JPH078910B2 - 導電性有機重合体組成物 - Google Patents

導電性有機重合体組成物

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JPH078910B2
JPH078910B2 JP59198873A JP19887384A JPH078910B2 JP H078910 B2 JPH078910 B2 JP H078910B2 JP 59198873 A JP59198873 A JP 59198873A JP 19887384 A JP19887384 A JP 19887384A JP H078910 B2 JPH078910 B2 JP H078910B2
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Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、新規な導電性有機重合体組成物に関し、詳し
くは、アニリンの酸化重合により得られる新規な高分子
量有機重合体の導電性組成物に関する。
殆どの有機物質は電気的に絶縁性であるが、しかし、有
機半導体として知られる導電性を有する有機重合体の一
群が近年、注目を集めている。一般にそれ自体が導電性
である有機物質は3種類に分類される。第1はグラフア
イトである。グラフアイトは厳密には有機物質とはみな
されていないが、有機共役系の極限構造を有するとみる
こともできる。このグラフアイトはそれ自体で既にかな
り高い導電性を有するが、これに種々の化合物をインタ
ーカレートすることにより、一層高い導電性を有せしめ
ることができ、遂には超電導体となる。しかし、グラフ
アイトは二次元性が強く、成形加工が困難であるので、
その応用面において障害となつている。
第2は電荷移動錯体であつて、例えば、テトラチアフル
バレンとテトラシアノキノジメタンをそれぞれ電子供与
体及び電子受容体として得られる結晶性物質は、室温で
400〜500S/cmという非常に大きい電導性を有するが、こ
のような電荷移動錯体は重合体でないために、実用的な
応用を図るにはグラフアイトと同様に成形加工性に難点
がある。
第3はポリアセチレンによつて代表されるように、ドー
ピングによつて高導電性を有するに至るπ電子共役系有
機重合体である。ドーピング前のポリアセチレンの電導
度は、トランス型が10-5S/cm、シス型が10-9S/cmであ
り、半導体乃至絶縁体に近い性質を有している。しか
し、このようなポリアセチレンに五フツ化ヒ素、ヨウ
素、三酸化イオウ、塩化第二鉄等のような電子受容性化
合物或いはアルカリ金属のような電子供与性化合物をド
ーピングすることにより、それぞれp型半導体及びn型
半導体を形成させることができ、更には103S/cmもの導
体レベルの高い導電性を与えることもできる。上記ポリ
アセチレンは理論的には興味深い導電性有機重合体であ
るが、反面、ポリアセチレンは極めて酸化を受けやす
く、空気中で容易に酸化劣化して性質が大幅に変化す
る。ドーピングされた状態では一層酸化に対して敏感で
あり、空気中の僅かな湿気によつても電導度が急激に減
少する。この傾向はn型半導体に特に著しい。
また、ポリ(p−フエニレン)やポリ(p−フエニレン
サルフアイド)もドーピング前はその電導度がそれぞれ
10-9S/cm及び10-16S/cmであるが、例えば前記した五フ
ツ化ヒ素をドーピングすることにより、それぞれ電導度
は500S/cm及び1S/cmである導電性有機重合体組成物とす
ることができる。これらのドーピングされた有機重合体
組成物の電気的性質も、程度の差こそあれ、やはり不安
定である。
このようにドーピングされた導電性有機重合体組成物の
電気的性質が一般に環境に対して非常に不安定であるこ
とは、この種の導電性有機重合体組成物に共通する現象
であつて。これらの実用的な応用の障害となつている。
以上のように、従来より種々の有機導電性物質が知られ
ているが、その実用的な応用を展開する観点からは成形
加工性にすぐれる重合体形態が好ましい。
一方、酸化染料としてのアニリンの酸化重合体に関する
研究も、アニリンブラツクに関連して古くより行なわれ
ている。特に、アニリンブラツク生成の中間体として、
式(I)で表わされるアニリンの8量体がエメラルデイ
ン(emeraldine)として確認されており(A.G.Green e
t al.,J.Chem.Soc.,97,2388(1910);101,1117(191
2))、これは80%酢酸、冷ピリジン及びN,N−ジメチル
ホルムアミドに可溶性である。また、このエメラルデイ
ンはアモニア性媒体中で酸化されて、式(II)で表わさ
れるニグラニリン(nigraniline)を生成し、これもエ
メラルデインと類似した溶解特性を有することが知られ
ている。
更に、近年になつて、R.Buvetらによつてこのエメラル
デインの硫酸塩が高い導電性を有することが見い出され
ている(J.Polymer Sci.,C,16,2931;2943(1967);22,
1187(1969))。
また、既にアニリンの電解酸化重合によつてエメラルデ
イン類似の有機物質を得ることができることも知られて
いる(D.M.Mohilner et al.,J.Amer.Chem.Soc.,84,3618
(1962))。即ち、これによれば、アニリンの硫酸水溶
液を白金電極を用い、水の電気分解を避けるために、標
準カロメル電極に対して+0.8Vの酸化電位にて電解酸化
重合し、80%酢酸、ピリジン及びN,N−ジメチルホルム
アミドに可溶性である物質が得られる。
そのほか、Diazら(J.Electroanal.Chem.,111,111(198
0)や、小山ら(高分子学会予稿集,30,(7),1524
(1981);J.Electroanal.Chem.,161,399(1984))もア
ニリンの電解酸化重合を試みているが、いずれも高分子
被覆化学修飾電極を目的としたものであつて、電解は1V
以下の電位で行なつている。
本発明者らは、安定で高導電性を有する有機材料、特
に、導電性有機重合体を得るために、アニリンの酸化重
合に関する研究を鋭意重ねた結果、アニリンの酸化重合
の反応条件を選択することにより、上記エメラルデイン
よりも遥かに高分子量を有し、且つ、既にその酸化重合
段階でドーピングされているために、新たなドーピング
操作を要せずして安定で且つ高導電性を有する重合体を
得ることができることを見出した(特願昭58−212280号
及び特願昭58−212281号)。その後、本発明者らは更に
鋭意研究した結果、この重合体が実質的にキノンジイミ
ン構造からなる繰返し単位を有する実質的に線状の高分
子量重合体であることを見出して、本発明に至つたもの
である。
従つて、本発明は新規な導電性有機重合体組成物を提供
することを目的とする。
本発明による導電性有機重合体組成物は、実質的に、一
般式 で表わされるキノンジイミン構造体からなる繰返し単位
からなり、0.5g/dl濃硫酸溶液が30℃において0.38dl/g
以上の対数粘度を有する実質的に線状の重合体であっ
て、ドーパントとしての電子受容体を含み、導電度が10
-6S/cm以上であることを特徴とする。
このような本発明による導電性有機重合体組成物は、乾
燥した粉末状態において、通常、緑色乃至黒緑色を呈
し、一般に導電性が高いほど、鮮やかな緑色を呈してい
る。しかし、加圧成形した成形物は、通常、光沢のある
青色を示す。
本発明による導電性有機重合体組成物は、水及び殆どの
有機溶剤に不溶性であるが、通常、濃硫酸に僅かに溶解
し、又は溶解する部分を含む。濃硫酸への溶解度は、重
合体を生成させるための反応方法及び反応条件によって
も異なるが、後述するように、アニリンを化学酸化剤で
酸化重合して得られる導電性有機重合体は、通常、0.2
〜10重量%の範囲であり、殆どの場合、0.25〜5重量%
の範囲である。但し、この溶解度は、特に高分子量の重
合体の場合には、重合体が上記範囲の溶解度を有する部
分を含むとして理解されるべきである。前記したよう
に、エメラルデインが80%酢酸、冷ピリジン及びN,N−
ジメチルホルムアミドに可溶性であるのと著しい対照を
なす。
本発明による導電性有機重合体組成物は、97%濃硫酸の
0.5g/dl溶液が30℃において0.38〜1.0dl/gの範囲の対数
粘度を有する。この場合においても、特に高分子量の組
成物の場合には、濃硫酸に可溶性の部分が上記範囲の対
数粘度を有するとして理解されるべきである。これに対
して、同じ条件下でのエメラルデイン及びアニリンブラ
ツクの対数粘度はそれぞれ0.02及び0.005であり、本発
明による組成物が高分子量有機重合体組成物であること
が示される。更に、示差熱分析結果も、本発明による有
機重合体組成物が高分子量重合体組成物であることを示
している。
本発明による導電性有機重合体組成物の代表例として、
アニリンの酸化重合によつて得られた導電性重合体組成
物の赤外線吸収スペクトルを第1図に示し、比較のため
にエメラルデイン及びアニリンブラツク(市販顔料とし
てのダイヤモンド・ブラツク)の赤外線吸収スペクトル
をそれぞれ第2図及び第3図に示す。
本発明による導電性有機重合体組成物の赤外線吸収スペ
クトルは、エメラルデインのそれに類以するが、一方に
おいて、本発明による導電性有機重合体組成物において
は、エメラルデインに明瞭に認められる一置換ベンゼン
のC−H面外変角振動に基づく吸収が殆どみられないの
に対して、パラ置換ベンゼンに基づく吸収が相対的に大
きい。しかし、本発明による導電性有機重合体組成物の
スペクトルはアニリンブラツクとは大幅に異なる。従つ
て、本発明による導電性有機重合体組成物は、パラ置換
ベンゼンを多数含むエメラルデイン類以の構造を有す
る。
本発明による導電性有機重合体組成物は、アニリンの酸
化重合の段階で反応系中に存在する電子受容体によつて
ドーピングされており、この結果として高導電性を有す
る。即ち、アニリンの酸化重合体から電子受容体への電
荷移動が生じて、アニリンの重合体と電子受容体との間
に電荷移動錯体を形成している。本発明による導電性有
機重合体組成物を例えばデイスク状に成形して、これに
一対の電極を取付け、これらの電極間に温度差を与えて
半導体に特有の熱起電力を生ぜしめるとき、低温電極側
がプラス、高温電極側がマイナスの起電力を与えるの
で、本発明による導電性有機重合体組成物はp型半導体
であることが示される。
更に、本発明による組成物は、アンモニア等にて化学補
償することによつて導電性が大幅に減少し、また、外観
的にも黒緑色から紫色に変化し、これを再度硫酸等の電
子受容体にてドーピングすることにより、色も黒緑色に
戻ると共に、当初の高導電性を回復する。この変化は可
逆的であり、化学補償及びドーピングを繰り返して行な
つても同じ結果が得られる。
第4図にこの化学補償及び再ドーピングによる組成物及
び重合体の赤外線吸収スペクトルの変化を示す。Aは当
初の組成物、Bは化学補償した重合体、及びCは再ドー
ピングした組成物を示す。CのスペクトルがAとほぼ完
全に一致することが明らかであり、従つて、上記化学補
償及び再ドーピングは組成物に含まれる重合体の骨格構
造の変化ではなく、重合体と化学補償試薬或いは電子受
容体との間の電子の授受である。このようにして、本発
明によれば、アニリンの酸化重合体がその酸化重合の段
階で電子受容体にてドーピングされ、かくして、本発明
による導電性有機重合体組成物がドーパントを含んでい
ることが理解される。
本発明による導電性有機重合体組成物が含むドーパント
としては、例えば、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン、
塩化第二鉄、四塩化スズ、二塩化銅等のルイス酸、塩化
水素、臭化水素、硫酸、硝酸等の無機酸やピクリン酸、
p−トルエンスルホン酸等の有機酸を挙げることができ
るが、これらに限定されるものではない。
本発明による導電性有機重合体組成物の化学構造は、上
記した赤外線吸収スペクトルのほか、組成物の元素分析
によつて確認され、また、本発明による組成物をアンモ
ニア等で化学補償した重合体(以下、補償重合体とい
う。)の元素分析からも確認され、実質的に、前記繰返
し単位からなる線状高分子重合体とドーパントからな
り、π電子共役系がドーパントを含むことによつて高導
電性を有するとみられる。
しかしながら、本発明による導電性有機重合体組成物
は、上記キノンジイミン構造からなる繰返し単位と共
に、その還元構造である次の繰返し単位(IV) を含んでいてもよい。このような還元構造を含む組成物
は、例えば、本発明による組成物を部分的に還元するこ
とによつて容易に得ることができる。
以上のように、本発明によるアニリンの酸化重合によつ
て得られる導電性有機重合体組成物は、好ましくは、実
質的に前記繰返し単位からなり、その重合段階で既にプ
ロトン酸によつてドーピングされているために、新たな
ドーピング処理を要せずして高導電性を有し、しかも、
長期間にわたつて空気中に放置しても、その導電性は何
ら変化せず、従来より知られているドーピングした導電
性有機重合体に比較して、特異的に高い安定性を有して
いる。
本発明による導電性有機重合体組成物は、例えば、アニ
リン又はその水溶性塩をプロトン酸と酸化剤とを含有す
る反応媒体中で酸化重合させることによつて得ることが
できる。アニリンの水溶性塩としては、通常、塩酸、硫
酸等の鉱酸塩が好適であるが、これらに限定されるもの
ではない。
また、酸化剤も特に制限されるものではないが、酸化ク
ロム(IV)や、重クロム酸カリウム、重クロム酸ナトリ
ウム等の重クロム酸塩が好適であり、特に、重クロム酸
カリウムが最適である。しかし、クロム酸、クロム酸
塩、酢酸クロミル等のクロム系酸化剤や過マンガン酸カ
リウムのようなマンガン系酸化剤も必要に応じて用いる
ことができる。
また、プロトン酸としては、硫酸、塩酸、臭化水素酸、
テトラフルオロホウ酸(HBF4)、ヘキサフルオロリン酸
(HPF6)等が用いられるが、特に硫酸が好適である。ア
ニリンの水溶性塩を形成するために鉱酸を用いるとき、
この鉱酸は上記プロトン酸と同じでも、異なつてもよ
い。
反応媒体としては水、水混和性有機溶剤及び水非混和性
有機溶剤の1種又は2種以上の混合物を用いることがで
きるが、アニリンの水溶性塩が用いられるときは、反応
媒体には通常、これら水溶性塩を溶解する水、水混和性
有機溶剤又はこれらの混合物が用いられ、また、アニリ
ン自体が用いられるときは、反応媒体としては、これら
を溶解する水混和性有機溶剤又は水非混和性有機溶剤が
用いられる。尚、上記有機溶剤はいずれも用いる酸化剤
によつて酸化されないことが必要である。例えば、水混
和性有機溶剤としては、アセトン、テトラヒドロフラ
ン、酢酸等のケトン類、エーテル類又は有機酸類が用い
られ、また、水非混和性有機溶剤としては四塩化炭素、
炭化水素等が用いられる。
本発明による導電性有機重合体組成物の特に好ましい製
造方法は、アニリン又はその水溶性塩をプロトン酸含有
反応媒体中で酸化剤で酸化重合させて導電性有機重合体
を製造する方法において、上記酸化剤を含む反応媒体に
おけるプロトン酸/重クロム酸カリウムモル比を1.2以
上とする。上限は特に制限されないが、通常、50程度で
ある。
反応温度は溶剤の沸点以下であれば特に制限されない
が、反応温度が高温になるほど、得られる酸化重合体の
導電性が小さくなる傾向があるので、高い導電性を有す
る重合体を得る観点からは常温以下が好ましい。
特に好ましい方法は、アニリンの有機溶液又はアニリン
水溶性塩の水溶液中に攪拌下にプロトン酸酸性の酸化剤
水溶液を滴下し、又は一括添加して反応を行なわせるも
のである。通常、数分程度の誘導期間を経た後、直ちに
組成物が析出する。このように反応は直ちに終了する
が、通常、その後数分乃至数時間、熟成のために攪拌す
る。次いで、反応混合物を大量の水中又は有機溶剤中に
投入し、組成物を濾別し、濾液が中性になるまで水洗し
た後、アセトン等の有機溶剤にてこれが着色しなくなる
まで洗滌し、真空乾燥して、本発明による導電性有機重
合体組成物を得る。
上記のような方法において、得られる導電性有機重合体
組成物の導電性は、アニリン又はその水溶性塩の酸化重
合が行なわれるプロトン酸と酸化剤とを含有する反応媒
体の組成に密接に関連しており、高導電性の組成物を得
るためには、上記反応媒体の組成を最適に選択すること
が必要であり、電導度が10-6S/cm以上の高導電性の組成
物を得るためには、反応の行なわれる反応媒体における
プロトン酸/重クロム酸カリウムモル比を1.2、好まし
くは2〜50とすることが必要である。通常、このような
条件下での酸化重合によつて電導度が10-3〜101S/cmで
ある高導電性組成物を得ることができる。尚、前記のよ
うに、アニリンの有機溶液又はその水溶性塩の水溶液に
プロトン酸酸性の酸化剤水溶液を添加して反応を行なわ
せる場合、酸化剤水溶液におけるプロトン酸の濃度は特
に制限されるものではないが、通常、1〜10Nの範囲で
ある。
上記の方法においては、このようにアニリンの酸化重合
が行なわれる反応媒体中におけるプロトン酸/重クロム
酸カリウムモル比が一定であれば、得られる重合体の導
電性は実質的に同じであり、上記したような方法によれ
ば、再現性よく所定の導電性を有する組成物を得ること
ができる。他方、アニリンに対する重クロム酸カリウム
の量は、得られる組成物の収率を決定する。しかし、組
成物の導電性は、用いる重クロム酸カリウムの量によつ
ては実質的に影響を受けない。従つて、所定のプロトン
酸/重クロム酸カリウムモル比の酸化剤水溶液を用い、
且つ、重クロム酸カリウムをアニリン又はその水溶性塩
に対して当量若しくはそれ以上用いるとき、所定の導電
性を有する有機重合体組成物をほぼ定量的に得ることが
できる。
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこ
れら実施例により何ら限定されるもものではない。
実施例1 (1) 導電性有機重合体組成物の製造 300ml容量のフラスコ中に水45gを入れ、濃塩酸4mlを加
え、更にアニリン5g(0.0537モル)を溶解させ、アニリ
ン塩酸塩水溶液を調製し、氷水でフラスコを冷却した。
別に、水28.8gに濃硫酸4.61g(0.047モル)を加え、更
に重クロム酸カリウム1.84g(0.00625モル)を溶解させ
た酸化剤水溶液(プロトン酸/重クロム酸カリウムモル
比7.5)を調製し、これを氷水で冷却した上記アニリン
の塩酸塩水溶液中に攪拌下、滴下ろうとから30分間を要
して滴下した。滴下開始後、最初の2〜3分間は溶液が
黄色に着色したのみであつたが、その後、速やかに緑色
固体が析出し、反応液は黒緑色を呈した。
滴下終了後、更に30分間攪拌し、その後、反応混合物を
アセトン400ml中に投じ、2時間攪拌し、次いで、導電
性重合体組成物を濾別した。得られた組成物を蒸留水中
で攪拌洗滌し、濾別し、このようにして濾液が中性にな
るまで洗滌を繰り返した。次いで、濾別した組成部をア
セトンにより濾液が着色しなくなるまで洗滌を繰り返し
た。濾別した組成物を五酸化リン上、室温で10時間真空
乾燥し、本発明による導電性有機重合体組成物を緑色粉
末として得た。
(2) 導電性有機重合体組成物の物性 上で得た導電性有機重合体組成物を室温において濃度97
%の濃硫酸に加え、攪拌して、その溶解度を調べたとこ
ろ、溶解量は1.2重量%であつた。また、濃度0.5g/dlと
したこの組成物の97%濃硫酸溶液の温度30℃における対
数粘度は0.46dl/gであつた。比較のために、エメラルデ
イン及びダイヤモンド・ブラツクの同じ条件下での粘度
はそれぞれ0.02dl/g及び0.005dl/gであつた。
更に、本発明による上記導電性有機重合体組成物及びエ
メラルデインについての空気中における熱重量分析の結
果を第5図に示す。昇温速度は10℃/分である。
次に、上で得た導電性有機重合体組成物の粉末約120mg
を瑪瑙製乳鉢で粉砕した後、赤外分光光度計用錠剤成形
器にて圧力6000kg/cm2で直径13mmのデイスクに加圧成形
した。幅約1mmの銅箔4本を銀ペースト又はグラフアイ
トペーストでデイスクの四隅に接着し、空気中でフアン
・デル・ポウ法に従つて測定した結果、電導度は2.0S/c
mであつた。この導電性有機重合体組成物の成形物は、1
0-2Torrの真空中で測定しても、ほぼ同じ電導度を示し
た。このデイスクを4か月間空気中に放置したが、電導
度は実質的に変化しなかつた。
(3) 導電性有機重合体組成物の赤外線吸収スペクト
ル 上で得た導電性有機重合体組成物の赤外線吸収スペクト
ルを第1図に示す。比較のために、エメラルデイン及び
アニリンブラツクの赤外線吸収スペクトルをそれぞれ第
2図及び第3図に示す。尚、エメラルデインはA.G.Gree
nらの方法によつて調製した(A.G.Green et al.,J.Che
m.Soc.,97,2388(1910))。
本発明による導電性有機重合体組成物の赤外線吸収スペ
クトルは、エメラルデインのそれと類似するが、同時に
大きい差違もある。即ち、エメラルデインには一置換ベ
ンゼンに基づくC−H面外変角振動による690cm-1及び7
40cm-1の明瞭な吸収が認められるが、本発明による組成
物においては、これらの吸収は殆ど認められず、代わり
にパラ置換ベンゼンを示す800cm-1の吸収が強く認めら
れる。これはエメラルデインが低分子量体であるため
に、分子末端の一置換ベンゼンに基づく吸収が相対的に
強く現われるのに対して、本発明による組成物は高分子
量体であるために、高分子鎖をなすパラ置換ベンゼンに
基づく吸収が相対的に強く現われるからである。これに
対して、アニリンブラツクの赤外線吸収スペクトルは本
発明による組成物及びエメラルデインのいずれとも顕著
に相違し、特に、3200〜3400cm-1付近の広幅の吸収、16
80cm-1にあるキノン性カルボニル基と認められる吸収、
1200〜1300cm-1のC−N伸縮振動領域、600cm-1以下の
領域等において異なることが明らかである。
本発明による導電性有機重合体組成物における赤外線吸
収スペクトルの帰属は次のとおりである。
1610-1(シヨルダー、C=N伸縮振動) 1570、1480cm-1(ベンゼン環C−C伸縮振動) 1300、1240cm-1(C−N伸縮振動) 1120cm-1(ドーパントに基づく吸収。ドーパントの種類
によらず、ほぼ同じ位置に吸収を有する。) 800cm-1(パラ置換ベンゼンC−H面外変角振動) 740、690cm-1(一置換ベンゼンC−H面外変角振動) また、本発明による上記導電性有機重合体組成物をアン
モニア補償したときの赤外線吸収スペクトルを第4図
(B)に示し、これを5N硫酸で再びドーピングした後の
赤外線吸収スペクトルを第4図(C)に示す。この再ド
ーピング後のスペクトルは第4図(A)に示す当初のそ
れとほぼ完全に同じであり、更に、電導度もアンモニア
補償前と同じである。
また、電導度の変化は、補償前(A)は0.45S/cm、補償
後(B)は1.6×10-8S/cm、再ドーピング後(C)は0.3
1S/cmであつた。従つて、本発明によれば、アニリンの
酸化重合による重合体は、その段階で用いたプロトン酸
によつて既にドーピングされていることが示される。
(4) 導電性有機重合体組成物の化学構造 上で得た本発明による導電性有機重合体組成物の元素分
析値を示す。尚、組成物を水洗及びアセトン洗滌によつ
て精製しても、元素分析後に無水酸化クロム(Cr2O3
の緑色粉末が残渣として残ることが認められるので、実
測元素分析値と共に、その合計を100としたときのそれ
ぞれの換算値を併せて示す。換算値が理論値と一致する
ことが認められる。また、アンモニアにて化学補償した
重合体についても結果を示す。
(a)硫酸をドーパントとして含む組成物 C12H8N2(H2SO40.58 理論値 測定値 換算値 C 60.79 58.11 60.99 H 3.89 4.05 4.25 N 11.81 10.80 11.34 S 7.84 7.45 7.82 O 15.66 (14.87) (15.61) 尚、理論式における硫酸量は、イオウの実測値から算出
し、この硫酸量に基づいて理論値における酸素量を算出
した。また、測定値における酸素量は、イオウの測定値
から硫酸量を算出し、この硫酸量から算出した。
(b)補償重合体 C12H8N2 理論値 測定値 換算値 C 79.98 73.24 79.77 H 4.48 4.34 4.73 N 15.54 14.23 15.50 実施例2 (1) 濃硫酸度が一定である硫酸酸性の酸化剤水溶液
における硫酸/重クロム酸カリウムモル比が組成物の導
電性に及ぼす影響 300ml容量のフラスコ中に水45gを加え、濃塩酸4mlを加
え、更にアニリン5g(0.0537モル)を溶解させて、アニ
リン塩酸塩水溶液を調製した。
別に、重クロム酸カリウム1.84g(0.00625モル)を種々
の量の3N硫酸に溶解し、硫酸/重クロム酸カリウムモル
比の種々異なる酸化剤水溶液を調製した。この酸化剤水
溶液を上記アニリン塩酸塩水溶液中に攪拌下、室温で滴
下ろうとから滴下した。滴下終了後、更に30分間攪拌
し、この後、反応混合物をアセトン400ml中に投じ、2
時間攪拌し、次いで、得られた導電性有機重合体組成物
を濾別し、乾燥した。
このようにして得た未精製の導電性有機重合体組成物の
電導度(σ)を第6図に○印で示す。また、上の組成物
を蒸留水で洗滌し、濾別し、このようにして瀘液が中性
になるまで洗滌を繰り返した。このようにして得た精製
した組成物の電導度を●印で第6図に示す。尚、以下の
図面においても、同様に上記のような未精製の組成物を
○印で、精製した組成物を●印で示す。
第6図に示す結果から、酸化剤水溶液においてプロトン
酸/重クロム酸カリウムモル比を1.2以上とすることに
より、電導度が10-6S/cm以上の導電性有機重合体組成物
を得ることができることが理解される。
(2) 重クロム酸カリウム濃度が一定である硫酸酸性
水溶液における硫酸/重クロム酸カリウムモル比が組成
物を電導度及び収率に及ぼす影響濃度が異なる一定重量
の硫酸に重クロム酸カリウム1.84g(0.00625モル)を溶
解させて、重クロム酸カリウム濃度が5.2重量%である
水溶液を調製した。この酸化剤水溶液を実施例1と同じ
くアニリン塩酸塩0.0537モルを含む水溶液に攪拌下、室
温で滴下して、本発明による導電性有機重合体組成物を
得た。
酸化剤水溶液における硫酸/重クロム酸カリウムモル比
と組成物の収率及び電導度との関係を第7図に示す。上
記モル比が1.2以上であるとき、電導度が10-6S/cm以上
である組成物を得ることができる一方、アニリンに対す
る重クロム酸カリウムの量が一定であるとき、組成物の
収率がほぼ一定であることが示される。
(3) 重クロム酸カリウム濃度が組成物の電導度及び
収率に及ぼす影響 濃度の異なる硫酸水溶液に硫酸/重クロム酸カリウムモ
ル比が7.5となるように重クロム酸カリウムを溶解し、
種々の濃度の重クロム酸カリウム水溶液を調製した。こ
の酸化剤水溶液を重クロム酸カリウムの約9倍モル量の
アニリン塩酸塩を含む水溶液に室温で滴下し、本発明に
よる組成物を得た。
結果を第8図に示すように、酸化剤水溶液における重ク
ロム酸カリウム濃度が異なつても、硫酸/重クロム酸カ
リウムモル比が一定であり、且つ、アニリンに対する重
クロム酸カリウム量が一定であるとき、組成物がほぼ一
定の収率で得られると共に、その電導度もほぼ一定であ
ることが示される。
(4) アニリンに対する重クロム酸カリウム量が組成
物の電導度及び収率に及ぼす影響 3N硫酸に重クロム酸カリウムを溶解し、硫酸/重クロム
酸カリウムモル比7.5である酸化剤水溶液を調製した。
実施例1と同じアニリン塩酸塩水溶液に上記酸化剤水溶
液を種々の量で添加して組成物を得た。
アニリンに対する重クロム酸カリウム量が組成物の電導
度及び収率に及ぼす影響を第9図に示す。尚、硫酸酸性
における重クロム酸カリウム1モルは3当量に相当し、
図面において重クロム酸カリウムの当量性とはアニリン
に対するこの重クロム酸カリウムの酸化剤としての当量
性を意味する。
用いた酸化剤水溶液は、硫酸/重クロム酸カリウムモル
比が一定であるので、得られる組成物は電導性がほぼ一
定である一方、得られる組成物の収率はアニリンに対す
る酸化剤水溶液中の重クロム酸カリウム量にほぼ比例す
ることが理解される。
(5) アニリン濃度が組成物の電導度及び収率に及ぼ
す影響 3N硫酸に重クロム酸カリウムを溶解し、硫酸/重クロム
酸カリウムモル比7.5、重クロム酸カリウム濃度5.2重量
%の酸化剤水溶液を調製した。この酸化剤水溶液をアニ
リンに対する重クロム酸カリウムの当量数が1/3になる
ように添加し、本発明による組成物を得た。結果を第10
図に示す。
酸化剤水溶液における硫酸/重クロム酸カリウムモル比
が一定であり、且つ、アニリンに対する重クロム酸カリ
ウムの量が一定であるとき、アニリン濃度にかかわら
ず、ほぼ一定の収率でほぼ一定の電導度を有る組成物を
得ることができる。
実施例3 アニリン塩酸塩6.48g(0.050モル)を3N硫酸84ml(0.12
6モル)に溶解したアニリン水溶液を調製した。重クロ
ム酸カリウム4.90g(0.0167モル)を溶解させた水溶液
に上記アニリン塩水溶液を室温で滴下し、滴下終了後、
30分間熟成した。尚、上記条件下でのプロトン酸/重ク
ロム酸カリウムモル比は7.5である。
沈殿した組成物を濾別し、実施例1と同様にして水洗
し、アセトンで洗滌した後、真空乾燥して本発明による
組成物を得た。この組成物の電導度を実施例1と同様に
して測定したところ、2.8×10-2S/cmであつた。
実施例4 300ml容量のフラスコにテトラヒドロフラン45gを入れ、
これにアニリン5g(0.0537モル)を溶解させた。
別に、水82.2gに濃硫酸13.17g(0.134モル)を加え、更
に重クロム酸カリウム5.27g(0.0179モル)を溶解させ
た酸化剤水溶液(プロトン酸/重クロム酸カリウムモル
比7.5)を調製し、これを上記アニリンのテトラヒドロ
フラン溶液中に攪拌下、室温で滴下ろうとから30分間を
要して滴下した。滴下開始後は溶解が黄色に着色したの
みであつたが、その後、黄緑褐色の粉末が析出し、その
後しばらくしてこの粉末は緑色に変化した。
滴下終了後、更に30分間攪拌し、この後、反応混合物を
アセトン600ml中に投じ、2時間攪拌し、次いで、組成
物を濾別した。実施例1と同様にして組成物を洗浄、乾
燥した後、電導度を測定したところ、0.25S/cmであつ
た。また、濃硫酸溶液の対数粘度は0.38dl/gであつた。
実施例5 実施例4において、テトラヒドロフラン45gに代えて四
塩化炭素45gを用いた以外は、実施例4と全く同様にし
て黒緑色粉末状の組成物を得た。この組成物は電導度が
0.21S/cm、濃硫酸溶液の対数粘度が0.41dl/gであつた。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明による導電性有機重合体組成物の赤外線
吸収スペクトル、第2図及び第3図はそれぞれエメラル
デイン及びアニリンブラツクの赤外線吸収スペクトル、
第4図(A)は本発明による導電性有機重合体組成物、
(B)はこの導電性有機重合体組成物をアンモニア補償
して得られる重合体、及び(C)は(B)の重合体を硫
酸で再ドーピングして得られる導電性有機重合体組成物
のそれぞれの赤外線吸収スペクトルである。 第5図は本発明による導電性有機重合体組成物及びエメ
ラルデインの加熱による重量残存率を示すグラフであ
る。 第6図は本発明の方法において、硫酸濃度が一定である
酸化剤水溶液の硫酸/重クロム酸カリウムモル比と、得
られる導電性有機重合体組成物の電導度との関係を示す
グラフ、第7図は一定濃度の重クロム酸カリウムを含む
硫酸酸性水溶液の硫酸/重クロム酸カリウムモル比と、
得られる導電性有機重合体組成物の収率及び電導度との
関係を示すグラフ、第8図は一定の硫酸/重クロム酸カ
リウムモル比を有する硫酸酸性酸化剤水溶液の重クロム
酸カリウム濃度が、得られる導電性有機重合体組成物の
収率及び電導度に及ぼす影響を示すグラフ、第9図は一
定の硫酸/重クロム酸カリウムモル比を有する硫酸酸性
酸化剤水溶液のアニリンに対する当量性と、得られる導
電性有機重合体組成物の収率及び電導度との関係を示す
グラフ、第10図は一定の硫酸/重クロム酸カリウムモル
比を有する酸化剤水溶液の一定量を用いたときのアニリ
ン塩酸塩濃度と得られる導電性有機重合体組成物の収率
及び電導度との関係を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 阿部 正男 大阪府茨木市下穂積1丁目1番2号 日東 電気工業株式会社内 (72)発明者 中沢 準 大阪府茨木市下穂積1丁目1番2号 日東 電気工業株式会社内 (72)発明者 一瀬 尚 大阪府茨木市下穂積1丁目1番2号 日東 電気工業株式会社内 (72)発明者 中本 啓次 大阪府茨木市下穂積1丁目1番2号 日東 電気工業株式会社内 (72)発明者 湯本 恵視 大阪府茨木市下穂積1丁目1番2号 日東 電気工業株式会社内 (56)参考文献 特開 昭60−197728(JP,A) 英国特許1216549(GB,A) 「Bulletin of the C hemical Society of Japan」57[8](1984−8)P. 2254−2257

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】実質的に、一般式 で表わされるキノンジイミン構造体からなる繰返し単位
    からなり、0.5g/dl濃硫酸溶液が30℃において0.38dl/g
    以上の対数粘度を有する実質的に線状の重合体であっ
    て、ドーパントとしての電子受容体を含み、電導度が10
    -6S/cm以上であることを特徴とする導電性有機重合体組
    成物。
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