおよびヒド
ロペルオキシドの生成が極めて容易かつ迅速である一
方、触媒中の臭素のイソプロピルラジカルへの付加、そ
れに伴う触媒の活性低下、その結果によるナフタレン核
開裂の促進、さらに触媒の安定錯体(例えばオルソーベ
ンゼンカルボン酸錯体等)形成による不活性化等が急速
に順次進行してそのために目的とする酸化が充分に進行
せず、むしろ副反応が促進されるためであろうと推察さ
れる。
先に本発明者らは、2,6−DIPNまたはその酸化誘導
体の酸化において被酸化物に対して従来知られている量
よりも遥かに多量のコバルトおよび/またはマンガンを
使用することにより前記副反応を抑制し、高収率で2,6
−NDAを得る方法を見出し先に提案した(特願昭58-1
97558,同58-197559,同59-261765およびEP−A−142
719号明細書参照)。
これらの方法では、従来知られている如何なる方法によ
るよりも高収率でかつ高純度の2,6−NDAが得られる
ため工業的に極めて有用である反面高価且つ環境に有害
な触媒金属を多量に使用するためこれらの反応中の取扱
操作や回収,循環,公害防止等に多大の考慮を要すると
いう欠点があつた。
(c)発明の目的 このため、本発明者らはさらに工業的に有利な2,6−D
IPN又はその酸化誘導体の酸化法の研究を継続した結
果、触媒として使用する臭素に対しアルカリ金属を過剰
量で反応系に存在せしめることにより極めて高い収率で
2,6−NDAが得られることを見出し本発明に到達し
た。
(d)発明の構成および効果 しかして、本発明に従えば2,6−ジイソプロピルナフタ
レンまたはその酸化誘導体を、分子状酸素を用いて酸化
するに際し、 (i)原子比が5:95〜60:40であり、溶媒100g当り合計
量で0.4〜1.0重量%のコバルトおよびマンガン (ii)溶媒100g当り3〜6重量%の臭素および (iii)臭素1グラム原子に対して1.3〜8グラム原子のア
ルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、酢酸塩、プロピオン酸
塩および臭化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種 を含有する触媒の存在下、溶媒として (iv)酢酸対プロピオン酸の重量比が85〜15:15〜85の範
囲にある混合脂肪族モノカルボン酸を少なくとも70重量
%用いる ことを特徴とする2,6−ナフタレンジカルボン酸の製造
法が提供される。
従来、一般にアルキル置換芳香族炭化水素、特にp−キ
シレンを、コバルトおよび/またはカンガンの如き重金
属と臭素よりなる触媒を使用し、脂肪族モノカルボン酸
中で分子状酸素により酸化する方法において、その反応
をナトリウム・カリウム等のアルカリ金属、カルシウム
等のアルカリ土類金属又はアンモニウムのようなアルカ
リ成分の共存下に行う方法は公知であり、臭素と該アル
カリ成分の共通の供給源としてNaBr,KBr,CaBr2,NH4Br
の臭化物や、NaOH,KOH等の水酸化物とHBr,CoBr2,MnBr2
との化合物が使用されている。
しかし従来知られている限りでは、このようなアルカリ
金属等の反応系への添加効果は反応の本質に対しては極
めて小さく、例えば特公昭49-25936号公報実施例10お
よび比較例6〜8中には触媒として酢酸コバルト,酢酸
マンガン,臭化水素酸を用いてp−キシレンを酸化した
場合より、臭化水素酸の代りに臭化ナトリウム,臭化カ
リウム,臭化アンモニウムを用いた場合の方が得られた
テレフタル酸の収率は、わずかではあるが低い(前者が
97モル%に対して後者は96〜94モル%)ことが示
されている。
また特公昭59-8252号公報には、同様にp−キシレンの
酸化において臭素原子に対して特定量(アルカリ金属/
Br原子比=7/9以下)のアルカリ金属原子を添加する方
法が示されているが、これによるテレフタル酸の収率の
増減については言及されておらず、生成物の性状の変化
のみが示されている。
特公昭58-3337号公報にはジメチルナフタレンを酸化す
る場合アンモニウム塩を添加した例(実施例1〜3)お
よび添加しない例(実施例6)が示されているが生成ナ
フタレンジカルボン酸の収率には殆んど差がなく94〜
96モル%である。
このように従来の特許明細書等中には、このような酸化
反応にアルカリ金属等の添加されている例は多いが、こ
れにより、特に著しい収率上の効果の発現がみられたと
記載されている例は見当らず、むしろかえつて生成物の
性状に対して好ましくないとする記載(例えば特開昭51
-127037号公報および特公昭49-25936号公報等)もあ
る。従つてこれらの記載からみれば、アルキル置換芳香
族炭化水素の重金属及び臭素の存在下脂肪族モノカルボ
ン酸中で分子状酸素による酸化反応に対して、アルカリ
金属の添加は本質的なものではなく、目的生成物の収率
には悪い影響を与えることがあつても良い影響は与えな
いと予想された。
事実、本発明者の実験においても、p−キシレンやジメ
チルナフタレン等の従来公知の条件下での酸化反応にお
いて、アルカリ金属やアンモニウム等の添加効果は、5
%の収率向上すら認められず、殆んど同等乃至むしろ低
下を示す場合が多かつた。
これに対し、本発明において、2,6−DIPN又はその
酸化誘導体を特定量のアルカリ金属の存在下に酸化する
ときには、後述する実施例に示されているとおり、2,6
−NDAが極めて高収率で得られることは、上記従来の
開示からすれば全く驚くべきことであり、当業者にとつ
て予想外のことである。
本発明方法において用いられる出発原料は2,6−ジイソ
プロピルナフタレン(2,6−DIPN)又はその酸化誘
導体又はそれらの混合物であり、それらは高純度のもの
が好ましいが必ずしも純粋である必要はなく、酸化反応
に対する影響或いは生成する2,6−NDAの純度、着色
に許容される範囲で他の成分を含んでいてもよい。
2,6−DIPNの酸化誘導体とは、2,6−DIPNの酸化
によって生成し、また反応系内において酸化されること
によつて最終的に目的とする2,6−NDAを与えるもの
である。そこで本発明の出発原料は、好ましくは下記一
般式(I) で表わされる。
出発原料としては、前記式(I)におけるRとRが同
一もしくは異なり、 および から選ばれるものが好ましい。
本発明において酸化触媒としては前述した通り (i)コバルトおよび/またはマンガンよりなる重金属
(A成分)および (ii)臭素(B成分) が使用される。
A成分およびB成分は共に本発明の酸化反応系中で溶解
しうる形態であれば、いかなる形態であつてもよい。
A成分を形成するコバルトおよびマンガンとしては例え
ば、酸化物,水酸化物,炭酸塩あるいはハロゲン化物、
特に臭化物の如き無機塩、蟻酸,酢酸,プロピオン酸,
ナフテン酸または芳香族カルボン酸特にNDAの如き有
機カルボン酸塩が挙げられるが、これらのうち好ましい
のは臭化物および脂肪族カルボン酸との塩特に酢酸塩で
ある。
またB成分を形成する臭素としては酸化反応系に溶解し
て、Brイオンを発生するものであれば有機化合物または
無機化合物のいずれであつてもよい。具体的には、例え
ば分子状臭素(Br2),臭化水素,臭化水素酸塩の如き
無機臭素化合物または臭化メチル,臭化エチル,ブロモ
ホルム,臭化エチレンその他の臭化アルキル若しくはブ
ロモ酢酸,多ブロモ酢酸の如き臭素化脂肪酸等の有機臭
素化合物が挙げられる。これらのうち好ましいのは、分
子状臭素(Br2),臭化水素,臭化ナトリウム,臭化カ
リウム,臭化リチウム,臭化アンモニウム,臭化エチ
ル,ブロモ酢酸,臭化コバルトおよび臭化マンガンであ
る。
これらの酸化触媒は一般にその単塩又は錯塩のイオンと
して、A成分に対してB成分が配位乃至結合若しくはイ
オン対等を形成して反応に関与するものと考えられ、従
つて反応中このようなイオンを形成し難い状態での金属
単体又は不溶性の金属化合物あるいは反応温度で分解し
て臭素イオンを脱離し難いような有機臭素化合物、例え
ば核臭素化芳香族化合物等は触媒として使用してもその
効果は小さく得策でない。
本発明の反応において酸化反応系に加えられた臭素はそ
れがどのような化合物形態で与えられたものであれ、そ
の一部は直接または二次的に被酸化物2,6−DIPN又
はその酸化誘導体のイソプロピル側鎖に付加してこれら
の側鎖有機臭素化合物を形成し易い。
そして、これらは本発明の酸化反応条件下では多かれ少
なかれ分解して臭素イオンを脱離再生する。従つてこの
ような被酸化物2,6−DIPNまたはその酸化誘導体の
側鎖臭素化合物もまた本発明方法における触媒B成分源
として有効である。
上記酸化触媒の使用量は厳密に制限されるものではな
く、原料及び溶媒の種類,反応条件等に依存して広範に
わたり変えることができる。しかし、本発明者らが前述
のEP−A−142719で述べたように、本発明に従う酸化
反応においては反応収率面からみる限り原料に対するA
成分の使用割合及び溶媒に対するA成分の濃度は何れも
高ければ高い程良くその上限は事実上規定し難い。
しかし工業的に過度の触媒の使用は生産性の低下を招来
するし、また本発明に示した特定量のアルカリ金属の使
用により上記特許に記されたよりはるかに少量の触媒の
使用で高反応収率が達成出来るので実用上のA成分の使
用量は使用する脂肪族モノカルボン酸溶媒100g当
り、合計の金属量で一般に0.0035〜0.1グラム原子、好
ましくは0.007〜0.07グラム原子、さらに好ましくは0.0
08〜0.05グラム原子の範囲内とすることができる。
A成分の重金属としてはコバルト又はマンガンの何れか
一方のみ或いは両者の混合物が使われるが、特に後者の
混合物が好ましい。コバルト及びマンガンを混合して使
用する場合その混合割合は、例えば反応温度,時間,触
媒使用量,溶媒使用量などによりその好ましい範囲が左
右されるが、通常Co:Mnの原子比で表わして1:99〜
99:1、特に5:95〜60:40の範囲が好まし
い。
本発明者らの観測によれば、反応に使用するB成分とし
ての臭素の最適濃度は使用するA成分濃度のみでなく反
応温度,原料濃度,溶媒量等の他の反応条件にも依存す
る。
従つて本発明方法における用いられる臭素の濃度は一義
的に規制するのは困難であるが、一般には使用するA成
分に対しA成分の合計(金属換算)対臭素の原子比で
1:0.1〜1:20、好ましくは1:0.3〜1:10、さ
らに好ましくは1:0.5〜1:5.0の範囲内とするのが好
都合である。一般的には、A成分の使用量が少ない程こ
の比は高い方がよい。
本発明の方法は、前述したとおり、過剰のアルカリ金属
の存在下に実施することを1つの大きな特徴としてい
る。該アルカリ金属は一般に、水酸化物,炭酸塩,臭化
物のような無機塩類;酢酸塩,プロピオン酸塩のような
有機酸塩の形で反応系に導入される。一方、アルカリ金
属としては、カリウム,ナトリウム及びリチウムが好ま
しく、中でもカリウム及びナトリウム、さらに特にカリ
ウムが適している。
本発明に従う反応系に存在させうるアルカリ金属の最適
濃度は用いるアルカリ金属の種類や他の反応条件にも依
存し必ずしも一義的には決め難いが、少くとも反応系中
に存在する臭素1g原子当り1.1g原子は必要であり、
それ以下では2,6−NDAの収率の実質的な改善効果を
期待できない。しかし臭素原子に対するアルカリ金属の
濃度は高ければ高いほど良いわけではなく、あまり高す
ぎると2,6−NDAの収率は臭素対アルカリ金属の比率
次第で却つて低下する場合がある。又実用上の見地から
も無用に多量のアルカリ金属を使用する事は何ら効用が
ないのみならず、かえつて有害の場合の方が多く、この
面からもアルカリ金属の使用量の上限は臭素1g原子当
り8g原子で充分である。
すなわちアルカリ金属の使用量は反応系中に存在する臭
素1g原子当り、1.3〜8g原子、好ましくは1.5〜6g
原子である。また、アルカリ金属の脂肪族モノカルボン
酸溶媒に対する濃度は、アルカリ金属対臭素の原子比が
上記範囲内において、一般に、使用する脂肪族モノカル
ボン酸100g当り、0.4g原子を越えない割合、好ま
しくは0.25g原子を越えない割合であるのが好都合であ
る。
本発明方法において反応溶媒として、酢酸,プロピオン
酸の混合物を少くとも70重量%、好ましくは少くとも
80重量%含むものが使用される。該反応溶媒の残りの
成分は、本発明の酸化反応に実質的に悪影響を与えない
限り特に規制されるものではなく、例えば水,他の脂肪
族モノカルボン酸、例えばn−酪酸であることができ
る。特に、本発明においては、酢酸対プロピオン酸の重
量比が一般に10/90〜90/10、好ましくは15/85〜85/15の
範囲内にある溶媒を使用するのが収率及び経済上の点で
有利である。
本発明者の研究によれば、反応溶媒として酢酸を使用す
る場合に比べて、プロピオン酸と酢酸とを混合して使用
した場合いくつかの優れた利点があることがわかつた。
すなわち、その1つは、目的とする2,6−NDAの収率
が向上することである。具体的には同一溶媒濃度条件下
で酸化を行うと、2,6−NDAの収率は著しく向上し、
また同じ2,6−NDAの収率を達成するために使用すべ
き触媒濃度は著しく低下させることができる。第2の利
点は、酢酸に比べてプロピオン酸と酢酸とを混合して使
用した場合2,6−NDAの着色が少なくなり、後の精製
操作が容易になるということである。
本発明のDIPNまたはその酸化誘導体の酸化において
は、後述する多くの実施例の結果が示しているようにそ
の反応における酢酸およびプロピオン酸とアルカリ金属
の併用効果は顕著であり、これはp−キシレンやジメチ
ルナフタレンのような従来公知の酸化反応とは異なり、
DIPNの酸化反応にのみ特有な効果である。
溶媒は本質的には原料および触媒の少くとも一部を溶解
し、これらと分子状酸素との接触を助けるために使用さ
れるが、その他にも熱の分散,除熱や生成物の流動性,
生成物の結晶成長等を促進,助長し、本発明方法の工業
的実施を容易にする等の目的を有している。
従つて、その使用量は、これらの目的に応じて定められ
るべきであり本質的に本発明方法に使用される溶媒量は
規制されないが、実用上系中の原料(2,6−DIP
N),酸化中間体,および目的2,6−NDAの合計重量
に対して少くとも1倍、好ましくは2〜10倍程度の使
用が実施に便利である。
溶媒の使用量が過度に少いと本発明の目的が充分に達成
されず、反応の円滑な進行が妨げられるが、逆に上記の
使用量以上に過度に溶媒を多量に使用しても反応自体が
それにより促進される事はなく、かえつて溶媒の酸化燃
焼による損失のみが多くなり得策ではない。
本発明方法は、2,6−DIPNまたはその酸化誘導体を
酸化触媒の存在下、上述した反応溶媒中、分子状酸素に
より酸化することにより実施される。
原料の2,6−DIPNまたはその酸化誘導体の反応系へ
の供給割合は、出発原料である2,6−DIPNまたはそ
の酸化誘導体の反応系中における対酸化触媒濃度を上記
酸化触媒の該総重金属元素(A成分)1グラム原子当
り、好ましくは2モル以下、より好ましくは1モル以
下、就中0.5モル以下に維持するのが有利であり、また
このような割合とするのが好都合である。
一般に、本発明の方法を連続的または半連続式に行なう
場合、反応温度と酸素濃度(酸素分圧)とを好適条件範
囲内に保持する限り出発原料の反応による消失は速かで
あり、反応中の出発原料濃度を上記2モル以下に維持す
ることは比較的容易である。また、反応媒体は、上記酸
化触媒の該重金属元素(A成分)の該反応媒体に対する
濃度が使用する脂肪族モノカルボン酸溶媒100g当り
0.0035〜0.1g原子、好ましくは0.007〜0.07g原子、さ
らに好ましくは0.008〜0.05g原子の範囲内となる割合
で有利に使用される。
本発明方法において分子状酸素源としては純酸素の他、
これを他の不活性ガスで稀釈した混合ガスが使用され
る、実用上空気が最も入手し易い分子状酸素含有ガスで
あり、これをそのままあるいは必要に応じて適宜酸素あ
るいは他の不活性ガスで濃縮あるいは稀釈して使用する
ことができる。
本発明方法の酸化反応は常圧でも可能であるが、加圧下
でより一層速やかに進行する。
反応は一般には系中の酸素分圧が高ければ高いほど速や
かに進行する。使用上の見地からは酸素分圧0.1kg/cm2-
abs以上、好ましくは0.2kg/cm2-abs以上、例えば0.1〜
8kg/cm2-abs程度で充分である。これを不活性ガスとの
混合状態で使用した場合の全圧が30kg/cm2−G以下で
も反応は速やかに進行し高収率で2,6−NDAを得るこ
とができる。
反応は60℃でも進行するが、このとき反応速度は遅く
必ずしも経済的ではない。また反応温度が240℃を越
えると副生成物の生成比率が増加し2,6−NDAの収率
は低下する。
また高温下では酢酸,プロピオン酸等の溶媒の燃焼損失
も無視出来なくなる。一般には好ましい反応温度は12
0〜240℃、より好ましくは160〜230℃、特に
好ましくは180〜220℃の範囲が有利である。
本発明方法の酸化反応を実施するに当つては、酸化触媒
および反応媒体と出発原料とを同時または別々にあるい
は経時的に反応容器に装入して(必要に応じて加温後)
これに分子状酸素含有ガスを吸込み所定の圧力,温度を
保持しながら2,6−NDAが得られるまでの充分な時間
反応を行なう。
反応の進行に伴い、分子状酸素が吸収されると共に多量
の反応熱を発生するので、通常酸化反応中は外部からの
加温,加熱は不要であるばかりでなく、むしろ除熱して
所定反応温度を維持することが好ましい。
この際、除熱は酢酸,水等の反応系媒体の蒸発や吹込み
ガスの放出による熱の随伴等の内部除熱かあるいは外部
から水,水蒸気等の冷媒を用いて冷却するか若しくはこ
れら双方を併用するか等の公知の方法により容易に行う
ことができる。
反応系中の原料が消失し、反応の終了が近付くと分子状
酸素の吸収が見掛け上殆んど停止するのでその時点で反
応を終了する。
反応終了後反応生成混合物からの2,6−NDAの分離・
回収および2,6−NDAの精製と2,6−NDAを除去した
反応母液の後処理,循環,再使用等は他の出発原料、例
えば2,6−ジメチルナフタレンからの2,6−NDAの製造
やp−キシレンからのテレフタル酸の製造において公知
の常法に従つて行うことができる。
反応を停止した時点において、反応系内にはまだ完全に
2,6−NDAに転化していない反応中間体の存在が認め
られる場合がある。
このような場合には、必要に応じてこれを更に分子状酸
素と接触させるいわゆるポスト・オキシデーションに付
することにより反応を完結させるとNDAの収率を向上
させると共に同時に不要な副生成物やその中間体を酸化
分解して生成2,6−NDAの純度をも向上せしめること
ができる。
このようなポスト・オキシデーションは主酸化反応を実
施した酸化反応容器内でそのまま、または主酸化反応
後、一旦別容器に移してその後これを所要時間分子状酸
素と接触させることにより行われる。
この際ポスト・オキシデーションの反応圧力,温度は主
反応の場合と同じである必要はなく、これより高くても
低くてもよい。
ポスト・オキシデーションを実施した後に得られた反応
混合の後処理例えば2,6−NDAの分離,回収等は上記
と同様にして実施することができる。
本発明方法はバツチ式,半連続式および連続式のいずれ
の方法によつても実施することができる。
本発明方法は、酸化触媒に対する出発原料の濃度を低く
維持することが容易に可能となるため、連続式または半
連続式により有利に実施される。
それ故、本発明の好ましい具体例によれば、2,6−DI
PNまたはその酸化誘導体を、酢酸,プロピオン酸の混
合物よりなる脂肪族モノカルボン酸を少くとも70重量
%含有する反応媒体中で、 (i)コバルトおよび/またはマンガンよりなる重金属 および (ii)臭素 よりなる触媒の存在下、臭素1g−原子につきアルカリ
金属を1.1〜15g−原子共存させて分子状酸素で酸化
して2,6−DIPNを製造する方法であつて、2,6−DI
PNを連続的にまたは半連続的に添加し、かつ反応系か
ら生成した2,6−NDAを含む反応混合物の1部または
全部を抜き出し、そして該反応混合物から2,6−NDA
を分離して母液をそのまま、または必要により水を除去
したのち、上記酸化反応に再使用することを特徴とする
方法が提供される。
出発原料である2,6−DIPN又はその酸化誘導体は反
応系に連続的にまたは半連続的に(経時的に数回に分け
て)添加することができる。反応混合物の1部の抜き出
しは、連続的にまたは半連続的に行うことができ、ま
た、反応混合物の全部の抜き出しは、一時に行うことが
できる。
酸化触媒は、反応系中に必要量あらかじめ存在せしめて
おくこともでき、また反応中に連続的または半連続的に
添加することもできる。
反応系から抜き出した反応混合物は必要により上記の如
くポスト・オキシデーションに付すことができ、2,6−
NDAを分離される。母液の全部または一部はそのまま
あるいは必要により水を除去したのち、再び上記酸化反
応に使用される。
以上述べたとおり、本発明方法によれば、従来2,6−D
IPNまたはその酸化誘導体から低収率でしか得られな
かつた2,6−NDAが容易に高収率かつ高純度で得られ
るようになり、工業的に従来の何れかの方法によるより
も安価でかつ高品質の2,6−NDAの供給が可能になつ
た。
本発明方法により得られる2,6−NDAは例えばポリエ
ステル,ポリアミド等の原料として使用され、高品質の
重合体を与える。
以下実施例およびその比較例を掲げて本発明方法を詳述
する。
なお、以下例示において部とはすべて重量部を指す。
実施例1 還流冷却器、ガス吹き込み管、排出管、原料連続送入ポ
ンプおよび撹拌機を有するチタンライニング加圧・反応
容器に 酢酸(HOAc) 75部 プロピオン酸(HOPrn) 75部 酢酸コバルト・4水塩 3.114部 (Co(OAc)2・4H2O)(0.00833mol/100g-溶媒) 酢酸マンガン・4水塩 3.064部 (Mn(OAc)2・4H2O)(0.00833mol/100g-溶媒) 臭化カリウム(KBr) 11.900部 (Br-0.6667g-atom/100g-溶媒) 酢酸カリウム(KOAc) 9.814部 (ΣK0.13333g-atom/100g-溶媒) (従つてCo+Mn/Br=1/4;ΣK/Br-=2)を装入して
温度200℃、圧力30kg/cm2-Gの条件下ではげしく撹
拌しながらこれに、 2,6−ジイソプロピルナフタレン 53.08部 (2,6−DIPN) を連続的に4時間かけて送入すると共に過剰の圧縮空気
を流通して酸化反応を行つた。
2,6−DIPNの送入完了後さらにそのまま200℃、
30kg/cm2-Gに保つて空気の流通を1時間継続して反応
を完結させた後反応生成物を取り出して、主として2,6
−ナフタレンジカルボン酸(2,6−NDCA)よりなる
生成固体沈殿を分離した。
これを熱酢酸および熱水で洗浄後乾燥し、2,6−NDC
A純度99.8%の帯黄白色微結晶生成物49.13部を得た。
これは使用した原料2,6−DIPNに対する収率として9
1.60モル%であつた。
比較例1 実施例1と同様の反応を、酢酸75部、プロピオン酸7
5部の代りに 酢酸(HOAc) 150部 とした以外は実施例1と同様の操作を行つた。
この時得られた生成物は2,6−NDA純度98.41%の黄褐
色固体43.30部であり、これは使用した原料2,6−DIP
Nに対する収率として78.85モル%に相当する。
比較例2 実施例1と同様の反応を、酢酸カリウムを用いずに行つ
た以外は実施例1と同様の操作を行つた。
この時得られた生成物は2,6−NDA純度96.06%の黄褐
色固体40.02部であり、これは使用した原料2,6−DIP
Nに対する収率として71.08モル%に相当する。
実施例2〜5 実施例1と同様の反応を、酢酸、プロピオン酸の使用量
を表−1に示すように変更した以外は実施例1と同様の
操作を行つた。反応の結果を表−1に示す。
実施例6〜9 実施例1と同様の反応を、触媒重金属塩を 酢酸コバルト・4水塩 1.557部 (Co(OAc)2・4H2O)(0.00416mol/100g-溶媒) 酢酸マンガン・4水塩 1.532部 (Mn(OAc)2・4H2O)(0.00416mol/100g-溶媒)に変更し、
酢酸、プロピオン酸の使用量を表−2に示すように変更
した以外は実施例1と同様の操作を行つた。反応の結果
を表−2に示す。
比較例3 実施例8と同様の反応を、溶媒として酢酸のみ150部
用い、且つ、酢酸カリウムを用いずに行つた以外は実施
例8と同様の操作を行つた。
この時得られた生成物には多量のタール成分が含まれて
おり、分析結果から、生成した2,6−NDAの、使用し
た原料2,6−DIPNに対する収率は12.63モル%に相当
する。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】2,6−ジイソプロプルナフタレンまたはそ
    の酸化誘導体を、分子状酸素を用いて酸化するに際し、 (i)原子比が5:95〜60:40であり、溶媒100g当り合計
    量で0.4〜1.0重量%のコバルトおよびマンガン (ii)溶媒100g当り3〜6重量%の臭素および (iii)臭素1グラム原子に対して1.3〜8グラム原子のア
    ルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、酢酸塩、プロピオン酸
    塩および臭化物よりなる群から選ばれる少くとも1種 を含有する触媒の存在下、溶媒として (iv)酢酸対プロピオン酸の重量比が85〜15:15〜85の範
    囲にある混合脂肪族モノカルボン酸を少くとも70重量%
    用いる ことを特徴とする2,6−ナフタレンジカルボン酸の製造
    法。
  2. 【請求項2】アルカリ金属がカリウム、ナトリウムまた
    はリチウムである特許請求の範囲第1項に記載の2,6−
    ナフタレンジカルボン酸の製造法。
  3. 【請求項3】酸化を170〜220℃の温度で行う特許請求の
    範囲第1項に記載の2,6−ナフタレンジカルボン酸の製
    造法。
  4. 【請求項4】酸化を1〜8kg/cm2の酸素分圧下で行う特
    許請求の範囲第1項に記載の2,6−ナフタレンジカルボ
    ン酸の製造法。
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