JPH0696641B2 - 金属含有多環状芳香族重合体並びにその製造方法 - Google Patents

金属含有多環状芳香族重合体並びにその製造方法

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JPH0696641B2
JPH0696641B2 JP63280325A JP28032588A JPH0696641B2 JP H0696641 B2 JPH0696641 B2 JP H0696641B2 JP 63280325 A JP63280325 A JP 63280325A JP 28032588 A JP28032588 A JP 28032588A JP H0696641 B2 JPH0696641 B2 JP H0696641B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、不融化、焼成により、機械的性質に優れ、且
つ耐酸化性、並びに複合材用マトリックスに対する濡れ
性が大幅に向上した炭素系無機繊維となる前駆体ポリマ
ー及びその製造方法に関する。
(従来の技術及びその問題点) 炭素繊維は、軽量でしかも高強度、高弾性であるため、
スポーツ・レジャー用品をはじめ、航空機、自転車、建
材など広い分野に亙ってその利用が図られている。
炭素繊維としては、ポリアクリロニトリルを原料とした
PAN系炭素繊維と、石油系、石炭系のピッチを原料とす
る、所謂ピッチ系炭素繊維が知られている。
ピッチ系炭素繊維は、一般に強度がPAN炭素繊維に比べ
て劣るが、原料が安価なことから、強度を高める方法に
ついて種々の検討がなされ、例えば、特開昭59−223316
号公報には、効果的にメソフェーズを生成させ、紡糸時
に配向させる方法が開示されている。
しかし、基本的には、炭素繊維は結晶性の繊維であるた
め、硬く、毛羽が発生し易く、また複合材料とする際マ
トリックスとの濡れ性も劣るという欠点がある。
そこで種々の炭素繊維の表面処理法が提案され、現在知
られている方法として、繊維に柔軟性を付与するととも
に、毛羽発生を抑制する目的で、ポリビニルアルコー
ル、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂のようなサ
イジング剤を表面に塗布する方法や、マトリックスとの
接着性を向上させる目的でその表面を乾式又は湿式で酸
化処理する方法等がある。
これらの処理のうち、特に表面酸化層を設ける方法で
は、酸化時に繊維に損傷を与えるため、物性は低下する
傾向にある。更に、炭素繊維は500℃を超える酸化雰囲
気中では、燃焼するため使用できない。
このような背景から、高強度、高弾性率を有し、しかも
マトリックスとの濡れ性、接着性が良好で、従来広範囲
の分野で使用されているPAN系炭素繊維よりも安価な新
繊維の開発が強く要望されてきた。
また、炭素繊維のより高温での耐酸化性を向上させるこ
とが種々の分野で強く望まれている。
この要望を満たす方法として、例えば、特開昭62−2091
39号公報、特開昭62−215016号公報に記載された方法が
提案されている。
これらの公報には、石炭系又は石油系ピッチ中の有機溶
媒可溶成分とポリシランを混合・加熱反応させてオルガ
ノポリアリールシランを合成し、それを紡糸、不融化、
焼成により炭化珪素繊維と炭素繊維の中間の性質を有す
る無機質繊維を製造する方法が記載されている。
しかし、上記方法で得られたオルガノポリアリールシラ
ンは有機溶媒不溶分を全く*まず、炭素繊維の強度発現
に最も重要な成分と言われているメソフェーズ状態を含
んでいない。
上記紡糸原料を、紡糸、不融化、焼成して得られる無機
質繊維は、条件によっては炭素の黒鉛結晶に相当する
(002)回折線は得られるものの、ピッチ繊維特有の配
向は認められず高弾性率のものは得られない。更に上記
公報の方法では、ピッチ成分が多くなる程、不活性ガス
中の耐熱性は向上するものの、耐酸化性は逆に低下し、
しかも機械的特性が著しく低下するという問題点があ
る。
(問題点を解決するための手段) 本発明の目的は、上記問題点を解決しピッチ繊維の持つ
高弾性の特徴を有し、且つ、強度、耐酸化性、複合材マ
トリックスに対する濡れ性の優れた炭素系無機繊維の前
駆体ポリマーを提供することにある。
本発明によれば、 (A)結合単位(Si−CH2)、又は結合単位(Si−CH2
と結合単位(Si−Si)から主としてなり、珪素原子に水
素原子、低級アルキル基、フェニル基及びシリル基から
なる群から選ばれる側鎖基を有し、且つチタン、ジルコ
ニウム及びハフニウムから選ばれる少なくとも一種類の
原子が、直接又は酸素原子を介して、珪素原子の少なく
とも一部と結合している遷移金属含有有機珪素重合体単
位、 (B)骨格成分が主として縮合環構造よりなり、メソフ
ェーズ状態にある多環状芳香族化合物単位、及び (C)骨格成分が主として縮合環構造であり、光学的等
方相の多環状芳香族化合物単位 からなり、前記(A)の珪素原子の少なくとも一部が、
前記(B)及び/又は前記(C)の芳香族環の炭素原子
と珪素−炭素連結基を介して結合しており、構成成分
(A)における結合単位(Si−CH2)の全数対結合単位
(Si−Si)の全数の比率が1:0〜20であり、構成成分
(A)と構成成分(B)及び構成成分(C)の総和との
重合比率が1:0.1〜200であり、構成成分(B)と構成成
分(C)の重量比率が1:0.02〜4であり、珪素原子の含
有割合が0.25〜40重量%であり、チタン、ジルコニウム
及びハフニウムから選ばれる少なくとも一種類の原子の
含有割合が0.005〜10重量%であり、重量平均分子量が2
00〜11000であることを特徴とする金属含有多環状芳香
族重合体が提供される。
さらに本発明によれば、 1)(Si−CH2)結合単位、又は(Si−CH2)結合単位と
(Si−Si)結合単位とから主としてなり、珪素の側鎖に
水素原子、低級アルキル基、フェニールあるいはシリル
基を有し、上記結合単位からなる主骨格の珪素原子に、
チタン、ジルコニウム及びハフニウムからなる群から選
ばれる少なくとも一種類の原子が、直接又は酸素原子を
介して、珪素原子の少なくとも一部と結合している遷移
金属含有有機珪素重合体の珪素原子の少なくとも一部
が、石油系又は石炭系のピッチあるいはその熱処理物で
あって、有機溶媒不溶分を含まないピッチより得られた
多環状芳香族化合物の芳香族環の炭素と珪素−炭素連結
基を介して結合したランダム共重合体及び 2)石油系又は石炭系のピッチから得られる、メソフェ
ーズ又はメソフェーズと光学的等方相との両相からなる
多環状芳香族化合物とを、 200〜500℃の範囲の温度で加熱反応及び/又は加熱溶融
することを特徴とする金属含有多環状芳香族重合体の製
造方法が提供される。
本発明の製造方法をまず説明する。以下の記載におい
て、「部」はすべて「重量部」であり、成分含有量の単
位としてのパーセント(%)は全て重量%である。
まず有機珪素重合体とピッチとを、不活性ガス中で、好
ましくは250〜500℃の範囲の温度で加熱反応させて前駆
重合体1)を調製する。
原料の一つである有機珪素重合体は公知の方法で合成す
ることができ、例えば、ジメチルジクロロシランと金属
ナトリウムの反応により得られるポリジメチルシラン
を、不活性ガス中で400℃以上に加熱することにより得
られる。
上記有機珪素重合体は、結合単位(Si−CH2)、又は結
合単位(Si−CH2)と結合単位(Si−Si)より主として
なり、結合単位(Si−CH2)の全数対結合単位(Si−S
i)の全数の比率は1:0〜20の範囲内にある。
有機珪素重合体の重量平均分子量(MW)は、一般的には
300〜1000で、MWが400〜800のものが、優れた炭素系無
機繊維を得るための中間原料であるランダム共重合体を
調製するために特に好ましい。
もう一つの原料であるピッチは、石油類の流動接触分解
残渣油(FCCスラリーオイル)又はその熱処理油より、
軽質留分を除去して得られたピッチ、ナフサタールより
得られたピッチ、及びコールタールピッチ等石炭系ピッ
チであって、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラヒ
ドロフランなどの有機溶媒に可溶なものである。この有
機溶媒可溶ピッチの重量平均分子量(MW)は、一般的に
は200〜800で、MWが250〜600のものが、優れた炭素系無
機繊維を得るための中間原料であるランダム共重合体を
調製するために特に好ましい。
重量平均分子量は以下のようにして求めた値である。即
ち、ピッチが有機溶媒不溶分を含有しない場合はそのま
まゲルパーミュエーションクロマトグラフ(GPC)測定
し、ピッチが有機溶媒不溶分を含有する場合は、温和な
条件で水添処理し、有機溶媒不溶分を有機溶媒可溶な成
分に変えて後GPC測定する。(有機溶媒不溶分を含有す
る重合体の重量平均分子量は、上記と同様の処理を施し
求めた値である。) 原料として上記有機溶媒可溶成分を用いる利点は、有機
珪素重合体とピッチとの使用割合の広い範囲において、
低融点且つ溶媒可溶の前駆重合体1)が得られるため、
前駆重合体1)中の溶媒不溶の不融不純物の濾別による
精製が可能であり、且つ前駆重合体1)とMX4との反応
により得られるランダム共重合体とメソフェーズ多環状
芳香族化合物との加熱反応及び/又は加熱溶融も、より
広い範囲の割合で、温和な条件で、しかも均質に行うこ
とができる。従って、得られた金属含有多環状芳香族重
合体を紡糸する場合に、より低温での紡糸が可能であ
る。前記MX4において、MはTi、Zr及びHfから選択され
る少なくとも一種の元素であり、Xは縮合により、Mが
前駆重合体1)の珪素と直接あるいは酸素原子を介して
結合し得るものであればよく、特に規定はないが、ハロ
ゲン原子、アルコキシ基又はβ−ジケトンのような錯体
形成基が好ましい。
前駆重合体1)は、有機珪素重合体にピッチを添加し、
不活性ガス中で、好ましくは250〜500℃の温度で加熱反
応させることにより調製される。
ピッチの使用割合は、有機珪素重合体100部当たり2〜1
900部であることが好ましい。ピッチ成分の使用割合が
過度に小さい場合は、有機珪素成分が多くなり、メソフ
ェーズ多環状芳香族化合物との相溶性が悪化し、紡糸ド
ープにおける均一性が損なわれ、無機繊維の強度、弾性
率が低下する。また、その割合が過度に多い場合は、有
機珪素重合体成分が少なすぎるため、マトリックスに対
する濡れ性、耐酸化性に優れた無機繊維が得られなくな
る。
上記反応の反応温度が過度に低いと、珪素原子と芳香族
炭素の結合が生成しにくくなり、反応温度が過度に高い
と、生成した前駆重合体1)の分解及び高分子量化が激
しく起こり好ましくない。
ここで言う前駆重合体1)には、有機珪素重合体とピッ
チが珪素−炭素連結基を介して結合した共重合体に加
え、有機珪素重合体及びピッチの各々の重縮合物が含ま
れる。
不活性ガスとしては、窒素、アルゴン等が好適に使用さ
れる。
次に、前駆重合体1)と式MX4(M及びXは前記と同一
の意味を有する。)で示される遷移金属化合物とを100
〜500℃の温度の範囲で反応させてランダム共重合体
2)を調製する。
反応温度が過度に低いと、前駆重合体1)と式MX4との
縮合反応が進行せず、反応温度が過度に高いと、Mを介
した前駆重合体21)の架橋反応が過度に進行しゲル化が
起こったり、前駆重合体1)自体が縮合し高分子量化し
たり、あるいは、場合によっては、MX4が揮散して優れ
た無機繊維を得るための中間原料であるランダム共重合
体2)が得られない。一例を挙げれば、MがTiで、Xが
OC4H9の場合、反応温度は200〜400℃が適している。
この反応によって、前駆重合体1)の珪素原子の少なく
とも一部を金属Mと直接あるいは酸素原子を介して結合
させたランダム共重合体2)が調製される。金属Mは前
駆重合体1)の珪素原子に−MX3あるいは−O−MX3のよ
うな結合様式で側鎖状に結合することもできるし、前駆
重合体1)の珪素原子を直接又は酸素を介して架橋した
結合様式もとり得る。
ランダム共重合体2)を調製する方法としては、前述の
方法以外に、有機珪素重合体とMX4を反応させ、得られ
た生成物にピッチをさらに反応させて調製する方法も可
能である。
ランダム共重合体2)とメソフェーズ多環状芳香族化合
物を加熱反応及び/又は加熱溶融して、金属含有多環状
芳香族重合体3)を調製する。
メソフェーズ多環状芳香族化合物は、例えば、石油系又
は石炭系のピッチを不活性ガス中で、300〜500℃の温度
に加熱し生成する軟質留分を除去しながら縮重合するこ
とによって調製することができる。上記縮重合反応温度
が過度に低いと縮合環の成長が充分でなく、またその温
度が過度に高いとコーキングにより不融化物の生成が激
しくなる。
上記のメソフェーズ多環状芳香族化合物は、一般に融点
が200〜400℃の範囲にあり、また、重量平均分子量が20
0〜10000である。
メソフェーズ多環状芳香族化合物の中でも、20〜100
%、特に40〜100%の光学的異方性度を有し、2〜60%
のキノリン不溶分並びに30〜100%のベンゼン、トルエ
ン、キシレン又はテトラヒドロフランに対する不溶分を
含むものが、機械的性能上優れた無機繊維を得るために
特に好ましい。
メソフェーズ多環状芳香族化合物の使用割合は、ランダ
ム共重合体2)100部当たり2〜3900部であることが好
ましく、2部未満では、生成する重合体におけるメソフ
ェーズ含有量が不足するため、高弾性無機繊維用の重合
体が得られず、また、3900部より多い場合は、珪素成分
の不足のためマトリックスに対する濡れ性、耐酸化に優
れた無機繊維用の重合体が得られなくなる。
ランダム共重合体2)とメソフェーズ多環状芳香族化合
物とを200〜500℃で加熱反応及び/又は加熱溶融させる
ことにより、ランダム共重合体2)の少なくとも一部が
メソフェーズ多環状芳香族化合物と結合した金属含有多
環状芳香族重合体3)が得られる。ただし、ここで言う
結合とは、珪素と多環状芳香族化合物の炭素との化学結
合及び/又はランダム共重合体2)中の珪素と化学結合
した多環状芳香族環部分とメソフェーズ多環状芳香族化
合物との間のファンデルワールス結合等の物理的結合を
意味する。
上記溶融混合温度が200℃より低いと不融部分が生じ、
系が不均一となり、無機繊維の強度、弾性率に悪影響を
及ぼし、また、溶融混合温度が500℃より高いと縮合反
応が激しく進行し、生成重合体が高融点となり、重合体
の紡糸が著しく困難となる。
金属含有多環状芳香族重合体3)を調製する方法として
は、前述の方法以外に、有機珪素重合体とピッチを反応
させ、得られた生成物にメソフェーズピッチとMX4を同
時に又は順次添加し、さらに反応させて調製する方法も
可能である。
次に、本発明の金属含有多環状芳香族重合体3)につい
て説明する。
本発明の金属含有多環状芳香族重合体3)は、構成成分
(A)、(B)及(C)からなり、構成成分(A)の珪
素原子の少なくとも一部が、構成成分(B)及び/又は
構成成分(C)の芳香族環の炭素原子と結合している。
構成成分(A)と構成成分(B)及び構成成分(C)の
総和との重量比率が1:0.1〜200であり、且つ構成成分
(B)と構成成分(C)の重量比率が1:0.02〜4である
ことが好ましい。
構成成分(A)と構成成分(B)及び構成成分(C)の
総和との重量比率が0.1未満では、金属含有多環状芳香
族重合体3)中のメソフェーズ成分が不足し、この重合
体より得られる無機繊維は、強度、弾性率が低いものと
なり、また、上記割合が200を越えた場合は、金属含有
多環状芳香族重合体3)中の有機珪素成分の不足によ
り、この重合体から得られる無機繊維の耐酸化性が低下
し、さらに上記繊維のFRPマトリックスとの濡れ性が低
くなる。
また、(B)に対する(C)の重量比率が0.02未満で
は、金属含有融多環状芳香族重合体3)の溶融紡糸に際
し、曳糸性の低下、ドープの粘度むらによる断糸等、紡
糸が著しく困難になり好ましくなく、上記割合が4を越
えた場合は、珪素含有多環状芳香族重合体3)中のメソ
フェーズ成分の不足により、重合体から得られる無機繊
維の強度、弾性率が低いものとなる。
また、構成成分(A)において、通常、結合単位(Si−
CH2)の全数対結合単位(Si−Si)の全数の比率が1:0〜
20の範囲内にあって、結合単位(Si−CH2)及び結合単
位(Si−Si)の総重量に対して遷移金属化合物の結合単
位(M)が0.2%〜35%含まれている。
本発明の金属含有多環状芳香族重合体3)は、珪素原子
を0.25〜40%含有し、Mを0.005〜10%含有しており、
重量平均分子量が200〜11000で、融点が180〜400℃であ
る。
金属含有多環状芳香族重合体3)中の珪素原子含有量が
0.25%未満では、FRPのマトリックスに対する濡れ性及
び繊維の耐酸化性の向上が顕著に表れず、40%を越えた
場合は、上記無機繊維中のグラファイト超微粒結晶の配
向による高弾性、非酸化性雰囲気中での耐熱性向上が達
成できず、SiC繊維と何ら変わらないものになってしま
う。
また、金属含有多環状芳香族重合体3)は珪素原子の他
にMを含むため、該重合体より得られた無機繊維は、機
械的特性及びプラスチックに対する濡れ性がさらに向上
するが、Mの含有量が0.05%未満では、上記特性は、殆
ど発揮されず、10%を越えた場合は、重合体中に極度に
架橋の進行した高融点物と未反応のMX4が混在すること
となり、該重合体をドープとした溶融紡糸は著しく困難
となる。
金属含有多環状芳香族重合体3)の重量平均分子量が20
0より低いものは、実質的にメソフェーズをほとんど含
んでいないため、このような重合体からは高弾性の無機
繊維を得ることができず、11000より大きい場合は、高
融点となり紡糸困難となる。
珪素含有多環状芳香族重合体の融点が180℃より低い場
合は、実質的にメソフェーズを含んでいないうえ、この
重合体を紡糸して得られるプレカーサー糸は不融化時に
融着しやすく、強度、弾性率の高い無機繊維は得られ
ず、400℃より高い場合は、この重合体を紡糸する際に
重合体の分解が起こり、紡糸が困難となる。
また、珪素含有多環状芳香族重合体は、ベンゼン、トル
エン、キシレン、テトラヒドロフラン等の有機溶媒に対
する不溶分を10〜98%含有しており、且つ室温における
光学的異方性度が5〜97%であることが好ましい。
珪素含有多環状芳香族重合体の上記有機溶媒への不溶分
が10%未満又は光学的異方性度が5%未満では、重合体
を溶融紡糸する際、メソフェーズの繊維軸方向への配向
がほとんど起こらず、従って得られたプレカーサー糸を
不融化、焼成しても低強度、低弾性率の繊維しか得られ
ず、また、上記有機溶媒不溶分を98%より多く含有する
か、光学的異方性度が97%より大きい場合は、重合体中
のメソフェーズが過多となり、重合体の紡糸が困難とな
る。
(効果) 本発明による金属含有多環状芳香族重合体は、重合体中
に遷移金属含有有機珪素共重合体及びメソフェーズ多環
状芳香族化合物を含有するため、この重合体を溶融紡
糸、不融化、焼成することにより、超微粒子のグラファ
イト結晶上にSi、M、C及びOからなる非晶質及び/又
はβ−SiC、MC、β−SiCとMCの固溶体、及びMC1-X(0
<X<1)の各結晶超微粒子と非晶質のSiOy(0<y≦
2)及びMOz(0<z≦2)からなる集合体が分散した
構造の高強度、高弾性にして、しかもプラスチックとの
濡れ性に優れた炭素系無機繊維を得ることができる。こ
のように、機械特性とプラスチックとの濡れ性を同時に
満足できる繊維は従来存在しなかったため、特にFRP用
の用途の開発が大きく期待される。また、本発明による
繊維は、炭素系繊維の高温酸化雰囲気での使用を可能と
すると共に、本発明の重合体を成形加工することにより
耐酸化性炭素系材料及び繊維強化セラミック(FRC)用
マトリックス等に利用することができる。また、本発明
は、ピッチの有効利用の観点からも資するところ大なる
ものがある。
(実施例) 以下実施例によて本発明を説明する。
参考例1(有機珪素重合体の製法) 5の三口フラスコに無水キシレン2.5及びナトリウ
ム400gを入れ、窒素ガス気流下でキシレンの沸点まで加
熱し、ジメチルジクロロシラン1を1時間で滴下し
た。滴下終了後、10時間加熱還流し沈澱物を生成させ
た。沈澱を濾過し、メタノールついで水で洗浄して、白
色粉末のポリジメチルシラン420gを得た。
このポリジメチルシラン400gを、ガス導入管、撹拌機、
冷却器及び留出管を備えた3の三口フラスコに仕込
み、撹拌しながら50ml/分の窒素気流下に420℃で加熱処
理して、留出受器に350gの無色透明な少し粘性のある液
体を得た。
この液体の数平均分子量は蒸気圧浸透法で測定したとこ
ろ470であった。
この物質の赤外線吸収スペクトルを測定したところ、65
0〜900cm-1と1250cm-1にSi−CH3の吸収、2100cm-1にSi
−Hの吸収、1020cm-1付近と1355cm-1にSi−CH2−Siの
吸収、2900cm-1と2950cm-1にC−Hの吸収が認められ、
またこの物質の遠赤外線吸収スペクトルを測定したとこ
ろ、380cm-1にSi−Siの吸収が認められることから、得
られた液状物質は、主として(Si−CH2)結合単位及び
(Si−Si)結合単位からなり、珪素の側鎖に水素原子及
びメチル基を有する有機珪素重合体であることが判明し
た。
核磁気共鳴分析及び赤外線吸収分析の測定結果から、こ
の有機珪素重合体は(Si−CH2)結合単位の全数対(Si
−Si)結合単位の全数の比率がほぼ1:3である重合体で
あることが確認された。
上記有機珪素重合体300gをエタノールで処理して低分子
量物を除去して、数平均分子量が1200の重合体40gを得
た。
この物質の赤外線吸収スペクトルを測定したところ、上
記と同様の吸収ピークが認められ、この物質は主として
(Si−CH2)結合単位及び(Si−Si)結合単位からな
り、珪素の側鎖に水素原子及びメチル基を有する有機珪
素重合体であることが判明した。
核磁気共鳴分析及び赤外線吸収分析の測定結果から、こ
の有機珪素重合体は(Si−CH2)結合単位の全数対(Si
−Si)結合単位の全数の比率がほぼ7:1である重合体で
あることが確認された。
参考例2(ピッチの原料の製法) 石油留分のうち、軽油以上の高沸点物をシリカ・アルミ
ナ系分解触媒の存在下、500℃の温度で流動接触分解・
精留を行い、その塔底より残渣を得た。以下この残渣を
FCCスラリーオイルと呼ぶ。
このFCCスラリーオイルは、元素分析の結果、炭素原子
対水素原子の原子比(C/H)が0.75で、核磁気共鳴分析
による芳香族炭素率が0.55であった。
実施例1 (第1工程) 参考例2で得られたFCCスラリーオイル100gを窒素ガス
気流下400℃に加熱し、同温度における留出分を留去
後、72gの残渣を得た。
この残渣を500mlのキシレンに溶解し、不溶分4gを分離
除去後濃縮し、ピッチの30%キシレン溶液を得た。
上記ピッチの30%溶液100mlに、参考例1で得た有機珪
素重合体の60%キシレン溶液100mlを加え撹拌しながら
昇温し、キシレンを留去後400℃で6時間反応させ38gの
前駆重合体を得た。
この前記重合体は赤外線吸収スペクトル測定の結果、有
機珪素重合体中に存在するSi−H結合(IR:2100cm-1
の減少及び新たなSi−C(ベンゼン環の炭素)結合(I
R:1135cm-1)の生成が認められることにより有機珪素重
合体の珪素原子の一部が多環状芳香族環と直接結合した
部分を有する重合体であることがわかった。
(第2工程) 前駆重合体38gにテトラオクトキシチタン〔Ti(OC
8H17〕8gのキシレン溶液(25%キシンレン溶液32
g)を加え、キシレン留去後、340℃で2時間反応させ、
ランダム共重合体40gを得た。
この重合体はキシレン不溶部を含まず重量平均分子量は
1900、融点は240℃であった。
(第3工程) 参考例2で得られたFCCスラリーオイル400gを窒素ガス
気流下450℃に加熱し、同温度における留出分を留去後
残渣を200℃にて熱時濾過を行い、同温度における不融
部を除去し、軽質分除去ピッチ180gを得た。
得られたピッチ180gを窒素気流下、反応により生成する
軽質分を除去しながら400℃で6時間重縮合を行い、熱
処理ピッチ90gを得た。
この熱処理ピッチは融点260℃、キシレン不溶分88%、
キノリン不溶分7%を含有しており、研磨面の偏光顕微
鏡観察による光学的異方性が85%のメソフェーズピッチ
であった。
(第4工程) 第2工程で得たランダム共重合体40gと第3工程で得た
メソフェーズピッチ80gを混合、窒素雰囲気下350℃で1
時間溶融加熱し、均一な状態にある珪素及びチタンを含
有した多環状芳香族重合体を得た。
この金属含有多環状芳香族重合体は、光学的異方性度が
48%、キシレン不溶分が62%、融点が248℃であり、温
和な条件下で水添し、ゲルパーミュエイションクロマト
グラフィー(GPC)により重量平均分子量(MW)を測定
したところ、MW=1440であった。
この金属含有多環状芳香族重合体を空気中、1000℃に加
熱し、得られた灰分にアルカリ溶融処理及び塩酸処理を
施し、水に溶解後、その水溶液について、高周波プラズ
マ発光分光分析装置(ICP)を用い珪素及びチタンの濃
度測定を行ったところ、上記金属含有多環状芳香族重合
体中の珪素及びチタンの含有率は12.0%及び0.6%であ
った。
上記重合体を紡糸ドープとし、口径0.3mmのノズルを用
い溶融紡糸した。得られたプレカーサー糸を空気流通
下、300℃にて不融下し、アルゴン気流下1300℃で焼成
し、炭素系無機繊維を得た。この繊維の糸径、引張強度
及び引張弾性率は、12μ、200kg/mm2及び16t/mm2であっ
た。
実施例2〜5 実施例1の第1工程におけるピッチと有機珪素重合体の
仕込み比及び反応条件、第2工程における遷移金属化合
物の種類及びその仕込み比、反応条件、第3工程におけ
る熱処理条件、及び第4工程における仕込み比、溶融混
合(溶融縮合)条件を種々選択し、金属含有多環状芳香
族重合体を得た。反応条件を第1表に、結果を、第2表
に実施例1の反応条件及び結果と併せて示す。いずれの
実施例においても得られた金属含有多環状芳香族重合体
は、光学的異方性を示し、キシレン不溶分を含有するに
もかかわらず比較的低融点で紡糸可能なドープであっ
た。
比較例2 実施例1で得たピッチ100gに参考例1で得た有機珪素重
合体50gを加え400℃で6時間反応し、79gの前駆重合体
を得た。得られた共重合体は融点が252℃、珪素含有率
が15%で、平均重量分子量(MW)は1400であり、キシレ
ン不溶分を含まず、メソフェーズ部分も存在しなかっ
た。
上記重合体を紡糸ドープとし、口径0.3mmのノズルを用
い溶融紡糸した。得られたプレカーサー糸を空気流通
下、300℃にて不融下し、アルゴン気流下1300℃で焼成
し、炭素系無機繊維を得た。この繊維の糸径、引張強度
及び引張弾性率は、16μ、75kg/mm2及び5.0t/mm2であ
り、繊維断面は何ら配向した構造を含んでいなか った。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 渋谷 昌樹 山口県宇部市大字小串1978番地の5 宇部 興産株式会社宇部研究所内 審査官 保倉 行雄

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(A)結合単位(Si−CH2)、又は結合単
    位(Si−CH2)と結合単位(Si−Si)から主としてな
    り、珪素原子に水素原子、低級アルキル基、フェニル基
    及びシリル基からなる群から選ばれる側鎖基を有し、且
    つチタン、ジルコニウム及びハフニウムから選ばれる少
    なくとも一種類の原子が、直接又は酸素原子を介して、
    珪素原子の少なくとも一部と結合している遷移金属含有
    有機珪素重合体単位、 (B)骨格成分が主として縮合環構造よりなり、メソフ
    ェーズ状態にある多環状芳香族化合物単位、及び (C)骨格成分が主として縮合環構造であり、光学的等
    方相の多環状芳香族化合物単位 からなり、前記(A)の珪素原子の少なくとも一部が、
    前記(B)及び/又は前記(C)の芳香族環の炭素原子
    と珪素−炭素連結基を介して結合しており、構成成分
    (A)における結合単位(Si−CH2)の全数対結合単位
    (Si−Si)の全数の比率が1:0〜20であり、構成成分
    (A)と構成成分(B)及び構成成分(C)の総和との
    重合比率が1:0.1〜200であり、構成成分(B)と構成成
    分(C)の重量比率が1:0.02〜4であり、珪素原子の含
    有割合が0.25〜40重量%であり、チタン、ジルコニウム
    及びハフニウムから選ばれる少なくとも一種類の原子の
    含有割合が0.005〜10重量%であり、重量平均分子量が2
    00〜11000であることを特徴とする金属含有多環状芳香
    族重合体。
  2. 【請求項2】1)(Si−CH2)結合単位、又は(Si−C
    H2)結合単位と(Si−Si)結合単位とから主としてな
    り、珪素の側鎖に水素原子、低級アルキル基、フェニー
    ル基あるいはシリル基を有し、上記結合単位からなる主
    骨格の珪素原子に、チタン、ジルコニウム及びハフニウ
    ムからなる群から選ばれる少なくとも一種類の原子が、
    直接又は酸素原子を介して、珪素原子の少なくとも一部
    と結合している遷移金属含有有機珪素重合体の珪素原子
    の少なくとも一部が、石油系又は石炭系のピッチあるい
    はその熱処理物であって、有機溶媒不溶分を含まないピ
    ッチより得られた多環状芳香族化合物の芳香族環の炭素
    と珪素−炭素連結基を会して結合したランダム共重合体
    及び 2)石油系又は石炭系のピッチから得られる、メソフェ
    ーズ又はメソフェーズと光学的等方相との両相からなる
    多環状芳香族化合物とを、 200〜500℃の範囲の温度で加熱反応及び/又は加熱溶融
    することを特徴とする金属含有多環状芳香族重合体の製
    造方法。
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